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2019.12.30

お知らせ

‘感動のアート ベスト10!’(3)をアップする予定でしたが、CANON
のスキャナーがなぜか働いてくれません。大掃除でスキャナーのまわりを
ふいたときなにかアクシデントが起きたのかもしれない。画像はないです
が、残りの3点をつけ加えておきますと、
★‘螺鈿紫檀五絃琵琶’(正倉院展 10/14~11/24 東博)
★‘佐竹本三十六歌仙絵 中務’(やまとうた 10/12~12/15 サン
 リツ服部美)
★喜多川歌麿の‘婦女人相十品 煙草の煙を吹く女’(大浮世絵展 11/19
 ~1/19 江戸東博)。

今年も拙ブログにおつきあいいただきありがとうございます。
皆様良いお年をお迎え下さい。 

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2019.12.29

2019年 感動のアート ベスト10!(2)

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Img_0003_20191229221901     長澤芦雪の‘花鳥遊漁図巻’(18世紀 文化庁)

 

Img_20191229222001     オピーの‘ニューヨークの通行人’(2019年)

 

Img_0001_20191229222001     バスキアの‘無題’(1982年)

 

春に東博本館で行われた‘日本美術の名品’(5/3~6/2)はすでにみているものが多かったので、永徳の‘檜図屏風’や雪舟の‘秋冬山水図’などをさらっとみるつもりで展示会場に入った。こういうときに嬉しいことがおこるとその展覧会は深く胸に刻まれる。

嬉しいことは二つある。ひとつは宮川香山のやきもの‘黄釉銹絵梅樹図大瓶’(1892年 重文)がでていたこと。この大瓶はお気にいりの作品でこれまで何度もお目にかかっている。だから、特別感動が大きいということはない。何が嬉しいかというとミニ図録に図版が載るのでこれからはいつでもこの香山の傑作をながめられるから。これまでこのやきものの絵葉書がどういうわけかミュージアムショップに用意されてなかった。このもやもや感がやっと解消された。

もうひとつのサプライズは長澤芦雪(1754~1799)の‘花鳥遊漁図巻’。この絵の情報はまったくゼロ。過去に2度芦雪の回顧展を体験したが、この図巻はかすりもしなかった。文化庁の所蔵となっているが、これまでなぜ展示されなかったのだろうか。長さ11mの巻物に芦雪お得意の雀や可愛い犬、そしてたくさんの鯉が描かれている。今年は芦雪の大当たり!‘奇想の系譜’とこの名品展で新たな作品に2点も遭遇した。

現代アートの分野で新鮮な出会いがあった。イギリスのアーティスト、ジュリアン・オピー(1958~)のポスターのような作品‘ニューヨークの通行人’。人物の表現はイベント会場の案内マークや街の交通標識の類と変わらない。オピーは大都市における人々の歩く姿を巨大な画面に平板に描いたり、動画を使って表現する。余計なものを除き人物の動きに特化してシンプルな造形でリズミカルに描写するところがおもしろい。

バスキア(1960~1988)の作品はこれまで何点かみたことがあるので、絵の特徴はインプットされていたが、彼が日本に22歳のころから何度もやって来ていたことは全然知らなかった。作品のなかに‘100YEN 200YEN、、、’が記されているのは?奇妙に思っていたが、あとで図録を呼んで意外にも日本のことにいろいろ興味をもっていたことがわかり合点がいった。インパクトの大きかったのはZOZOの前社長前澤氏が所蔵する絵。猿が歯をむきだしにしているイメージが強い。

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2019.12.28

2019年 感動のアート ベスト10!(1)

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    フェルメールの‘取り持ち女’(1656年 ドレスデン国立美)

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      クリムトの‘女ともだち’(1907年 クリムト財団)

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    マカルトの‘女優シャーロット・ヴォルター’(1875年 ウイーンミュージアム)

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      鈴木其一の‘百鳥百獣図’(1843年 エドソンコレクション)

今年遭遇した‘感動の展覧会 ベスト10!’に引き続き美術品そのものに焦点
をあてた‘感動のアート ベスト10!’を選んでみた。選好の基準ははじめて
お目にかかるもので大きな感動が得られた作品(鑑賞した順番で3回にわけ
て)。

人気の画家、フェルメール(1632~1675)の回顧展(上野の森美)
は昨年の10/5から今年の2/3までもロングラン興行。1/10にでかけ
念願の‘取り持ち女’と対面した。思った以上に大きな絵でタペストリーの赤や
質感表現に魅了された。2003年中欧を旅行したとき、ドレスデン国立
古典絵画館ではフェルメールのこの絵と‘窓辺で手紙を読む女’に胸がときめい
たが、どういうわけか‘取り持ち女’は海外の美術館に貸し出し中だった。残念
な思いをずっとひきずっていたが、ようやくリカバリーできた。ミューズに
感謝!

春のお楽しみクリムト展(4/23~7/10 東京都美)で一番の収穫は‘女
ともだち’。これは手元にあるクリムト(1862~1918)の画集に載っ
ていない作品。思わず足がとまり画面の多くを占めるこげ茶色に浮き上がる
二人の女性の白い顔に吸い寄せられた。とくにいいのが横向きの女性。
こういう縦長の短冊のような画面に描かれた肖像画をみると浮世絵師、鈴木
春信の美人画を連想する。

国立新美でクリムト展と並行して開催された‘ウィーンモダン’(4/24~
8/25)に展示してあったマカルト(1840~1884)の‘メッサリナの
役に扮する女優シャーロット・ヴォルター’にも200%KOされた。以前
ウィーンのベルヴェデーレ宮を訪問した際、この画家の絵もみたはずだが、
当時は頭のなかはクリムトでいっぱいだったためみれどみぬ状態だった。
こんな豪華な女性画を描いていたとは。

東京都美の‘奇想の系譜’(2/9~4/7)にサプライズの絵画が登場した。
鈴木其一(1796~1858)の‘百鳥百獣図’(左隻)。アメリカのコレク
ターが所蔵しているが、はじめて里帰りした。長澤芦雪の‘百鳥図’をみたこと
があるが、其一はこれに白象や虎などをたくさん集めた‘百獣図’をつけくわえ
た。生き物に乾杯!

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2019.12.27

美術館に乾杯! 新薬師寺

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    新薬師寺本堂の内部(8世紀 国宝)

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    国宝‘薬師如来坐像’(8世紀)

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       国宝‘十二神将 迷企羅大将’(8世紀)

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       国宝‘十二神将 波夷羅大将’(8世紀)

近鉄奈良駅からバスで10分くらいのところにある新薬師寺を訪問したのは
もうだいぶ前のこと。普通の家々が並んでいるところにそれほど大きくない
お寺があるため拍子抜けする。これが新薬師寺かね?というのが率直な感想。
ところが本堂に入ると一気に緊張感につつまれる。

それは円形の須弥壇に安置されている本尊の‘薬師如来坐像’をぐるっと外向き
に囲んでいる‘十二神将像’が圧倒的な存在感に示しているから。彫像として
の十二神将はこれが最古のもの。いろいろなお寺で十二神将に出会ったが、
こういうふうに薬師如来をとりかこむように配置されているのはほかにみた
ことがない。

正面の最前列にいるのが怖い顔をした‘迷企羅大将’(寺伝では伐折羅)と静か
に前方を見据えている‘波夷羅大将’(因達羅)。十二神将は二体ずつを一組と
して動と静といった形をとったり姿勢を反転させたりして緊密な対応をつく
っている。だから、ゆっくりまわりながら一体々みていくとテンションが
ぐんぐん上がっていく。顔の表情、手の動きをこれほど迫真的にまた衣装の
質感を丁寧に表現できるのはこれらがみな塑造による彫像だから。その特徴
は東大寺法華堂の金剛神立像や戒壇堂の四天王像の塑像とほとんど同じ。

ここの‘薬師如来坐像’は大きな目と黒の線が印象的な眉が目に焼きついている。
ユニークな円形土壇があり簡素なつくりの天井の下に12人の家来を従えて
薬師如来がどんと座っている。仏像をこれほどまじかでみられる機会はそう
ないので一生の思い出になっている。

