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2019.11.30

摺りのいい写楽が続々!

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  東洲斎写楽の‘3代目大谷鬼次の江戸兵衛’(1794年 ベルギー王立美歴博)

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   葛飾北斎の‘雪月花 隅田’(1833~44年 江戸東博)

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  歌川広重の‘和漢朗詠集 月に雁’(1830~44年 ミネアポリス美)

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           歌川国芳の‘双龍’(1831~32年)

東洲斎写楽の摺りのいい大首絵がみられる浮世絵展に遭遇するのは10年に
一度くらいのこと。今回は2011年に東博で開かれた写楽展と同じように
浮世絵のコレクションで有名な海外の美術館からたくさん里帰りしている。
お気に入りの悪党、‘江戸兵衛’はベルギー王立美歴博とシカゴ美から出品さ
れている。ワルの怖さを200%みせつけるため写楽は目をつりあげ指を大
きく広げた手を描いた。この手がいつもイモリの足を連想させる。

葛飾北斎(1760~1849)と歌川広重(1797~1861)は定番
の‘富嶽三十六景’と‘東海道五捨三次’が軸となるラインナップ。まだみてない
ものがあるか目をこらしてみたが、数点にとどまった。そのためこのコーナ
ーでは進むスピードを早めたが、今の時分北斎の‘雪月花 墨田’に思わず足
がとまった。この冬、何度雪景色がみられるだろうか。

広重の‘月に雁’はミネアポリス美蔵の2点が並んでいる。見慣れているのは
絵だけの‘月に雁’だが、和漢朗詠集の漢詩が上に書かれているほうはこれまで
みたかはあやふや。2枚は雁の群れが大きな月を背景にして飛んでいるところ
は同じ。違いをさがすと、漢詩つきは雁の影が下の水面に描かれている。雁
が飛んでいく姿が影となって映る表現に心が揺れる。

歌川国芳の人気がどんどん高まっていく感じ。人気の秘密は画題の多さと
戯画チックな人物描写が圧倒的な存在感を感じさせることかもしれない。
今回‘大江山酒呑童子’や‘川中嶋合戦’だけでなく二匹の龍の睨みあいが刺激的
だった。これはたぶんはじめてお目にかかったもの。一見すると迫力のある
龍だが、よくみるとユーモラスでとぼけた味をだしている。

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2019.11.29

大浮世絵展 パート2!

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  喜多川歌麿の‘歌撰恋之部 あらはるる恋’(1792~93年 シカゴ美)

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  歌麿の‘婦女人相十品 煙草の煙を吹く女’(1793~94年 シカゴ美)

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  歌麿の‘千代鶴おりせ’(1794~95年 ベルギー王立美歴博)

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   歌麿の‘武蔵野’(1798~99年 ボストン美)

江戸東博で11/19からはじまった‘大浮世絵展’(来年1/19まで)をみ
てきた。5年前同様大規模な浮世絵展で今回は人気の高い歌麿、写楽、
北斎、広重、国芳の5人にスポットを当てている。色の摺りの状態がほれぼ
れするほどいい里帰りのものを含めて作品数は会期中全部で366点。一回
の出動では済みそうにない質、数ともに一級の浮世絵展である。

西洋絵画ならルノワールやマネの女性画に心がときめくように喜多川歌麿
(1753~1806)の美人画には特別の思い入れがある。会場に入って
すぐスゴイ歌麿が集結していることがわかったので、鑑賞の集中度を10の
レベルに引き上げた。出品作はどの絵師についても多くは前期(11/19
~12/15)と後期(12/17~1/19)に分けられて展示される。
これほどいい摺りの歌麿がでていたら(全部で64点)まだみてないもの
があれば見逃すわけにはいかない。歌麿の美人画ワールドを存分に楽しむぞ
、という気になった。

初見で一番ぐっときたのが‘婦女人相十品 煙草の煙を吹く女’。画像ではわ
からないが実際の絵では女が吹きだした煙が空摺りで表現されている。すぐ
形が消えていく煙草の煙を女の色香がほんのりでてくる小道具のように使
うところが歌麿の豊かな感性のなせる技。

‘歌撰恋之部 あらはるる恋’は女性の髪や肌の匂いがもろに感じられそうな
絵。画面いっぱいに顔をどアップでみせられると黙っていてもこちらの体も
最接近してしまう。櫛がしっかり髪にささってなくなんだかドタバタしてい
る様子。心の乱れが透けてみえるのでここはすっと離れたほうがいいかも
しれない。

人物の影を描くことで料理茶屋における座敷遊びの楽しさを浮かび上がらせ
ている‘千代鶴おりせ’にも思わず足がとまる。これをみていると広重の‘名所
江戸百景 月の岬’の障子に映る遊女の影が思い起こされる。遊びの世界の
悲哀をこういう風に影で演出する浮世絵が西洋の人たちをドキッとさせたの
は容易に想像できる。

3枚続の‘武蔵野’で目が点になったのは雲母摺りの使われた背景の大きな月。
近未来に計画されている月への宇宙旅行で体験できるような光景がこの絵に
重なってくる。武蔵野の広い空間でくりひろげられる若い侍の捜索劇をこの
月は一部始終みている。

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2019.11.27

美術館に乾杯! 藤田美術館 その三

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     菱川師宣の‘大江山酒呑童子絵巻’(1692年)

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        円山応挙の‘蔦鴨図’(1766年)

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    長澤芦雪の‘幽霊・髑髏仔犬・白蔵主三福対’(18世紀)

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    竹内栖鳳の‘大獅子図’(1902年)

藤田美にある絵画は人気の高い‘紫式部日記絵詞’をはじめ江戸絵画や明治以
降の竹内栖鳳など幅広く作品を揃えている。菱川師宣(?~1694)のお
馴染みの画題‘大江山酒呑童子絵巻’で目が点になったのは源頼光らに刎ねられ
た酒呑童子の首が武将に襲いかかっているところ。あの‘見返り美人’の師宣
がこんなに激しかったとは。

円山応挙(1733~1795)の‘蔦鴨図’は待望の一枚。サントリ―美で
開かれた藤田美術館名品展(2015年)では絵の前に長くいた。波濤の荒
々しさと鴨の強く羽ばたく様がシンクロし画面に緊張感が走っている。絵の
存在を知ってからいつかこの目でと思っていたが、ようやくお目にかかれ
た。

長澤芦雪(1754~1799)の絵はちょっと不気味。真ん中が幽霊で
右は髑髏と仔犬の組み合わせ。そして、左は狐のような老女。芦雪も応挙の
影響で幽霊を描いたが、意表をついて幽霊と髑髏を一緒に描くところが
蘆雪流。

竹内栖鳳(1864~1942)のライオンの絵はまさに動物園にいるライ
オンそのもの。毛一本々までリアルの表現する栖鳳の圧倒的な画力は半端で
はない。動物好きな栖鳳ならではの作品である。

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2019.11.26

美術館に乾杯! 藤田美術館 その二

Img_0001_20191126224701      国宝‘紫式部日記絵巻’(13世紀前半)

 

Img_0003_20191126224701         国宝‘柴門新月図’(1405年)

 

Img_0002_20191126224701      国宝‘玄奘三蔵絵’(14世紀)

 

Img_20191126224701        国宝‘両部大経感得図’(1136年)

 

