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2019.07.31

美術館に乾杯! 大英博物館 その六

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   ボッティチェリの‘豊穣の女神’(1478年)

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   ブレイクの‘歓喜の日’(1795年)

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   鈴木春信の‘雪中相合傘’(1767年)

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  喜多川歌麿の‘四季遊花之色香 上下’(1780年代)

美術本をみていると時々大英博が所蔵する絵画作品がでてくる。館内には
‘版画・素描’という展示室があるのでここが管理しているものと思われる。
でも常時展示ではなく年間でローテーションしながら特別展示という形で
公開しているはず。

ボッティチェリ(1445~1510)の素描はこれまでウフィッツィ美
からやって来たものをみる機会があったが、髪や衣装が風にたなびく様が
見事な線描で表された‘豊穣の女神’とはまだ縁がない。なんとしてもお目
にかかりたいが、日本で待っててもダメなような気がする。かといって
再訪問してもタイミングがあわないと対面できない。こういう素描の鑑賞
は思うようにはいかない。

テートブリテンに足を運べば数多くみれるブレイク(1757~1827)
だが、大英博には‘歓喜の日’という大変魅了される版画がある。目に飛び
込んでくる赤や青、黄色に‘おおー!’となったのはかなり前のこと。なにし
ろ回顧展に遭遇せず、日本でみることがほとんどない画家なので美術本で
感じたこの絵の強い印象がずっと続いている。果たしてみれるだろうか。

大英博の浮世絵コレクションはボストン、ギメ、シカゴ、メトロポリタン
といったブランド美と同様、超一級品。驚くほど摺りの良い作品が
里帰りするたびに浮世絵のすばらしさを実感する。お気に入りは鈴木春信
(1725~1770)の‘雪中相合傘’と喜多川歌麿(1753~
1806)の‘四季遊花之色香 上下’。5年前江戸東博であった‘大浮世絵
展’に出品されたが、天にも昇るような気持だった。

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2019.07.30

美術館に乾杯! 大英博物館 その五

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   ‘サットン・フーの鉄製兜’(7世紀)

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   ‘黄金のベルトバックル’(7世紀)

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   ‘バターシーの盾’(前350~前50年)

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   ‘青銅製のフラゴン’(前450年)

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   ‘アステカのトルコ石モザイク’(15~16世紀)

‘サットン・フーの鉄製兜’はイギリス人なら知らぬ者がないお宝中のお宝で
‘イギリスのツタンカーメンのマスク’と呼ばれている。1939年、東部
サフォーク州のサットン・フーでアングロサクソンの巨大な船葬墓が発見
され、この儀式用の兜や‘黄金のベルトバックル’、‘飾り留具’などの副葬品
が出土した。

カッコいい‘鉄兜’は覗き穴の上には銀の針金を象嵌し眉を表現する巧みな
細工がみられる。こうした豪華な副葬品から葬られたのは7世紀のアング
ロサクソンの王と言われている。

‘バターシーの盾’はアングロサクソン人より前にブリテン島の住民となっ
たケルト人がつくった工芸品の至宝のひとつ。3つの円のなかに洗練され
た渦巻き文様をあしらったデザインセンスが本当にすばらしい。前500
~後50年頃のケルトのラ・テーヌ文化にこんな抽象的な表現があったと
は!何から刺激をうけてこんな描写が生まれたのだろうか。

フランスで発見された‘青銅製フラゴン’は初期ラ・テーヌ美術の優品。フラ
ゴンはワイン壺のことでエトルリアで流行した形。興味深い造形をしており、
柄には口縁に手をかけた獰猛な犬をかたどり注ぎ口には小さなアヒルがいる。
芸が細かいことに感心する。

‘アステカのトルコ石モザイク’のインパクトの強さは半端ではない。アステ
カ人にとってトルコ石は火や太陽の光を表すものであり特別の価値をもって
いた。そのため儀式で使われる道具や王や神官たちの装身具の素材となった。
青の輝きが胴体を共有する2匹の蛇の存在感を浮き彫りにしている。

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2019.07.29

美術館に乾杯! 大英博物館 その四

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   ‘円盤投げ’(2世紀 原作は前450~440年)

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  ‘アウグストゥスの頭部’(前27~25年)

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   ‘ハドリアヌス帝の胸像’(118年)

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 ‘うずくまるアフロディテ’(2世紀 原作は前3世紀)

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    ‘ポーランドの壺’(5~25年)

古代ローマの彫刻をみたくてでかけたローマ国立博で最も感動したのが美術
の教科書にも載っている‘円盤投げ’。前5世紀に活躍した古代ギリシャの彫刻
家ミュロンの原作をローマ時代にコピーしたものだが、この別ヴァージョン
が大英博にもある。こちらは2011年西洋美で開かれた‘古代ギリシャ展’で
初公開された。足を運んだ方も多いかもしれない。

鍛え抜かれた筋肉のリアルな描写とスピード感を感じさせるアスリートの
躍動的な動きはギリシャ彫刻のスゴさをあますところなく伝えている。ミュ
ロンのオリジナルは1点もなくすべて模刻だが、これほど高い技術が発揮され
ていれば心に十分ヒットする。顔は本来円盤の方をみていたが大英博に収め
られる以前の18世紀に前を向く姿に修復された。

ローマ時代の皇帝のなかで肖像彫刻が多いのがアウグストゥスとハドリアヌス、
男性の肖像画への興味は女性に比べればかなり低いのに、彫刻に限っては関心
度は男女半々。だから、この2つ前には長くいた。とくに瞳を大理石とガラ
スで象嵌したアウグストゥスのブロンズ像は強い磁力を放っていた。

2世紀頃に模刻された‘うずくまるアフロディテ’は顔を向けている後ろ側から
みたほうが正面からよりは断然いいかもしれない。さらに離れてみるとそれ
はもうこっそりのぞき見しているのと同じ。この女神像にはそんな動きをさせ
てしまう危うい裸婦の魅力が秘められている。

‘ポーランドの壺’はローマ時代につくられたガラス製品のなかでも最高級品と
されたカメオグラスの一品。コバルトブルーのガラスの上に白いガラスが重
ねられており、表面の白いガラスだけを削りとり繊細な絵柄を描きだしてい
る。まるでパルテノン神殿のフリーズに装飾されたレリーフをみているよう。

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2019.07.28

美術館に乾杯! 大英博物館 その三

Img_20190728221601    ‘パルテノン彫刻 三女神’(前438~432年)

 

Img_0003_20190728221701    ‘パルテノン彫刻 虹の女神イリス’(前438~432年)

 

Img_0001_20190728221801    ‘パルテノン彫刻 馬を駆る人々’(前447~438年)

 

Img_0004_20190728221801   ‘エレクテイオン彫刻 カリュアティド’(前420~406年)

 

Img_0005_20190728221801   ‘ネレイデス・モニュメント’(前400年)

 

古代エジプトの遺物同様、大英博の代名詞となっているのがアテネ、アクロ
ポリスの丘に立つパルテノン神殿を飾っていた彫刻群。大胆にもこの神殿
彫刻をそっくりそのままイギリスに運んだエルギン卿にちなみ‘エルギン・
マーブル’と呼ばれている。そして、これらのギリシャ彫刻の最高峰といわれ
る写実性豊かな神々の像は1807年ロンドンで初公開された。

パルテノン神殿は2度みたのでエルギン・マーブルが神殿のどの部分にあっ
たものか手元のガイドブックと照らし合わせるとおおよそイメージできる。
‘三女神’は神殿の入口側にあたる東破風(切妻屋根の下の三角形の部分)に
あるもので衣服の皺の柔らかい曲線の表現が完璧にすばらしい。‘三女神’の
右隣に配置されている馬の頭部もインパクトが強く目に焼きついている。

‘虹の女神イリス’は西破風を装飾したもののひとつで生き生きとした姿に思
わず足がとまる。東破風の装飾のテーマが‘アテナ誕生’だったのに対し、こち
らは‘アテナとポセイドンの戦い’、虹の女神イリスはポセイドンに従っており、
右に描かれている。神殿の北側フリーズ(列柱上部を飾る長い帯状装飾)に
描かれたいるのがお気に入りの群像彫刻‘馬を駆る人々’。躍動的な馬に見入っ
てしまう。

装飾彫刻が剥がされたのはパルテノン神殿だけでなく、横に立つエレクテイ
オン神殿からも6体の女人柱(カリュアティド)のうち1体が外された。
このため、現地にあるのはコピー。‘ネレイデス・モニュメント’はギリシャ
神殿を模した廟堂、柱の間に立つ3体のネレイデス像の風にゆれる衣をみて
いるとラファエロが描いた‘ガラテイアの勝利’を思い出す。