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2019.12.26

美術館に乾杯! 唐招提寺

Img_0002_20191226222501     唐招提寺 金堂(8世紀後半 国宝)

 

Img_0001_20191226222601       国宝‘千手観音立像’(8世紀末 金堂)

 

Img_20191226222601     国宝‘鑑真和上坐像’(763年 御影堂)

 

Img_0003_20191226222601       国宝‘舎利容器 金亀舎利塔’(平安時代)

 

Img_0004_20191226230601      東山魁夷の‘御影堂障壁画 濤声’(1981年)

 

薬師寺とすぐ近くにある唐招提寺はセットでみる観光スポット。唐招提寺で
もっとも印象深いのは金堂にある3体の巨像、真ん中が‘廬舎那仏坐像’、
その右が‘千手観音立像’で左にいるのが‘薬師如来立像’(いずれも国宝)。
そのなかで目を楽しませてくれるのが高さが5.3mもある千手観音。これ
まで出会った千手観音のなかでこれがナンバーワン。

鳥の羽根のように背中からたくさんの手が放射状にのびそれらがぐるぐるま
わってるような感じ。古い映画で恐縮だが市川雷蔵が演じた眠狂四郎の得意
とする剣法が刀をぐるりと円を描くようにまわす‘円月殺法’。この千手をみ
るたびにそのシーンを思い出す。

御影堂に飾られている‘鑑真和上坐像’は別格扱いの肖像彫刻。瞑想する鑑真
と今まさに会っているような気持にさせる写実表現に心が揺すぶられる。
‘源氏物語絵巻’ができた12世紀前半の絵画では人物は引目鉤鼻(ひきめか
ぎばな)で描かれ写実性に乏しかったのに8世紀のなかごろにつくられた
鑑真の彫刻ではこのリアルさ。だから、歴史上の人物をイメージするには
彫刻をよくみるのが手っ取り早い。

御影堂のもうひとつの目玉が東山魁夷(1908~1999)が鑑真に捧
げるために描いた‘障壁画’。お気に入り波の描写に魅了される‘濤声’。風景
画のなかで波の表現は大変難しいが名手は横山大観、東山魁夷、加山又造。

‘舎利容器 金亀舎利塔’にお目にかかったのはここではなくて1995年
奈良博で行われた‘日本仏教美術名宝展’。亀の甲羅に舎利塔をのせる造形が
とてもおもしろく目が点になったことを今でもよく覚えている。

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2019.12.25

美術館に乾杯! 薬師寺 その二

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       国宝‘吉祥天像’(8世紀)

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    国宝‘八慢三神坐像 神功皇后’(9世紀)

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    国宝‘慈恩大師像’(11世紀)

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      ‘玄奘三蔵坐像’(13~14世紀)

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    平山郁夫の‘大唐西域壁画 ナーランダの月’(2000年)

高校生のころ日本史や美術の教科書でみた絵や彫刻はそれが生まれた時代と
の関連性が頭に入らなくても作品そのものはすごいものだということはわか
る。だから、そんな名品とじっさい対面すると感慨深いものがある。薬師寺
にある‘吉祥天像’もそのひとつ。中国唐時代の宮廷絵画にでてくる宮女をみて
いるよう。視線が集中するのはふっくらした頬と太い眉、そして赤の唇。
人気の日本旅館をとりしきる愛想のいい女将を連想させる。

‘八幡三神坐像’にお目にかかったのはこれが展示してある休ヶ岡八幡宮では
なくだいぶ前に遭遇した神社関連の特別展。大きな驚きは‘神功皇后’と‘仲津
姫命’の異様に長い髪の毛。おさげ髪の少女が一瞬のうちに大人になった感じ。
これほど髪に重量感があるとその重さで息苦しくなるのではと余計な心配を
する。

法相宗を開いた中国の僧、慈恩大師(632~682)の肖像画で印象深
いのはなんといってもつりあがった大きな目と上にぴんとはねている眉。
大男で豪快な人物といわれているが、あまりみたことのない眉の描き方が
その強烈な個性を表しているのかもしれない。

慈恩大師の師匠にあたるのが玄奘三蔵(632~682)。1991年に
玄奘三蔵をお祀りする玄奘三蔵院伽藍ができ、ここに鎌倉時代につくられ
た坐像(木像)などが飾られている。そして、2000年に平山郁夫
(1930~2009)が玄奘三蔵の求法の旅を描いた‘大唐西域壁画’
(7場面、13壁画)が献納された。‘ナーランダの月’は最後の場面で画面
右下にぼんやり立つ人の姿が玄奘三蔵。

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2019.12.24

メリークリスマス!

Img_20191224221201  コレッジョの‘幼いキリストを礼拝する聖母’(16世紀 ウフィツィ美)

 

今年の後半にでかけた展覧会がほとんど日本美術関連のものだったので西洋
絵画の出番が少なくなっている。これに‘美術館に乾杯!’シリーズがパートⅡ
の日本の美術館に入っていることが重なり日本美術のブログのようになった。
このことがちょっと気になっているので来年は西洋美術の新シリーズを立ち
上げようかなと思っている。

そこで今日はクリスマスイブなので西洋絵画の話を少しばかり。美術品と
宗教は深くつながっている。そのため、絵画や彫刻とのつきあいが長くな
るとギリシャ神話やキリストや釈迦の物語が少しずつ頭のなかに入ってくる。
そして、キリスト教徒でもないのにクリスマスにはキリスト誕生の絵をみよ
うということになる。フィレンツェのウフィツィ美にあるコレッジョ
(1489~1534)の‘幼いキリストを礼拝する聖母’はお気に入りの一枚。

この絵に惹かれるのは宗教画の匂いが少なく可愛い赤ちゃんとお母さんを描
いた風俗画のようにみえるから。ここ2週間、江戸東博で開催中の‘大浮世絵
展’に刺激をうけて歌麿のMy図録をつくったが、そこで美人大首絵とともに心
をとらえて離さないのが母子の絵。例えば授乳のシーンとか金太郎をあやす
山姥とか。コレッジョの絵にも歌麿の絵にも母親の深い愛情が伝わってくる。

さて、来年行われる西洋絵画関連の展覧会。情報があまりない。いまのとこ
ろ期待できるのは3月にはじまる‘ロンドンナショナルギャラリー展’
(3/3~6/14)と‘ビッグニュース’でとりあげた11月のカラバッジョの
2つ。ほかにもあるかしっかりチェックしたい。

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2019.12.23

美術館に乾杯! 薬師寺 その一

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       薬師寺東塔(730年 国宝)

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    国宝‘薬師三尊像’(7世紀 金堂)

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      国宝‘月光菩薩立像’(右脇侍)

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      国宝‘聖観音菩薩立像’(7~8世紀 東院堂)

奈良で足を運ぶのはいつも奈良博なので西のほうにある薬師寺や唐招提寺は
遠い記憶の中。またでかけてみたいと思うが、道順はまったく不慣れ。
近鉄奈良駅から薬師寺まではアバウト6キロ。だから、タクシーを利用する
と20分もあれば到着しそう。

薬師寺で記憶によく残っているのは東塔。一見すると六重にみえるが正解は
三重の塔。ガイドブックに載っていて非常に惹かれているのが相輪の上の
水煙に描かれている飛天と雲。風に雲が流され飛天の天衣がひらひらなびく
様はとてもさわやか。この下に立ったときは単眼鏡やミニ望遠鏡を使いしっ
かりみるつもり。

金堂の本尊として祀られているのは薬師如来坐像と両脇侍、日光菩薩立像
(左)と月光菩薩立像(右)の薬師三尊像。視線が集中するのは向かって
左の月光菩薩。銅造特有の黒光りする金属の質感が腰をS字に曲げる姿を際
立たせている。腰のひねりが逆になっている日光菩薩の姿より脳はどうして
も月光菩薩のほうがいいという。