藤田美にある‘紫式部日記絵巻’に登場する藤原道長の顔の描き方をみると2日
前に終了した‘佐竹本三十六歌仙絵展’(京都博)に出品された歌仙絵がオーバ
ーラップする。ともに鎌倉時代の初めごろに描かれているので平安時代の
‘源氏物語絵巻’とくらべると現実感覚をだす人物表現が生まれている。この絵
で視線が真っ先に向かうのが左の舟の舳先が竜の頭になっている楽舟。雅楽
を演出する舟にワクワクする。

縦長の掛け軸に描かれた水墨画には数多くの賛が書かれ、絵の部分が全体の
半分以下のものに出くわすことがある。‘柴門新月図’もそのひとつ。ここに
書かれている詩は皆愛する友人のためのもの。絵の題材となったのは杜甫の詩
の一場面で門前に親しい友人を送る杜甫が描かれている。そして詩を寄せた
禅僧たちはこの人物を友人に見立てている。

‘西遊記’の三蔵法師でお馴染みの玄奘三蔵の生涯を描いた‘玄奘三蔵絵’(12巻)
は絵巻展などでこれまで2回みる機会があった。画像は巻三の玄奘がパミール
高原の雪道を進んでいるところ。濃密な色彩表現が印象深く、動きのある人物
描写も見事。

‘両部大経感得図’とはじめてお目にかかったのは1995年奈良博であった
‘日本仏教美術名品展’。このエポック的な特別展が仏教美術へのめりこむきっか
けとなった。描かれているのはインドの僧善無畏が密教の経典を獲得した場面。
五重塔の下で童子を従えた善無畏が瑞雲を見上げている。この瑞雲の上に出現
した金色の文字を横にいる書家が書き写している。

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2019.11.25

美術館に乾杯! 藤田美術館 その一

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     藤田美術館

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     国宝‘曜変天目茶碗’(南宋時代 12~13世紀)

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     国宝‘仏功徳蒔絵経箱’(平安時代 11世紀)

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         快慶の‘地蔵菩薩立像’(重文 鎌倉時代 13世紀)

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     尾形乾山の‘銹絵絵替角皿’(重文 江戸時代 18世紀)

大阪の街は出かけた回数が少ないので梅田ならどう行けば阪急電鉄に乗れるか
くらいは知っているが、例えば大阪城へはどう行くのかまったくわからない。
昨年、北斎展をみるためあべのハルカス美を訪問した際、JRの環状線を利用し
たが目的の駅につくまでどのくらいの駅があり何分かかるのかがよくわからず
落ち着かなかった。大阪のイメージが今だに広がらないので一度行ったことの
ある藤田美術館がどこにあったか心もとない状況。

ここは春と秋に収蔵品の展示をしており、その情報を得て足を運んだ。
一番のお目当ては国宝の‘曜変天目茶碗’。静嘉堂文庫の‘稲葉天目’とここの
天目は展示のタイミングをあわせれば思いの丈が叶えられる。茶碗を手にし
て宇宙で輝く星を見ているような気分になるというの特別な体験であること
はまちがいない。そんな茶碗が中国になくて日本に3碗(すべて国宝)も
あるというは曜変天目に対する思い入れの違いが深く作用したためだろう。

‘仏功徳蒔絵経箱’はお気に入りの蒔絵。側面に描かれた法華経の説話をぐるっ
とまわってみると鳥が飛翔する場面があり、雲が動き波が大きくうねって
いる。人のしぐさを含めて動きのある表現はアニメーションを楽しむ感覚
に近い。

2015年にサントリーで開催された‘藤田美の至宝展’で多くの人が釘づけ
でみていたのが快慶の‘地蔵菩薩立像’。ここにはビックリするほどいろんな
古美術品がある。この展覧会で嬉しかったのが尾形乾山と光琳の合作‘銹絵
絵替角皿’。美術本には‘鶴’とか‘梅’しかでてなかったが、なんと全部で10
枚あった。布袋さんや雀などをニヤニヤしながらみていた。

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2019.11.24

ビッグニュース!来秋カラヴァッジョの‘キリストの埋葬’が登場

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カラヴァッジョの‘キリストの埋葬’(1602~04年 ヴァティカン美)

昨日の朝日新聞に嬉しい記事が載った。ローマのヴァティカン美にあるカラ
ヴァッジョの‘キリストの埋葬’が来年の秋、日本で公開されるとのこと。
美術館は国立新美で‘キリストの埋葬展’と銘打ち10/21から展示される。
30年ぶりの来日だが、1990年にヴァティカン美関連の特別展が開催さ
れたのはぼやっと記憶しているが足を運んだかはあやふや。

この絵をローマでみたときはその大きさに圧倒された。なんと縦3m、
横2mの大作。強い存在感を感じるのはキリストを担ぎこちらをみている二コ
デモ。街のどもにでもいるような男がモデルになっている現実感がとてもよ
く宗教的な絵というよりは風俗画をみている感じ。この大作が日本でみられ
るというのは幸運この上ない。とても楽しみ。

カラヴァッジョの話はもうひとつあって、来月26日から大阪のあべのハル
カス美ではじまるカラヴァッジョ展について残念なニュースが入ってきた。
バルベリーニ国立古代美(ローマ)が所蔵する‘ホロフェルネスの首を斬る
ユディト’は出品されなくなった。この絵をまたみたくて来年1月大阪へ行く
ことを決めていたが、こういうことならやめることにした。そのかわり秋に
‘キリストの埋葬’がやってくるので気分はリカバリーされる。

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2019.11.23

美術館に乾杯! 逸翁美術館 その二

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      円山応挙の‘嵐山春暁図’(18世紀)

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       長澤芦雪の‘降雪狗児図’(18世紀)

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     呉春の‘白梅図屏風’(重文 左隻 1790年)

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        与謝蕪村の‘暗夜漁舟図’(18世紀)

京都や大阪そして神戸を関西というくくりでみると(地元の人たちは嫌がる
かもしれないが)、京都で活躍した江戸絵画の絵師の作品はやはりこの地域
にある美術館に多く所蔵されている。逸翁美の名前を高めているのも人気の
絵師たちが描いた絵画。

円山応挙(1733~1795)の‘嵐山春暁図’は昨年五島美であった特別
展ではじめてお目にかかった。応挙の回顧展を運よく5回くらい体験したの
で、美術本にでてくる主要作品はかなり目に入った。でも、世の中は広い
ものでこの風景画には驚いた。応挙がこんな嵐山に桜が咲き誇る光景を描い
ていたとは。ブランド美術館ではいつもサプライズが待っている。

長澤芦雪(1754~1799)の‘降雪狗児図’も五島美での嬉しい展示
だった。背景を黒にして二匹の仔犬に雪を降らせるという発想がユニーク。
芦雪のスゴイところは構図のつくり方や画面の構成が普通の感覚をぐんと飛
び越えて意表を突くこと。長いこと縁がなかったこの可愛い犬にようやく
出会えたのはミューズのお陰である。

重文に指定されている呉春(1752~1811)の‘白梅図’の存在を知った
のはかなり前のことだが、展覧会になかなか登場しない。こういうときは
‘いい絵ほど美術館は出したがらない’という法則があてはまる。諦めてない
がこの先も鑑賞の機会がないかもしれない。

