美術館に乾杯! 下関市美術館
東芸大美では数あるコレクションが定期的に公開される。今は足を運ぶこと
がなくなったが、追っかけ作品があるためできるだけHPで出品作をチェック
している。ここには近代日本画の歩みを概観できる名画がずらっと揃う。
そのひとつが狩野芳崖(1828~1888)の‘悲母観音’。アバウトだが
3~4年?に一度くらいのペースでお披露目されている。
これを描いた芳崖の出身地が山口県の下関市。そのため下関市美は芳崖の絵
をたくさん所蔵している。2008年東芸大美と下関市美のコラボで待望の
狩野芳崖展が実現し、画集に載っている代表作がほとんどでてきた。橋本
雅邦とともに近代日本画の基礎をつくった芳崖の回顧展を待ち望んでいたの
で天にも昇るような気持だった。‘懸崖山水図’は山間の谷間から割れたガラス
の細長い破片が飛び出してきたようなイメージ。この角々した鋭い崖を連ね
るのが芳崖流の山水画。
上村松園(1875~1949)の‘楚蓮香’は伝説の中国美人を題材にしてい
る。まわりに蝶を呼び込むほどの美貌の持ち主は唐の玄宗皇帝の頃、長安一
の美女とうたわれた楚蓮香。松園は4,5点描いており、これはその一枚。
蝶が誘われて舞うというのがとてもいい感じ。西洋画には一角獣の話がある
が、蝶のほうが女性の美しさとすぐ結びつく。
ここには藤田嗣治(1886~1929)の‘パリの小学校’がある。昨年の
藤田嗣治展(東京都美)に登場した。現地ではみた覚えがないので収穫の一枚
だった。そして、岸田劉生(1891~1929)の‘花持ち裸の麗子’も頬が
緩む作品。デューラーばりの超写実的に描かれた麗子像とは作風がガラッと
変わり漫画チックな麗子。劉生は愛する麗子をいろんなヴァリエーションで描
いた。そのどれもが心を打つ。
36歳の若さで亡くなった松本竣介(1912~1948)の‘街にて’はよーく
みるとシャガールの絵を彷彿とさせる。例えば、中央の女性が手が触れている
自転車。上のほうにあるもう一台には男が乗っている。ここに登場する人物は
みな違う方向に進んでおり、まさに街の通りの光景。竣介の感性と想像力は
やはりスゴイ。
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