待望の‘歌川豊国展’!
歌川豊国(1769~1825)は浮世絵展が開催されるときには必ず登場
する人気の浮世絵師。ところが、なぜかこれまで回顧展に遭遇しなかった。
この絵師の作品がたくさん載った図録がないというのはどうもしっくりこな
い。それがようやく解消された。太田記念美で今、‘写楽を超えた男 歌川
豊国’(9/3~9/29)が行われている。
作品の数は140点弱、前期と後期に分けそっくり入れ替える展示をすると
推測していたが、今回はそうではなく部分的に替わるだけ。だから一回出動
すれば豊国を存分に楽しめる。豊国の出世作はなんといっても‘役者舞台之姿
絵’、そのなかで多くの浮世絵ファンを熱狂させたのが‘まさつや’、足と手を
大きく広げる姿がいかにも歌舞伎の舞台を思わせる。写楽の‘三代目大谷鬼次
の江戸兵衛’とかぶるので鬼次の悪役ぶりがいっそう目に焼きつく。
同じく太田記念美が所蔵している‘子どもの戯れ’にも惹きこまれる。3人の
子どもが障子の腰板に映る自分の表情を無邪気に楽しんでいる。こういう日
常のひとこまを生き生きと描くのが浮世絵のおもしろいところ。西洋絵画で
も風俗画はあるがこうした素の笑いがとりあげられるのはごく一部の絵だけ。
いくつもあった収穫のなかでじっくりみたのが‘三福神’。ここではめでたい
七福神に女がなっている。真ん中の打ち出の小槌を持っているのが大黒天、
右手に白い鼠をのせている。その右で鯛を釣りあげるのは恵比寿さん。さて、
残るは左の女性、ちょっとわかりにくいが布で琵琶をつつんでいる弁財天。
船首の大きな鶏が強く印象に残る。
もっとも興味深かったのが‘座頭の行列’、東博の浮世絵が飾ってある部屋へは
これまで何度も足を運んだが、この座頭の絵はお目にかからなかった。豊国
にもこんな戯画があったのか!目が悪いため座頭たちはお互いに協力して
丸木の橋を渡っている。これは忘れられない。
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