美術館に乾杯! ヴァチカン博 その二
画家を思い浮かべるとき美術館もくっついて出てくることが多い。例えば、ラファエロ(1483~1510)ならフィレンツェのピティ宮、ここには大好きな‘椅子の聖母’がある。そして、ヴァチカン博もラファエロとしっかりむすびついている。最晩年の傑作‘キリストの変容’がお目にかかれるからである。
とてもドラマチックな絵で縦4m、横2.8mの大画面の上部にキリストの変容、下部に悪魔に憑かれた少年がキリストを指さす場面が描かれている。この目をむく少年の印象が強烈であの優しい聖母像で人々の心を救ったラファエロが最後はこんなバロック的な宗教画にたどりついた。その画風の変わりように驚かされる。
隣に飾ってある‘フォリーニョの聖母’でも幼な子キリストを抱く聖母は宙に浮かんでいる。下から見あげている天使の顔はドレスデンにある‘システィーナの聖母’の画面の下にいる可愛い天使とよく似ている。2枚は同じ時期に制作されたので天使はあちこちに飛んでいく。
カラヴァッジョ(1571~1610)の‘キリストの埋葬’は見ごたえ十分。大作なので人物の動きのある身振りやリアルな表情がぐっと迫ってくる。視線の先は死せるキリストではなくどうしても額にしわをよせる二コモデとその後ろで両手を広げ放心状態のクレオパのマリアにむかう。カラヴァッジョはこのマリアを描くときラファエロの‘キリストの変容’に登場する少年のポーズが頭にあったにちがいない。
カラヴァッジョとは5歳年下のレーニ(1576~1642)は人気のあった画家。そのためローマの教会や美術館で作品を見る機会が多い。ヴァチカンにも2点あり、画面いっぱいに描かれた‘聖マタイと天使’に思わず足がとまった。
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