美術館に乾杯! MoMA その十
ともに現代アートの殿堂となっているパリのポンピドーセンターとMoMAだが、展示する作品には美術館の個性がでている。パリの美術館群では古典絵画からロマン派あたりまではルーヴル、印象派はオルセー、そして近現代アートはポンピドーというようにすみわけがされている。
これに対し、MoMAは現代アートが中心であるが、モネ、ドガ、スーラ、ゴッホ、ゴーギャン、アンリ・ルソー、ルドンといった画家まで楽しめるのがいいところ。そして、ポンピドーでみたという記憶がないモディリアーニ(1884~1920)についても‘アンナ・ズブロウスカ’とまだお目にかかれない‘新郎と新婦’を所蔵している。
モディリアーニより4年前に生まれたフランツ・マルク(1880~1916)はカンディンスキーらと一緒に活動したドイツの画家。マルクは牛の画家として有名になった。グッゲンハイムにある‘黄色い牝牛’に魅了され続けているが、MoNAの‘牛の世界’の大きな赤い牛も忘れられない。また、2015年に訪問したメトロポリタンでも赤い牛がでてくる‘牛の戦い’に遭遇した。
デュビュッフェ(1901~1985)の‘誕生’はじつにわかりやすい絵。たしかに人はこうやって女性の体から生まれてくる。これをみてすぐ思い浮かべるのはフランスやスペインにある太古の洞窟に描かれていた人間や動物、こういう人物の描き方は子どものお絵かきとそう変わらない。体に厚みがなく、男や女のシールをペタッと貼って仕上げたという感じ。この原始的とも思える描き方でデュビュッフェは生命の逞しさや無垢な感情を表現した。
絵画から物質的な要素を消し去り描く対象の形だけに分解してみせたデュシャン(1887~1968)はピカソのキュビスムをこえるほどのインパクトを絵画の世界に与えた。‘処女から花嫁への移行’はフィラデルフィア美にある‘階段を降りる裸婦’や‘大ガラス’の序章となった作品。花嫁をテーマにして描かれており、結婚前後の女性が左右にいるといわれても普通はそれはわからない。
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