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2019.07.27

美術館に乾杯! 大英博物館 その二

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   ‘人面有翼守護像’(前883~859年)

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   ‘ライオン狩りのレリーフ’(前645年)

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    ‘ウルのスタンダード’(前2600年)

古代エジプトの遺跡から出土した彫刻などはカイロの考古学博物館でもたく
さんみられるが、古代アッシリアの遺物は大英博でないとスケールの大きな
ものはみる機会がない。言葉を失うほど圧倒されるのが2頭の‘人面有翼守護
像(ラマッス)’。一見すると左右同じラマッスと思うが、足をみると左は
蹄(ひづめ)だから牡牛、一方右はこれとはちがいライオン。

王の‘ライオン狩り’の様子を描いたレリーフ(浮き彫り)にも心を奪われる。
果敢に襲ってくるライオンが剣や槍で倒される姿が目に焼きつく。これまで
数多くのレリーフをみたがこのライオン像が最高。とくにスゴイのが胴体の
槍の刺さったところから噴き出る血のリアルな描写。レリーフでこれほどの
激しさ、悲哀を表現できるのだから古代の職人の腕前は神業的。

イギリス人考古学者ウーリーが1928~29年にウルで発掘したシュメー
ルの王墓からはシュメール美術の傑作がいろいろでてきた。‘ウルのスタン
ダード’、‘牡山羊の像’、‘ゲーム盤と碁石’。‘ウルのスタンダード’は一方の面
にはシュメールの王の戦闘場面、もう一方には勝利を祝う饗宴の様子が描
かれている。

‘戦争’では木材、貝殻、ラピスラズリなどを象嵌することで王、兵士そして
戦車、馬を表現しているが、人物はみな目が大きく背丈は3頭身ぐらいしか
ない。なんだか指人形を連想する。この愛嬌のある顔に親しみがわくし風俗
画としてみるとおもしろい。

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2019.07.26

美術館に乾杯! 大英博物館 その一

Img_0001_20190726224101     大英博物館

 

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‘ラムセス2世胸像’(紀元前1250年)

 

Img_0002_20190726224201    ‘ロゼッタストーン’(紀元前196年)

 

Img_0003_20190726224201    ‘アニの死者の書’(紀元前1275年)

 

Img_0004_20190726224201     ‘狩猟の図’(紀元前1350年)

 

観光ではじめてロンドンへ行ったとき誰もが出かける大英博物館。パリの
ルーヴル同様、大英博は特別な場所。世界の美術館をめぐる旅はこの二つか
ら始まったといっていい。2000年に‘グレート・コート’ができたが、
最後に出かけたのは1990年なのでこれはみてなくもうかれこれ30年
近くご無沙汰している。

大英博には有名な遺物が数多くあるのでどこを中心にしてみるかはとても
迷う。そういうときに役に立つのが旅行ガイドブック。海外旅行のプロがお
薦めする必見のものが記されている。大英博ではまず古代エジプトのコーナ
ーに突進するのは上策。ここには10万点をこえる大コレクションがある。
彫刻で目を見張らされるのは厚いくちびると美しい顔が目に焼きつく‘ラムセ
ス2世胸像’、素材に使われているのは硬い花崗岩で重さは7.2トンもある。

そして、大英博で最も有名な‘ロゼッタストーン’、1822年フランス人シャ
ンポリオンがこの碑文から古代エジプトの象形文字ヒエログリフを解読した。
歴史の教科書に載っているものが目の前にあるのだからちょっと興奮する。
これがあのシャンポリオン物語のヒエロニムスか!感慨深くながめていた。

‘アニの死者の書’も興味津々。死んだ王家の書記官アニ(左から2番目白い
服を着ている)は最後の審判の結果を待っている。中央で犬の姿をした
死者の神アヌビスが天秤に載せたアニの心臓の重さ(左)を量っている。
右のダチョウの羽と釣り合えば無罪。晴れて冥界へ行け安住に暮らせる。

サプライズの絵画がある。それは貴族の墓の壁画に描かれた狩猟の絵。鳥
や魚のリアルな描写に目が点になる。古代エジプトにこんな写実的な生き
物表現があったとは。すばらしい!

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2019.07.24

美術館に乾杯! ギメ美術館

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    ギメ美術館の外観

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      ‘菩薩立像’(1~3世紀)

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     ‘仏陀頭部’(430~435年)

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 ‘ナーガに護られた仏陀坐像’(12世紀末期~13世紀初期)

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   ‘ターラー菩薩坐像’(12世紀末期~13世紀初期)

パリの有名な観光スポットであるエッフェル塔から北へ1㎞くらいのところ
にあるギメ美はヨーロッパで一番充実した東洋美術のコレクションで知ら
れている。日本でお馴染みなのは大きな浮世絵展が開かれるとき里帰りす
る春信、写楽、歌麿、北斎らの美人画や役者絵、風景画。今摺りあがった
ような色の輝きをみたら、いっぺんに浮世絵の魅力の虜になる。

でも、この浮世絵を見ようと思ってギメにとびこんだら肩透かしを食う。
浮世絵は常時展示されていない。ここで最も感激するのはインド、パキス
タン、そしてカンボジアなどの東南アジアでつくられた仏像の傑作。日本
でもこれらの彫刻を現地からもっている特別展がときどき行われるが、
ここの質の高さを上回るものに出くわすことはたまにしかない。一見の
価値があること請け合いである。

これがガンダーラ美術の真髄かと思わせるのが‘菩薩立像’。どうみてもこの
菩薩は男性のイメージ。インドの国立美を訪問するとガンダーラの仏像と
遭遇できるだろうが、インドは遠いからパリでこの菩薩に対面するほうが
手っ取り早い。北インドのマトゥラーから出土した‘仏陀頭部’はとても圧の
強い彫刻。この赤色砂岩でできた頭部は一度見たら目に焼きつく。

そして、サプライズの彫刻はまだある。それは‘アンコールの微笑み’とよば
れるカンボジアで12世紀末期から13世紀の初期につくられた仏像。
いずれも目を閉じ、微笑みをたたえて瞑想する姿がじつに美しい。‘ナーガ
に護られた仏陀坐像’、‘ターラー菩薩坐像’。クメール美術、恐るべし!これ
を見るたびに早くアンコールワットで出かけようと思う。

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2019.07.23

美術館に乾杯! パリ 装飾美術館

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   ラリックの‘チョ―サー・セイヨウサンザシ’(1904年)

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   ラリックの‘ネックレス・ハシバミの実’(1900年)

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 ラリックの‘ブローチ・ペンダント・2羽のツバメ’(1908年)

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 ラリックの‘ブローチ・竜に乗るキューピッド’(1888年)

パリは2010年に出かけて以来ご無沙汰している。このとき回った美術館は
6つ、そのひとつがルーヴルから歩いて10分ほどでたどり着く装飾美。ここ
へ行ってみたかったのはルネ・ラリック(1860~1946)の宝飾品の
コレクションが気になってしょうがなかったから。

ラリックのすばらしいジュエリーを多数所蔵しているのはポルトガルの首都
リスボンにあるカルースト・グルベンキアン美。ラリック本に載った宝飾品の
なかでこれはといういいものはほとんどここにある。例えば‘胸元飾り・トン
ボの精’とか‘孔雀’。まだ具体的な計画となっていないが、リスボンを再訪し
グルベンキアン美へ直行することは決まっている。あとはスペイン・ポルトガ
ルの新しい観光ルートの開拓次第。

パリの装飾美はグルベンキアンには叶わないが、日本の美術館ではとてもお目
にかかれないものが飾られている。だから、満足度は高い。‘チョ―サー・セイ
ヨウサンザシ’と‘ネックレス・ハシバミの実’は植物の緑が心をとらえて離さ
ない。金、七宝、真珠、ダイアモンドをちりばめた精巧な細工はラリックの
新しいジュエリーの創作意欲と豊かな美意識によって支えられている。

ラリックもガレ同様、ジャポニスムを影響を受けており、日本人にとっては見
慣れたツバメをモチーフにしたブローチペンダントをつくっている。そして、
彫金の‘竜に乗るキューピッド’は一般的なキューピッドの表現とは異なり東洋の
美術では定番の竜との組み合わせになっている。これは古典絵画でも彫刻でも
みたことがない。

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2019.07.22

大相撲名古屋場所 鶴竜 6度目の優勝!