もうひとつ、ここにはお気に入りの仏像がある。東院堂でお目にかかれる
‘聖観音菩薩立像’。月光菩薩とのちがいは腰のひねりはなく胸の下あたりか
ら腰までがぐっとくびれている。この女性らしい均整のとれた形が心を揺す
ぶる。これまで3回みたがいつも夢中にさせる。

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2019.12.22

美術館に乾杯! 興福寺 その二

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    北円堂(1210年 国宝)

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     国宝‘弥勒菩薩坐像’(1212年)

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        運慶の国宝‘無著立像’(1212年)

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       康慶の国宝‘行賀坐像’(1189年)

興福寺境内にある北円堂と南円堂はいつ行ってもみられるわけではない。
そのため、毎年10月17日に公開される南円堂はまだ中に入ったことが
ない。これに対し北円堂のほうは春と秋に開扉されるので奈良博の特別展
にでかけたおりタイミングがあい‘弥勒菩薩坐像’や運慶がつくった‘無著’と
‘世親’の肖像彫像をみることができた。

六角形や八角形の建物はただ丸い建物よりは見た目に変化がありじっとみ
てしまう。北円堂も八角形。内陣はこじんまりとしており真ん中に置かれ
ている‘弥勒菩薩坐像’をぐるりとまわってみる。この仏像も国宝に指定され
おり安定感のある弥勒像となっているが、どうしても後ろにいる‘無著’の
磁力の強さに引き寄せられる。

顔の形が平べったいイメージが強い無著をみてすぐ連想するのはヤンキー
スのマー君。2年前東博で開催された運慶展で再会しその思いを強くした。
無著はインドの僧だが、マー君と似ているためすごく愛着を覚える。この
ため弟の世親には悪いが見ている時間が短くなる。

縁がない南円堂なのになかにある法相六祖を運慶展で運よくめぐりあった。
6人の僧侶のなかでそのリアルな表現がもっとも印象深かったのが‘行賀’。
ぎょろっとした垂れた目が忘れられない。僧の個性的がでているが、こう
いう顔をした人は多くの人が集まるところへ行けば出会えるような気が
する。

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2019.12.21

美術館に乾杯! 興福寺 その一

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  興福寺東金堂(1415年 国宝)と五重塔(1426年 国宝)

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        国宝‘阿修羅立像’(734年)

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    国宝‘薬師如来像頭部’(685年)

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      国宝‘金剛力士立像 阿形’(12~13世紀)

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      国宝‘天燈鬼立像’(1215年)

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      国宝‘龍燈鬼立像’(1215年)

東大寺とくらべて興福寺は奈良博へ行くとき必ずその横を通るからとても
馴染み深い。ここではまずお馴染みの五重塔と東金堂をみて、そのあと国宝
館へと直行する。気がはやるのは興福寺のシンボルであるとともに仏像の
大スター的な存在である‘阿修羅立像’との対面が待っているから。

仏像だが女優やタレント、まわりでみつけた美しい女性の肖像彫刻に見立て
もおかしくない。ふっくらした小顔に目、鼻、口がじつにバランスよくおさ
まっている。昔は若くして亡くなった女優の夏目雅子を連想したが、今なら
誰だろうか。この頃は小顔の女性が多くなってきたからひとりやふたりぐら
いはでてきそうな気がするが。

存在感抜群の‘薬師如来像頭部’にも圧倒される。はじめてお目にかかったと
きの印象は一家をとりしきる大祖母ちゃんのイメージだった。最後は息子
夫婦に‘この話はこうしなさい!’とびしっという。そういう年はとっても賢
い老人は世の中にたくさんいる。

‘金剛力士立像 阿形’は東大寺南大門の‘阿形’と並んで激しい感情表現では際
立つ作品。注目すべきは複雑な手の動き。ひねりがはいっているので体全体
に力強さだけでなく躍動感が生まれている。さらに腰から下につけている
衣裳が風で横になびいているのも見落とせない。

国宝館にある仏像はバラエティに富んでいる。ガツンとやられるのが‘天燈鬼’
と‘龍燈鬼’。頭がやけに大きい天燈鬼は体をぐいっと傾け‘ワッ,ワッ、’と声
をあげている。ユーモラスなことこの上ない。そして、上目づかいの可愛い
龍燈鬼。すぐにでもゆるキャラ専門の芸能プロダクションの稼ぎ頭になり
そう。

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2019.12.20

美術館に乾杯! 東大寺 その三

Img_20191220221601      国宝‘誕生釈迦仏立像’(8世紀)

 

Img_0001_20191220221601     国宝‘四天王立像 増長天’(8世紀 戒壇堂)

 

Img_0002_20191220221701     国宝‘四天王立像 広目天’(8世紀 戒壇堂)

 

Img_0004_20191220221701     国宝‘重源上人坐像’(13世紀)

 

Img_0003_20191220221701         快慶の‘地蔵菩薩立像’(重文 13世紀)

 

美術に興味をもつと作品の美しさや力強さに心を打たれ大きな感動を覚えるが、宗教関連のものだとキリストの物語や釈迦の生涯についての知識が積み重なっていく。例えば、東大寺にある‘釈迦誕生仏立像’にお目にかかると釈迦の最初のお話にふれることができる。釈迦は母摩耶夫人の右腋から生まれるとすぐに7歩あるいて、天と地を指し‘天上天下唯我独尊’と唱えた。笑っているような子どもの顔をみるたびにこの言葉が頭のなかで響く。

大仏殿から左のほうに歩いてすぐのところにある戒壇堂でみた四天王の塑像は最高の瞬間だったかもしれない。目をかっと開いて威嚇するのが増長天と持国天、そして鋭い目でじっと遠くをみているのが広目天と多聞天。4人はみな足で邪鬼を踏みつけている。強く印象に残っているのが右手をあげ大声をだしてパワー全開をアピールしている増長天。こんな迫力のある写実表現が天平時代に生まれたのだから日本の彫刻はまったくスゴイ!

木造の肖像彫刻では鎌倉時代の初期につくられた‘重源上人坐像’は突出した写実性をみせている。86歳でその生涯を閉じた重源は25年にわたって東大寺再興に尽した。その不屈の精神が顔に出ている感じ。あまりにリアルな姿なのでタイムスリップして今重源と会ってるような気分。この偉いお坊さんはこんな顔をしていたのだろう。

3点ある快慶の彫刻のなかでとくに魅せられているのが‘地蔵菩薩立像’。注目は彩色された衣に施された切金模様。緻密な描写はまるで仏画に描かれた文様をみるよう。2年前奈良博で快慶展に運よくめぐりあい、ますます類まれな才能を発揮する快慶の彫刻に惹きこまれていく。この地蔵菩薩も傑作のひとつ。

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2019.12.19

美術館に乾杯! 東大寺 その二

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        国宝‘不空羂索観音立像’(8世紀)

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    国宝‘日光仏立像(右)・月光仏立像(左)’(8世紀)

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       国宝‘執心金剛神立像’(8世紀)

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       国宝‘金剛力士立像 阿形’(8世紀)

大仏殿の右手にある法華堂(国宝)は天平彫刻の宝庫で美術本に載っている
仏像がずらっと並んでいる。目を惹くのが真ん中の‘不空羂索観音立像’。3つ
の目があることはにわかには気づかないが、手が多いことはわかる。全部で
8つ。千手観音やこの不空羂索観音をみるたびに手をいっぱい持つという
発想はかなりのシュール的だと思う。多くの手を使って同時に色々なことを
やってのけるというのはすごく快感にちがいない。

塑造の‘日光仏・月光仏’は後ろの大きな不空羂索観音の対比でみると子どもの
ような感じ。でも、じっとみていると静かな雰囲気をたたえた姿にだんだ
ん嵌ってくる。目が細いため優しさと厳しさないまでになったイメージがあ
り手を合わせられるともう安易に近づけない。まさに仏像そのもの。