与謝蕪村(1733~1795)の‘暗夜漁舟図’は運よく2005年に訪問
したとき飾ってあった。舟から立ち上がる火の粉や煙は釣った魚を焼いてい
るのだろうか、それとも明りの代わりにしているのだろうか。記憶が薄れ
てきたのでわからない。

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2019.11.22

美術館に乾杯! 逸翁美術館 その一

Img_0001_20191122222701     大阪の池田市にある逸翁美

 

Img_20191122222701      ‘佐竹本三十六歌仙絵 藤原高光’(重文 鎌倉時代 13世紀)

 

Img_0004_20191122222701           俵屋宗達の‘飛鴨図’(17世紀)

 

Img_0002_20191122222701      尾形光琳の‘富士三保松原図’(18世紀)

 

Img_0003_20191122222701           尾形乾山の‘銹絵染付流水文手桶水指’(18世紀)

 

阪急宝塚線に乗って池田市にある逸翁美に出かけたのは14年前の2005
年の秋。日本美術の本にはときどきここに飾られている阪急電鉄の創始者
小林一三のコレクションが登場するのでいつか訪問しようと思っていた。
ここは小林一三(号逸翁)の屋敷だったところなので西洋なら邸宅美術館に
あたる美術館。

絵画では琳派や江戸絵画のいい絵が揃っているが、もっとも自慢の絵は
京博の‘佐竹本三十六歌仙絵展’(24日まで)に出品された‘藤原高光’であろ
う。昨年の秋、五島美であった‘東西数寄者の審美眼’にも五島美が所蔵する
‘清原元輔’と一緒に展示され多くの日本美術ファンの目を楽しませてくれた。

宗達は鴨の絵が得意で何点も描いている。琳派本には醍醐寺にある芦鴨図
がよく載っているが、角度をつけて下方に飛んでいく鴨をみれたのは幸運
だった。何年か前、ギッターコレクションにも菖蒲を背景にして飛翔する
鴨にも出会った。

尾形光琳(1658~1716)は‘寿老人図’と‘富士三保松原図’に遭遇し
た。長くみていたのは後者。同じような絵が手元の光琳本には載ってないの
で新鮮だった。富士山と三保の松原の距離が近すぎるがそれはご愛敬。また、
弟の尾形乾山(1663~1743)の‘銹絵染付流水文手桶水指’の存在
感にも圧倒された。なんでもない手桶水指が流水文の絵柄によっておしゃ
れアイテムになっている。

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2019.11.21

2度目の‘正倉院展’!

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     ‘平螺鈿背八角鏡’(唐時代 8世紀)

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     ‘紫檀木画槽琵琶’(唐時代 8世紀)

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      ‘白瑠璃碗’(ササン朝ペルシア 6世紀)

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      ‘伎楽面 迦楼羅’(奈良時代 8世紀)

東博で開催中の‘正倉院展’は会期が残り4日となり、来場者の数が一段と増
えている。今日は2時時点で40分の待ち時間だった。23,24日は1時
間を超えるにちがいない。前期みた‘螺鈿紫檀五絃琵琶’の感動の余韻がまだ
続く中、後期に登場した正倉院宝物にもどうしてもお目にかかりたお宝があ
った。

その筆頭が‘平螺鈿背八角鏡’。前期に飾られた‘平螺鈿背円鏡’同様、夜光貝を
使ってびっしり描かれた花や鳥の文様の輝きが心をとらえて離さない。そし
て、単眼鏡でピントをあわせると埋め込まれた青のトルコ石の小さな粒が鏡
の華やかさを一層浮き上がらせている。これほど豪華な螺鈿細工に遭遇でき
たのは一生の思い出。

図録をみるたびに裏表紙に使われている‘紫檀木画槽琵琶’の絵柄が気になっ
てしょうがなかった。これは四絃琵琶の背面でたくさん飛んでいる鴛鴦の生
き生きした姿に強く惹きつけられる。鳥が左右対称に配置され長い尾っぽの
緑と背面の濃いこげ茶のコントラストがとてもいい。こげ茶色の美に乾杯!

先月放送されたNHKスペシャルがとりあげた正倉院宝物のなかで興味深か
ったのは6世紀ごろササン朝ペルシアでつくられたガラスの‘白瑠璃碗’。
解説によると土の中から発掘されたものはガラスの成分が溶け変色する。
これに対し、正倉院にある‘白瑠璃碗’ははじめから建物で保管されていたので
つくられたときの姿のまま。本物はまさにその通りだった。美しすぎる碗を
目に焼きつけた。

後期にでてきた伎楽面は‘迦楼羅(かるら)’。この顔面力は半端ではない。
それは顔の大半と頭に彩色された緑のインパクトが強烈だから。さらに鶏冠
と頬の赤がエキゾチックさ倍増させる。迦楼羅はインドの古代神話でお馴染
みのカルダに由来するが、お面のイメージは顔にペインティングをほどこす
アフリカやニューギニアの現地人を連想させる。

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2019.11.20

美術館に乾杯! 香雪美術館 その二

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     ‘レパント戦闘図屏風’(重文 桃山時代 17世紀初)

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          曽我蕭白の‘鷹図’(1764年)

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          長澤芦雪の‘山家寒月図’(18世紀)

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     酒井抱一の‘十二ヶ月花鳥図屏風’(19世紀)

海外にある美術館に展示されている歴史画のなかでレパントの海戦
(1571年)を画題にした絵をみたことがないのに、セミナリオ系の日本
人画家が描いたものを目にするというのは不思議なめぐり合わせ。ただし、
この‘レパント戦闘図’はかっこつき。本来はローマ教皇とイタリア・スペイ
ンの同盟軍がトルコ軍を撃破した海戦なのだが、絵師が古代ローマとカル
タゴの戦いの絵を参考にしたので、海ではなく陸での戦闘になっている。
右にカルタゴ軍を連想させるトルコ軍の兵士が乗った象が2頭描かれている。

曽我蕭白(1730~1781)の描いた色つきの鷹図が3点あり、その
2点が白鶴美の‘牡丹鷹図’と香雪美の‘鷹図’。もう1点はアメリカのインディ
アナポリス美にある番の鷹図。これは鑑賞欲をいたく刺激する絵だが、日本
に里帰りしてくれるだろうか。その可能性は低いので迫力満点の大きな鷹と
その下にいる小さな鶉の対比が気を引く香雪のものでもって瞑すべしという
ことになりそう。

晩年に墨のぼかしと濃淡だけで月を印象的に描いた長澤芦雪(1754~
1799)の‘山家寒月図’は滋賀のMIHO MUSEUMで開催された大長澤芦雪
展(2011年)でお目にかかった。江戸絵画の人気絵師、蕭白、芦雪を
コレクションしているのは流石である。

最近琳派の展覧会に出くわさないので酒井抱一(1761~1828)の
魅力あふれる花鳥図から遠ざかっている。国内で‘十二ヶ月花鳥図’が揃って
みられるのは三の丸尚蔵館、畠山美、ここの3館。そして、屏風装のまま
残っているのは香雪だけ。幸運にも2011年に回顧展(千葉市美)が
あり、長年の思いの丈がやっと叶えられた。

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2019.11.19

美術館に乾杯! 香雪美術館 その一

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        香雪美術館

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    ‘病草子 小法師の幻覚に悩む男’(12世紀後半)

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          ‘二河白道図’(重文 13世紀)

