« 2019年9月 | トップページ | 2019年11月 »

2019.10.31

ナショナルズ ワールドシリーズ初制覇!

Img_0002_20191031222501    はじめてのワールドシリーズ制覇に喜ぶナショナルズナイン

 

Img_20191031222601   7回表グリンキーから反撃のソロホームランを放ったレンドーン

ワールドシリーズ第7戦はナショナルズが逆転で勝利し、はじめてのワー
ルドチャンピオンに輝いた。拍手々!2連勝のあとホームで3連敗を喫し
あとがなくなったナショナルズは昨日再度ビジターでアストロズを下し、
3勝3敗に持ち込んだ。今日の先発はエースのシャーザー、6戦でもう
一人の主力ピッチャーのストラスバーグが初回に2点失点したものの粘
りの投球で勝利を呼び込んだので、シャーザーとしてもいいピッチング
をして勝利に貢献したいところ。

ところが、5回で2点とられ勝負の流れはアストロズにいっていた。
その流れを変える一発を放ったのが3番のレンドーン、7回表好投して
いたグリンキーからレフトに反撃のソロホームラン、これで打線に勢い
がつき5番のケンドリックが交代した投手から逆転の2ランをライトに
たたきこんだ。これで一気に形勢が逆転、ナショナルズに勝利の可能性
がでてきた。続く8回に1点、9回にさらに2点入れ6対2と大きくリ
ード。そして、9回裏をクローザーがアストロズの攻撃を3人でしり
ぞけ、見事ワールドシリーズ初制覇を達成した。

ポストシーズン(PS)がはじまる前の下馬評はア・リーグはアストロ
ズ、ナ・リーグはドジャーズがワールドシリーズに勝ち上がってきて、
最後は投手力と打撃力でまさるアストロズが2年ぶりに頂点に立つので
はないかとみられていた。ア・リーグはその予想通りアストロズが進出
してきたが、ナ・リーグのほうはなんとワイルドカードでPSにでてき
たワシントン ナショナルズがリーグチャンピオンになった。

レギュラーシーズンでナショナルズの試合をBSの大リーグ中継でみる
ことはまったくないのでこのチームで知っている選手は投手のシャーザ
ーとストラスバーグだけ。PSのゲームをずっとみているうちにいい
選手がいることがだんだんわかってきた。野手では3番のレンドーンと
4番のソトがいいところで打つ。ソトはまだ21歳。その潜在能力の高
さは計り知れない。今日のゲームでも8回貴重な追加点をあげる強烈な
ヒットを打った。カッコいいスイングがすばらしい。

今年のワールドシリーズは本当におもしろかった。例年以上に大リーグ
ロスに襲われそう。

| | コメント (0)

2019.10.30

美術館に乾杯! 林原美術館 その一

Img_0004_20191030222801
     岡山市の後楽園の近くにある林原美

Img_20191030222901
     ‘洛中洛外図屏風(池田本)’(重文 江戸時代 17世紀)

Img_0001_20191030222901
  ‘獅子牡丹葵紋蒔絵調度 合貝’(1628年)

Img_0002_20191030222901
   ‘鍋島 色絵桜御所車皿’(17世紀後半~18世紀前半)

Img_0003_20191030222901
   ‘鍋島 色絵蜀江文皿’(17世紀後半)

Img_0005_20191030222901
    逸見東洋の‘風神雷神図堆朱盆’(1911年)

岡山市で一番の観光スポットである後楽園の近くにある林原美は一度訪問し
たことがある。だいぶ前のことなので館内がどんなレイアウトだったか忘
れたが、立派な門構えはしっかり記憶にとどまっている。数多く出かけ
た日本美術の展覧会で林原美が所蔵する美術品に時々遭遇する。例えば、
2013年東博で開催された‘京都 洛中洛外図と障壁画の美’に岡山藩池田
家に伝来した洛中洛外図が出品された。まばゆいほどの金雲の金色が浮き上
がらせる京の華やかな光景が目に焼きついている。これは右隻で画面の中央
が御所。

合貝(かいあわせ)は蛤の貝殻を並べその形をみて対の貝をさがす女の子
の遊び。貝の内側には源氏絵などが極彩色で描かれている。‘獅子牡丹葵紋蒔
絵調度 合貝’は岡山藩主池田光政に嫁いだ本多家の姫君の婚礼道具。こんな
蛤が身近なところにあるとすごく楽しめそう。

この美術館は鍋島のコレクションでも有名。そのため、鍋島展があるたびに
定番の名品がずらずらっとでてくる。大変魅了されているのが大きな五寸皿
に御所車が見事にデザイン化されている‘色絵桜御所車文皿’。そして、リズ
ミカルに連続する文様が心地いい‘色絵蜀江文皿’にも思わず足がとまる。

逸見東洋(1846~1920)の‘風神雷神図堆朱盆’は驚愕の一品。堆朱
は赤く着色した漆を使った彫刻のことで、漆を塗り重ねて形にするのにとん
でもない手間がかかる。東洋は神業的な超絶技巧を駆使し横30cm、縦
24cm、厚さ3cmの盆を仕上げたが、6年もかかった。

| | コメント (0)

2019.10.29

美術館に乾杯! 岡山県立美術館・倉敷市美術館

Img_0003_20191029221601
    池田遙邨の‘群’(1975年 倉敷市美)

Img_0005_20191029221601
    池田遙邨の‘京都タワー’(1980年 倉敷市美)

Img_0002_20191029221601
 池田遙邨の‘雪へ雪ふるしづけさにをる 山頭火’(1986年 岡山県美)

Img_0001_20191029221601
  岸田劉生の‘ギヤマンのある静物’(1929年 岡山県美)

Img_20191029221601
   片岡球子の‘舞楽 抜頭’(1967年 岡山県美)

倉敷市美は岡山県に生まれた日本画家の池田遙邨(1895~1988)
から1980年に500点近い作品を寄贈され、これを母体として1983
年に開館した。広島にいたときの縁がきっかけでこの美術館で開かれた
2度(2005年、2011年)の回顧展にめぐりあった。所蔵する本画
200点のなかで美術館のPRに使われているのが‘群’。雪原を跳ねる鹿の群
れが幻想的に描かれている。雪と鹿の組み合わせという斬新なアイデアが
でてくるところが遙邨の一流たるゆえん。

‘京都タワー’も一度見たら忘れられない作品。真下から見上げるようにタワ
ーをとらえ東本願寺の屋根と金色の太陽を低い位置に描き、高くそびえる
タワーを強調している。はっとさせる視点で画面に広さや空間のゆがみをつ
くりだし誰にもまねのできないインパクトのある表現を生み出した。

