美術館に乾杯! ウフィツィ美 その八
ホルバインの‘リチャード・サウスウエル卿の肖像’(1536年)
ネーデルランドの画家、ウェイデン(1400~1464)は50歳の頃
イタリアを旅行しサンマルコ聖堂にあったフラ・アンジェリコの‘キリストの
埋葬’に影響され同じテーマを描いた。そのため、石の墓の前でキリストが
十字架のように両手を横に広げる構図になっている。でも、構図は似ていて
もウェイデンの絵では登場する人物は皆深い悲しみで意気消沈している様子
がありあり、これをみたらとついほろっと涙がでるにちがいない。
ドイツのデューラー(1471~1528)は自画像の模写など4点あるが、
印象に強く残っているのは博士のひとりが黒人になっている‘東方三博士の
礼拝’、こうしたエキゾチックな絵は珍しいが後のバロックの王、ルーベンス
も数点アフリカの黒人を描いている。また、父親の肖像も大変上手い。
人物の描き方にひとつの型をもっているのが古典のクラーナハ(1472~
1553)と近代のモディリアーニ(1884~1920)、どちらも縦に
長いのは同じだが、クラーナハの‘アダムとエヴァ’は横に幅があるのでぱっ
とみには‘ああー、いつもの裸体だな’と思ってしまう。これが少し変わって
くるのは視線がエヴァのほうにとどまった場合。小顔のぶん顔から下が異様
に長いというイメージが刻みこまれる。
イギリスのヘンリー八世の宮廷画家となったホルバイン(1497~
1543)は肖像画の名手、その内面性までとらえる精緻な描写は群を抜い
ている。口をぐっとつむんだ姿がいい感じの‘リチャード・サウスウェル卿
の肖像’はすばらしい出来映え。まるで目の前にいるよう。
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