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         雪舟の‘山水図’(重文 15世紀)

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         梁楷の‘布袋図’(重文 南宋時代 13世紀)

白鶴美と同じ最寄りの駅となっている阪急神戸線御影駅から歩いて5分で
到着する香雪美は朝日新聞の創立者、村山龍平(号・香雪)のコレクション
を展示している。ロマンチックな名前の美術館なので所蔵品が展覧会に出品
されるとわりと長く記憶にとどまる。

諸国の奇病や怪しい治療法の話を集めた‘病草子’はもともとは一巻の
巻物だったが、現在では一図ごとに切り離されて所蔵されている。香雪美
にあるのは‘小法師の幻覚に悩む男’。右では床に伏せている男に女房が枇杷
を食べさせようとしている。左をじっとみると小法師が大勢集まり騒いでい
る。病にかかった男がみている幻覚がシュール風に表現されているのがおも
しろい。

‘二河白道図’(にがびゃくどうず)は現世と極楽の世界を描いたもの。真ん
中の水と火の2つの河をまたぐ細い白道を渡りきると阿弥陀の浄土が待っ
ている。水の河には財宝と家族を描いて愛欲を表し、火の河の武士の戦闘
場面は憎悪の世界を示す。画面の下のほうには象や虎、犬、龍がおり、
その下には生病老死の四苦が描かれている。

水墨画のお宝は雪舟(1420~1506)の‘山水図’と中国南宋時代に
活躍した梁楷の‘布袋図’。画聖、雪舟の絵がある美術館はやはり関心がいく。
この絵は2002年に開催された雪舟展(京博)でお目にかかったので、
香雪という美術館を脳に刻みこまれるようになった。

踊る布袋さんをみたのは名古屋の徳川美でおこなわれた特別展。少ない
墨線で重量感のある布袋さん軽く躍らせるのは見事な画力。これほど生
き生きした人物表現はなかなか出会えない。    

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2019.11.18

美術館に乾杯! 白鶴美術館

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        白鶴美術館

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       狩野元信の‘四季花鳥図屏風’(重文 室町時代 16世紀)

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       狩野松栄の‘四季花鳥図屏風’(室町時代 16世紀)

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         円山応挙の‘楚蓮香図’(1794年)

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         曽我蕭白の‘牡丹鷹図’(18世紀)

神戸の東灘区にある白鶴美をどういう風にでかけたか記憶がまったく残って
ない。ここでは名前のとおり白鶴酒造の美術コレクションが春と秋に公開
されている。建物の外観はどこかの格式ある日本旅館を思わせ、庭の燈籠
が目に焼きついている。

この美術館にはみると思わず唸ってしまいそうになるすばらしい屏風がある。
狩野元信(1476~1559)が描いた金地の‘四季花鳥図’。画像は六曲
一双の左隻で水が激しく落ちる滝を背景にして見栄えのする枝ぶりの松と胸
の赤が印象深い鳥が見事に描かれている。もうひとつある同じ名前の屏風は
元信の息子の狩野松栄(1519~1592)が手がけたもの。これは右隻
で桜、桐そして主役の鳳凰の番が描かれている。鳥の姿がなかなかいい。

江戸絵画のど真ん中にいる円山応挙(1733~1795)の‘楚蓮香図’と
曽我蕭白(1730~1781)の‘牡丹鷹図’も自慢の作品。楚蓮香は楊貴
妃とともに中国美人の代表。あまりに美しくいい香りがするので楚蓮香が通
りを歩くと蝶が舞い寄ってくる。腰をS字のように曲げて蝶と遊ぶ姿は映画
のワンシーンをみているよう。

2005年京博で大曽我蕭白展があったとき出品されたのが‘牡丹鷹図’。
この牡丹の花の鮮やかなピンク、薄紫に度肝を抜かされた。蕭白は生まれも
ってのカラリストかいなと。蕭白を水墨画だけの絵師とみているとその大き
な画才を見逃す。いい絵は美術館は出したがらないが、このあとは一度も
出会ってない。またお目にかかりたい。

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2019.11.17

サンリツ服部美 初公開‘佐竹本三十六歌仙絵 中務’!

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     ‘佐竹本三十六歌仙絵 中務’(重文 鎌倉時代 13世紀)

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     ‘佐竹本三十六歌仙絵 大中臣能宣’

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  光悦・宗達の‘鹿下絵新古今集和歌巻断簡’(17世紀)

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  光悦・宗達の‘四季草花下絵新古今集和歌色紙帖’(17世紀)

みどりがめさんと上野東京ラインさんに教えてもらった‘佐竹本三十六歌仙
絵 中務’の展示(初公開)が11/15からはじまったので昨日諏訪湖まで
クルマを走らせてきた。天気が良かったからか行楽にでかける人も多く
高速が結構渋滞し、サンリツ服部美に到着するのに4時間半もかかってしま
った。

今ここで開かれているのは‘やまとうた 三十一文字で綴る和の情景’。
10/12にスタートし、後期(11/15~12/15)は別の作品が登場
する。その目玉が‘佐竹本三十六歌仙絵 中務’。これは初めて公開されると
のこと。過去2度訪問したが、そのときは現在京博の‘佐竹本三十六歌仙絵展’
(10/12~11/24)に飾られている‘大中臣能宣’(通期展示)について
は確認していた。だから、この‘中務’が初公開というのが合点がいかなかっ
たが、美術館の人に話を聞くと最近ここにおさまったらしい。それで今回
はじめてお披露目するのだという。佐竹本を2点も所蔵するのだからたいし
たものである。

5点しかない女流歌人の歌仙絵なので‘中務’との対面は楽しみだった。
絵柄は‘小大君’とよく似ている。装束の色がとても綺麗で赤、薄青が目に心地
よい。そして、波打つように描かれている黒髪。髪の占める面積が小大君よ
り少ないので自然な感じがする。そして、魅了されるのが顔の表情。小大君
の目線が下向きなのに対し、こちらは上の方を眺めている。この姿がとても
可愛い。伊勢はまだお目にかかってないが、斎宮女御、小大君よりいい。
これは参った!

この一枚をみるのが目的なのでほかは光悦と宗達がコラボした‘鹿下絵新古今
集和歌巻断簡’、‘四季草花下絵古今集和歌色紙帖’などをサラッとみて館をあと
にした。しばらく‘中務’の余韻に浸れそう。ミューズに感謝!

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2019.11.15

初物 ‘竹工芸名品展’!