遙邨は最晩年、漂泊の俳人・種田山頭火の句境を絵画化した‘山頭火シリー
ズ’に取り組んだ。28点描いたが、‘雪へ雪ふるしづけさにをる 山頭火’は
その一枚。三匹の狐が雪のなかではしゃいでいる姿が印象深い。

岡山県美が所蔵する岸田劉生(1891~1929)の‘ギヤマンのある
静物’は今月の20日まで東京ステーションギャラリーで行われていた大回
顧展ではじめておめにかかった。亡くなった年にこんな色彩が強烈に輝く
静物画を描いていたとは!長生きしていたら本当にどこまでビッグな画家に
なっていたことやら。

片岡球子(1905~2008)の‘舞楽 抜頭’はつい最近東博の正倉院展
で伎楽面をみたばかりなのでとても新鮮に映る。人物の肖像画では普通目に
視線がむかうが、舞楽で使われる面はインパクトのある鼻の形が目に焼き
つく。また、歌舞伎の隈取も連想する。

| | コメント (0)

2019.10.28

美術館に乾杯! 岡山県立美術館 その二

Img_0001_20191028221701
    雪村の‘瀟湘八景図屏風’(左隻 室町時代 16世紀)

Img_0003_20191028221701
    宮本武蔵の‘鵜図’(江戸時代初期 17世紀)

Img_20191028221701
    浦上玉堂の‘疎松曲水図’(江戸時代 18世紀)

Img_0002_20191028221701
     小野竹喬の‘夕茜’(1968年)

Img_0004_20191028221801
     小野竹喬の‘一本の木’(1972年)

雪村(1490~1577)は戦国時代、東国で活躍した画僧。生まれたの
は現在の茨城県常陸大宮市。はじめてこの画家を知ったときは‘せっそん’とは
読めず‘ゆきむら’かいな、と思った。2度回顧展に遭遇し2年前東芸大美で
開催された際お目にかかったのが岡山県美の‘瀟湘八景図’、雪村はこの中国で
はお馴染みの画題を何点も描いており、これは金泥がはかれたもの。

剣豪の宮本武蔵(1582~1645)は刀さばきにかけては天才的な能力
を発揮したが、細い筆さばきも達者でびっくりするほどいい水墨画を描いて
いる。ここには7点あり、2003年に行われた武蔵展で披露された。その
なかで最もぐっときたのが‘鵜図’、現在、渋谷の松濤美で開催中の和泉市久保
惣記念美展に出品されている‘枯木鳴鵙図’(重文)とともに強く心を打った。

雪舟と同じく岡山に生まれ独創的な水墨画を描いたのが浦上玉堂(1745
~1820)。2006年千葉市美で決定版‘浦上玉堂展’が開かれ、岡山県美
蔵の作品もたくさん展示された。お気に入りは重なりあう山々のもこもこし
た形がおもしろい‘疎松曲水図’。

福山のすぐ隣の街、笠岡出身の小野竹喬(1889~1979)は根っから
のカラリスト、それが画業後半の作品に全開する。色のすっきり感とグラフ
ィック的な画面構成に魅了されるのが‘夕茜’と‘一本の木’、こうした絵をみると
爽快な気分になる。

| | コメント (0)

2019.10.27

美術館に乾杯! 岡山県立美術館 その一

Img_0002_20191027215501
    牧谿の‘老子図’(重文 南宋時代 12~13世紀)

Img_0003_20191027215501
    玉澗の‘廬山図’(重文 南宋時代 12~13世紀)

Img_20191027215501
    雪舟の‘倣玉澗山水図’(重文 室町時代 15世紀)

Img_0001_20191027215501
    雪舟の‘雪景山水図’(室町時代 15世紀)

岡山県立美術館のある場所が岡山市のどのあたりだったか薄れてきているが、
確か県庁か市役所の近くだったような気がする。ここで五島美術館の名品展
が開催されたとき出かけ常設展示も併せてみた。日本画の場合、同じ絵を長
く期間展示することはないのでほかの美術館で開かれた特別展にこの美術館
から出品されたものが飾ってあったかはまるで覚えていない。

牧谿展や南宋絵画展が企画されるとこの美術館が所蔵する牧谿の‘老子図’は
よく登場する。この絵は2013年に重文に指定された。口のまわりや顎に
無精ひげをはやした人にでくわすことはままあるが、この老子のような長い
無精鼻毛をした人物は普段の生活ではほとんどみない。こうも鼻毛が長いと
なにか汚らしい感じだけが残る。

牧谿同様、南宋時代に活躍した玉澗も日本の画家たちに大きな影響を与えた。
‘廬山図’は2点ある真筆のひとつ。3つの山を墨の濃淡や筆使いを変え、霞が
かかる深淵な情景を描いている。この絵を模写したものが根津美にある。

雪舟(1420~1506)は備中国赤浜(岡山県総社市)に生まれた。
だから、35歳頃から移り住んだ山口の県立美に雪舟が飾ってあるように岡山
県美も‘倣玉澗山水図’と‘雪景山水図’を所蔵している。‘倣玉澗山水図’は中国
の画家たちの絵を模写したもの。9図残っているが、雪舟は全部で12枚
模写している。‘雪景山水図’は拙宗等楊と名のっていた頃(46歳以前)の
作品。

| | コメント (0)

2019.10.26

森アーツセンターギャラリーの‘バスキア展’!

Img_20191026222101
      ‘無題’(1982年)

Img_0003_20191026222101
      ‘シー’(1985年 世田谷区美)

Img_0002_20191026222101
      ‘オニオンガム’(1983年)

Img_0001_20191026222101
      ‘自画像’(1984年)

六本木の森アーツセンターギャラリーで開催されている‘バスキア展’
(9/21~11/17)をみてきた。画風がフランスのデュビュッフェ
(1901~1985)に似ているバスキア(1960~1988)は
その名前はインプットされてはいるものの本物の作品をみたのは両手に
満たない。少ない鑑賞体験に比例して作品の印象が薄いかというとその逆で
人物のむき出しの歯や頭蓋骨が目に強く焼きついている。

関心の高い回顧展だったので楽しみにしていたが、チケット売り場で
2100円という入館料の高さに気分がそがれた。現代アートの展覧会では
入館料が高いことや図録にべらぼうな値段がついているのはいつものこと。
この調子だと図録は5000円くらいとふんでいたが、これはいいほうに外
れ許容範囲の3100円。すぐ購入した。