‘執金剛神立像’はまだ本物にお目にかかってない。これは12月16日のみ扉
が開けられる秘仏のため、ずっと縁がないままできた。国宝の追っかけを何年
も続けているが、こういう対面の日時が限られているものはなかなか実現し
ない。口を大きくあけ忿怒の形相で威嚇する顔はもちろんのこと赤と緑で彩色
された文様にも興味を掻き立てられる。もっとも鑑賞欲を刺激するこの神将像
をみないと国宝彫刻に済みマークがつかない。だから、なんとかしたい思いを
持ち続けている。

法華堂でもう一体視線が向かうのがある。右手をあげ頭の髪の毛をびっと立て
ている‘金剛力士立像 阿形’。‘怒髪天をつく’というフレーズがインプットされ
ているとこの彫刻の造形からその意味が腹にストンと落ちる。怒りがマックス
に達するとこのように髪が立ってくる。美術品に接するといろいろなことがわ
かってくる。これも美術の力。

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2019.12.18

美術館に乾杯! 東大寺 その一

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    東大寺大仏殿(1709年 国宝)

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     国宝‘廬舎那仏坐像’(752年)

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     運慶・快慶の国宝‘金剛力士立像 阿形像’(1203年)

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       国宝‘吽形像’(1203年)

2年前の春、奈良博で行われた快慶展をみるため奈良へ行ったとき久しぶり
に東大寺まで足をのばした。そして大仏をみるつもりだったが、入口の南
大門にある金剛力士像をみてその先に進むのは止めにした。理由は外人観光
客が大勢いて予想を上回る混雑だったから。この状況で大仏殿に突入すると
予定の時間の2倍かかることが容易に推測でき京都へ戻るのが遅れるしまう。
そのため、宝物館だけですますことにした。

巨大な大仏をみたのは2度だったか、修学旅行のときだけだったかどうもはっ
きりしない。回数が少ないのに廬舎那仏が目に焼きついているのはとにかく
この仏像が圧倒的に大きいから。高さは15mくらいある。しかも鋳造仏
だからどっしりとしている。この重厚感は半端ではない。これまで日本に
存在するものでその高さや大きさで感動したのは3つ。富士山、阿蘇山と
東大寺の大仏。富士山はちがうが阿蘇と大仏は修学旅行での体験。もう一回
くらいは大仏の大きさを実感してみたい。

東大寺の正面に建つのが南大門(国宝)。この左右に怖い形相でどーんと
向かい合っているのが金剛力士像の‘阿形像’(むかって左)と‘吽形像’(右)。
迫力では口をつむんでいる吽形像(うんぎょう)より口をあけて歯をみせ
大きな目をかっと見開いている阿形像(あぎょう)のほうに軍配があがる。
そして、筋肉の盛り上がりはともに今筋トレしている人が裸足で逃げるほど
の強靭さ。こういう過剰とも思える筋肉描写を生身の人物から生み出したと
いうのが驚き。

ミケランジェロが筋肉隆々の‘ダヴィデ’をつくったのが16世紀の初め。
運慶や快慶たちがプロジェクトをつくって木造の阿形・吽形像を完成させた
のが1203年。ミケランジェロより300年も前に日本では高さが8mも
ある巨大な人物彫刻が誕生していた。源氏物語絵巻同様、世界に誇れる傑作
彫刻である。

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2019.12.17

2019年 感動の展覧会 ベスト10!

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     ‘コートールド美展’(東京都美)

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    ‘佐竹本歌仙絵と王朝の美’(京博)

今年出かけた展覧会は44回。この中からベスト10を選ぶのはあまり悩
まない。母数が少ないから感動する展覧会に対する印象が強くなるという
ものでもなく、多くの美術ファンの関心を集めたものは深く心に刻まれ
一生の思い出となりそう。

★クリムト展       4/23~7/10    東京都美
★奈良四寺のみほとけ   6/18~9/23    東博
★ジュリアン・オピー展  7/10~9/23    東京オペラシテイ
★コートールド美展    9/10~12/15   東京都美
★バスキア展       9/21~11/17   森アーツセンター
★佐竹本歌仙絵展     10/12~11/24  京博
★やまとうた       10/12~12/15  サンリツ服部美
★正倉院の世界      10/14~11/24  東博
★幻の築地明石町     11/1~12/15   東近美
★大浮世絵展       11/19~1/19   江戸東博

西洋絵画では春はクリムト展、秋はコートールドの印象派コレクションが
最高に楽しかった。そして、現代アートに刺激的な作家とのめぐり会いが
あった。久しぶりにでかけた東京オペラシティアートミュージアムの広い
展示室にどーんと飾ってあったジュリアン・オピーの‘歩く人たち’の絵画
と動画(アニメ)。都市がもつ快適で明るいイメージが表現されており、
強く共鳴した。また、猿の顔を連想させるバスキアの作品も目に焼きつく。

今年は日本美術が大豊作だった。京博が佐竹本歌仙絵をなんと31点も集
めてきてくれた。拍手々!本当に夢のようだった。そして、サンリツ服部
美で女流歌人の‘中務’が初公開されたのも嬉しいオマケ。その可愛い表情
に200%KOされた。夢中にさせる女性画はまだ続く。東近美が手に入れ
た鏑木清方の幻の‘築地明石町’。この清方の代表作と遭遇できるとは思っ
てもいなかった。一体どこにあったのか?

来年の1/19まで開催される‘大浮世絵展’で摺りのいい歌麿がここにもあ
そこにも展示されている。これは大歌麿展と呼んでも言い過ぎでない。
都合3回出かけることになりそう。また、写楽もすごいのがあるからまわ
りの美術好きにPRしまくっている。

秋の展覧会シーンで西の話題沸騰が佐竹本歌仙絵なら東は正倉院のお宝。
特別目に気合がはいったのは‘螺鈿紫檀五絃琵琶’。これをみるのに25年
かかった。いいめぐりあわせだった。ミューズに感謝!
また、東博であった‘奈良大和四寺のみほとけ’にも癒された。こういう
仏像の企画が毎年あることを願いたい。

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2019.12.16

美術館に乾杯! 長谷寺・円成寺

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     長谷寺 本堂(8世紀 国宝)

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      ‘十一面観音立像’(重文 16世紀)

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    国宝‘法華経一品経’(13世紀)

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    円成寺

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     運慶の国宝‘大日如来坐像’(1176年)

長谷寺と室生寺との距離は短いのでクルマで続けて訪問したが、そのルート
は記憶に残っていない。長谷寺は道の両側に並ぶ土産物屋をきょろきょろ
しながら進むと途中から飛行機に乗りこむとき通る通路に角度がついている
ような箱がでてくるのでそこをどんどん登っていくと本堂に到着した。

ここにある本尊‘十一面観音立像’の巨大さに200%驚いた。総高さ10m
をこえる仏像なんてそうない。衝撃の強さは東大寺の大仏級の大きさ、しか
も十一面観音だから全体の見栄えがひとつのお顔よりは断然いい。そのため、
の仏像の印象がかすんでしまった。

鎌倉時代初期に制作された装飾経、‘法華経一品経’は鮮やかな色彩が目に焼
きついている。画像は‘安楽行品’の見返しと経文の冒頭部分で善財童子と
優塡王(うでんおう)を従えて獅子に乗る文殊菩薩が飛来する場面が描かれ
ている。金箔地に目の覚める群青や緑青や橙色。これほど色彩に力を感じる
経巻が残っていると嬉しくなる。

東大寺から三重県の方向にクルマで1時間も走ると着いたような気がする
円成寺。ここを訪れたのは運慶(?~1223)が25歳の頃つくったと
いわれる‘大日如来坐像’をみたかったから。体が引き締まった感じでその
均整の取れたプリポーションはとてもカッコいい。8年前金沢文庫で再会
し、2017年に東博で開催された運慶展でもお目にかかった。何度みても
感動する。

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2019.12.15

美術館に乾杯! 室生寺

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         室生寺 五重塔(9世紀前半 国宝)

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     室生寺 金堂(867年 国宝)

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          国宝‘十一面観音菩薩立像’(9世紀後半)

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    国宝‘釈迦如来坐像’(9世紀)