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   白鵬を寄り切りで破った鶴竜

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    6度目の天皇賜杯

大相撲名古屋場所は千秋楽の横綱決戦で白鵬を破った鶴竜が優勝した。
優勝は昨年夏場所以来で6度目。結びの一番は見ごたえのある四つ相撲だ
った。鶴竜のほうが動きが良く有利な体勢をつくって最後は白鵬を寄り
切った。場所前、鶴竜は腰を痛めたというので状況によっては途中休場に
なるのではないかと思った。ところが、予想に反して前傾姿勢で前にでる
相撲が多く安定した取り口で白星を重ねた。

連勝が12日も続いたので全勝も十分ありえる雰囲気だったが、13日は
好調の友風(前頭7枚目)にはたき込みで土をつけられた。魔がさしたの
か前かがみでですぎたのがよくなかった。でも、翌日はその敗けを引きず
らず、勝ち負けが拮抗している関脇の御嵩海を一気の寄りでかたづけた。
そして、14日に琴奨菊に敗け再度1差をつけた白鵬との相撲を本割で
決着をつけた。

33歳の鶴竜は今場所で横綱在位32場所目。かれこれ5年も綱を張ってい
る。優勝回数はまだ6回なので、あと4回は優勝して10回の大台にの
せてもらいたい。体調管理をうまくやれば可能性はある。この勢いで秋
場所も制し連覇するといい流れになる。‘井筒’部屋の鶴竜をこれからも応援
していきたい。

ここで期待の力士をあげてみたい。筆頭は7勝8敗に終わった朝乃山
(25歳)、先場所の優勝で番付を大幅に上げ前頭筆頭となり前半は連日
上位陣との一戦。ひとつ負け越したが、いい相撲がたくさんあった。とに
かくこの力士は前にどんどんでていくところが魅力。これから場所毎に強
くなっていきそう。そして、注目したいのは鶴竜を破って殊勲賞を獲得し
た友風、11勝4敗は立派な成績。まだ24歳なのに顔は30歳をこえた
ベテラン力士のよう。この二人は有望。これから楽しみ。

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2019.07.21

仏像の楽しみ‘奈良大和四寺のみほとけ’!

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Img_0002_20190721215601   国宝‘十一面観音菩薩立像’(平安時代・9~10世紀 室生寺)

 

Img_0001_20190721215601   国宝‘釈迦如来坐像’(平安時代・9世紀 室生寺)

 

Img_0003_20190721215601   国宝‘義淵僧正坐像’(奈良時代・8世紀 岡寺)

 

Img_0004_20190721215701   ‘赤精童子立像’(重文 室町時代・1537年 長谷寺)

 

国宝の追っかけは2年前なかなか縁がなかった大徳寺の‘曜変天目茶碗’がみ
れたので今は‘済みマーク’モードに入っている。だが、これは絵画とかやき
もの、工芸に限った話。仏像彫刻についてはなんとかお目にかかりたいもの
が5,6点残っている。それを1点ずつみていく段取りをそろそろ具体的に
しなくてはいけないころ。

その計画を後押しするような展覧会が今、東博で開催されている。‘奈良
大和四寺のみほとけ’(6/18~9/23)。これは通常の観覧料620円を
払えばみることができるので最近例をみないお得な特別展。本館入ってすぐ
右の部屋に奈良の四寺から集結したすばらしい仏像が並んでいる。国宝の
‘十一面観音菩薩立像’、‘釈迦如来坐像’(ともに室生寺)、そして‘義淵僧正
坐像’(岡寺)はすでにみているが、再会して国宝クラスの仏像をみる楽しみ
がまたふつふつと沸いてきた。

とくに室生寺の‘十一面観音菩薩立像’のふっくらとした頬に大変魅了された。
現地へ出かけたときは一緒に並んでいる2mをこえる高さの‘薬師如来立像’
の磁力が強すぎてひとまわり小さい‘十一面観音’のほうはさらっとみた記憶
がある。だから、こうしてこの観音様をじっくりみれたのは幸運なめぐり
合わせ。

リアルな顔の表現をじっとみてしまう‘義淵僧正坐像’は過去2,3回岡寺で
はなく展覧会で対面したことがある。本人と向き合っているような感じにな
るので、どこの寺にある像かはどうでもよくなる。あらためて岡寺だという
ことに気がついた。

室生寺同様、長谷寺にも行ったが、このきりっとした大きな目が印象的な
‘赤精童子立像’はまったく覚えていない。これは大きな収穫だった。本尊の
‘十一面観音菩薩立像’があまりに巨大なため(10m以上)、そのイメージ
が長谷寺になっている。ここはもう一度出かけたい。

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2019.07.20

三国志はおもしろい!

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   ‘関羽像’(明時代・15~16世紀)

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   ‘銅鼓’(三国~南北朝時代・3~6世紀)

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  ‘罐’(後漢~三国時代・3世紀)

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   ‘虎形棺座’(三国時代・3世紀)

中国美術で関心を寄せている一番のものは青磁とか青銅製の大きなもの。
今東博で行われている‘三国志展’(7/9~9/16)にそれらがどのくらい
期待できるか見当がつかなかったが、入館してみると結構楽しめた。
そして、驚いたのはまわりに中国人観光客が大勢いたこと。彼らにとっ
ても三国志の話はおもしろいのかもしれない。

青銅でつくられた‘関羽像’はすばらしい出来映え。三国志物語に登場する蜀
の豪傑のなかで関羽は頼れる兄貴という存在。高校生のとき夢中になって読
んだ吉川英治の‘三国志’で関羽の武勇伝のくだりがでてくるたびにその強さ
に感嘆。関羽のイメージとぴったり合う像だった。

大きな青銅の鼓に思わず足がとまった。鼓の縁のまわりに蛙、騎馬人物像、
鳥がいるが、もっともインパクトがあるのが大きな蛙。全部で4匹。蛙は
特別の意味があるのだろうか。これは大きな収穫、やはり細工のいい青銅製
のものは魅了される。

今回のお目当てはじつは曹操の高陵から出土した白磁の‘罐’。これをみるた
めに出動したといっていい。見飽きさせない丸みのある形が心を揺すぶる。
こんないい白磁が曹操の墓にあったというのはサプライズ。大好きな三国志
と白磁がセットでお目にかかれるのだからいうことなし。

最後の展示室にとても興味を惹くものがあった。呉の墓におかれた‘虎形棺座’、
直方体の石材の両端に虎の顔と足が彫られている。顔の正面に立つと大きく
あけた口のなかには舌までしっかり表現されている。はじめてみる刺激的な
造形に遭遇するのは楽しい。長くみていた。  

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2019.07.19

大盛況の‘松方コレクション展’!

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  モネの‘睡蓮、柳の反映’(1916年) 6月NHKスペシャルより

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   ミレーの‘春(ダフニスとクロエ)’(1865年)

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    ミレイの‘あひるの子’(1889年)

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   ムンクの‘雪の中の労働者たち’(1910年)

上野の西洋美で行われている‘松方コレクション展’(6/11~9/23)を
みてきた。期待の絵は先月のNHKスペシャルでとりあげていたモネ
(1840~1926)の‘睡蓮、柳の反映’。チラシに2016年ルーヴ
ルで発見された幻の睡蓮が1年かけて修復され公開されるとあったので
関心をよせていたが、NHKはその修復をずっと追っかけていた。大変な
修復だったことが番組でわかったので目に力が入る。

上半分が欠けているが全体の大きさはオランジュリー美にある連作‘睡蓮’
(縦2m、横4m)と同じなので、連作のなかぶ入っていてもおかしくな
かった作品という話はすぐ納得する。展示室に入る前のコーナーで上半
分をデジタル推定復元した画像が大きく映しだされていた。AIにディー
プラーニングさせて描いたこの睡蓮をみているとたしかにオランジュリー
にいるような気になってくる。西洋美開館60周年を記念する展覧会に
相応しい大PJをみごとにやりとげた。拍手!