会場に飾られていた絵画やオブジェ、ドローイングは予想を大きく上回って
いた。絵画は全部で130点。こんなにでているとは思わなかった。進んで
いくうちに子どものお絵かきのようなモチーフの平板な表現に目が慣れ、
言葉ありコラージュありの奔放な画面構成に強く惹かれていった。

ほじめのコーナーにどこかでみた作品がでてきた。2年前ニュースにもなっ
たZOZOの前社長前澤氏が手に入れた‘無題’。目の覚める青の背景に浮かび上
がる骸骨のような頭。ふつうなら重いイメージを産む黒の太い輪郭線、これ
が青との対比により暗さが消えものの存在感を強くアピールする力に変わっ
ている。

ほかでは世田谷美蔵の‘シー’と‘自画像’を長くみていた。28年しか生きられ
なかったバスキアの写真をみて思い浮かんだのが2日前開幕したNBAに
新人デビューした八村選手。二人が似ていることでバスキアへの親近感が増
してきた。さらに、バスキアが日本のことを絵の題材にしているのが興味を
そそる。

‘オニオンガム’はおもしろい作品。メイドインジャパンとあるのは玉ねぎ
風味のガムが日本製であることをいってるが、バスキアは日本で実際にこん
なガムに出会ったのだろうか。それとも遊びなのか。日本の話がいろいろで
てくる、なぜか100YEN、、、500YEN、、、6000YENとYENという
文字だけが並んでいる絵、おりがみのコラージュ、バスキアが日本と深くか
かわっていたことは知らなかった。

| | コメント (0)

2019.10.25

松濤美に和泉市久保惣記念美の名品が集結!

Img_0003_20191025222101     ‘駒競行幸絵巻’(重文 鎌倉時代 14世紀)

 

Img_0004_20191025222101    ‘貫之集下断簡(石山切)’(重文 平安時代 12世紀)

 

Img_0002_20191025222101    ‘伊勢物語絵巻’(重文 鎌倉時代 13~14世紀)

 

Img_0005_20191025222101     国宝‘青磁鳳凰耳花生 銘万声’(南宋時代 12~13世紀)

 

Img_0001_20191025222101      ‘唐津茶碗 銘三宝’(重文 桃山時代 16世紀)

 

大阪の和泉市久保惣記念美が所蔵する名品の数々が現在、渋谷の松濤美でど
どっと展示されている。題して‘日本・東洋 美のたからばこ’(10/5~
11/24)。久保惣コレクションですぐ思い浮かぶのは砧青磁の名品‘国宝
 青磁鳳凰耳花生 銘万声’だが、今回のこの特別展の情報を得て密かに期待
していたのは‘駒競行幸絵巻’。前期(10/5~10/27)に登場することが
わかったので、喜び勇んで出かけた。

心をワクワクさせるのは訳がある。26年前の1993年、東博で‘やまと絵
 雅の系譜’にめぐりあい‘平家納経’や‘源氏物語絵巻’など美術本に載ってい
る名品が目を楽しませてくれた。購入した図録をみると‘駒競行幸絵巻’もしっ
かり載っている。でも、これをみたという実感がない。たぶん、たくさんで
ていた国宝、例えば‘源氏物語絵巻’などに心が奪われ、印象が薄かったのだと
思う。長い時を経て華麗な極彩色にいろどられたこの絵巻との対面が叶った。
船上で演じられる奏楽の場面を存分に楽しんだ。

‘貫之集断簡(石山切)’とやまと絵展にも出品された‘伊勢物語絵巻’は前期展示が終了すると、今京博で開かれている‘佐竹本三十六歌仙絵展’(10/12~11/24)に移動する。東と西からお呼びがかかり大忙しである。京博でまだ展示されていなかったものが運よくここへ足を運び遭遇できた。料紙装飾の美に酔いしれる‘貫之集断簡’にであえたのは大きな収穫だった。

会期中展示されるやきもののなかで圧倒的な存在感をみせているのが‘青磁鳳凰耳花生 銘万声’、何度みてもこの青磁には感動する。なによりほかの鳳凰耳花生にくらべてひとまわり大きいのはいい。久しぶりにみたのが‘唐津茶碗 銘三宝’。やわらかい茶褐色が唐津の魅力。とてもいい感じ。

| | コメント (0)

2019.10.24

驚きのお宝‘螺鈿紫檀五絃琵琶’!

Img_0004_20191024220801      ‘螺鈿紫檀五絃琵琶(表面)’(唐時代 8世紀 正倉院)

 

Img_20191024220801      ‘螺鈿紫檀五絃琵琶(背面)’

 

Img_0002_20191024220801      ‘墨画仏像’(奈良時代 8世紀 正倉院)

 

Img_0003_20191024220801      ‘伎楽面 酔胡王’(奈良時代 8世紀 正倉院)

 

Img_0001_20191024220801      ‘瑠璃壺’(西アジア 11世紀以前 正倉院)

 

東博で開催中の‘正倉院の世界ー皇室がまもり伝えた美ー’
(10/14~11/24)に出かけ正倉院宝物中、屈指の名品‘螺鈿紫檀五絃
琵琶’をみてきた。手元にある正倉院の本でながめていたこの世界に一つしか
残ってない五絃琵琶にやっとお目にかかることができた。25年くらい待っ
たので天にも昇るような気分。

10年前、今の上皇の天皇即位20年を記念した‘皇室の名宝展’があり、正倉
院からやって来た‘平螺鈿背円鏡’の螺鈿細工の美しさに大感激した。そして、
この度新天皇即位によりまたその上をいく螺鈿の名品と遭遇することになっ
た。これほど嬉しいことはない。‘螺鈿紫檀五絃琵琶’と‘平螺鈿背円鏡’は前期
(10/14~11/4)、‘平螺鈿背八角鏡’は後期(11/6~11/24)に
登場する。

螺鈿のうすピンクやうす緑の美しい輝きを楽しむコツは体をかがめて下からみ
たり、つま先立ちして上からのぞきこむようにみること。こうすると光に反射
していっそう輝く螺鈿装飾が目に焼きつく。とくに五絃琵琶の背面の宝相華、
雲、鳥の文様の螺鈿細工に目を奪われた。これは一生の思い出。

今回は五絃琵琶がお目当てなのでほかの美術品はさらさらとみた。そのなかで
、目が吸い寄せられたのがふっくっらした顔が印象深い‘墨画仏像’と大きな鼻
が強烈なインパクトを放つ‘伎楽面 酔胡王’。後期にでてくるもうひとつの面
‘迦楼羅’も楽しみ。