今年6月から9月にかけて東博で嬉しい展示があった。その特別企画‘奈良
大和四寺のみほとけ’に集結したお寺に室生寺が入っていた。ここをクルマ
で訪れたのがいつだったかと思いながら会場をぐるっと回っていると時の
流れの痕跡は戻ってこなかったが、こじんまりしているが全体の形が目に
心地いい五重塔や仏像があったことを思い出した。

この展覧会の目玉の一つになっている‘十一面観音菩薩立像’はふっくらした
頬がとてもチャーミング。芝居などで脇役が主役を食うことがときどきあ
るが、この十一面観音像もそんな感じ。この仏像が安置されているのは金堂。
中心が国宝に指定されている高さが2.4mもある‘釈迦如来立像’で十一面
観音は左端のポジション。高さ、体の幅からみると釈迦如来の子どものよう
にみえる。

子どものイメージとしては中学生の女の子。気になるのは顔の大きさ。小顔
である。時代が変わって今は日本人の若い女性でもびっくりするくらい小顔
の人をよくみるようになった。この十一面観音をはじめてみたときはとくに
顔に関心をもってみたわけではないが、6月に再会した際は小顔の女性が
ダブってみえた。

金堂の横にある弥勒堂におさまっているのが‘釈迦如来坐像’、対面するのは
2度目のはずだが、昔のことはとんと忘れている。だから、初対面のような
もの。ぱっとみるとお相撲さんを連想させる。相撲は小学生のころから楽し
んでいるから数多くの力士が記憶にインプットされている。その顔データ
ベースからいうとこういう顔をした力士が多い。横に座らせると釈迦如来の
ボリューム感のある姿がより際立つかもしれない。

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2019.12.14

美術館に乾杯! 法隆寺・中宮寺 その三

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     夢殿(8世紀 国宝)

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       国宝‘救世観音立像’(7世紀)

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      中宮寺

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      国宝‘菩薩半跏像’(7世紀)

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      国宝‘天寿国繍帳’(622年)

法隆寺東院伽藍の中心建築である夢殿は八角形の円堂。名前といいその形と
いい何かロマンを感じさせるので記憶に強く刻まれている。このなかの厨子
に納められているのが聖徳太子と等身の御影(みえい、肖像)といわれる
‘救世観音立像’。やや長い顔で幅広の鼻と大きな口が印象的。そして、
視線がじっと追うのが突起物がでて左右対称に広がる天衣。この木彫彫刻
は百済観音像とともに法隆寺のお宝中のお宝である。

夢殿の目と鼻の先にある中宮寺にもすばらしい仏像がある。半跏思惟像で
有名な‘菩薩半跏像’。石段を数段上がって本堂に入るとお目当ての姿をした
仏像が現れた。これはまさに‘ピーク・エクスペリエンス(最高の瞬間)’だ
った。片足を組んで頬杖をつき静かに目を伏せている。黒く光沢を放つ神秘
的なお顔は笑いを含んだようでもあり魅了される。

京都の広隆寺にある同じポーズをとる‘弥勒菩薩半跏像’にもお目にかかったが、
これは新羅からの伝来したものなので同じ半跏像でも中宮寺のものとはだい
ぶイメージが異なる。勝手な妄想だが、フィギュアの浅田真央をモデルにし
て横で同じような恰好させれば中宮寺の仏像との美しいコラボが実現する。

国宝展が開催されるとよく声がかかる‘天寿国繍帳’は飛鳥時代の高い刺繍技術
がみられる貴重なお宝。これは聖徳太子の妃橘大郎女(たちばなのおおいら
つめ)が太子が往生した天寿国をしのんでつくらせた刺繍の帳(とばり)。
月の兎や甲羅に漢字が書かれた亀、鳳凰、蓮華などが登場するがもっとも惹か
れるのは中央にいる顔が白く緑の衣装を着ている女性。大きな目にくらっと
くる。

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2019.12.13

美術館に乾杯! 法隆寺 その二

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         国宝‘百済観音像’(7世紀 大宝蔵院)

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     国宝‘玉虫厨子’(7世紀 大宝蔵院)

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       ‘捨身飼虎図’(須弥座右側面)

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        国宝‘九面観音像’(唐時代 7~8世紀 大宝蔵院)

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        国宝‘夢違観音像’(7~8世紀 大宝蔵院)

法隆寺を楽しむ一般的なまわり方はまず西院伽藍で五重塔、金堂、大講堂を
みて、次は大宝蔵院で有名な‘百済観音像’と対面、そして、最後は東院伽藍
に向かい美しい八角円堂の夢殿を堪能する。

パリのルーヴル美で10年くらい前(?)に展示された‘百済観音像’は来年
東博で公開されることが決まっている(3/13~5/10)。このびっくり
するほど長身の観音菩薩像が東京でみられるのは嬉しい話である。前回お
目にかかったのは25年前だったはずだから、また別の印象がめばえるかも
しれない。

‘玉虫厨子’は東博であった国宝展(2014年)に出品されたので、単眼鏡
をフル稼働させ宮殿部分に使われ今でもわずかに残っている玉虫の緑色の翅
を目に焼きつけた。釈迦の前世の物語をインドを旅したとき彫刻でよく目に
したが、‘捨身飼虎図’はそのひとつ。飢えた母虎のために摩訶薩埵太子が崖下
へ身を投げ自分の肉体を虎に食わせるというショッキングな場面。

数多くある仏像のなかで顔がふっくらしているものはどこか親近感がわく。
中国の唐の時代に白檀を使ってつくられた‘九面観音像’は小さな像だが頭の
八面も興味深く大変魅了される。また、白鳳時代の金銅仏の傑作‘夢違観音像’
も心を打つ。悪夢を吉夢に変えてくれるスーパーパワーの持ち主だから有り
難い存在。仏像に縁があるといろいろご利益がある。

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2019.12.12

美術館に乾杯! 法隆寺 その一

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Img_0001_20191212235201       法隆寺 五重塔 金堂(7世紀 国宝)

Img_0004_20191212224701      回廊(7世紀末 国宝)

 

Img_0003_20191212224701     国宝‘釈迦三尊像’(623年 金堂)

 

Img_0002_20191212224701     国宝‘広目天立像’(7世紀 金堂)

 

Img_20191212224701     国宝‘塔本塑造 北面’(711年 五重塔)

 

世界遺産となっている法隆寺を訪問したのは2回。はじめは京都・奈良への
修学旅行、2度目はこれからずいぶんと間が開いた。社会人になるとなかな
か旅行ができないが、いくつの歳のころ出かけたかはもう忘れてしまった。
そのため、また行くとなるとガイドブックのお世話になりそう。

西院伽藍は中門から入ると右に金堂、左に五重塔が現れる。視線が向かうの
はやはり五重塔、はじめてみたときは‘これが法隆寺の五重塔か!’という思い
がして気持ちが高ぶった。金堂と五重塔をぐるっと囲んでいる回廊にある
太い柱もすごく印象に残っている。胴の中央の膨らみ具合がじつに頼もしく
安定感のある建築物を実感する。

金堂の見どころはなんといっても止利仏師がつくった‘釈迦三尊像’、これは
一度どこかの美術館で行われた特別展でみたことがある。四隅に置かれた
四天王像はお馴染みの多聞天、持国天、増長天、広目天。5年前の国宝展
(東博)には代表で広目天が展示された。下にいる邪鬼のとぼけたような
顔がおもしろい。

五重塔のなかにある塔本塑造で北面の涅槃像土が強い磁力を放っている。
山岳を背景に入滅する釈迦の手前で号泣する弟子たちの姿は胸にぐっとく
るほどリアル。この真に迫る泣き顔は忘れられない。

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2019.12.11

美術館に乾杯! 大和文華館 その三

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     尾形光琳の‘流水図乱箱’(18世紀前半)

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   尾形光琳・乾山の‘銹絵楼閣山水図四方火入’(18世紀)

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    尾形乾山の‘色絵夕顔文茶碗’(18世紀)

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    英一蝶の‘僧正遍昭落馬図’(17世紀後半)

