美術館に乾杯! プラド美 その一
旅行会社の団体ツアーに参加して海外旅行する場合、美術館へ入ることが行程のハイライトになっていることが多い。パリだと必ずルーヴルへ行ってダ・ヴィンチの‘モナリザ’をみるし、NYへ出かけるとメトロポリタンへの入館がお決まりの流れ。スペインのマドリードでも同じでプラド美が定番の観光スポットになっている。
マドリードへ足を運ぶたびに感心するのはこの街ではアートが効率的に楽しめること。プラドを中心にしてすぐ近くにティッセン・ボルネミッサがあるし、20分くらい歩くとソフィア王妃芸術センターでピカソのあの‘ゲルニカ’をみることができる。だから、古典絵画から印象派、近現代アートまでいろいろな美術が満喫できる理想的なアート空間になっている。まさにマドリードはパリ、NY同様アートが大きな観光資源になっている街である。
日本の展覧会シーンにプラド美はよく登場する。今年は2~5月に西洋美でベラスケスをメインにしたプラド美展が行われた。その目玉がお気に入りの‘王太子バルタサール・カルロス騎馬像’、2011年にはゴヤの誰もが知っている‘着衣のマハ’がやって来た。
プラドの見どころはいろいろあるがまずはスペインの絵画から。美術館で大きな絵に遭遇すると特別な鑑賞体験をしているという気分になる。若い頃から心酔しているエル・グレコ(1541~1614)の‘受胎告知’は縦3.15m、横1.74mもある大作。もとはマドリードの神学校の祭壇画を飾っていた。最初の出会いは日本で行われた大グレコ展、大原美の受胎告知と並んで展示されていた。Myカラーが緑&黄色なのはこの大天使が着ている緑の衣服に魅了されたから。
エル・グレコは肖像画の名手、そのなかでとくにぐっとくるのが‘胸に手をおく騎士’、繊細な描写によりうつしとった威厳のある表情が確たる内面性まで反映し、見る者に静かな緊張感を与えている。このリアルな描写のDNAがベラスケスやゴヤに受け継がれていく。
蝋燭に移そうと息を吹きかける燃えさしの火が真ん中の人物の顔を強く照らしている‘寓話’をみてすぐ頭をよぎったのがラ・トゥールの絵。同じタイプの絵は3点あるが、カラヴァッジョ、ラ・トゥールの200%参っているからこの絵にも深く吸いこまれる。エル・グレコは本当にスゴイ画家だなと思う。
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