鮮やかな青の‘瑠璃壺’を長くみていた。西アジアからシルクロードを通って
日本に伝わったガラスのお宝が正倉院におさまる。ロマンあふれる東西の文化
交流である。

| | コメント (0)

2019.10.22

美術館に乾杯! 井原市立田中美術館

Img_20191022222001
    平櫛田中の‘幼児狗張子’(1911年)

Img_0001_20191022222001
          ‘尋牛’(1978年)

Img_0003_20191022222001
          ‘牧人’(1965年)

Img_0002_20191022222001
        ‘平安老母’(1949年)

山陽自動車道の笠岡ICで降りて下の方へ行くと笠岡市で上の方に位置する
のが井原市。この街もすごい彫刻家を輩出している。近代日本木彫界の
最高峰といわれる平櫛田中(ひらくしでんちゅう 1872~1979)。
はじめこの田中という名が覚えられなかった。知らない人は田中美術館を
たなか美術館に呼んでしまうにちがいない。

広島に住んでいる間、芸術家にいろいろ出くわした。この平櫛田中もその
ひとり。その生命力は尋常ではなくなんと107歳まで生きている。作品
とのつきあいはこの美術館からはじまった。そして、東芸大美で傑作‘転生’
に遭遇し、茨城五浦の天心記念館では‘五浦釣人’、‘岡倉天心像’とお目にか
かった。そして、小平市にある平櫛田中館にも足を運び‘鏡獅子’の縮小ヴァ
ージョンも楽しんだ。この‘鏡獅子’についてはうまいめぐりあわせで
10/27のNHK日曜美術館でとりあげてくれる。確か田中にはじめてスポ
ットをあてるのではなかろうか。

ここにどれくらいの数の木彫が飾られていたか忘れたが、いくつかの作品
は今でも強く記憶に残っている。お気に入りは田中の長男をモデルにした
‘幼児狗張子’。はじめは犬の張子と遊んでいたのにまえのものが欲しくなり
手をだしてねだっている。じつに可愛い男の子。

‘尋牛’は禅の悟道における第一段階を造形化したもの。顔をくしゃくしゃに
した老人の歩く姿は一度みたら脳裏から消えない。広島県美にある‘落葉’で
描かれている僧とこの老人は同じ人物のようにみえる。

木彫に彩色した‘牧人’と‘平安老母’にも思わず足がとまる。ブロンズに比べ
木彫はぬくもりがあるので描かれた人物に近づきやすい。子羊を膝にのせ
一休みする牧人のくつろいだ感じがとても自然な感じだし、じっとみつめ
る老母の大きな愛を感じさせるやさしい表情をみると心が洗われる。

| | コメント (0)

2019.10.21

美術館に乾杯! 笠岡市立竹喬美術館

Img_0006_20191021225201

Img_20191021222801
    小野竹喬の‘島二作 早春(右)冬の丘(左)’(1916年)

Img_0001_20191021222801
      ‘新秋’(1948年)

Img_0003_20191021222801
      ‘野辺’(1967年)

Img_0002_20191021222801
      ‘樹間の茜’(1974年)

広島県は瀬戸内側の西の端が福山市で国道2号線を東に進むと岡山県に入り
笠岡市に到着する。日本画家の小野竹喬(1889~1979)はこの街の
出身で市立の竹喬美術館がある。こじんまりとした美術館だが、ここで
1999年、生誕110年・没後20年を記念した小野竹喬展が開催された。
広島に滞在しているとき蘭島閣美で福田平八郎展、笠岡で竹喬の回顧展に
遭遇したのは幸運なめぐりあわせだった。

地元の画家の美術館らしく初期の作品を多く所蔵している。そのなかで画集
によく載っているのが27歳のとき描いた‘島二作 早春・冬の丘’。縦長の
画面を使った南画風の明快な緑や大橙色が印象的な風景画だが、立体的な
画面構成に深く傾倒していたセザンヌの表現の影響がみられる。

‘新秋’は木々の葉っぱを点描のように細やかに描写し自然の生命感を
表現するとともにカラリスト竹喬の魅力が地面の草花や背景のすっきりした
緑や黄色に現れている。そして、真ん中に立つおかっぱの少女により人々が
今新秋の情感を感じはじめていることがわかる。

‘野辺’と‘樹間の茜’は竹喬風景画をみる楽しみが一段とます作品。‘野辺’では
道端にはえた芒に視線が釘づけになる。秋のイメージは紅葉がすぐ思う浮
かぶが柿や芒も秋の定番アイテム。この芒は下から見上げているような感じ
がすごくいい。‘茜の画家’と呼ばれた竹喬の最後にたどりついた茜が‘樹間
の茜’、装飾的なところは琳派の絵を連想させる。色彩の力と装飾美が見事に
融合している。

| | コメント (0)

2019.10.20

美術館に乾杯! 足立美術館 その八

Img_0002_20191020221901     河井寛次郎の‘海鼠瓜壷’(1931年)

 

Img_20191020221901     河井寛次郎の‘草花図扁壷’(1939年)

 

Img_0001_20191020221901     河井寛次郎の‘三色扁壷’(1963年)

 

Img_0003_20191020221901     

北大路魯山人の‘椿鉢’(1940年)

 

足立美術館のお楽しみは3つある。横山大観を中心とする近代日本画の名品、
大きな感動が得られるすばらしい庭園、そして河井寛次郎(1890~
1966)と北大路魯山人(1883~1959)のやきもの。1970年
に美術館はオープンし、その後1988年に陶芸館ができ寛次郎と魯山人の
作品が常設展示されている。

河井寛次郎は安来の出身なのでここの展示室は故郷にある記念館みたいな
もの。立派な図録がつくられており、90点くらい載っている。これらをロ
ーテーションしながら展示している。倉敷の大原美でも寛次郎に出会えるが
数はこれほど多くない。足立と大原は民藝派のやきものにふれるきっかけと
なった縁深い美術館。この鑑賞体験によって民藝派にのめりこむことになっ
た。

お気に入りは鮮やかな青が目に飛び込んでくる‘海鼠(なまこ)瓜壷’、安定感
のある角々した形に強く惹かれる‘草花図扁壷’。最も衝撃をうけたのは深い赤
、緑、黒の色がポロックのアクションペインティングのように抽象的な模様
や流れをつくっている‘三色扁壷’。亡くなる3年前の73歳の頃にこんな前衛的
なやきものに挑戦するのだから恐れいる。

魯山人は大きな‘椿鉢’が印象深い。ほかにも金襴手の壷、蟹を描いた織部向付、志野の花入れなどが目を楽しませてくれる。北大路魯山人のやきものとのつきあいはこの美術館からはじまった。

| | コメント (0)

