美術館に乾杯! フォッグ美 その七
昨日終了した‘至上の印象派展 ビュールレ・コレクション’にピカソ(1881~1973)のとても気になる絵があった。1917年に描かれた‘イタリアの女’というキュビスム風の人物画だが、ピカソ特有の前衛さかあまり感じられず衣服の赤や緑と黒の組み合わせにより優しさとチャーミングさが際立つ女性になっていた。
ピカソは小さい頃から絵を描く特別な才能をもっていたから、先人たちの作品をみてエッセンスはすぐ吸収する。そのため、形に革命をもたらしたキュビスムをメインに作品を制作していても、ときどき一見ピカソ的でないものがでてくる。これはピカソは表の看板はキュビスムやコラージュにしていたがそれだけに執着ていたわけではないことのあらわれ。
フォッグにある‘大きな帽子を被った少女’はびっくりするほど印象派的でうっかりするとルノワールの絵と間違える。もっというなら、同じスペインの画家、あのベラスケスのマルガリータだって重なってくる。ピカソは偉大な画家たちの絵をよく知っており、その描き方を自分のものにする。とにかくピカソはなんでも描ける。これがスゴイ。
ドイツの表現主義の中心人物、ベックマン(1884~1950)の作品をアメリカでみる機会は意外に多い。‘俳優たち’のような画面に多くの男女がでてくる作品はメトロポリタン、グッゲンハイム、MoMA,にも飾られている。ドイツ系のアメリカ人も多くいるので日本ではほとんど縁のない画家たちが描いた色が濃くて鋭角的なイメージのする作品にも遭遇する。だから、パリやロンドンの美術館よりドイツが近いかもしれない。
大変魅了されているロスコ(1903~1970)とミニマリスムのステラ(1936~)。二人のいい絵がここにもある。ハーバード大の大壁画三連画は川村記念美にあるのと似ている。そして、分度器シリーズを拡張した‘ヒラクラⅡ’のスッキリした色彩の丸い帯にもKOされ続けている。
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