ヨーロッパの美術館でもアメリカの美術館でも印象派の作品を集めたがる。
とくにアメリカは古典絵画の市場には後から参入したため思うように名画
が手に入らない分、モネやゴッホらの絵を夢中になって購入する。
日本画の場合でみてみると、ブランド美術館が熱心に蒐集しようとするの
が琳派の絵画や工芸品。大和文華館にも尾形光琳(1658~1716)
と尾形乾山(1663~1743)のいい絵とやきものがある。

光琳・乾山の兄弟は着物の販売を商いとする家に生まれたので、小さい
ときからみ着物の絵柄となるモチーフや文様には目が慣れている。そのた
め、‘流水図乱箱’で表現した流水のフォルムが光琳のしなやかな頭のなか
からふっと浮かんでくるのかもしれない。まるで現代アートをみている
よう。

光琳が絵を担当し、乾山がそれをやきものに仕上げた合作は角皿など数
多くあるが、‘銹絵楼閣山水図四方火入’もそのひとつ。光琳の山水画はぱっ
とみると雪舟の絵を彷彿とさせる。器の形に合わせて画題を選ぶのは光琳
の引き出しの多さを物語っている。

乾山の‘色絵夕顔文茶碗’はお気に入りの一品。黒地に白で夕顔の花を大きく
描き、それと負けないくらいのインパクトで緑の蔓を寄せていく。黒、白、
緑のコントラストがとても洒落ており強く印象に残る。見慣れた形の茶碗
に大胆な色彩の取り合わせをもってくるという発想が時代を突き抜けて
いる。乾山に乾杯!

光琳より6年早く生まれてきた英一蝶(1652~1724)は風俗画の
名手。人物をおもしろ可笑しく描くのはお手のもの。‘僧正遍昭落馬図’は思
わずニコッとなる。落馬した原因は遍昭が道端に咲く女郎花(おみなえし)
に見惚れていたから。疾走する馬と僧衣がまくれ足が跳び上がっている
遍昭の姿が平行的な位置取りになっているため、落馬を実感しやすい。
一蝶は動的描写が天才的に上手い。

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2019.12.10

美術館に乾杯! 大和文華館 その二

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 李迪の国宝‘帰牧図’(南宋時代 12~13世紀)‘騎牛’(上)‘牽牛’(下)

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    雪村の‘呂洞賓図’(重文 室町時代 16世紀)

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      文清の‘維摩居士図’(重文 1457年)

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    周文の‘山水図屏風’(重文 室町時代 15~16世紀)

中国絵画の名品を集めた特別展をこれまで根津美などで4回くらい体験した。
出品作の定番になっているのが南宋時代の前~中期にかけて活躍した李迪の
‘帰牧図’。中国絵画は画面全体が茶色地のことが多く細部がとらえにくいと
ころがあるが、単眼鏡でしつくこみると高い技巧を駆使して描かれているこ
とがわかってくる。

興味深いのは右幅の‘騎牛’、牧夫は牛の上に乗り雉子をつるした棒を手にも
ちしゃがんでいる。こんな格好で牛に乗るの?という感じだが、牛はこの
オッサンの乗り方にはおかまいなくほいほい進んでいる。上手いなと思
わせるのは柳の枝を牛と牧夫を覆うようにひきのばして描いていること。

毎日手や足を動かす体操をルーチンの運動として行っているが、首をまわ
すのは軽め。だから、雪村の‘呂洞賓図’をみると首が痛くなるのではない
かと心配になる。これほどまで首をまげてみているのはちょっと小ぶりの
龍。呂洞賓を頭の上に乗せている龍とくらべると圧倒的に小さい。
さて、これから龍同士の主導権争いがはじまるのだろうか。

文清は大徳寺の26世住持に登用された絵師。‘維摩居士図’はとても生感覚
のある肖像画。このリアルな人物描写はカラヴァッジョの宗教画を思い起
こさせる。カラヴァッジョがローマのどこにでもいる人たちをモデルに使
いお馴染みのキリストや聖人の物語を表現したのと同じように、文清は
眉間に深い皺をつくる男を維摩居士に見立てて描いている。

周文の‘山水図屏風’は10点くらいある山水図のなかでは淡彩を使わず墨だ
けで描いたもの。余白を多くとり、角々した岩を塊にして配置する画面構成
はシンプルで素朴なところがある。靄がかかっているが、ドローンをとばし
てもなんとか動かせそう。

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2019.12.09

美術館に乾杯! 大和文華館 その一

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        大和文華館

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   国宝‘婦女遊楽図屏風(松浦屏風)’(江戸時代 1640年代)

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    国宝‘一字蓮台法華経’(12世紀)

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    国宝‘寝覚物語絵巻’(12世紀後半)

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    ‘婦人像’(重文 桃山時代 16世紀)

日本画でも西洋画でもときどき感激がマックスになる作品に出会うことが
ある。大和文華館でそれがおきたのは‘婦女遊楽図屏風’(六曲一双)と対面し
たとき。ちょうど修復が完成した時期だったので鮮やかな色彩で輝いて
いた。

描かれた遊女たちは等身大の大きさ。だから、三味線を弾いたり文を読ん
だりと思い思いのポーズをとる遊女たちが目の前いるようだった。そして、
目が吸いこまれていくのが身に着けている衣裳の模様。日本の着物が生み
出す晴れやかで生き生きした意匠の凄さをみせつけられた。5年前、
大浮世絵展で再会したが、時間が経ったせいか色の力が少し落ちていた。

12世紀につくられた‘一字蓮台法華経’は印象深い装飾経の名品。金泥で描
かれた円の下に蓮台を彩色しその上に経文が墨書されている。漢字と蓮の
コラボがぴたっときまっているのがすばらしい。右の見返し絵には法会を
とりおこなう僧侶と男女。大勢描かれているので法会の雰囲気がひしひしと
伝わってくる。

ここには国宝の絵巻がもう一点ある。‘寝覚物語絵巻’。これは特別な展覧会
にしかでてこないが、2014年に東博で開催された国宝展に出品された。
画像は一段で右には枝のフォルムが気を引く満開の桜のもとで楽器を奏でる
3人の童子が描かれている。左に視線を移すと角々した屋敷のイメージと
なり建物を高い視点からみた俯瞰の光景に変わる。こういう画面構成はおも
しろい。

‘婦人像’ははっとさせられるほど存在感がある。この武将の妻はおはぐろを
し眉をそり落としている。ふっくらとした顔つきだが前をじっとみつめる目
の鋭いこと。こんないい女性肖像画はなかなかみられない。

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2019.12.08

美術館に乾杯! 松伯美術館

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    上村松園の‘鼓の音’(1940年)

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    上村松園の‘花がたみ’(1915年)

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    上村松篁の‘熱帯花鳥’(1963年)

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    上村淳之の‘飛鴨’(1986年)

京都にくらべると奈良の街についての方向感覚はだいぶ低下する。京都か
ら奈良まで行くのに便利な近鉄線ならよく知っているのでドギマギしないが、
奈良と大阪をつなぐ近鉄線はとたんに心もとなくなる。これに乗り西の方へ
進み学園前駅で下車すると二つの美術館へ行くことができる。距離的に近い
のが大和文華館でタクシーを利用したほうが樂なのが松伯美術館。

松伯美の建物の形は記憶が薄れているが、すぐ横に池があったことはよく
覚えている。ここは上村松園(1875~1949)、松篁(1902~
2001)、敦之(1933~)の親子三代の作品を展示している美術館
で1994年に開館した。2010年、大阪の国立国際美でやっていた
ルノワール展をみるため奈良から移動する途中に折角の機会だから寄って
みた。

11点ある松園で一番のお気に入りは‘鼓の音’。構図は絵の出来映えを左右
する大きな要素であるが、この絵は鼓をたたく女性がきれいに三角形構図
におさまっている。こういう画題を絵にするとき松園は瞬間的にこの構図
がひらめいたのだろうか。鼓の音色を生で聴くことはほとんどなく昔
NHKEテレの能舞台をみせる番組で耳にしたくらい。その小気味いい鼓の
音には関心がある。だから、銀座シックスの地下にできた能楽堂へ一度足
を運ぼうと思っている。