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    初代田辺竹雲斎の‘柳里恭式釣置花籃’(1900~1920年)

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    四代田辺竹雲斎の‘舟形花籃出帆’(2015年)

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    門田篁玉の‘維新’(1981年)

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    飯塚小玕斎の‘白錆花籃雲龍’(1990年)

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    本間秀昭の‘流紋’(2014年)

日本の竹工芸は欧米ではバンブーアートと呼ばれ人気があるらしい。2年前
メトロポリタンでアビーコレクション展が開催され47万人が押しかけたと
いう。嬉しいことにそこで披露された作品がごそっと里帰りし、東近美工芸
館で9月から展示されている(12/8まで)。

日常生活のなかにかごや竹べらなど竹製品はあふれている。だから、鑑賞
用あるいアートとしてつくられた竹工芸にもすっと入っていける。ところが
日本伝統工芸展のような展覧会にでかけることがないので作品を見る機会が
ほとんどない。そのため竹工芸はまったくの初心者。でも、日本の竹工芸界
にすごい才能をもった作家がいることはTVの美術番組をみて知っている。

その人物は四代田辺竹雲斎(1973~)、4年くらい前まだ田辺小竹と名
のっていたころ竹をつかった巨大なインスタレーションを創作していた。
アビーコレクションにも‘舟形花籃出帆’があった。本物をみるのははじめて
なのでしっかりみた。やはりその才能は‘ものが違う’という感じ。初代田辺
竹雲斎の‘柳里恭式釣置花籃’は前衛的な作品。まるで竹工芸のアールヌーヴォ
ー。ガレがみたら唸ったにちがいない。

門田篁玉(1916~)の‘維新’はアートの爆発をイメージさせる。細い竹を
たくさん集めてきて毛糸の塊みたいに表現するところがおもしろい。また、
頭の毛がかぼちゃのようにふさふさしている犬を思い出した。

竹の質感がすごく感じられるのが飯塚小玗斎(1919~2004)の‘白錆
花籃雲龍’。以前出光美で同じような作品に大変魅了されたことがあるが、
それは父親のつくったものだった。こういう竹はおもわず触ってみたくなる。

本間秀昭(1959~)の‘流紋’は前衛的なフォルムが備前焼の陶芸家で‘聖衣’
などの作品で一世を風靡した金重晃介(1943~)の作品とシンクロした。
これは刺激的すぎる。竹工芸家にも鬼才がいた。

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2019.11.14

鏑木清方 幻の‘築地明石町’特別公開!

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            ‘築地明石町’(1927年)

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            ‘新富町’(1930年)

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            ‘浜町河岸’(1930年)

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            ‘初冬の花’(1935年)

今年の秋は日本画関連の展覧会シーンに二つのビッグイベントがある。
ひとつは1ヶ月前みた‘佐竹本三十六歌仙絵’(京博 10/12~11/24)。
そして二つ目のお楽しみは‘鏑木清方 幻の<築地明石町>特別公開’(東近美
 11/2~12/15)。どちらもみられるとは思ってなかった絵なの
で、いつも以上に気分が高揚する。

鏑木清方(1878~1970)の代表作である‘築地明石町’との対面を
もう何年も待ちわびていたがようやく実現した。これはおおげさにいうと
奇跡の出会い。しかも‘新富町’と‘浜町河岸’を含む三部作揃い踏みだから感動
袋は大きく膨らみパンと割れてしまいそう。

3点とも予想以上に絵のコンディションがいい。一体どこにあったのだろう。
これまで絵の大きさの点で最も見ごたえがあったのは大谷コレクションの
‘道成寺・鷺娘’(双幅)で縦183㎝、横75㎝の大作。鎌倉大谷美(現在
は無し)でみたときは体が震えるほど魅了された。その感動と似たものが
今回出品された縦174㎝、横74㎝もある大きな絵3点でもおこった。

趣味で油絵の肖像画や裸婦を描いている友人がおもしろいことをいう。女性
でも男性でもつい描きたくなる雰囲気をもっていたり表情をする人物がいる。
その強く表現したいところがうまく描けたらあとはうまくできあがる、と。
‘築地明石町’もモデルとなった女性の写真が3,4点展示されていたが、確か
に綺麗な女性で清方の心には友人と同じようにこの女性を描きたいという
気持ちがふつふつと沸いてきたのかもしれない。松園の美人画にはない女性の
もっている生感覚。この静かでさらっとした美しさを目に焼きつけた。

これまでみた作品では3点の横に飾ってあった‘初冬の花’に思わず足がとまっ
た。‘築地明石町’効果で勝手に四部作にしたくなった。

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2019.11.13

美術館に乾杯! 神戸市立博物館 その三

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        宋紫石の‘夏富士図’(18世紀)

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        小田野直武の‘蓮図’(18世紀)

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    佐竹曙山の‘椿に文鳥図’(18世紀)

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    国宝‘桜ヶ丘町出土銅鐸’(弥生時代 前2~前1世紀)

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    ‘5号銅鐸に描かれた絵画’

江戸に南蘋風花鳥画を流行らせた宋紫石(1715~1786)は中国の名
前になっているがれっきとした日本人絵師。日本に3年滞在した中国人画家
沈南蘋の密度の濃い色使いと写実的な画風に影響を受け、それを消化しつつ
風景や花鳥を独自の写実表現で描く作品が人気を博した。‘夏富士図’はよけ
いなものは省き壮大な富士山の姿を浮き彫りにするスッキリ構図がなかなか
いい。

秋田蘭画でおおいに注目を集めた小田野直武(1749~1780)の回顧
展が3年前サントリー美で開催された。ずっと関心を寄せていたのに鑑賞の
機会がなかったが、お蔭で秋田蘭画の真髄に迫れることができた。司馬江漢
も小田野直武も宋紫石の絵や西洋画の遠近法の構図や明暗法を学んでいるた
め、二人の風景画は似たところがある。その一方で小田野直武は背景の風景
を極端に小さくしモチーフの花を手前にどーんと描き見る者をどきっとさせ
る。こんなインパクトのある‘蓮図’はほかにみたことがない。

佐竹藩のお殿様の佐竹曙山(1748~1785)は意表を突く構図がとて
も斬新。‘椿に文鳥図’は北斎の花鳥画をシュールな味付けをしたような感じで
右上の穴の開いた造形が不気味。

神戸市の灘区で出土した銅鐸14口はすべて国宝。4号と5号の銅鐸は袈裟
襷文で囲まれた4つの区画に簡略な線でモチーフを描いた絵画が鋳出されて
いる。弥生時代の人々はこんなふうに人物や動物を描いたのか、といろいろ
なことを想像してしまう。5号の片面のひとつには3人が争っている場面が
描かれている。真ん中の丸い頭が男性を表し、両サイドの三角の頭をしてい
るのが女性。

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2019.11.12

美術館に乾杯! 神戸市立博物館 その二

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   ‘聖フランシスコ・ザヴィエル像’(重文 17世紀初期)

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    平賀源内の‘西洋婦人図’(18世紀後半)

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    司馬江漢の‘三囲景’(1783年)

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    司馬江漢の‘異国風景人物図’(1789~1801年)

日本史を扱った書物では節目々に登場する人物が肖像画を使って記述される
ことが多い。例えば聖徳太子、源頼朝、足利尊氏、豊臣秀吉。神戸市博は
1549年鹿児島に上陸し日本に初めてキリスト教を伝えたザヴィエルを
描いた聖画を所蔵している。これは大阪の茨木市の千提寺で1920年に
発見された。

絵が上手な人間はどこにでもおり、このザヴィエル像はイエズス会で西洋画
を学んだ絵師が参考となるザヴィエルの肖像画を下敷きにして制作したもの
とみられる。一見すると西洋人の手になる宗教画となんら変わらない。歴史
の教科書でこれをみたときはてっきりヨーロッパで描かれたものを日本に
もって来たのだと思った。

平賀源内(1728~1779)の油絵‘西洋婦人図’も印象に残る一枚。
ザヴィエル像は宗教画だが、これはフランスのロココ絵画とかイギリスのゲ
インズボロの肖像画などを連想させるので本格的な西洋絵画。長崎にはヨー
ロッパの絵画が入って来ただろうから、源内のような絵心があり技術を持っ
ている者が西洋画に挑むのは自然の流れといえる。