今回はこの絵1点買いなのでほかはさらっとみてひきあげた。これまで
西洋美に何度も通ったのでどの絵の前で足がとまるかはだいたい決まって
いる。大作で目を惹くのがミレー(1814~1875)の‘春(ダフニス
とクロエ)’とムンク(1829~1890)の‘雪の中の労働者たち’。
そして、ラファエロ前派のミレイ(1829~1896)の‘あひるの子
ども’はお気に入りの一枚。その横のロセッティの‘愛の杯’も見逃せない。

また、セガンティー二の‘羊の毛刈り’もいい感じ。初見で魅了されたドー
ビニーの‘ヴィレールヴィルの海岸、日没’は三井住友銀行の所蔵、ここに
も松方コレクションのひとつがおさまっていた。ドキッとしたのがスーチ
ンの赤い服を着たボーイが目に焼きつく‘ページボーイ’、現在ポンピドー
にあるこの絵もコレクションだったとは。

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2019.07.18

美術館に乾杯! オルセー美 その二十六

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   ギマールの‘喫煙室の腰掛’(1897年)

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    マッキントッシュの‘椅子’(1897年)

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   ガレの‘蜻蛉文脚付戸棚’(1904年)

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  シャルパンチエ&ビゴの‘食堂内装装飾’(1901年)

フランスのアールヌー・ヴォーが目に飛び込んでくる街はひとつは
ガレ(1846~1904)やドーム兄弟が斬新なガラス工芸をうみだした
ナンシー、そしてもうひとつは建築家ギマール(1867~1942)が
活躍したパリ。じつはナンシーにはまだ縁がない。パリから高速バスを利用
すれば1時間半くらいで到着するようなのでいつか訪ねてみたい。

ギマールが1900年のパリ万博に間に合わせるために1899年から大急
ぎでつくったアール・ヌーヴォーのデザインで装飾した地下鉄出入口、現在
88ヶ所あるそうだがまだ一つしかみていない。パリの街をあちこち動いて
また出くわすのを楽しみにしているが、同時にギマールの出世作である‘カス
テル・べランジェ’の門やベランダに施された植物を連想させるような曲線的
な装飾にもお目にかかりたい。オルセーに飾られている‘喫煙室の腰掛’も心
をふわふわさせる傑作。非対称でゆがみのある造形なのにどこか落ち着くの
は全体のバランスがうまくとれているから。並の美意識ではつくれない。

スコットランドで新しい建築や家具で名を知られたマッキントッシュ
(1868~1928)のイメージはなんといってもこの‘ハイバックチェア’
で固まっている。椅子単体だってアートという思いがあるので背もたれもぐっ
と高くなる。でもそれが違和感がなく存在しているところがマッキントッシュ
の才能。

ガレの戸棚がとてもユニーク。羽をのばした蜻蛉を脚に変身させるのはシュル
レアリスムのバブルイメージの発想。これは参った!そして、秘密の邸宅に
紛れ込んだ気分になるのが彫刻家のシャルパンチエ(1856~1906)と
陶芸家のビゴ(1862~1927)がつくった‘食堂内装装飾’。壁のまわり
や天井にしなやかに曲がってのびる木の枝に目を見張らされる。これも自然の
植物を連想させるアール・ヌーヴォー様式のひとつの形。

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2019.07.17

美術館に乾杯! オルセー美 その二十五

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    ガレの‘彫刻・手’(1904年)

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   ガレの‘蓋付壺・たまり水’(1890年)

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  ドーム兄弟の‘テーブルランプ・睡蓮’(1904年)

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   ラリックの‘飾りピン・芥子’(1897年)

ガラス工芸でフランスのアール・ヌーヴォーをリードしたエミール・ガレ
(1846~1904)のいい作品をもっている日本人コレクターはかな
りいる。これはガレが浮世絵などのジャポニスムに影響を受けわれわれ日本
人の琴線に響く花鳥をモチーフにしたものが多いことも大きく関係している。
ガレにのめりこむきっかけになったのが諏訪湖のほとりにある北澤美の訪問。
傑作‘花器・フランスの薔薇’と出会ったときの感激は今でも忘れられない。

そして、ガレの魅力に深くとりつかれることになった回顧展が2005年
江戸東博で開催された。ここにパリではみてないオルセー蔵の‘彫刻・手’や
‘蓋付壺・たまり水’が登場した。ほかにもエルミタージュやデュッセルドル
フ美、デンマーク王室コレクションの名品がずらっと並びその豪華なライン
ナップにテンションが上がりっぱなしだった。‘フランスの薔薇’とともに最
も魅了された‘手’は夜明りが少ししかともってない部屋でみたら、本物そっ
くりの指に飛び上がるほどドキッとするにちがいない。小さい頃お化け屋敷
で味わった怖さのイメージが重なって感情が乱れた。

ドーム兄弟(兄1853~1909、弟1864~1930)のガラス作品
にも魅了され続けている。北澤美やポーラ美でみた木々などを風景画風にし
た絵柄の細長い花器がとくに気に入っている。‘テーブルランプ・睡蓮’は
運良く世田谷美であったオルセー美展で遭遇した。とても洒落たデザインが
心を和ませる。

ガレ同様好きな人が多いルネ・ラリック(1860~1945)は箱根の
ラリック美とパリの装飾美でジュエリーなどを楽しんだ。いつかポルトガル
の首都リスボンを再訪問しグルベンキアン美にある傑作宝飾品の数々と対面
することを夢見ている。‘飾りピン・芥子’は日本に2度やって来たが、
1897年のサロンで国家買い上げとなった出世作。繊細でかつ華やかな
デザインが胸を打つ。

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2019.07.16

美術館に乾杯! オルセー美 その二十四

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   ブールデルの‘弓を引くヘラクレス’(1909年)

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    クローデルの‘熟年’(1913年)

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    ドガの‘14歳の踊り子’(1881年)

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   ゴーギャンの‘オヴィリ(野生)’(1894年)

近代以降につくられた彫刻で知っている作品の数が多いのはやはり
ロダン(1840~1917)。パリのロダン美へ足を運んだから美術本
にでている多くの作品を楽しんだ。では次が誰かとなるとすぐにはでてこ
ない。しかし、昨年オスロでヴィーゲラン(1869~1943)の見事
な彫刻をどどっとみたのでトップツーは決まった。

この二人以外で名前がぽんぽんと浮かぶのはブールデル(1861~
1929)、昨日とりあげたマイヨール(1861~1944)、クロー
デル(1864~1943)あたりまで。でも残念なことにこれまでみた
ものが少ない。そのため、‘弓を引くヘラクレス’はブールデルと深く結び
ついている。ヘラクレスが弓で狙っているのは怪鳥、岩に足を踏ん張り弓
を力強く引く姿は目を見張らせる。小さな顔は古代ギリシャの彫像風な
ためギリシャ神話の世界に誘われる。

カミーユ・クローデルの‘熟年’はカミーユとロダンの愛の関係を知ってみる
とつい過剰に感情移入してしまう。この彫刻はリアルすぎる。老婆(ロダ
ンの妻)に寄り添われた男(ロダン)に振り切られる女(カミーユ)。
芸術家の愛の物語で一番生々しいのはピカソとこのロダン。

彫刻もてがけたドガ(1834~1917)は‘14歳の踊り子’がピカ一に
すばらしい。作品の前に立つと本物の少女と向き合っているような錯覚を
おぼえる。バレリーナの足首はとにかく柔らかい。バレエみたのはエル
ミタージュ美の舞台一回だけ。最近はチャイコフスキーを聴いていないの
でバレエとの縁が薄くなっている。

ゴーギャン(1848~1903)の彫刻作品は昨年コペンハーゲンの
ニューカールスベア美でいくつかみた。予想以上のゴーギャンだったのは
ミューズのお陰、北欧まででかけた甲斐があった。オルセーにある‘オヴィ
リ’はタヒチの世界の色が強くあまり長く見ていると夢でうなされそう。

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2019.07.15

美術館に乾杯! オルセー美 その二十三

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     彫刻が飾ってある中央通路

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    カルポーの‘ダンス’(1869年)

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    フレミエの‘聖ミカエル’(1897年)

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    ダル―の‘鍛冶職人’(1879~89年)

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   マイヨールの‘地中海’(1905年)

オルセーには絵画だけでなく、彫刻、装飾・工芸、写真も飾られている。
時間的に余裕があればそうした作品もみれるのだが、鑑賞の対象はどうして
も絵画中心になってしまう。そのため、たしかに見たという実感があるのは
造形的にインパクトのあるいくつかの彫刻作品とガレのガラス作品などに限
られる。

カルポー(1827~1875)の‘ダンス’をよく覚えているのはお目当て
の絵画をみたあと中央通路のところで休憩していたとき目に入ったから。
とくに印象深いのが女性たちが満面の笑みを浮かべているところ。こんなに
喜びの感情表現が強く目に訴える彫刻はほかに見たことがない。

人気の観光地モンサンミッシェルは2008年訪問した。名物のオムレツは
あまり美味しくなかった以外は楽しい思い出。ガイドの説明でよく頭に入っ
ているのが聖堂の鐘楼の上に突き出るようにして立つ聖ミカエル像の話。
これは1897年彫刻家フレミエによって製作されたものでオルセーにはそ
の銅製のレプリカがある。じつにカッコいいミカエル像!

