美術館に乾杯! MoMA その四
アンリ・ルソー(1844~1910)が何枚も描いたジャングル画のなかで視線を釘づけにさせるのがほかの動物を襲うライオンや虎。水牛を餌食にしたり、ときには人間をも食い殺す。ところが‘眠るボヘミアン’に姿をみせるライオンはこうした獰猛なイメージがまったくない。まるで子どもが楽しむ絵本にでてくるゆるキャラにちかいライオンのよう。
この違いはどうしたことか。はじめてこの絵をみたとき大きな衝撃を受けた。とくに印象深いのはモチーフの並べ方。画面の真ん中でライオンを横向きにさせ、すぐ横にボヘミアンを寝かせる。そして、マンドリンのような弦楽器を並行に置く。創作キットのピースを貼っていくような感じ。この平板的な描写がファンタジックな世界をつくるのにピタッと嵌る。ピカソにはこれが新鮮に映った。
オルセーにある‘蛇使いの女’とともにルソーの最高傑作といわれる‘夢’は縦2m、横3mのびっくりするほど大きな絵。ここに植物、動物、そしてソファーに横たわる裸婦が緑を基調に鮮やかな色彩でびっしり描かれている。2013年に訪問したとき、絵の前にいる人が最も多かったのがこの絵。NYのど真ん中に不思議な熱帯の光景が出現するのだから、脳が大いに刺激され生命力に富む原始の空間をさまよう気分になっているのかもしれない。
彫刻的な人物描写で明快な画風をつくったレジェ(1881~1955)、ここには5、6枚飾られているが‘大きなジュリー’がお気に入り。田園にサイクリングでやって来た少女は手に花をもち、まわりには蝶々が飛んでいる。それにしても、レジェの描く人物は男でも女でもみな鼻がデカい。みるたびに焼きつけられる。
デ・キリコ(1888~1948)のイメージとして頭にこびりついているのはマネキン人形、静謐な空気につつまれた街の一角に吟遊詩人やミューズなどのギリシャ神話の主人公として登場し、ときには恋するカップルが描かれる。
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