美術館に乾杯! ボルゲーゼ美 その三
クラーナハの‘ヴィーナスと蜂の巣をもつキューピッド’(1531年)
3年前、西洋美ではじめとなるクラナーハ展が開催された。予想を上回る大規模な回顧展だったが、クラーナハ(1472~1553)の代名詞になっている薄いヴェールで裸体を覆うヴィーナスのなかに期待していたボルゲーゼ蔵のものがなかった。
この異様に細長く描かれたヴィーナスをウィーンやブリュッセルなどいろいろな美術館でみてきた。最も惹かれているのがボルゲーゼにある蜂の巣をもっているキューピッドと一緒に描かれたもの。キューピッドが蜂に刺されるのは快楽には苦痛がともなうという教訓。
人間は瞬間的にちくっとするくらいの痛さはすぐ忘れてしまうので欲望を達成する嬉しさをどんどん膨らましていく。こういう後になってじわじわきいてくる痛みというのはとても厄介。自戒しなければいけない。
カラッチ一族がつくったボローニャ派の流れをくむドメニキーノ(1581~1641)に開眼するきっかけになったのは‘ディアナの狩猟’、狩猟祭りの真っ只中で視線が集中するのが水のなかに体を沈めてこちらをじっと見つめている若い女性。美術鑑賞眼のあったシピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿はこの絵がすっかり気に入り、ドメニキーノから強引にとりあげてしまったという。教皇パウルス5世の甥っ子だった枢機卿はあくどいことを平気でやる。
今月の20日まで西洋美で行われているルーベンス展にボルゲーゼの‘キリストの埋葬’が出品されている。これはルーベンスが最初のローマ滞在の際に描いたもの。雲間から差す光がとても印象的。
西洋彫刻でミケランジェロとともに心を200%奪われているベルニーニ(1598~1680)、ここには神業としか思えない傑作彫刻がずらっと展示してあるが、画家ベルニーニの作品もお目にかかれる。自画像が2点あり、画像は成人したベルニーニ。
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