誰がつくったのか知らなくてもすごく目に焼きつく彫刻がダル―(1838
~1902)の‘鍛冶職人’。逞しい肉体をした職人の前かがみになった姿が忘
れられない。この彫刻とすぐむすびつく絵がある。絵画部門に展示してある
コルモン(1845~1924)の超大作‘カイン’。2つは力強い写実主義で
つながっている。

マイヨール(1861~1944)の作品をいつかどっとみたいと願ってい
るがまだその機会に恵まれない。これまでマイヨールを何点みただろうか、
両手にいってないような気がする。記憶に残っているのはプラハの近代美
だけ。ところでパリにマイヨ―ル美がある?そのため、オルセーでみた‘地中
海’の柔らかい裸婦像は貴重な体験だった。

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2019.07.14

美術館に乾杯! オルセー美 その二十二

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   ドニの‘木々のなかの行列’(1893年)

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   ドニの‘マレーヌ姫のメヌエット’(1891年)

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    ヴァロットンの‘ボール’(1899年)

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   ヴァロットンの‘化粧台の前のミシア’(1898年)

画家とかかわり方はあることをきっかけにぐっと強まることがときどきある。
絵画に関心をもちはじめたころは画集で知っている有名な画家たちの作品を
軸にして鑑賞を広げていく。そのため、知名度の低い画家の絵については軽
くみるかパスをすることが多くなる。オルセーでも最初の頃はナビ派の
モーリス・ドニ(1870~1943)やフェリックス・ヴァロットン
(1865~1925)の印象はとっても薄かった。

それが変わったのは2014年、ポスト印象派、新印象派、そしてナビ派に
スポットを当てて構成されたオルセー美展に遭遇したときから。また、ドニ
もヴァロットンも回顧展を一度経験したことが大きく影響し二人の魅力に
開眼することになった。はじめから食わず嫌いになる画家は少ないので、
画家との密着度はやはり作品をたくさんみることによって深まっていく。

ドニの‘木々のなかの行列’は背の高い緑の木々のインパクトが強烈。手前に
太い幹の木をおきその先にひと回り細い木をならべやや傾けたりカーブをつ
くり天にむかってスーっとのびるように描いている。このうす緑の木がこれ
だけ印象的なのは森のむこうにみえる青空が白い雲で独占されこちらを明る
くしているから。そのなかを淡いピンクの衣装をまとっ女性たちは進んで
いる。ペタッとした平板な絵だが、ここには動きがありその爽快な色使いも
心を揺すぶる。

2011年新宿の損保ジャパン美にドニが妻のマルトや子どもたちを描いた
肖像画がたくさん展示された。これでドニの人物画にいっぺんに参った。
ドニはまさに現代のラファエロだった!ピアノの前にいるマルトをモデルに
した‘マレーヌ姫のメヌエット’はマネやルノワールとはひと味違い優しさや
温かさが感じられるすばらしい肖像画。

スイスのローザンヌに生まれたヴァロットンはオルセー以外の美術館ではほ
とんどお目にかからない。だから、オルセーにある少ない作品がこの画家
のイメージ。強い日差しがつくる子どもや木々の影が強く印象に残る‘ボール’
はヴァロットンとのかかわり方は深くないのにどこか気になる絵だった。

そんな少しだけのつながりだったヴァロットンが2014年三菱一号館美で
大暴れした。ええー、ヴァロットンってこんないい画家だったのか!という
感じ。このヴァロットン展は前年の秋パリのグラン・パレでスタートし31
万人が押し寄せたという。‘ボール’同様、‘化粧台の前のミシア’でも明るい光
が目に焼きつく。

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2019.07.13

美術館に乾杯! オルセー美 その二十一

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   ボナールの‘クロッケーをする人々’(1892年)

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   ボナールの‘格子縞のブラウス’(1892年)

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   ヴュイヤールの‘読書する人’(1890年)

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   ヴュイヤール‘赤い傘(右)、会話(左)’(1894年)

オルセーへ出かけて平たい絵画が特徴のナビ派の作品をじっくりみるように
なるのは2度目とか3度目以降の訪問からというのが正直なところ。
ボナール(1867~1947)は昨年国立新美でオルセーの所蔵品がどど
っと展示された回顧展があり、2014年に開催された展覧会では、ヴュイ
ヤール(1868~1940)、ドニ(1870~1943)、ヴァロッ
トン(1865~1925)らの作品がたくさん登場した。だから、日本で
もナビ派の知名度が上がってきたかもしれない。

ボナールは画風をいろいろ変えたが、ナビ派の立ち上げ時は‘クロッケーをす
る人々’や‘格子縞のブラウス’にみられるように奥行きも立体感のまったくな
い平板な絵をどやっとばかりに主張していた。切り絵のようにあらかじめ色
のついた形を画面にペタペタ貼っていくと出来上がりという感じ。こういう
絵なら小学生も得意。でも、子どもたちは装飾的に人物を表現することや目
を惹く赤や緑を使い画面に強いインパクト与えることまでは頭がまわらない。

ヴュイヤール(1868~1940)はボナールと同じ時代を生きた画家。
‘読書する人’とか‘緑色の帽子の女’はまるでフォーヴィスムのマティスの人物
画のよう。顔や頭はもちろん衣服まで心に浮かんだ色が自由に塗られている
。マティスとの違いは色彩のパワーが弱いため画面全体が象徴的でふわっと
していること。そのため、色彩の組み合わせがユニークな割にはそれが強く
刻まれない。

一方、大きな縦長パネルの連作‘赤い傘’、‘会話’は見ごたえのある作品。これ
は5点あるうちの2点、背景の野原や木々の森がうみだす穏やかな雰囲気が
じつに心地よく、画面の真ん中にいる女性たちが垣根を背にしてのんびりと
休んだり会話を楽しんでいる様子がとてもいい。そして、地面に模様となっ
てのびる日差し。これだけ強い光だと日傘がないと長くは外にいれない。

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2019.07.12

美術館に乾杯! オルセー美 その二十

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    スーラの‘サーカス’(1891年)

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  スーラの‘ポール=アン=ベッサン、満潮時の外港’(1888年)

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   シニャックの‘マルセイユ港の入り口’(1911年)

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    レイセルベルへの‘舵をとる男’(1892年)

美術本に載っている画家の代表作をみるためにどういう段取りで美術館を訪
ねるか。とりあえず団体ツアーに参加して自由行動のオプションを使って
美術館にたどり着く。こういう選択をして上手くいく画家とそれでは半分も
みれない画家とにわかれる。点描画で画壇に新風をまきおこしたスーラ
(1859~1891)は団体ツアーに参加でもOKのケース。

作品の数が少ないスーラは幸運を味方につけてブランド美をまわると極上の
点描画が楽しめる。最高傑作はオルセーではなくてシカゴ美にある。
あの有名な‘グランド・ジャット島の日曜日の午後’。この絵は遺言により門外
不出となっているので出かけて行かないと一生みれない。2008年、運よ
くシカゴ美も入館するツアーをみつけ長年の夢が叶った。なにか大仕事をし
たような気分だった。

オルセーにある‘サーカス’はスーラの作品としては例外的にとても賑やかな絵。
人物の漫画チックな描写や動きのある構図はロートレックの踊り子や男優と
似ている。これとペアになる享楽的な絵がある。ゴッホをごそっともっている
オランダのクレラー=ミュラーに展示されている‘シャユ踊り’。

キラキラした光が体で感じられるのに音が聞こえてこない海景画は魅力いっ
ぱい。全点制覇を狙っている。一番多くもっているのはNYのMoMA、‘グラヴ
リーヌの夕暮れの運河’など4点ある。オルセーの‘ポール=アン=ベッサン、
満潮時の外港’もぐっと惹きつけられる。額縁まで点描にしてしまうのだから
点描へのこだわりは半端でない。

32歳で亡くなったスーラのあとをついで点描画に精を出したシニャック
(1863~1935)は10年間地中海の港町サン=トロペで過ごし、海景
画を数多く描いた。スーラとは対照的にシニャックは‘動’の風景画、‘マルセ
イユ港の入り口’はピンクや青のモザイクのような点々はまばゆいくらいに輝
いている。

