美術館に乾杯! ティッセン・ボルネミッサ美 その八
ダリ(1904~1989)のシュール画が気になりだし画集を揃えたとき、なんとしてもみたい絵が数点あった。その一枚が長ったらしい名前がついている‘目覚める1秒前にザクロの周りを飛ぶ蜜蜂によって引き起こされた夢’、そのころは所蔵先はスイスの美術館になっていた。。
7年前はじめてテイッセンを訪問した際、最も楽しみにしていたのはカラヴァッジョとこのダリの奇想天外な絵。海にできた岩の上に横たわる裸婦に突進してくるのは2頭の虎。よくみると左の虎はなんと赤い魚の口の中からでてきている。このアイデアに200%KOされた。こんなことをダリはどこから思いついたのだろうか
そして魚の後ろにはザクロがありこの割れ目から魚が飛び出してくる。ザクロー魚ー虎の連鎖の意味はダリにしかわからない、いやダリだってわからないかもしれない。ザクロは裸婦の下にもありその周りを蜜蜂が飛びまわっている。そして、蜜蜂の羽音で裸婦は夢に誘われる。その夢がザクロから魚、魚から虎と変容する不思議な世界。
同じ裸婦でもデルヴォー(1897~1994)の絵では洞窟を舞台にして鏡に映る自分の姿をじっとみている。いつものように目はフランス人形のように大きく、その白い肌が暗闇に浮かび上がる。裸婦をみて心がザワザワしないのはブーシェとデルヴォー、それは目がとてもチャーミングでそこばかりみるから。
新古典主義時代のピカソ(1881~1973)が描いた‘鏡を持つアルルカン’も忘れられない絵。キュビスムの画風が角々した形で構成されとげとげしい印象なのに対し、この頃の絵にみられる人物描写は古典絵画にならってとても穏やかで丸々している。ヴェネツィア派のベリーニにこれとよく似たポーズをとる女性の絵がある。
キュビスムと並んで絵画の革命を色彩の表現によっておこしたフォーヴィスム、その中心メンバーがマティス(1869~1954)とドラン(1880~1975)、ロンドンにあるウォータールー橋を点描風の描いた作品はちょっと離れてみると発光体のように輝いていた。色彩の力をみせつけられる一枚。ドランに乾杯!
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