美術館に乾杯! 北村美術館 その二
作風が年齢を重ねるにつれ心に沁みるものになっていく絵師がいる。
与謝蕪村(1716~1783)の‘鳶鴉図’をみるとつくづくそう思う。
これは最晩年の絵で右に強い風雨のなか木の枝にとまっている鳶、左に降り
注ぐ雪をみながら体を寄せ合い寒さに耐えている二羽の鴉が描かれている。
動と静の対比が見事。長いこと縁がなかったが、10年くらい前ようやくお
目にかかることができた。
斬新な意匠とおもしろい形が刺激的な織部に魅了され続けているので、名品
‘織部松皮菱形手鉢’が気になってしょうがなかった。2017年にここを訪問
したのはいいタイミングで展示されていたから。松皮菱は菱形の上下に小さ
な菱形をつける日本の伝統的な模様。この形だけでなく緑と赤土色の組み合
わせが目に心地いい。こういう前衛的なやきものを生み出す陶工たちの
アート魂にほとほと感心させられる。
朝鮮唐津の‘掛分釉一重口水指’も強い磁力を放っている。上の鉄釉とボリュ
ームを感じさせる白釉はともに深く主張している。これも織部同様、見方を
かえれば現代アーティストがてがける抽象絵画やオブジェにもイメージが膨ら
む。例えば、リーウーファンの絵画がちらっと頭をかすめた。
古美術を蒐集する人物に茶の湯のたしなみがあるといい茶道具が揃う。だから、
‘大井戸茶碗 銘雨雲’や‘瀬戸茶入 銘廣澤 本歌’はさらっとでてくる。ここの
展示室はあまり広くないのでコレクションに馴染むには何度も足を運ぶ必要が
あるが、これほどいいものをみせられるとついその気になる。
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