美術館に乾杯! ポンピドー・センター その九
絵画と長くつきあっているとたまに小学生の子が描いたものと変わりないな、という作品に遭遇する。デュビュッフェ(1901~1985)の‘ジャズ・バンド’はまさにそんな一枚。メインバーは左からピアノ、ギター、ヴォーカル、クラリネット、サックス、ベース。デュビュッフェはジャズが好きで自分でも演奏しデューク・エリントンを聴いてたらしい。
プリミティブアートのはじまりはピカソのアフリカの仮面をとりこんだ‘アヴィニョンの娘たち’、この絵の37年後にでてきたデュビュッフェの絵は紙で象った人物のシールを黒く塗り、等間隔にペタペタ貼ったようなイメージ。青や赤が混じっているがモノトーンによる表現はこういう絵にはぴったりくる。
アフリカの黒人彫刻がどーんとでているのがキューバ生まれのラム(1902~1982)が描いた‘物音’、キュビスミの影響が強くみられ‘アヴィニョンの娘たち’の顔の描き方が頭をよぎる。この絵は2年前の国立美のポンピドー展でお目にかかり興味深くみていた。
デュビュッフェやラムと同世代のブローネル(1903~1960)はルーマニアの出身。作品を知ったのは30年くらい前のTVの美術番組、頭でっかちの奇妙な裸体?怪物?になぜか惹かれた。シュルレアリストは写実性をベースにモチーフを変容させたダリがおり、また漫画チックな表現で人気のミロもいるが、ブローネルのシュールさも強く印象に残る。
デュビュッフェの再来かと思わせるのがバスキア(1960~1988)の‘奴隷市場’、デュビュッフェには‘アンズ色のドテル’という未開人を連想させる知識人の肖像画があるが、この‘奴隷市場’の左に描かれている髑髏にそっくり。デュビュッフェがバスキアの絵をみたら裸足で逃げるかもしれない。
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