美術館に乾杯! 大英博物館 その七
大英博のイメージにはいろんな美術が重なる。大きな遺物としては古代エジ
プトやアッシリアの王たちの肖像彫刻、そしてギリシャのパルテノン神殿を
飾っていた大理石彫刻などが印象深い。館内でこうしたものをまず目を焼き
付けるのがファーストステップ。そのあとはだんだん作品のサイズは小さ
くなり、やきもの、工芸品、宝飾品、武具にも時間がさけるようになる。
やきものでは中国の窯でつくられた優品が印象に強く残っている。といっ
ても、一部を除いてお目にかかったのは日本で開催されたやきもの特別展。
1999年に‘宋磁展’があり、国内の美術館や海外の美術館から宋代(北宋
960~1126年、南宋1127~1279年)の陶磁器の名品が結集
した。
ここに大英博の自慢のコレクションが全部で8点出品された。そのなかで最
も印象深かったのが大英博の中国陶磁を代表する作品、‘白磁牡丹唐草文鳳
首瓶’。視線が集中するのが鳳凰の首、尖った口先と鷲のような鋭い目。この
造形のインパクトが強すぎて量感のある胴に描かれた唐草文は注意が散漫
になる。
そして、これまた心を奪われるのが北宋の宮廷のために焼かれた汝窯の‘青磁
輪花盤’、伝世品が極めて少ないのでこれをみれたのは生涯の思い出。透明
感のある澄んだ水色の気品にみちた輝きが忘れられない。
蓮の花びら模様が見事に表された白磁の水注は出来のいいレリーフをみたと
きの楽しみと似ている。また、熊のユーモラスな姿が和ませる枕にも魅了さ
れる。何年か先、大英博を訪れる機会にめぐまれたら、絶品の鳳凰やこの熊
と再会したい。
| 固定リンク
コメント