同じ思いは司馬江漢(1747~1818)にもあり、遠近法を使って描か
れた風景画‘三囲景(みめぐりのけい)’は日本で最初の腐食銅版画(エッチ
ング)。川に小舟がいきかうのどかな光景は江戸の名所風景のひとつだが、
描かれたものは写真の裏焼きのように反転している。

‘異国風景人物図’はとてもインパクトのある油彩。江漢はオランダの銅版画
集をみて制作した。こうした洋風画は濃厚なイメージが強く一度見たら忘れ
られない。ここには江漢の絵がほかにも‘両国橋図’や‘相州鎌倉七里浜図’など
がある。

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2019.11.11

美術館に乾杯! 神戸市立博物館 その一

Img_20191111224301       神戸市立博物館

 

Img_0003_20191111224301     狩野内膳の‘南蛮屏風’(右隻 重文 16世紀末~17世紀初め)

 

Img_0002_20191111224301         ‘南蛮屏風’(左隻の拡大)

 

Img_0005_20191111224301     狩野宗秀の‘扇面京都南蛮寺図’(16世紀末)

 

Img_0001_20191111224301      ‘泰西王侯騎馬図’(部分 17世紀前半)

 

神戸を訪問したのこれまで4回くらいあるが、でかけた美術館は神戸市立
博物館と香雪美、そして白鶴美の3つ。神戸市博はドーリア様式の円柱が立つギリシャ神殿風の建物に圧倒された。神戸という街の風格を感じさせる光景である。

数多くある‘南蛮屏風’で最初に目に刷り込んだのが狩野内膳(1570~
1616)が描いたもの。そのためその屏風を所蔵しているここの博物館
も一緒に強く記憶された。本物を運よくここでみたかあるいはほかの
美術館で行われた企画展かはあやふや。右隻は港の荷揚げ風景、日本の
武将に喜ばれたというアラビア馬、檻の中には虎がいる。出迎えているの
は宣教師たち。左隻は旅立ち前の船の様子、象や外国の犬がおりここは
異国の港。

‘扇面京都南蛮寺図’を描いたのは狩野永徳の弟の狩野宗秀(1551~
1601)。信長の庇護のもと1576年に建てられた京都の南蛮寺
(教会)は天守閣風の3階建て。信長は好奇心旺盛な武将だったので南蛮
人から積極的に情報を得ようとした。ワインなどもぐいぐい吞んでいた
らしい。

‘泰西王侯騎馬図’はとても見ごたえのある戦う王様の肖像画。西洋画の
騎馬像を参考にしてセミナリオ系の日本人画家たちは上手に描いた。左が
神聖ローマ帝国皇帝で右がトルコ王。屏風の右半分にはもう二人モスクワ
大公、タルタル王が戦う場面が描かれている。

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2019.11.10

美術館に乾杯! 姫路城・鶴林寺・浄土寺

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Img_0002_20191110221201       1993年に日本で最初の世界文化遺産に登録された姫路城(国宝)

 

Img_0001_20191110221201     国宝‘鶴林寺本堂’(1397年)

 

Img_20191110221201     国宝‘浄土寺浄土堂’(1194年)

 

Img_0003_20191110221201     快慶の国宝‘阿弥陀如来、両脇侍立像’(1195年)

 

城のなかに入るのが可能な場合、熱狂的な城マニアならどんな小さい城でも
なかに足を踏み入れところだろうが、われわれは普通の観光客なので城のつ
くりを実感するのは大きな城だけ。そのためこれまで中に入ったは少なく
姫路城、熊本城、唐津城、広島城、犬山城の5つだけ。このうち群を抜く雄
大さと美しさを誇っているのが世界遺産にも登録されている姫路城。遠くか
らでも白の壁が輝くように見えるのがとてもいい。まさに翼を広げた白鷺が
飛んでいるよう。

旅の楽しみはやはり食、神戸牛を食べたあと明石へ行き食後のデザートの
つもりで明石焼を欲張って二皿注文した。ところが予想以上に量が多く、
一皿でギブアップしたことがある。その後、明石焼は食べてない。そんな苦
い思い出のある明石からクルマを少し走らせると加古川市に到着する。ここ
では‘団子より花’に心を切り替えて古寺、鶴林寺を訪ねた。

瓦で葺かれた屋根が強く反って大陸の建築を思わせる‘本堂’と檜皮葺の優雅な
造りが印象深い‘太子堂’は国宝に指定されている。寺にある仏像で魅了された
のが白鳳時代の‘聖観音立像’(重文、ブロンズ)。小さな像だが、腰をS字に
曲げる姿をみて薬師寺にある同じブロンズの‘観音菩薩立像’(国宝)が目の前
をよぎった。

加古川から北東に進むとみえてくるのが浄土寺。ここに来たかったのは快慶
がつくった仏像があるから。彫刻の本には必ず載っている国宝の‘阿弥陀如来、両脇侍立像’。3体が設置してあるのが浄土堂。なかに入ると巨大な阿弥陀如来像(5m)にビックリ仰天。しかも、この阿弥陀如来像をさらに神秘的にみせる仕掛けがしこまれている。夕刻、背後の蔀戸(しとみど)を開けると西方からの夕日が阿弥陀三尊像にあたり西方浄土の光景が目の前に現れる。これを体験したかったが、時間のタイミングが合わなかった。

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2019.11.09

美術館に乾杯! 大乗寺

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     兵庫県香住町にある大乗寺

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     円山応挙の‘松に孔雀図’(重文 1795年)

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     円山応挙の‘郭子儀図’(重文 1787年)

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     円山応挙の‘柳下狗子図’(1789年)

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     長澤芦雪の‘群猿図’(重文 1795年)

外国人観光客に人気の観光コースがあるという。まず神戸で神戸肉を食べ、
その後姫路城に移動。この日本一美しい城を楽しんだあとは北に進路をと
り中国山地を超えて山陰の名湯城崎温泉をめざす。日本には外国人でもお
おいにうける観光資源がたくさんあるので企画次第では多くの観光客をと
りこめる。

城崎温泉から西に20キロくらい行ったところにあるのが香住町の大乗寺。
応挙寺とも呼ばれている。名古屋で仕事をしていたころ天橋立、城崎温泉、
香住海岸、大乗寺をクルマでまわった。当時日本美術にも興味がだんだん
深まっていたので、円山応挙(1733~1781)の絵がいっぱいみれ
る大乗寺は大変気になる絵画スポットだった。

今年は大乗寺の絵が東芸大美で久しぶりに公開された。足を運ばれた方も
多いのではなかろうか。最もぐっとくるのは客殿‘孔雀の間’に描かれた‘松
に孔雀図’。金箔の背景に豪華な尾羽をつけた孔雀が浮き上がっている。
そして、見栄えのする松の横にのびる枝ぶりにも目が釘づけになる。

中国唐代の武将、郭子儀老人と芭蕉の大きな葉っぱで遊ぶ子どもたちを
描いた八面の襖絵も強く記憶に残っている。老人の着ている衣服の白の
輝きと鮮やかな葉っぱの緑が目に焼きつく。また、襖絵ではないが‘柳下
狗子図’がとてもいい。犬の名手は宗達、応挙、そして芦雪。応挙の描くま
るっこくてあどけない表情をした仔犬にでくわすと心が洗われる。