レイセルベルへ(1862~1926)の‘舵をとる男’に200%参っている。
この浮世絵の描き方を吸収したダイナミックな構図が目に焼きついている。
いろいろな画家が思い浮かぶ。遠くの帆船はジェリコーの‘メデューズ号の筏’
をイメージするし、大きくうねる波濤は荒々しい海の絵を得意としたアメリカ
のホーマーがダブってくる。


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2019.07.11

美術館に乾杯! オルセー美 その十九

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   ベルナールの‘愛の森のマドレーヌ’(1888年)

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  ベルナールの‘日傘をもつブルターニュの女たち’(1892年)

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    セリュジエの‘護符’(1888年)

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   ラコンブの‘紫の波’(1896年)

世界の美術館をめぐり旅が一通り終わったら、次の夢は画家がでかけた土地
をみてみること。例えば、モネがよく描いたノルマンディの海岸にある奇岩
で有名なエトルタとか。また、ゴーギャン(1848~1903)がタヒチ
へ移住する前に滞在していたブルターニュ地方のポン=タヴァンなんかにも
関心がある。

人気の観光地、モン・サン=ミシェルは2008年に行った。ポン=タヴァ
ンはここからさらに西へ向かい大西洋につきでた駱駝の頭のようなところに
ある。ゴーギャンはここで20歳年下のベルナール(1868~1941)ら
と総合主義という新しい絵画のスタイルを生み出す。オルセーではこのポン
=タヴァン派を楽しむことができる。

そのなかで印象深いのはベルナールの‘愛の森のマドレーヌ’。森の中で真横
になって座っているのは画家の妹で頭と足の横にはいくらも隙間がないほど
画面ぎりぎりに描かれている。これほどぎりぎりに描かなくてもと思う一方
で、仮にもうすこし余裕があったらかえってインパクトが弱まるかもしれな
いと想像したりする。一見すると平坦な描写だが木々の垂直の線と人物の横
の線が上手い具合に融合しており奥行きは十分に感じられる。ゴーギャンの
絵もこんな描き方が多い。

‘日傘をもつブルターニュの女たち’は手前に座っている女だけをみると平板さ
が極端に目立つが、目が慣れたところでその後ろの光景をじっとみていると
だんだん画面がふくらみを持ってくる。不思議な絵である。小学校低学年の
子どもならすぐコピーできそう。

ゴーギャンとベルナールに刺激を受けたセリュジエ(1864~1927)
の‘護符(タリスマン)、愛の森を流れるアヴェン川’はとても小さな作品
(縦27cm、横21cm)。そのため、ぼやっとしていると見逃す。でも、
抽象絵画を連想させる自由な色使いが強い磁力を発しているので思わず足が
とまるかもしれない。カンディンスキーがこの絵をみたら裸足で逃げるの
ではないか。

ラコンブ(1868~1916)の‘紫の波’は2014年の展覧会にやって
来た。紫はゴーギャンが多用した色だが、ラコンブは大胆にも波全体を紫で
表現している。紫によって波の曲線は装飾性が強くなり幻想的な雰囲気が醸
し出される。紫にはいつも心が痺れるので長くみていた。

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2019.07.10

美術館に乾杯! オルセー美 その十八

Img_20190710221301    ゴーギャンの‘タヒチの女たち’(1891年)

 

Img_0004_20190710221301    ゴーギャンの‘悦び(アレアレア)’(1892年)

 

Img_0003_20190710221301   ゴーギャンの‘黄色いキリストのある自画像’(1891年)

 

Img_0001_20190710221301     ゴーギャンの‘白い馬’(1898年)

 

ゴッホ同様ゴーギャン(1848~1903)についても美術本に載ってい
る作品は全部見ようと追っかけ気分は維持したままでいるが、所蔵する美術
館が普通の団体ツアーだと行けないところが多いので見たい絵画がまだ10
点くらい残っている。昨年わが家は北欧に出かけデンマークのコペンハー
ゲンにあるニュー・カールスベア美で待望の‘花をもつ女’と対面することが
できた。だから、コンプリートにはまだまだ時間はかかるがまた一歩前進し
たという充実感がある。

ゴーギャンにのめりこむきっかけになったのはやはりオルセーで名画の数々
と出会ったこと。それまで画集をみてゴーギャンのイメージがつくられてい
たのが‘タヒチの女たち’。この絵からゴーギャン物語がはじまった。画面い
っぱいに描かれた二人の女の存在感がとにかくすごい。正面向きと横向き、
こういう構成を発想するのがゴーギャンが天才たる所以。これだけ接近でき
ればタヒチの世界がビンビンに感じられる。

‘悦び(アレアレア)’は人物や犬の描写は平板的なのに配置の仕方と装飾的
な色彩により空間の奥行き感をつくっているため、視線を左右前後に動かし
て楽しむことができる。そして、白の衣装を着た女の仏像を連想させる座り
方が親近感を抱かせる。後ろではマオリの偶像の前で踊っている人たちがみ
える。

ゴーギャンの自画像のなかでは威圧的な目つきがみるものをたじろがせる
‘黄色いキリストのある自画像’。この自信満々の態度にゴッホは相当プレッ
シャーを感じていたにちがいない。‘フィンセントよ、俺はキリストだって
黄色に描くのさ、そんなキリストはいないと言われたって俺にはこの黄色が
キリストの受難をもっともよく表していると思えるからだ。絵は見たまま
を描くのではなく想像して描くものだ’。ゴーギャンは湧き上がる想像に刺激
されて描く画家だった。

‘白い馬’にはドイツのマルクが描く生き生きした馬と似た雰囲気がある。
3頭夫々が違う描き方で手前で首を下に曲げる白い馬からはじまり、その後
ろの赤い馬は体がすこし傾き疾走中。そして右奥の横向きの馬はゆっくり
進んでいる。弧を描くように並べる表現がとても上手い。

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2019.07.09

美術館に乾杯! オルセー美 その十七

Img_0001_20190709214901     ゴッホの‘昼寝’(1890年)

 

Img_20190709214901    ゴッホの‘フィンセントの寝室’(1889年)

 

Img_0002_20190709214901    ゴッホの‘ガシェ医師の肖像’(1890年)

 

Img_0004_20190709214901    ゴッホの‘オーヴェールの教会’(1890年)

 

ゴッホ(1853~1890)の人気は相変わらず高く、秋には上野の森
美で回顧展が開かれる(10/11~1/13)。そして、現在西洋美の
‘松方コレクション展’にオルセーから‘フィンセントの寝室’が出品されてい
る。回顧展と並行しての興行となる期待の‘コートールド美展’に1点、
そのあと来年3月の‘ロンドン・ナショナルギャラリー展’では有名な‘ひま
わり’が登場する。これほどゴッホの名画が断続的にでてくると一年の多く
を楽しくすごせる。つくづくゴッホのファンでよかったなと思う。

若い頃ジュネーブに住んでいたとき、オルセーとアムステルダムのゴッホ
美に出かけ念願のゴッホの本物の絵と対面した。ゴッホは資力があり
熱い愛情を抱く数多くのコレクターが追っかけるので世界中の美術館で
所蔵されているが、オルセーには流石いいのが揃っている。ゴッホの‘イエ
ローパワー’がさく裂した‘昼寝’には敏感に反応する。これは敬愛するミレ
ーへのオマージュ。立ち尽くしてみていた。

今東京でみられる‘フィンセントの寝室’はゴッホが耳を切ったあと滞在した
サン・レミ時代のレプリカ。最初に描かれたのはゴッホ美にあるもの。
人がいない部屋というのは味気ないが、ベッドや椅子を静物画のモチーフ
である果物やお皿のように見立てるとこの絵はセザンヌの静物画の同類
とみえなくもない。透視図法で描かれているので物の配置に安心感がある。
そして、スッキリした色彩が強く印象に残る。

ゴッホが亡くなる前2ヶ月住んだのがパリ郊外のオーヴェール・シュル・
オワーズ。このとき37歳。ここでもいい絵をたくさん描いている。とく
にすばらしいのが‘ガシェ医師の肖像’と‘オーヴェールの教会’、ともに目に
飛び込んでくるのは強い青と緑とアクセント的に使われている赤。
なにしろはじめてのゴッホだから、こんな傑作をみると天にも昇るような
気持ち。ゴッホに乾杯!と心の中で叫んだ。