2019.10.19

美術館に乾杯! 足立美術館 その七

Img_20191019223301
    土田麦僊の‘黄蜀葵’(1932年)

Img_0002_20191019223401
    小茂田青樹の‘蝉’(1930年)

Img_0003_20191019223401
    速水御舟の‘新緑’(1915年)

Img_0001_20191019223401
    徳岡神泉の‘菖蒲’(1954年)

日本画家との密着度は遭遇する回顧展の回数に関係することが多い。だから、
まずは回顧展を体験したい。そして理想は2回、そうすると画業全体がおお
よそつかめ愛着が湧いてくる。小野竹喬(1889~1979)らと活動を
ともにした土田麦僊(1887~1936)についてはまだ一度だけ。かな
り前で1997年、東近美で大原女や舞妓などを楽しんだ。2度目を期待し
ているがなかなか実現しない。

麦僊の描く花は葉っぱの緑が強く印象に残る。朝顔、山茶花、蓮、菊、罌粟、
そして足立にある黄蜀葵(和名トロロアオイ)。Myカラーが緑&黄色だか
ら、こういう花には心が一段と和む。

小茂田青樹(1891~1933)の‘蝉’には思わず足がとまる。栃の木に
とまった蝉に視線が自然と注がれるのは木の幹と葉の構成がいいから。上か
ら垂れる葉の一部をカットするアイデアが青樹の鋭い感性を示している。
後知恵で納得するがはじめからこのようには描けない。

小茂田同様緻密な描写をつきつめた速水御舟が21歳のとき描いたのが‘新緑’。
しつこいほど楓などの若葉がびっちり描き込まれた画面はみるのがちょっと
シンドクなるほど密度が濃い。そして、奥行きを感じさせるこうした緑の
グラデーションはアンリ・ルソーのジャングル画を連想させる。

神秘的な静物画で画壇に新風を吹き込んだ徳岡神泉(1896~1972)
の‘菖蒲’は福田平八郎の花の絵から明るさを消しさらに抽象度を上げたイメ
ージ。背景との関係性がないため2本の菖蒲がまるで宙に浮いているように
みえる。

| | コメント (0)

2019.10.18

佐竹本歌仙絵のプラスαに名品が結集!

Img_0001_20191018221001     国宝‘三十六人家集 躬恒集’(平安時代 12世紀 本願寺)

 

Img_20191018221001     ‘紫式部日記絵巻断簡’(重文 鎌倉時代 13世紀 東博)

 

Img_0004_20191018221001     ‘西行物語絵巻’(重文 鎌倉時代 13世紀 文化庁)

 

Img_0002_20191018221001     鈴木其一の‘三十六歌仙図屏風’(部分 江戸時代 19世紀)

 

メインディッシュの佐竹本歌仙絵をたっぷりみたあとはこの感動をぎゅ
っと体に包み込んでおきたいので、ほかの作品はさらっとみるつもりだった。
でも、スゴイものがところどころに並んでいるのでビッグなオマケも有り難
く拝見した。驚くべき名品は本願寺が所蔵する国宝の‘三十六人家集’、会期中
に躬恒集、素性集、重之集、興風集が分けて飾られる。

金銀切箔などのきらびやかな装飾が施された料紙に能書家による和歌が書か
れたこの私家集は白河上皇の60歳を祝うためにつくられたもの。とびっきり
の名品なのでみる機会が少ない。だから、ええー、これが出ているの!まる
で目の前に宝物が現れたよう。また、躬恒と興風がみれたのは幸運だった。

東博にある‘紫式部日記絵巻断簡’をみるのは久しぶり。昨年白内障の手術を
して視力が1.5に回復したので単眼鏡を使わなくても鮮やかな赤やこげ茶
の輝きが心地よく目の中に入ってくる。これをみてしまうと秋によく展示さ
れる五島美の紫式部日記絵巻(国宝)が俄然みたくなった。

想定外の収穫が‘西行物語絵巻’。出家後の西行(1118~1190)が吉野、紀伊、熊野をめぐる旅の場面を描いたこの絵巻との遭遇を長いこと願っていたがようやく実現した。1993年に東博で行われた‘やまと絵展’にこれが出品されたが、当時しかとみた記憶がない。それは展示替えだったのか見れど見ず状態だったのか。図録をみながらそのうちリカバリーできるだろうと思っていたら、その後まったく縁がなかった。京都で西行に出会うとは。

鈴木其一(1796~1858)の‘三十六歌仙図屏風’はプロ野球のオールス
ターが全部載ったポスターみたいなもの。其一は掛幅でも描いておりいずれ
も尾形光琳の屏風を手本にしている。

| | コメント (0)

2019.10.17

待望の‘佐竹本三十六歌仙絵’展!

Img_20191017221001    ‘佐竹本三十六歌仙絵 小野小町’(重文 鎌倉時代 13世紀)

 

Img_0001_20191017221001      ‘大中臣能宣’(サンリツ服部美)

 

Img_0004_20191017221101      ‘藤原兼輔’

 

Img_0002_20191017221101      ‘藤原高光’(逸翁美)

 

京博ではじまった’佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美’(10/12~11/24)
をみてきた。この秋に開かれる日本美術関連の展覧会ではもっとも関心の高
かったのがこの特別展。もとは絵巻物だったものが36歌仙一人ずつに分割
された歌仙絵を複数以上みる機会がこれまで5回あったが、今回はその数を
大きく上回る究極の佐竹本歌仙絵展。37点のうち31点登場するのだから
これはもうひとつの‘事件’といっていい。

はじめてお目にかかったのは13点。ひとつ々目をこらして座っている歌仙
の姿をみた。どんな歌を詠んだかは後でみることにして、鑑賞エネルギーの
大半を使ったのが個性がそのままでている顔の特徴や衣装の色合い、柄。
表袴のあられ文が印象的なのが‘藤原高光’。6年前サントリー美でみたが、
すっかり忘れ初見のように長くみていた。

諏訪湖のほとりにあるサンリツ服部美が所蔵する‘大中臣能宣’(おおなかとみ
のよしのぶ)と遭遇したのは大きな収穫。この美術館へは2度でかけたが、
縁がなくやっと対面が叶った。薄緑の直衣がとてもソフトな感じで歌仙のイ
メージに相応しい。

ふっくらした顔つきが記憶に残る‘藤原兼輔’は個人コレクターの所蔵。今回
出品された個人蔵は全部で10点。佐竹本は美術愛好家の誰もが手に入れた
かったものだけに今も多くが個人の手元にある。それらがこうして結集した
のだからコレクターでない普通の美術好きにとっては特別な鑑賞機会である。