‘花がたみ’は松園の回顧展には欠かせない一枚。歌舞伎好きの友人が今週
京都の南座の舞台をみにいくと忘年会で語っていたが、この絵に描かれて
いる紅葉のように赤く染まっていることだろう。愛する人が天皇になるた
め別離を余儀なくされたこの女性の精神のバランスを崩した姿をみるとつ
いミレイの‘オフィーリア’を連想する。気が変になると無表情になること
をメンタル病院で教えてもらった松園は能面のイメージで描いた。

松園の息子の松篁も母親同様文化勲章を受章した。花鳥画の名手だが、
ほかの人にはない斬新な鳥も登場する。‘熱帯花鳥’はハワイへ写生旅行を
したとき目にした光景をモチーフにしたもの。目の覚める赤の花びらと尾
っぽが大きな円を描くように曲がっている鳥が強烈なインパクトを放って
いる。

父親松篁と同じ花鳥画家の道を歩んできた敦之は今年86歳、毎年期待し
ている文化勲章がなかなか実現しない。作品のすばらしさからすると受賞
に値すると思うのだが、、‘飛鴨’は鴨はこんな風な姿で飛んでいたなと、
イメージさせるところがこの絵の魅力。敦之は鳥の飛翔を表現するのが
本当に上手。

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2019.12.07

美術館に乾杯! 奈良県立美術館

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        曽我蕭白の‘酒呑仙人図’(18世紀)

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        長澤芦雪の‘幽霊図’(1794~99年)

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        上村松園の‘春宵’(1936年)

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 池田遙邨の‘けふもいちにち風を歩いてきた 山頭火’(1987年)

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    富本憲吉の‘赤地金銀彩羊歯模様蓋付飾壺’(1953年)

奈良国立博物館があるところから道路をはさんで向こう側にあるのが奈良
県立美術館。訪問したのはここで応挙と芦雪のダブル回顧展(2006年)
が開催されたとき。長澤芦雪(1754~1799)の作品をまとまった
形でみたのははじめてだったので、1点々よく覚えている。師匠の応挙同様
、芦雪にも幽霊の絵がある。大阪の藤田美術館が所蔵する三幅対のものよ
りこの幽霊のほうがグロテスクで不気味。

曽我蕭白(1730~1781)の描く人物は寒山拾得のような中国画に
おける定番の画題とともに蕭白独自に作り出した‘酒呑仙人図’もある。これ
ほどだらしなく甕のお酒を飲む姿は仙人というよりただのアル中のオッサン。
着ている衣服の輪郭がくるくる巻きの線で表現されているのは酒で目が回っ
てるこの酒好きにはピッタリかもしれない。

上村松園(1875~1949)の代表作‘序の舞’が描かれたのは1939
年(昭和11)で松園が64歳のとき。‘春宵’はこの画業の充実した同じ年
の作品。料亭の廊下で仲居が芸妓にそっと耳打ちしている。‘さっき太郎の
旦那が入って来るのをみたよ’とかなんとかつぶやいているのだろうか。

池田遙邨(1895~1988)は晩年にとりくんだ‘山頭火シリーズ’を亡
くなるまで全部で28点仕上げた。‘けふもいちにち風を歩いてきた 山頭
火’はその一枚。よほど強風なのか背中に受ける風の圧力によって薄と一緒
に山頭火の体も折れ曲がっている。俳句と絵が一体になった表現は心を
打つ。

奈良県安堵村の大地主の家に生まれた富本憲吉(1886~1963)は
人の真似をせず自分独自のモダンな模様によって多くのやきものファンに
支持された。そのシンボルが金銀で彩色された羊歯の模様。壺や皿、瓶、
筥に花をうえつけるこの模様に200%魅了されている。ここにある‘赤地
金銀彩羊歯模様蓋付飾壺’も傑作。

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2019.12.05

美術館に乾杯! 奈良国立博物館 その三

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        国宝‘牛皮華鬘’(平安時代 11世紀)

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         ‘一字金輪曼荼羅’(重文 平安時代 12世紀)

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         ‘千手観音像’(重文 平安時代 12世紀)

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         ‘親鸞聖人像’(重文 鎌倉時代 13~14世紀)

京博に対する好感度が大変高いのは期待する絵師の回顧展にチャレンジして
くれるから。雪舟、伊藤若冲、曾我蕭白、狩野山楽・山雪、海北友松、
そして、昨年は待望の池大雅。一方、奈良博で楽しませてもらってるのは
仏教美術、過去2度大きな特別展に遭遇した。1995年の‘日本仏教美術
名宝展’と2007年の‘美麗 院政期の絵画’。このとき購入した図録は最高
のテキストで絶対手放せないお宝になっている。

国宝に指定されている‘牛皮華鬘’をはじめてみたときは仏堂の荘厳具の華麗
さにとても魅了された。これは牛の皮に漆を塗り固めたものに彩色を施した
もの。透かし彫りになっていて極楽浄土に棲むとされる想像上の鳥、迦陵
頻伽(かりょうびんが)が文様として描かれている。この鳥は上半身は人、
下半身は鳥の形をとる。ギリシャ神話ではケンタウロスのように勇ましい姿
で登場するが、東洋では美しさが気を引くハイブリッドなボデーで現れる。

この博物館へ足を運んだお陰で曼荼羅図にも目が慣れてきた。‘両界曼荼羅’、
‘星曼荼羅’、‘法華曼荼羅’、ここにあるのは‘一字金輪曼荼羅’、‘大仏頂曼荼羅’、
‘阿弥陀浄土曼荼羅’の3つ。見ごたえのあるのは赤い円相内に大日金輪が大
きく描かれている‘一字金輪曼荼羅。とくに目が寄っていくのが下の7頭の
獅子。ぐるっと回って座っているので立体感がある。

‘千手観音像’は仏像にくらべると千手のイメージが弱いが、観音様の体を囲
むようにでている多くの手はかなりシュール感覚に映るのでじっくりなが
めていると刺激が増してくる。頭は十一面で、手は千の数もある。やはり
仏のパワーは数の多さに比例するので千の手は大きな威力を発揮する。

‘親鸞聖人像’は意外に見る機会がなく、まだ1回しかお目にかかってない。
人物を表す絵画と彫刻のなかで僧を描いたものはリアル感があるので親鸞
聖人もこんな顔をしていたのかなと、しげしげとみてしまう。

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2019.12.04

美術館に乾杯! 奈良国立博物館 その二

Img_0001_20191204221501       国宝‘刺繍釈迦如来説法図’(唐時代 8世紀)

 

Img_20191204221601         ‘普賢菩薩像’(重文 平安時代 12世紀)

 

Img_0002_20191204221601         周文の国宝‘山水図’(1445年)

 

Img_0003_20191204221601        ‘力士立像’(重文 奈良時代 8世紀)

 

刺繍で描かれた仏画をみる機会は数少ないため、‘刺繍釈迦如来説法図’はすご
いものをみたという思いが強い。制作が完了するまでどれだけの時間と労力
がかかったことか。菩薩や弟子たちに囲まれた中央の朱衣の釈迦如来をみる
と、その強烈な赤に刺激されてエル・グレコの傑作‘聖衣剥奪’が目の前を
よぎる。

いろんなヴァリエーションがある‘普賢菩薩像’。その違いが生まれるのは普賢
菩薩が乗る白い象の描き方が変わっているから。ボリュームのある象が一頭
だけ描かれているのは東博のものと同じだが、こちらの象のほうがだいぶ
大きいので綺麗な顔で描かれている普賢菩薩が食われてしまいかねない。

如拙と周文は室町時代に水墨画を描いた絵師としては突出した存在だった。
ともに相国寺の禅僧で同時代の絵師たちに大きな影響を与えた。‘山水図’は
余白を多くとり全体に靄がかかったような光景に形のいい枝ぶりをもつ松や
書斎、葦辺の舟がさらさらと描かれている。周文の作品は少ないので、この
絵に遭遇するのは貴重な体験である。

