美術館に乾杯! メトロポリタン美 その二十三
いろいろある現代アートのなかで抽象度の高い作品は時代の気分とのつながりはどこかへとんでいく。これと対極にあるのがポップアート。ウォーホル(1928~1987)やリキテンスタイン(1923~1997)をみればアメリカのゴールデンエイジ、1960年代の文化やエンターテイメントがすぐ蘇ってくる。
リキテンスタインをヨーロッパの美術館でみた記憶はロンドンのテートモダンとマドリードにあるティッセン・ボルネミッサくらいしか思いつかない。ポンピドーにあったかどうか、だから、やはりアメリカの美術館での体験によってリキテンスタインのイメージはつくられている。でも、その数は少ない。
関心が強いのに十分な数の作品に接してないと、最初にみたものが大きなウエートをもつ。その一枚がMETの‘外出’。1993年、二度目の訪問のときだった。描かれた若者をみてすぐ思ったのはレジョ。この印象が強すぎて、横の金髪の一つ目女性はよく覚えてない。
明快な色彩と幾何学的な形が心をとらえるケリー(1923~2015)、‘青・緑・赤’は正方形に近い大きな絵。色彩の力を強く感じるのは作品自体が大きいとき。どーんと緑や赤が現れると色彩が物言うような感じがしてくる。普段の生活でこういう色はしょっちゅう目のなかに入ってくるのに、アート作品になるとついしゃきっとしてみてしまう。これがアートの力かもしれない。
化粧品会社が制作するPR用のつくりものにみえてしまうのがローゼンクィスト(1933~2017)の‘火の家’、これもポップアート同様、都市が生み出すピチピチした暮らしのひとこまを感じさせる。いつか回顧展に出会うことを夢見ているが、実現するだろうか。
デイヴィス(1892~1964)の魅力は色の明るさとモチーフの形がゆるいこと。そのため画面にたくさん描き込まれていてもビジーに感じず愉快な気分につつまれる。
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