美術館に乾杯! オルセー美 その二十一
オルセーへ出かけて平たい絵画が特徴のナビ派の作品をじっくりみるように
なるのは2度目とか3度目以降の訪問からというのが正直なところ。
ボナール(1867~1947)は昨年国立新美でオルセーの所蔵品がどど
っと展示された回顧展があり、2014年に開催された展覧会では、ヴュイ
ヤール(1868~1940)、ドニ(1870~1943)、ヴァロッ
トン(1865~1925)らの作品がたくさん登場した。だから、日本で
もナビ派の知名度が上がってきたかもしれない。
ボナールは画風をいろいろ変えたが、ナビ派の立ち上げ時は‘クロッケーをす
る人々’や‘格子縞のブラウス’にみられるように奥行きも立体感のまったくな
い平板な絵をどやっとばかりに主張していた。切り絵のようにあらかじめ色
のついた形を画面にペタペタ貼っていくと出来上がりという感じ。こういう
絵なら小学生も得意。でも、子どもたちは装飾的に人物を表現することや目
を惹く赤や緑を使い画面に強いインパクト与えることまでは頭がまわらない。
ヴュイヤール(1868~1940)はボナールと同じ時代を生きた画家。
‘読書する人’とか‘緑色の帽子の女’はまるでフォーヴィスムのマティスの人物
画のよう。顔や頭はもちろん衣服まで心に浮かんだ色が自由に塗られている
。マティスとの違いは色彩のパワーが弱いため画面全体が象徴的でふわっと
していること。そのため、色彩の組み合わせがユニークな割にはそれが強く
刻まれない。
一方、大きな縦長パネルの連作‘赤い傘’、‘会話’は見ごたえのある作品。これ
は5点あるうちの2点、背景の野原や木々の森がうみだす穏やかな雰囲気が
じつに心地よく、画面の真ん中にいる女性たちが垣根を背にしてのんびりと
休んだり会話を楽しんでいる様子がとてもいい。そして、地面に模様となっ
てのびる日差し。これだけ強い光だと日傘がないと長くは外にいれない。
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