絵でも彫刻でも一度みたら忘れないものがある。‘力士立像’もそのひとつ。
視線が向かうのが顔のえらがはったようにみえる顎ひげ。また口のまわりの
立派な髭と太い眉毛も目に焼きつく。そのひょうきんな表情からはエネルギ
ッシュな動きが持ち味の力士のイメージが湧いてこない。いっそのこと
ゆるキャラをかかえる芸能事務所に登録しておくのがいいかもしれない。

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2019.12.03

美術館に乾杯! 奈良国立博物館 その一

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       奈良国立博物館本館

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       国宝‘十一面観音像’(平安時代 12世紀)

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      国宝‘薬師如来坐像’(平安時代 9世紀前半)

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    国宝‘地獄草紙 鉄磑所’(平安時代 12世紀)

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    国宝‘辟邪絵 天刑星’(平安時代 12世紀)

奈良にでかけるときは京都とセットのことが多い。まず京都でひとつか二つ
美術館をみてそのあと近鉄特急に乗りこむ。奈良駅には1時間ちょっとで着く
ので非常に樂。奈良国立博物館はここからは15分も歩くとみえてくる。
立派な建物の本館とその後ろに新館がある。お目当ての企画展は新館の2階
で行われる。そして、時間に余裕があるときは地下道を通って本館に移動し
平常展示されている仏像などを楽しむ。

東博で仏画というとすぐ白象に乗った‘普賢菩薩像’を思い浮かべるように、
‘十一面観音像’は奈良博のお宝を象徴するような作品。この観音さまは体を
少し斜めにしているが、これは頭にのっけてる十一面がぐるっとまわり立体
感をだしているのでこれをさらに印象づけるために演出したのであろう。
200%感動する仏画である。

9世紀前半につくられた‘薬師如来坐像’は国宝展が開催されるときの定番の
仏像。とても重厚感のある薬師如来像でふっくらしたお顔をじっとみてしま
う。意志の強そうな鼻と厚い唇、そして粒粒の突起物になっている螺髪が強
く目に焼きつけられる。まさにこれぞ仏像!という感じ。

美術本で強烈なインパクトを放つ絵に出会うと、本物をいつか見なくては思
う。そんな気にさせる作品がここには2つある‘地獄草紙’と‘辟邪絵’。
地獄草紙と餓鬼草紙は東博にも京博にもあるが、奈良博にあるこの2点がもっ
ともおもしろくゾクゾクさせる。地獄草紙の場面で目が点になるのが‘人間
ミンチ’、罪人が摺臼(すりうす)に頭から放り込まれ下からでてくるミンチ
肉にされている。これは究極の責苦、悪行を重ねたとはいえミンチにされて
はたまらない。

五幅ある‘辟邪絵’のなかでとてつもないパワーと怖さを感じるのが悪い鬼を
懲らしめる天刑星。忿怒の形相をしてでトウモロコシを食べるよう鬼を酢に
つけて食いちぎっている。よくみると手は4本、これなら効率よく悪さをす
る鬼をやっつけられる。長くみていると夢に出てきそうなのでそこそこで絵
から離れることにしている。

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2019.12.02

美術館に乾杯! 無量寺・串本応挙芦雪館

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      長澤芦雪の‘虎図’(重文 1786年)

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      長澤芦雪の‘龍図’(重文 1786年)

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      長澤芦雪の‘唐子琴棋書画図’(重文 部分 1786年)

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      円山応挙の‘波上群仙図’(重文 1786年)

和歌山の串本は潮岬がある本土最南端の街。ここの無量寺のなかにつくら
れた串本応挙芦雪館を2004年に訪問した。お目当ては長澤芦雪(1754
~1799)の‘龍虎図’。絵画好きだからどんなところにも足を運ぶ。建前
的にはそうだが、交通アクセスのことを考えると和歌山まで出かけるにはな
かなか踏ん切りがつかない。

ところがいい機会がめぐって来た。広島での勤務を終え横浜にクルマで帰還
することになったが、この際だから走行ルートを途中から南のほうへ向け
徳島の鳴門の渦潮と串本の芦雪の虎をみることになった。大遠征である。

無量寺の本堂が1786年に完成したのを機に障壁画が飾られた。描いたの
は長澤芦雪と師匠の円山応挙(1733~1795)。京都から派遣された
芦雪は‘龍虎図’、‘唐子琴棋書画図’、‘薔薇に鶏・猫図’を描き、応挙は現地に
は出向かず‘波上群仙図’を芦雪に託した。

‘龍図’はほかにも同じ描き方のものをみているのでさらっとみてしまうのに
対して、‘虎図’のほうはじっくりながめてしまう。おもしろいのはこの虎は
胴体は曲がっているが顔は正面向きになっていること。そして、この顔が
あまり怖くない。狩野山楽の虎のような獰猛さはまったく感じられず、
まるで大型の猫と対面しているよう。こんな愛嬌のある虎ならこちらもリラ
ックスして楽しめる。

子どもが絵描きの真っ最中のところを描いた‘琴棋書画図’は思わず口元が
緩む。絵の板を二人の子どもがしっかり支えている姿が微笑ましい。筆を
走らせている子ども絵師が仕上げようとしているのは木の枝にとまった烏。
なかなか気合が入っている。

応挙の‘波上群仙図’に登場するのは鯉に乗る琴高仙人と杖をつく鉄拐仙人。
二人とも中国画によくでてくる人物だが、波の上に描かれるのは珍しい。
応挙の頭のなかは相当シュール気分が宿っている。

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2019.12.01

美術館に乾杯! 国立国際美術館

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    ミロの‘無垢の笑い’(1970年)

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      デュシャンの‘L.H.O.O.Q’(1919/1964年)

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      デ・クーニングの‘水’(1970年)

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      堂本尚郎の‘連鎖反応ー緑・赤’(1983年)

大阪の国立国際美術館へ行ったのは2010年にここでルノワール展が開か
れたとき。国立新美で一度みているのにわざわざ出かけたのはスイス・チュ
ーリヒにあるE.Gビュールㇾ・コレクションが所蔵する‘可愛いイレーヌ’をみ
たかったから。この愛らしい少女の日本での公開はもうないと思っていたら、
昨年またやって来た。おかげでもう一度金髪の描写に酔いしれた。

展示されているミロ(1893~1983)の大壁画‘無垢の笑い’(縦5m、
横12m)は1970年の大阪万国博覧会のガス館のために制作されたもの。
ミロのこんなすばらしい作品が日本に存在することはミロの大ファンとして
は嬉しいかぎり。ミロはシュルレアリストのビッグネーム、だから大回顧展
を強く願っているがまだ実現しない。でも、諦めていない。船の帆を高く掲
げいい風が吹いてくれるのをじっと待つ心境。

デュシャン(1887~1968)は突拍子もないことを思いつく。ダ・ヴ
ィンチの‘モナリザ’に悪ふざけで口ひげと顎ひげを描き、これはアートだよ、
とうそぶく。子どもはきっと‘これがアートなら僕だって描けるよ’と言うにち
がいない。いや、多くの大人だってそう思う。アートの可能性を新たに作り
出すのはひとにぎりの天才と頭ではわかっていても感性はついていけない。

デ・クーニング(1904~1997)の抽象画が楽しくみられるのは色彩
の筆触が生き生きしているから。青や黄色をベースにしたフォルムの構成は
具体的なイメージが固定することはないが、水といわれればそうかなとも感
じられる。画面に曖昧さが漂っていても色彩に力があるのでイメージをいろ
いろと膨らまして遊べるのがこの絵の魅力。

2013年に亡くなった堂本尚郎(1928年生まれ)とは世田谷であった
回顧展でちょっと話したことがある。大画家はちょうどそのころモネの睡蓮
を意識した作品を発表していた。‘モネがお好きなんですね’というとニヤッと
された。‘連鎖反応―緑・赤’は出品作の一枚。緑と赤で彩色された美しい文様
の重なりによって生み出される軽やかな運動のリズムが目に心地いい。

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