大乗寺の襖絵制作には応挙の弟子たちも係わっている。長澤芦雪
(1754~1799)が描いたのが猿たちの群像図。いろんなしぐさや
表情をする猿が描かれており、見飽きない。この頃はまだ芦雪のことを知
らなかったが、後に芦雪の才能がわかってくるとこの猿の絵はいい思い出
になった。

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2019.11.08

美術館に乾杯! 金刀比羅宮

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    金刀比羅宮本宮

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    円山応挙の‘遊虎図’(1787年)

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    円山応挙の‘瀑布古松図’(1794年)

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    伊藤若冲の‘花丸図’(1764年)

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    高橋由一の‘豆腐’(1877年)

‘こんぴらさん’で知られる香川県琴平町の金刀比羅宮は一度訪問したことがあ
る。ここの思い出はなんといっても785段もある石段。今はかなりきつい
かもしれない。登りきった高台にあるのが本宮で北と東に広い眺望が開け、
讃岐富士が望める。

江戸絵画が好きな人には書院の障壁画は訪問のターゲットになっていること
だろう。2007年、嬉しいことに東芸大美に表書院と奥書院に描かれた
円山応挙(1733~1795)と伊藤若冲(1716~1800)の絵が
ごそっとやって来た。これをみた人はもう琴平に行く必要はない。

応挙の絵で印象深いのは‘遊虎図’と激しく流れ落ちる水がまるで生き物が
猛烈に突進してくるように思える‘瀑布古松図’。亡くなる1年前にこんなす
さまじい自然の勢いをみせつける風景画が描けるというのがすごい。

奥書院に描かれた若冲の花の絵はまるで花のデザイン帖。一つ々の花を根気
よく細かいところまで描けるなと感心する。そして、ところどころ穴の
あいた葉っぱがみられるのも若冲の観察眼の鋭いところ。

金刀比羅宮は洋画家の高橋由一(1828~1894)を支援していた。
それで由一の作品の3分の1にあたる27点の油絵が所蔵されている。その
なかにおやっとする作品がある。だれも描こうとはしないモティ―フの‘豆腐’。
絵画の可能性はこんな絵から豊かにふくらんでいく。

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2019.11.07

美術館に乾杯! 出雲大社・日御碕神社・三仏寺奥院(投入堂)

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     国宝‘出雲大社本殿’(1744年)

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    国宝‘秋野鹿蒔絵手箱’(鎌倉時代 13世紀 出雲大社)

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    国宝‘白糸威鎧’(鎌倉時代 14世紀 日御碕神社)

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    国宝‘三仏寺奥院(投入堂)’(11世紀後半~12世紀)

先日、日本橋の室町にある島根県のアンテナショップで嬉しい食べ物をみつ
けた。広島にいたころ松江に出張したときは必ず買っていた彩雲堂の和菓子
‘伯耆坊’。久しぶりに食べたが本当に美味しい。アンテナショップに置いて
あることがわかったのでこれからはちょくちょく出かけるつもり。次回は
出雲の‘俵まんじゅう’をチェック、こちらも購入できると嬉しいのだが。

出雲大社と俵まんじゅうがセットになっているのは大社の近くにあるお土産
ショップによく寄ったから。出雲大社ですごく印象に残っているのは巨大な
しめ縄。ここは縁結びの神様だから結婚を願いやって来た人もこれには度肝
を抜かれるにちがいない。国宝になっている本殿は大社造建築の原型。

‘秋野鹿蒔絵手箱’は2012年の出雲展(東博)でようやくお目にかかるこ
とができた。こういう蒔絵手箱のお宝をいろいろみてきたが、小鳥や鹿を
風にそよぐ萩のまわりに賑やかに描く模様がじつにいい。そして小鳥を輝
かせる螺鈿の光も心をとりこにする。

出雲大社からそう遠くないところにあるのが朱塗りが目をひく日御碕神社。
ここを目指したのは国宝の‘白糸威鎧’をみるため。鎧の追っかけをやってい
てどうしても外せないピースなので展示室では天にも昇るような気分。5年
前に行われた国宝展(東博)に登場し厳島神社の‘小桜黄返威鎧’と一緒に飾
られていた。威しの白糸の美しさに魅了される。

鳥取県にある三仏寺奥院、通称‘投入堂’をみたのは生涯の思い出。標高470
メートルの断崖に建つこの奥院にたどりつくまでが一苦労。三徳山(900
メートル)の登り道には鎖を引っ張り上がっていく難所もあるので、投入堂
がみえるところにつくとホットする。そして、じっとながめこのお堂をどう
やって建てたのかと思案する。普通ならこれはできない。だから、この不思
議な光景は忘れられない特別なエピソード記憶になっている。

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2019.11.06

美術館に乾杯! 松江 田部美術館

Img_0001_20191106223601    永原雲永の‘布志名色絵宝尽し唐草文銚子’(19世紀)

 

Img_0003_20191106223601     池大雅の‘杯渡尊者図’(18世紀)

 

Img_0002_20191106223601     池大雅の‘僊山楼閣図’(18世紀)

 

松江観光のひとつが松江城のお濠を小さな船で回る遊覧。今は外国人観光客
が増えたので昔よりもっと賑わっているにちがいない。この松江城の近くに
あったように記憶している田部美術館(1979年開館)。ここには誰もが
知っている田部家の23代にわたる調度品のうち茶の湯に関連する陶磁器や
書画が飾られている。

収蔵品の中心は江戸時代の大名茶人として有名な松平不昧(1751~
1818)愛蔵の茶道具。山陰の窯でやかれたものが陶磁器展にでてくるこ
とは稀なのでここで京焼を彷彿とさせる楽山焼や布志名焼を数多くみれた
のは貴重な体験だった。

そのなかで思わず足がとまったのが維新後も制作を続け名工として活躍した永原雲永(1831~1891)の‘布志名色絵宝尽し唐草文銚子’。品がよく雅の風情を感じさせる絵付けはみてて気持ちがいい。

ここには茶陶だけでなく池大雅(1723~1776)のいい絵画がある。
愛嬌のある顔が印象的な尊者を真正面からとらえた‘杯渡尊者図’と金泥で刷か
れた霞が漂う深山幽谷が横に広がる‘僊山楼閣図’。中国の山水画を金の霞で
再構成するところが大雅の独創力。2点とも昨年京博で開催された大回顧展
に出品された。

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2019.11.05

三井記念美の‘高麗茶碗展’!