5点ある女流歌人のうち出品されたのは顔をみせない‘小野小町’(10/12
~11/4)と‘小大君’(11/6~11/24)。もっとも人気の高い‘斎宮女
御’は残念なことにでてこない。これまで2度みたのでまあいいか、となるが
31点も集結して‘斎宮女御’が無いというのは画竜点晴を欠く。どうしてダメ
だったのだろう。

これで佐竹本は31点みたことになる。なんだか大仕事したような気分。
残り6点との出会いはもうないように思うが、これだけみれれば十分。
ミューズに感謝。そして京博に乾杯!

| | コメント (4)

2019.10.09

お知らせ

拙ブログはしばらくお休みします。

| | コメント (0)

2019.10.08

美術館に乾杯! 足立美術館 その六

Img_0001_20191008215901     安田靫彦の‘王昭君’(1947年)

 

Img_0002_20191008215901     小林古径の‘楊貴妃’(1951年)

 

Img_20191008220001     前田青邨の‘知盛幻生’(1969年)

 

Img_0003_20191008220001     小杉放菴の‘金時’(1949年)

 

3年前の2016年、東近美で安田靫彦(1884~1978)の決定版とよ
べるような大回顧展があり主要な作品がドドっとでてきた。そして、その図録
の表紙に使われたのが足立が所蔵する‘王昭君’。この歴史画の傑作はおさまり
が良く回顧展を思い出すには恰好の図柄になっている。

安田の歴史画には中国の話も画題に選ばれる。王昭君は前漢の皇帝に仕えた
官女。匈奴の機嫌をとるため貢物として後宮の女が贈られた。帝は画工が醜く
描いた王昭君に決めた。ところが、会ってみると絵のように絶世の美女。
ええーこれは拙い!と思ったがもう遅い。王昭君は毅然として匈奴へ旅立った。ほかの女がしたように画工に賄賂を手渡し綺麗に描いてもらえばこんなことにはならなかったのに。世渡りが下手な王昭君はそれができなかった。

小林古径(1883~1957)の‘楊貴妃’も美術館自慢の絵。謡曲‘楊貴妃’の能舞台をもとに描かれており、玉すだれの動きや能役者のゆったりとしたしぐさが幻想的な能のイメージと自然に融合する。まだ能を鑑賞したことがないのでアバウトだが来年はギンザシックスの地下にできた能楽堂へ出かけようかなと思っている。

靫彦、古径とくれば前田青邨(1885~1977)はあるの?となるが、
勿論しっかり‘知盛幻生’がコレクションされている。これは習作的な絵で2年後、86歳の青邨は縦1.4m、横3.1mの大作を仕上げる。‘平家物語’では大物浦沖(現尼崎市)を出港した源義経一行の船が難破したのは壇ノ浦の合戦で海の藻屑と消えた平知盛の恨みのせいであるとされる。いま、まさに知盛の霊魂が義経たちに襲いかかってくる場面が描かれている。

小杉放菴(1881~1964)のユーモラスな‘金時’をみると、肩の力がすっと抜ける。岩から岩へとまさかりをもってジャンプ!たっぷりとった余白の真ん中に金時をすえる構図が決まっている。後ろにいる兎も金時に続いて跳ぶのだろうか? ちょっと無理かな。

| | コメント (0)

2019.10.07

美術館に乾杯! 足立美術館 その五

Img_20191007220401
    寺島紫明の‘舞妓’(1961年)

Img_0003_20191007220401
    伊東深水の‘湯気’(1961年)

Img_0002_20191007220401
    宇田荻邨の‘高尾の女’(1928年)

Img_0001_20191007220501
    入江波光の‘拈華菩薩’(1944年)

上村松園とともに人気の美人画として一世を風靡した鏑木清方の門下に兵庫
県明石市生まれの寺島紫明(1892~1975)がいる。回顧展がないの
でみた作品の数は少ないが、いい舞妓の絵が記憶に残っている。とくに惹か
れるのがここが所蔵しているもの。印象深いのが唇、帯や簪にみられる赤。
これがアクセントとなって色白で美形の舞妓を輝かせている。みているだけ
でドキドキしてくる。

鏑木清方同様、関東でもてはやされた美人画家が伊東深水(1898~
1972)。松園や清方との違いは画面にあまり余白をとらずモデルを大き
く描くこと。そのため女性の存在感をより感じることになる。‘湯気’は湯殿
で丸髷を結った女性が温かくした水につけた手拭いを絞る姿が絵描かれて
いる。浴衣の袖が濡れないよう端をくわえるところと立ちこめる湯気の描写
がじつにリアル。美人画というより日頃目にする生活のひとコマをすぐ近く
で見ている感じ。

宇田荻邨(1896~1980)の‘高尾の女’は忘れられない一枚。これを
みてすぐ連想するのが土田麦僊の‘大原女’。いかにも京都の洛外をイメージ
させる設定だが、女の顔がすごく整っていることに気がつく。働く女という
風ではなく気品のある女性を描くところが洗練された京都の風土を愛した
荻邨流の演出。

菩薩像の画家というと村上華岳がすぐ思い浮かぶが、その画風を彷彿とさせ
るのが入江波光(1887~1948)の‘拈華菩薩’。京都市生まれの波光は
華岳や榊原紫峰らと同じ美術学校で学んでいたので華岳の絵を意識したのか
もしれない。

| | コメント (0)

2019.10.06

美術館に乾杯! 足立美術館 その四

Img_20191006220001
    川端龍子の‘愛染’(1934年)

Img_0001_20191006220001
    榊原紫峰の‘梅花群禽’(1939年)

Img_0002_20191006220001
    西村五雲の‘漁閑’(1932年)

Img_0003_20191006220001
    山口華楊の‘深秋’(1972年)

川端龍子(1885~1966)のすばらしい花鳥画‘愛染’はほかの美術館で
おこなわれる展覧会にでたことがない。過去2度川端龍子展を体験したが、
いずれもみれなかった。大観、春草、松園らはでてくるのに龍子だけはダメ
というのがわからない。

‘愛染’に息を呑むほどしびれるのは一面落葉が散らされた池に二羽の鴛鴦が互
いの姿をながめながら円を描いていること。こういう動きをする鳥にどこか
で遭遇するのではないかと思わせるところがにくい。落葉の赤一色に浮き上
がる円のゴールドが目に焼きついている。現地でみれたのは貴重な鑑賞で
ある。