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2019.07.08

美術館に乾杯! オルセー美 その十六

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   ロートレックの‘踊るジャヌ・アヴリル’(1892年)

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   ロートレックの‘ジュスティーヌ・ディウール’(1889年)

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   ロートレックの‘赤毛の女’(1889年)

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   ロートレックの‘寝台’(1892年)

日本の美術館でロートレック(1864~1901)の回顧展が開かれる
ときは作品の多くが踊り子や男優を描いた版画で構成されることが多い。
そのため、ロートレックというと漫画チックな版画や大胆な構図が印象的な
ポスターを描いた画家というイメージができている。では油彩はどうなって
いるのか。

2008年からはじめたアメリカの美術館巡りによって、つくづく思った
のはアメリカのコレクターたちの印象派派やポスト印象派への思い入れが
半端ではないほど強いこと。とくにメトロポリタン、シカゴ、ワシントン
のナショナルギャラリー、ボストン、フィラデルフィアといったブランド
美術館では作品の数が驚くほど多い。もちろん、オルセーには名画がたく
さんあるのでパリへ行って印象派の通になれることはまちがいない。
そして、オルセーだけに満足せずアメリカの街へもくりだすとさらに通を
きわめられることは請け合い。ロートレックの油彩についてはとくにあて
はまる。

オルセーにある油彩の特徴は描かれる人物が一人の場合が多い。アメリカ
の美術館でよくお目にかかるカフェやキャバレーの賑わいを活写した群像
画は2点の大作があるが、漫画チック風な表現のためそれほど惹かれない。
これに対し、人気の踊り子にスポットを当てた版画を彷彿とさせる‘踊る
ジャヌ・アヴリル’はつい乗り出してみてしまう。

日本にやって来た‘ジュスティーヌ・ディウール’はとてもいい感じ。肖像画
というのはおもしろいもので写実的に描いたら見る人の心をとらえられる
というわけでもない。この絵のように顔はまあしっかり描くとしてほかは
ざざっと筆をいれるていどでもモデルの性格の強さまで伝わってくるいい
絵に仕上がっている。

肖像画で顔をみせないものは気がむかないが、‘赤毛の女’が例外扱いとして
いる。ドガの‘アプサント’同様、女の背中にいつも抱えている深い孤独感を
感じてしまう。そして、‘寝台’。こういうベッドのなかで見つめ合う若い
男女を描く発想に感心する。生活のひとこまをこれほど共感できる絵は
そうない。

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2019.07.07

美術館に乾杯! オルセー美 その十五

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    ドガの‘アプサント’(1876年)

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   ドガの‘アイロンをかける女たち’(1885年)

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    ドガの‘エトワール’(1877年)

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   ドガの‘観覧席前の競走馬’(1872年)

印象派・ポスト印象派のオールスターメンバーの面々はみな最初から同じ
関心度があったわけではない。例えば1回目のオルセーのときドガ
(1834~1917)への注目度は高くなかった。どうしてもマネの物議
をかもした‘草上の昼食’とかモネの風景画や睡蓮、ルノワールの‘ムーラン・
ド・ラ・ギャラレット’、セザンヌの‘りんごとオレンジ’、そしてこれからで
てくるゴッホやゴーギャンの絵に大多数の鑑賞エネルギーが使われる。

そのため、ドガの印象深い絵は風俗画の‘アプサント’と‘アイロンをかける女
たち’だけ。ほかの絵もみたはずなのにみたという実感がない状態だった。
踊り子を描いたものや競走馬を熱心にみるようになったのはアメリカの美術
館などをまわり、ドガの絵の関心がだんだん膨らんだころから。また、
2010年横浜美で開かれたドガ展も大きく貢献している。

この回顧展に出品されたのがバレエの主役の踊り子を天井から眺めている
ように描いた‘エトワール’。踊り子の絵はたくさんあるがこの上からの視点
で描く効果は大きい。手や足の動きがダイナミックになり踊り全体が生き生
きしている。踊り子がまるで美の女神の化身のよう。この絵と秋にやって来
るコートールド美蔵の‘舞台の2人の踊り子’がもっともいいかもしれない。

もともと風俗画をみるのが好きなので冷え切った男女の関係がカフェとい
う馴染みの場所で表現されている‘アプサント’には敏感に反応する。そして、
隣に飾ってある‘アイロンをかける女たち’は思わずにニヤニヤしてしまう。
辛いアイロンかけの仕事の手をやすめるとついつい大あくびがでる。この絵
にはドガの鋭い観察眼が発揮されているだけでなく画家自身の優しい心根が
反映されている。

ドガとマネは競馬の光景をよく描いた。‘観覧席前の競走馬’は地面に映る馬
の影がなかなかいい。この娯楽が強い日差しのなかで行われていることが
いっぺんにわかる。どうでもいいことだが、競馬の絵は何度もみているの
に馬券を買う習慣がないので本物の競馬を体験していない。

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2019.07.06

美術館に乾杯! オルセー美 その十四

Img_0004_20190706222101    セザンヌの‘女とコーヒーポット’(1895年)

 

Img_0002_20190706222101    セザンヌの‘カード遊びの人たち’(1892~96年)

 

Img_0001_20190706222201     セザンヌの‘水浴の男たち’(1890年)

 

Img_20190706222201    セザンヌの‘りんごとオレンジ’(1899年)

 

ここ数年、セザンヌ(1839~1906)との相性がとてもいい。
2015年2度目のフィラデルフィア美で念願の‘大水浴’に遭遇できセザンヌ
の追っかけにひとまず済みマークをつけた。あとは未見の作品との出会いを
ぼちぼち楽しむというスタンスになったが、嬉しいことにプラスαの名画が
ひょいひょい姿を現してくれる。

2016年にはデトロイト美蔵の‘セザンヌ夫人像’、そして昨年はセザンヌ
が大賑わい、‘赤いチョッキの少年’(ビュールレ・コレクション)、‘レ・ロ
ーヴからみたサント=ヴィクトワール’(プーシキン美)、そしてオスロ
国立美で再会した‘テーブルの上のミルク差しと果物’。
今年もこのいい流れが続く。秋の‘コートールド美展’(9/10~12/15、
東京都美)に‘カード遊びをする人たち’と‘大きな松のあるサント=ヴィクト
ワール山’が登場する。

セザンヌの楽しみ方はいろいろある。人物画に風景画に静物画。オルセー
には各分野の傑作がしっかり揃っている。人物画で印象深いのはおばさんの
存在感が際立つ‘女とコーヒーポット’。風景画については緑で埋め尽くされ
た‘マンシーの橋’や‘首吊りの家’が忘れられないが、ここでは残念なことに
サント=ヴィクトワール山の絵はみられない。

でも、それにかわりとびっきりいい風俗画‘カード遊びをする人たち’がある
ので溜飲が下がる。このカード遊びシリーズはメトロポリタンとバーンズ
・コレクションが所蔵する見物人が多くいるものにも心を奪われている。
農民たちが静かにカードに興じている様子がとてもいい。美術本でみて
対面を夢見ていたが、それが実現したときはちょっと興奮した。

同じくセザンヌの代名詞にもなっている静物画の傑作‘りんごとオレンジ’の
前に立ったときも体が震えた。それ以来この絵はMy‘好きな静物画’の1位を
キープしている。白い布がかけられたテーブルから落ちるかとおもわせる
不安定さを含んだ配置が果物に新鮮さとライブ感を与えている。こんな動
きのある静物画はほかにない。これをみるたびにセザンヌに乾杯!と叫ん
でしまう。

フィラデルフィアの‘大水浴’をみたあとで一連の水浴シリーズを総括すると、
‘水浴の男たち’はバーンズコレクションやロンドンのナショナルギャラリー
蔵の‘大水浴’よりもいいなというのは正直なところ。バーンズからは‘お前は
みる眼がないな’と叱られそうだが、‘水浴の男たち’の女性にはない元気さが
強く心に刻まれている。

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2019.07.05

美術館に乾杯! オルセー美 その十三

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   ルノワールの‘ムーラン・ド・ラ・ギャレット’(1876年)

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   ルノワールの‘ぶらんこ’(1876年)

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   ルノワールの‘田舎のダンス’(1883年)

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   ルノワールの‘ダラス夫人’(1968年)

3年前、国立新美でルノワール(1841~1919)のご機嫌な回顧展が
あった。オルセーとオランジュリーにあるルノワールを全部もってくるとい
う豪華なラインナップ、そのなかにはあの有名な‘ムーラン・ド・ラ・ギャ
レット’があり、‘田舎のダンス’も‘都会のダンス’も隣に並んでいるとなると
もうルノワールファンにとっては盆と正月が一緒に来たようなもの。楽し
くてしょうがなかった。

