美術館に乾杯! 大覚寺
京都嵯峨野にある大覚寺は狩野山楽(1559~1635)の障壁画の宝庫。
だから、嵯峨野をめざすのはお目当ての絵画をみるため美術館に足を運ぶの
と同じ感覚。桃山時代を象徴する絵画というと金碧画をすぐ思い浮かべるが、
山楽の描いた金碧画の最高傑作が宸殿の間を飾る襖絵‘紅梅図'と‘牡丹図'。
この絵の前にたつのは大きな鑑賞体験。永徳の金碧画が金地にうねる太い松
の幹が浮き上がっているのに対し、山楽のモチーフにはもちろん力強さはあ
るがそれに柔らかさとエレガントさが加わる。形のいい梅樹の枝ぶりに呼応
するように紅梅を鳥たちが楽しんでいる姿が心を打つ。一方、牡丹図のほう
は大きな牡丹の花と垂直にのびる岩の塊の組み合わせがとても新鮮。なんだ
か大宮の盆栽美術館にいるような気分になる。
水墨画の‘松鷹図'は松の巨木の存在感に視線が釘づけになる。そして鋭い目
をした鷹が枝にとまり獲物をうかがう様子にも惹きつけられる。こういう松
がうねる豪快な造形をみると武士たちはドバっとアドレナリンが出たにちが
いない。
渡辺始興(1683~1755)の障子の腰板に描かれた‘野兎図'は肩の力
がすっとぬける絵。素早い動きをする兎だということがこの描写ですぐイ
メージできる。琳派色の強い‘吉野山図'(東博)同様、始興の才能の高さが
うかがわれる作品。
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