京都出身の榊原紫峰(1887~1971)はかなりの数ある。そのなかで
惹かれるのは背中が緑で前が白の目白の群れの愛らしい姿をとらえた‘梅花群
禽’。目白でも雀でも小さな鳥が群がっているとその嬉しそうな表情につい
感情移入してしまう。

それに対して一羽の鳥がぐっと存在感を発揮しているのが西村五雲
(1877~1938)の‘漁閑’。竹籠にとまりあたりをきょろきょろ見渡し
ているのはカワセミ。この鳥は中型で羽の鮮やかな青が特徴。バードウォッ
チングの趣味がないので実際にみたことがないが、もしそんな機会があり運
よくカワセミも遭遇し深い青の羽をみれたら気持ちいいだろう。

今日放送されたNHKの‘ダーウインが来た!’で奈良公園の牡鹿の激しい角突合
せがでてきた。そのシーンはまさに山口華楊(1899~1984)の‘深秋’。
動物画を得意とした華楊の見事な動感描写により画面になかにひきこまれ
る。つくづく上手いなと思う。

| | コメント (0)

2019.10.05

美術館に乾杯! 足立美術館 その三

Img_20191005221901     川合玉堂の‘鵜飼’(1931年)

 

Img_0002_20191005221901     橋本関雪の‘猿’(1940年)

 

Img_0001_20191005222001     松林桂月の‘山泉’(1940年)

 

Img_0003_20191005222101     山元春挙の‘奥山の春図’(1933年)

 

どんな組織でもそのメンバーの能力には順番がついている。日本画の世界で
も最前列にいる画家は高い知名度、人気を誇っておりビッグネームと呼ば
れる存在。その次の列にいるのが準ビッグネームのグループ。お金を払っ
てみる展覧会で関心があるのはこの2列まで。評判の高い美術館にはこうし
た画家の作品が数多くあり、展覧会にもよく出品される。

足立美を訪問して収穫だったのはビッグネームの面々のほかにこれまでほと
んどみたことのなかった準ビッグネームの画家たちに多くであったこと。
これにより日本画の世界が大きく広がった。出版社が日本画の全集を発行す
るときそこに選ばれる画家とか文化勲章受章者のことを一応ビッグネームと
しているが、川合玉堂(1873~1957)は勿論ここに入る。玉堂の
得意のモチーフが鵜飼。ここにもいいのがある。

橋本関雪(1883~1945)は日本画をもっている美術館ならどこでも
見られるという画家ではないが、馬や猿の絵で有名。猿は手長猿が描かれ
ることが多いが、ここにあるのはニホンザル。秋の季節には定番の柿を食べ
ようとする猿の姿がリアルに描かれている。とても親しみの沸く猿である。

山口県出身の画家というと狩野芳崖がいるが、もうひとりいい画家がいる。
それは文化勲章をもらっている松林桂月(1876~1963)。月明りを
バックにした白黒写真のような繊細な花鳥画が東近美にあるが、彩色を施し
たこの‘山泉’にも大変魅了される。流れの速い水流に集まる鳥たちが生き生
きとしている。

豊かな水量をたたえた渓流の描写に思わず足がとまる山元春挙(1871~
1933)の‘奥山の春図’はお気に入りの一枚。水の流れや波の動きのように
形がすぐ消えてなくなるものを描くのは大変難しい。そんなモチーフの質感
をこれほどうまく描き出せるのだからその画力は相当高いレベルにある。

| | コメント (0)

2019.10.04

美術館に乾杯! 足立美術館 その二

Img_0002_20191004222101
    竹内栖鳳の‘爐邊’(1935年)

Img_0003_20191004222101
   菱田春草の‘紫陽花’(1902年)

Img_0001_20191004222101
    上村松園の‘牡丹雪’(1944年)

Img_20191004222101
    鏑木清方の‘紅’(1928年)

足立美術館にある日本画コレクションがすごいなと思うのは人気の高い画家
の回顧展が開催されたとき、ここの所蔵品がよく出品されているから。大観
だけではなく日本画のオールスターが次から次と現れるのだからおそれいる。
竹内栖鳳(1864~1942)の場合、はじめて遭遇した大回顧展
(2013年 東近美)で‘爐邊’と再会した。そばにあるストーブに気持ちよ
くあたたまっている仔犬がじつに可愛い。動物が好きな栖鳳だからこそこん
ないい絵が描けるのだろう。

竹内栖鳳展の翌年同じく東近美で行われたのが菱田春草展。これ以上の作品
は望めないくらい主要な作品はほとんどでてきた。菱田春草(1874~
1911)の絵は4点が重文に指定されており(大観は2点)、それが全部
集結したのだから天にも昇るような気持ち。さらに嬉しかったのがずっと
鑑賞の機会を待っていた足立の‘紫陽花’が登場したこと。紫陽花のまわりを
蝶々が舞う光景が心に沁みた。

日本画家のなかで展覧会が度々開かれるのは横山大観、上村松園、東山魁夷。
そのため3人の図録の数が断トツに多い。2010年に開催された上村松園
(1875~1949)の回顧展も栖鳳、春草同様、決定版クラスだった。
‘牡丹雪’は魅了され続けている一枚。いつも感心するのだが、松園の美人画に
は出来が悪いなというのがない。どれも完成度が高くうっとりさせられる。

美人画というと西の上村松園に対する東の鏑木清方(1878~1972)。
11月に待望の‘築地明石町’がみれるので今から浮き浮きしている。‘紅’はこれ
まで4回くらいみた清方展でお目にかかった。松園の描く女性はラファエロ
の聖母のようなイメージだが、清方の美人画は近くでみるとそのしっとりし
た美しさに緊張してしまいそう。

| | コメント (0)

2019.10.03

美術館に乾杯! 足立美術館 その一

Img_0001_20191003222601
   日本画だけでなく日本庭園も魅力の足立美

Img_20191003222601

Img_0002_20191003222601
    横山大観の‘紅葉’(1931年)

Img_0004_20191003222601
    横山大観の‘曙色’(1940年)

Img_0005_20191003222701
    横山大観の‘雨はる’(1940年)

Img_0003_20191003222701
    横山大観の‘漁夫’(1946年)

大原美が西洋絵画の殿堂なら、島根県の安来市にある足立美は近代日本画が
自慢の美術館。そして、ここは大観美術館とも言われている。だから、横山
大観(1868~1858)好きは一度はでかけてみたいところだろう。
また、日本画に縁がない人でも旅行会社が企画する山陰の旅ツアーに参加す
れば名所観光プラスこの美術館も楽しめる。訪問するたびにびっくりするの
が広い駐車場に数多くの大型バスがびっしり並んでいること。すばらしい
日本庭園がみれるので人気の観光スポットにもなっている。