ルノワールが35歳のころ描いた‘ムーラン’と‘ぶらんこ’でとくに印象深い
のは人々が着ている衣服の紫がかった青。光の加減で強い色調となった青紫
をぐっと際立たせているのは地面を白く輝かせている木漏れ日。これほど降
り注ぐ光にリアリテイを感じさせる風俗画はほかにない。そして木漏れ日は
ぶらんこに乗る少女のドレスにも男性のジャケットの背中にも白い点々と
なってとこけんでいく。ルノワールは光の描写によって人々の生活を活気
づけた。これが印象派ルノワールの一番の魅力。

こうした初期の作品から7年後に描かれたのがダンス三部作、‘田舎’と‘都会’
はオルセーが所蔵し、‘ブージヴァル’はボストンがもっている。ご存知のよ
うに最初に描かれた‘ブージヴァル’と‘都会’のモデルはシュザンヌ・ヴァラ
ドン。はじける笑顔をみせている‘田舎’は後にルノワールの妻となるアリー
ヌ・シャリゴ。おもしろい話があって、ルノワールがシュザンヌばかりモデ
ルにするのでアリーヌが怒って、‘どうしてシュザンヌがモデルなの、私を
描かなきゃ承知しないわよ!’とねじをまいたらしい。

最初期の‘ダラス夫人’は黒い斑点入りのヴェールや帽子、衣服にマネの黒の
影響が強く出ている。馬に乗るポーズをしている夫人の上半身だけを描い
たもので、‘ブローニュの森の乗馬道’(1873年、ハンブルク美)のため
の習作。秋のコートールド美展にやってくる‘桟敷席’同様、黒の効果が心に
沁みる作品である。

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2019.07.04

美術館に乾杯! オルセー美 その十二

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  モネの‘アルジャントゥイユのレガッタ’(1872年)

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  モネの‘サン=ラザール駅’(1877年)

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  モネの‘積みわら、夏の終わり、朝’(1890年)

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   モネの‘睡蓮の池’(1899年)

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   シスレーの‘ポール=マレリーの洪水’(1876年)

印象派やポスト印象派のオールスターをとりあげるときの苦労は作品の選択。
あれもこれも選びたいと迷うが、目をつぶって静かに考えるとやっぱりこれ
かなというのに絞られてくる。オルセーは印象派の殿堂だから展示されてい
るのは傑作揃い。だが、印象派はどの美術館もコレクションに力を入れてい
るので、オルセーにあるのが群を抜いていいということでもない。

モネにしろルノワールにしろ、またセザンヌやゴッホ、ゴーギャンにしろ
世界中の美術館に分散して存在している。フランスだって、パリにはマルモ
ッタンやオランジュリーがあるし、イギリスならナショナルギャラリー、コ
ートールド、ロシアはエルミタージュ、プーシキン、スイスのチューリヒ、
ビュールレ・コレクション、オスカーラインハルト・コレクション、オラン
ダのゴッホ美やクレラー=ミュラー、そしてアメリカでもいい絵が数多くの
美術館に所蔵されている。メトロポリタン、ワシントンナ・ショナルギャラ
リー、ボストン、シカゴ、フィラデルフィア等々。

オルセーが身近な美術館に感じるのはパリへ出かける人が多いこともあるが、
日本の美術館で定期的に印象派展が開かれることも大きく関係している。
今年は秋に横浜美と上野の森美にルノワールとゴッホがやって来る。オルセ
ーのコレクションは2014年にどどっと出品され、3年前にはルノワール
展があり大きな話題になった。

印象派のど真ん中にいるモネ(1840~71926)については、お気に
入りの‘アルジャントゥイユのレガッタ’と‘サン=ラザール駅’、‘積みわら、夏
の終わり、朝’が2007年のモネ展(国立新美)に出品された。このオルセ
ーの気前の良さは好感度の上昇におおいに貢献する。古い時代のことは知ら
ないが、後年集中して描いた‘睡蓮の池’はまだ日本ではみていない。これから
期待したいところ。

モネより1年早く生まれたシスレー(1839~1899)は2点描いた
‘ポール=マレリーの洪水’に魅了されている。また、‘アルジャントゥイユの
歩道橋’にも思わず足がとまる。

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2019.07.03

2019年後半展覧会プレビュー!

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今年後半に開催される展覧会のなかで出かける予定のものをピックアップ
した。
★西洋美術
松方コレクション展 6/11~9/23  西洋美
ポルタンスキー展  6/12~9/2   国立新美
コートールド美展  9/10~12/15 東京都美
バスキア展     9/21~11/17 森アーツセンター
ゴッホ展     10/11~1/13  上野の森美
カラヴァッジョ展 12/26~2/16  あべのハルカス美
★日本美術
唐三彩展      6/22~8/25  出光美
三国志展      7/9~9/16   東博
岸田劉生展     8/31~10/20 東京駅美
美濃の茶陶     9/4~11/10  サントリー美
高麗茶碗      9/14~12/1  三井記念美
佐竹本歌仙絵   10/12~11/24 京博
正倉院展     10/14~11/24 東博
大浮世絵展    11/19~1/19  江戸東博

(注目の展覧会)
大宴会でも少人数の飲み会でも美術好きがいると必ず話題にしているのが秋
に東京都美で開かれる‘コートールド美展’。ロンドンのコートールド美は超
一級の印象派作品を所蔵していることで有名。日本でコレクションが公開さ
れるのは22年ぶり。マネの最晩年に傑作‘フォリー=ベルジェールのバー’
をはじめ傑作がずらずらと揃っている。本当に楽しみ!

日本美術では京博に大結集する‘佐竹本三十六歌仙絵’が最大の関心事。これ
までみたものにどれだけ上積みでき三十六に近づけるか。京博のことだから
期待できそう。また、新天皇即位を祝って開催される‘正倉院’ではお宝中の
お宝が出品される。


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2019.07.01

美術館に乾杯! オルセー美 その十一

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    モリゾの‘ゆりかご’(1872年)

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   ゴンザレスの‘イタリア人座の桟敷席’(1874年)

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    カサットの‘縫いものをする女’(1882年)

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   ピサロの‘小枝をもった若い娘’(1881年)

マネの肖像画に登場するベルト・モリゾ(1841~1895)は大変な
美人。しかも絵の才能があり印象派展にも参加すると人々の注目を集める。
‘ゆりかご’はとても心が和む絵。すやすや眠る赤ちゃんをお母さんが優しい
まなざしでみつめている。この絵がモリゾのイメージをつくった。その後、
マルモッタンやワシントンのナショナルギャラリーでもみる機会があり、
おおよそ画風がつかめた。27歳のときマネに弟子入りしマネの描き方を
吸収するが、師匠とはちがい人物の輪郭をはっきりさせないでぼかすこと
が多いためじっと見つめる肖像画とまではいかない。

これに対し、同じくマネに学んだエヴァ・ゴンザレス(1847~
1883)はモリゾよりインパクトがあり師匠譲りの黒を効果的に使った
作品を描いた。25歳のときの‘イタリア人座の桟敷席’はマネではないかと
錯覚させるほどいい絵。目がくりくりとして愛嬌のあるエヴァの才能を
マネはモリゾより高く評価していたのかもしれない。しかし、彼女は悲し
いことにマネが亡くなって6日後出産中に命を落とした。34歳という若
さだった。

2016年、横浜美でカサット展がありすばらしい母子画の数々を楽しま
せてもらった。2008年からスタートしたアメリカの美術館巡りで
カサット(1844~1926)をたくさんみた。その集大成のような形
で回顧展の遭遇したので今ではカサットはこの先ずっと付き合っていきた
い画家の仲間入りをした。ところが、オルセーで‘縫いものをする女’にお
目にかかったときはさらっとみただけだった。気持ちがモネやルノワール
らに200%向かっていたので仕方がない。でも、時が流れそのカサット
の存在感がぐんと増している。

ピサロ(1830~1903)には女性を描いたものもたくさんある。
‘小枝をもった若い娘’は木漏れ日が衣服にうつりこむところなどがルノワ
ールの‘ぶらんこ’とよく似ている。こういう人物を大きく描く作品という
と大原美にある‘リンゴを収穫する人々’などが目に浮かんでくる。以前
広島にいたころ尾道でピサロ展を体験したが、もう一回大規模な回顧展を
みてみたい。

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