美術館に乾杯! テイト・モダン その五
色彩の印象はほかの色やモチーフの形との関係で受ける印象が変わってくる。例えば、黒というと暗い、重いという感情が湧いてくるが、画面の多くが黒で占められるとその印象が深まる。でも、黒が主役の画面でもそうした思いがしない絵もある。
ミロ(1893~1983)の‘黒人女性の胸を愛撫する星’はそんな一枚。その秘密は黒の地にゆるい線でつくられる形が赤と黄色で彩られているから。また、キュビスムのコラージュのような文字や梯子をイメージさせる白の線も黒の重さを消えさせている。
ダダイズムをやりシュルレアリスムにも首を突っ込んだアルプ(1886~1955)だが、制作された木製のレリーフや抽象彫刻は難しい前衛アートという感じはなく、大半が気楽の向きあえる。何事も枠組みばかり考えていると本当の美しさや新規さがみえてこない。‘偶然の法則’はひまなとき時間つぶしに同じレリーフをつくってみようかと思わせる。それがアルプのおもしろさ。
画風が活動の時々で変わる画家がいる一方で、イメージがきっちり固まってそこから外れる作品は皆無という画家もいる。タンギー(1900~1955)は後者のタイプ。‘青空の日’というタイトルがついていても、それには関心がなく心を沈潜させてみるのは目の前の深海の世界。そして、光のない海底に突如として現れる奇魚との遭遇に思いをはせる。
イギリスのシュルレアリスト、ペンローズ(1900~1984)の作品をイギリス以外の美術館でみることはほとんどない。だから、はじめて‘自画像’をみたときは、へえー、こんなおもしろいシュルレアスム絵画があったのかと驚いた。
| 固定リンク
コメント