大観の絵の目玉が六曲一双の‘紅葉’、これは熱海のMOAにある尾形光琳の
国宝‘紅白梅図屏風’のような絵で秋になると展示され多くの人の目を楽しま
せてくれる。紅葉がこれほどきらびやかに装飾されて描かれているのはほか
になく、現代版の琳派をイメージさせる傑作。

1940年に描かれた海山十題20点のうち、8点が足立にある。これは
圧巻!お気に入りは海に因む十題の一枚‘曙色’。斜めにのびる波の線がいい
感じで上の4隻の帆船にすっと視線が移っていく。正方形に近い画面を使う
場合、上手いなと思わせる風景画のお手本のようになっている。

山に因む十題の‘雨はる’はこの美術館をつくった足立全康氏(1899~
1990)がはじめて手に入れた作品。大観のこの絵に魅せられた足立氏
は画集を切り取って額に入れ長いこと自分の部屋に飾っていたという。コレ
クターの好きな絵に対する執念は半端ではない。

‘漁夫’にも大変魅了されている。切り立った岩壁に三人の漁師が釣り糸を垂
れている。北斎の‘富嶽三十六景’に漁夫が網打つ姿を描いた‘甲州石班澤’と
いうのがあるが、大観はこれを意識したのかもしれない。岩山の塊が海に
せり出しているところが似ている。

| | コメント (0)

2019.10.02

美術館に乾杯! ルイス・C.ティファニー庭園美術館

Img_20191002222901
 松江市の宍道湖畔に2001年開館したルイス・C.ティファニー庭園美術館

Img_0002_20191002222901
   ‘窓:ヘレン・グールドの風景(鹿の窓)’(1910年)

Img_0001_20191002222901
    ‘テーブル・ランプ:蜘蛛の巣’(1900~05年)

Img_0003_20191002222901
         ‘花形花瓶’(1900~05年)

Img_0004_20191002223001
 ‘アート・ジュエリー:ブラック・オパール、ガーネット、サファイア、エナメル・ネックレス’(1915~20年)

山陰の観光名所、松江で思い出に残るところは松江城と宍道湖。この宍道
湖畔にあるのが島根県美と2001年4月に開館したルイス・C.ティファニー
庭園美術館。ティファニーのいい美術館ができたという噂を聞いてクルマで
出かけたのだが、いつごろだったかはもう覚えていない。アールヌーヴォー
調のすばらしいガラス作品が満喫できるだけでなくイングリッシュガーデン
も楽しめるのだから夢の楽園に紛れ込んだ気分。今では文化度の高い松江に
ふさわしい人気の観光スポットになっているにちがいない。

ルイス・C.ティファニー(1848~1933)はNY5番街の有名な宝飾店
ティファニーの二代目に生まれたが、家業は継がずガラス工芸やステンド
グラスの作家になった。ガレやラリックと同じくらい名が知られているか
らアールヌーヴォー展が開催されるときはよく作品にお目にかかる。

その数がグーンと増えたのはここを訪問したお陰。見ごたえのあるステンド
グラスの窓やテーブル・ランプをはじめとして花瓶、エナメル(七宝)、
アート・ジュエリー、銀製品、ブロンズ、家具、絵画、モザイクなどが数多
く飾られている。ええー、ティファニーがこんなにたくさんみれるの!とい
う感じ。

諏訪湖のほとりにある北澤美に出かけるとアールヌーヴォー様式でつくられ
たガレやドーム兄弟のガラス作品に感動するが、このルイス・C.ティファニ
ー庭園美術館でもテンションは高く上がったまま。工芸の装飾美にこれほど
心が反応する美術館はそうない。ここは嬉しいことにルイス・C.ティファニ
ーのほかに歌麿の美人画やガレ、ラリックといった豪華なオマケまでついて
いる。また行ってみたい。

| | コメント (2)

2019.10.01

美術館に乾杯! 島根県立美術館 その三

Img_0001_20191001222401
     ‘洛中洛外図屏風(誓願寺本)’(1615~1624年)

Img_20191001222401
    鈴木其一の‘流水千鳥図’(19世紀)

Img_0002_20191001222401
    菱田春草の‘秋景(渓山紅葉)’(1899年)

Img_0003_20191001222401
    橋本明治の‘鏡’(1966年)

Img_0004_20191001222501
    橋本明治の‘夏座敷’(1970年)

いろいろある絵画の楽しみ方のなかで大きな画面に描かれたものはあとあと
まで印象に残る。西洋絵画ではルーベンスをすぐ思いつくし、日本画では
京都の景観が俯瞰的に描かれた‘洛中洛外図屏風’がほかの絵にくらべると断
トツに大きい。

洛中洛外図は描き込まれた建物や人物の動き、まわりの木々などを時間をか
けてみると結構シンドイ。これが何点も並んでいると集中力が続かなくなる。
だから、美術館で1点だけ解説文とつきあわせながらみるのが一番樂。島根
県美では誓願本と呼ばれるものをじっくりみた。このころは単眼鏡を使って
なかったので細部まではとらえられず、今の京都でもみられる二条城などの
建物や歌舞伎や南蛮人、山鉾巡行といった目を惹くイベントを目に焼きつけ
た。

ここ1、2年でかけてない琳派の展覧会。来年あたりはどこかの美術館で賑
やかに宗達や光琳を輝かせてくれると嬉しいのだが。鈴木其一(1796~
1858)の‘流水千鳥図’でびっくりするのは流水の描き方がハッとするほど
モダンなこと。其一は人気グラフィックデザイナーにすぐなれる。

5年前、東近美で待望の菱田春草(1874~1911)の大回顧展が行わ
れ、主要作品がどどっとでた。出品作に含まれていたのが朦朧体で表現され
た‘秋景(渓山紅葉)’。盛り上がった岩をつたって下に流れる水の勢いが印象
深い。ぱっとみると橋本雅邦の画風を連想させる。

広島県出身の有名な日本画家というと平山郁夫や奥田元宋が頭に浮かぶが、
島根県では誰か、浜田で生まれた橋本明治(1904~1991)。
2004年にここで開かれた生誕100年を記念した回顧展に運よく遭遇し、
一気にこの画家と近くなった。そのなかで魅了されたのがバレリーナの舞台
前の様子を描いた‘鏡’と定番の舞妓さんの‘夏座敷’。太い黒の輪郭線は好みが
割れるかもしれないが、美しい顔立ちに心をふわっとさせられ続けている。

| | コメント (0)

« 2019年9月 | トップページ | 2019年11月 »