美術館に乾杯! ウッドワン美術館 その四
戦後の日展の三山といわれた杉山寧(1909~1993)、東山魁夷
(1909~1999)、高山辰雄(1912~2007)のなかで作品
を見る機会が多いのは東山魁夷。これまでに5回くらい回顧展に遭遇した。
だから、作品には目が馴染んでいる。それに対し、杉山寧については東近
美のスフィンクスなどを単発的に展覧会でみることはあったが、画業全体
をつかまえるのはかなり遅れた。
ようやく回顧展に遭遇したのは2013年(日本橋高島屋)。高山辰雄展
(2008年 練馬区美)から5年も後だった。ウッドワンの‘しゅく’と
タイトルがついた白鳥の絵を息を呑んでみたのはこの回顧展よりはだいぶ
前。お目にかかった作品は多くはなかったが、どれもモチーフが独特の
緻密さで表現されておりなにか別格扱いにしたいような完成度の高さを感
じさせるものばかり。鳥は白鳥のほかに鶴、孔雀の絵にも魅了される。
山口蓬春(1893~1971)の‘月明’はインパクトのある鳥の絵。鴨が
一羽で飛翔する姿を描く画家というと琳派の宗達、蓬春は光琳の絵に刺激
を受けてこの鴨を描いた。1997年渋谷の松濤美であった回顧展にこの
‘月明’が出品され、強い磁力は放っていた。急角度で上昇する鴨の姿がカッ
コいいのでついみとれてしまう。
魁夷の‘ブレーデンスボーの森’はデンマークの風景、1962年54歳の
東山はデンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドをめぐる
写生旅行を行い目にした北欧の風景を作品にした。これはその一枚。昨年、
北欧をまわったのでこうした木々が厳しい気象環境を生き抜いている様子
はよくわかる。
高山辰雄の画風は色あいが山本丘人とちょっと似ている。‘朝の気’では農村
全体がもやっとしていてピンぼけした写真をみているよう。茅葺屋根の家のま
わりに立つ太い幹の木がどこか神秘的に世界を生み出している。
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