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     ‘大井戸茶碗 有楽井戸’(16世紀 東博)

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     ‘御所丸茶碗 古田高麗’(16~17世紀)

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     ‘粉引茶碗 三好粉引’(重文 16世紀 三井記念美)

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     ‘斗々屋茶碗 銘かすみ’(16世紀 三井記念美)

ここ数年いいやきもの展が続いている。2年前、東博で名品がずらっと揃っ
た‘茶の湯展’があり、昨年は秋に根津美で‘新・桃山の茶陶’。そして、今年は
サントリー美の‘美濃の茶陶’(9/4~11/10)と三井記念美の‘高麗茶碗
展’(9/14~12/1)。この二つに出かけると日本の茶碗と朝鮮の高麗
茶碗がぐぐっと目を楽しませてくれるので茶の湯の名碗の通になれることは
請け合い。

三井記念美にはなんといっても国宝の‘志野茶碗 銘卯花墻’があるので‘茶陶
展だったらおまかせください’、という調子だろうというのは容易に察しが
つく。そうするとこの度の高麗茶碗についての期待値は当然ながら高くなる。
会期中にでてくるのは全部で123点。予想以上にすごい数。しかも、ぐっ
とくる茶碗が多い。やはり、三井記念美はブランド美術館。

大井戸茶碗で目にする回数が最も多いのは東博の‘有楽井戸’かもしれない。
平常展を頻繁にみていた時期が長くあったので枇杷色と高台の梅花皮
(かいらぎ)とよばれるちじれが印象的なこの井戸茶碗を何度もみる機会が
あった。視覚体験が多いとだんだん愛着も増していく。

嬉しいことに‘御所丸茶碗 古田高麗’とまた出会った。2014年にはじめて
お目にかかったときはヘラをあてて溝をつくり立体感をだしているところや
角々した面取りに大変魅了された。これで3度目。またまた食い入るように
みていた。

三井記念美の所蔵する名碗をずらっと披露しているが、お気に入りは釉薬が
かからず残った地の部分がクリップの小片が刺さったようにみえる‘粉引茶碗
 三好粉引’。これは2,3年前重文に指定された。そして、うすい枇杷色
と鼠色がかった釉の響き合いがなんとも目に心地いい‘斗々屋茶碗 銘かすみ’
も長くみていた。

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2019.11.03

美術館に乾杯! 閑谷学校・吉備津神社

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    国宝‘閑谷学校講堂’(1701年)

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    講堂の内部

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    国宝‘吉備津神社本殿’(1405年)

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    国宝‘吉備津神社拝殿の内部’(1405年)

備前焼きで知られる備前市には窯元のほかにもうひとつ人気のスポットがあ
る。クルマをどう走らせたかすっかり忘れてしまったが、広島にいるとき
是非ともで出かけてみたかった閑谷学校。岡山藩主池田光政が1670年に
創設した庶民教育のための学校で子どもたちにも儒学を学ばせた。

校地の中央に位置するのが国宝に指定されている講堂、外観で目をひくのが
備前焼瓦で葺かれた赤茶色の屋根。安定感のある入母屋造の形と備前焼の美
しさが見事にマッチした景観は今でも脳裏に焼きついている。講堂の内部は
間仕切りがなくシーンとした厳粛な空間と板敷の床と10本の丸柱のつるつ
る感が強く印象に残っている。

岡山市の名所観光で生涯の思い出となっているのが吉備津神社。吉備国は
備前、備中、備後の三国に分かれそれぞれ吉備津神社を国の一宮として崇め
ているがここの神社は備中国一宮であり、吉備国の総一宮でもある。吉備の
中山を挟んで東の麓に建つのが備前一宮の吉備津彦神社で西側がこの吉備津
神社。

神社をみて心がグッと落ち着くのは本殿や拝殿の檜皮葺。じつに渋い茶褐色
で吉備津神社もその例にもれない。そして、本殿の入母屋造りを二つ並べた
屋根の造形に目が釘づけになる。こういう大きくて堂々とした神社はそう
ない。もう一度お目にかかりたいが、実現するだろうか。

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2019.11.02

美術館に乾杯! 夢二郷土美術館

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      岡山文化ゾーンにある夢二郷土美術館

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        ‘秋のいこい’(1920年)

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        ‘想い’(1926~28年)

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        ‘遠山に寄す’(1931年)

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        ‘立田姫’(1931年)

展覧会をみたあと図録を購入するのはいつものルーティン。本棚やら押し入
れやらに図録はどんどん侵入してわが家は美術書のミニ図書館をかかえる
ことになった。その図録の数の多い画家は美術館にとっては企画展のキラー
コンテンツの証。岡山県出身の竹久夢二(1884~1934)の回顧展も
何度も繰り返して行われる。

夢二の主要作品をごそっと所蔵している夢二郷土美は後楽園を中心とする
岡山文化ゾーンにある。広島にいたときここと邑久町の夢二の生家をクルマ
でまわった。竹久夢二の絵をたくさんみたのは2003年、尾道市美で生誕
120年を記念して開催された回顧展。これが夢二とのつきあいのはじまり
だった。

‘秋のいこい’の女性のどことなく寂しげな表情はドガやシーレの絵を連想さ
せる。こういう西洋画とも通じる深い内面描写は夢二のほかには思いつかな
い。それは‘想い’にもみられる。テーブルに肘をつきその組んだ手をあごの
ところにおく女性。一見すると少女漫画にでてくるような可愛い顔立ちだが、
その思いつめたような表情はドガの描いたカフェの女と似ている。

恋人の彦乃と一緒にいるところを描いた‘遠山に寄す’はとてもいい感じ。
彼方にそびえるのは榛名山。彦乃の着物と榛名山に同じコバルトブルーを使
い色彩を響き合わせているのは粋な演出。同じ年に描かれた‘立田姫’にも魅了
される。長い首をし体をS字形に曲げた立田姫は究極の夢二式美人かもしれ
ない。背景の富士山と立田姫の赤の着物が目に焼きついている。

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2019.11.01

美術館に乾杯! 林原美術館 その二

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    河鍋暁斎の‘閻魔(右)奪衣婆(左)図’(1879年)

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        上村松園の‘良宵之図’(1926年)

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        菱田春草の‘月夜飛鷺(陸離)’(1901年)

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    浦上玉堂の‘夏晩水亭図’(1815~20年)

描く絵が幅広い画題にわたっていると回顧展があるたびにその画力に感心さ
せられる。河鍋暁斎(1831~1889)はそんな画家。
2008年に京博で大規模な回顧展があり、林原美から出品された‘閻魔・
奪衣婆図’に出会った。地獄の大王、閻魔を踏み台にして若い女が枝に短冊を
むすんでいる。一方、三途の川にいて死者から衣服を奪い取る鬼女は若衆に
白髪を抜いてもらっている。本来なら怖い存在の二人をこんなゆるキャラに
変えて描くところが暁斎流。絵画のもっているエンターテイメント性がよく
わかっている。

上村松園(1875~1949)の‘良宵之図’は‘後ろ美人’の傑作。喜多川
歌麿の‘品川の月’に描かれた妓楼の座敷の様子に柱を背にして海の方をなが
めている女性がでてくるが、この女性も柱に寄りかかって明るさのましてく
る月の光で照らされる京の夜の風情を偲んでいる。松園にも浮世絵のDNAが
しっかり受け継がれている。

一生つき合っていこうと思っている画家のひとりが菱田春草(1874~
1911)。5年前にあった回顧展(東近美)にここからとてもいい絵が
披露された。画集でみていつかお目にかかりたいと願っていた‘月夜飛鷺’。
鳥が飛ぶ姿を夜の空に設定して描くのはあまりみない。そのため、この神秘
的な雰囲気をもつ鷺の群像図は強く印象に残っている。これをみるとやはり
春草は天才だなと思う。

岡山県美同様、ここにも浦上玉堂(1745~1820)の水墨画がある。
‘夏晩水亭図’は玉堂晩年の作。墨を塗らない白の部分を多くし薄いかすれた
墨の線で木々や山をえがいているため、画面全体の調子は重くない。明るさ
や清々しさを感じられる山水画も味わい深い。

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