« 2018年1月 | トップページ | 2018年3月 »

2018.02.28

美術館に乾杯! MoMA その七

Img     バッラの‘街灯’(1909年)

Img_0001     ボッチョーニの‘サッカー選手のダイナミズム’(1913年)

Img_0002     ボッチョーニの‘笑い’(1911年)

Img_0003  セヴェリーノの‘バル・タバランのダイナミックな象形文字’(1912年)

日本画家の加山又造が若い頃のめりこんだのがイタリアの未来派、主要なメンバーはバッラ(1871~1958)、ボッチョーニ(1882~1916)、セヴェリーノ(1883~1966)。

彼らの作品が楽しめるのはイタリアでは3カ所、ローマの国立近代美、ミラノのブレラ美、そしてヴェネツィアのグッゲンハイム美。では、イタリア以外の国ではどこでみれるのか、パリのポンピドーにはありそうな感じだが意外にもみた記憶がうすい。未来派の一大拠点となっているのはNYでMoMAとグッゲンハイムへ足を運ぶと傑作の数々とお目にかかれる。

未来派との接触があったのはNYの美術館の方が先、この鑑賞体験が道案内となり後に本家のローマ国立近美にあるすばらしいコレクションとの遭遇が実現した。未来派の色彩はイタリアらしく彩度が強く画面の密度はとても濃い、そしてモチーフを抽象化してスピード感にあふれる造形に変容するのが特徴。

ここにあげた4点がとくに気に入っている作品。バッラの‘街灯’ははじめてみたときすぐ蛾を連想した。MoMAにはボッチョーニが6点もありどれも心を虜にする。‘サッカー選手のダイナミズム’は何時間みててもサッカーのイメージが湧いてこないが、‘笑い’はでぶっちょの女が天真爛漫に微笑んでいるのがすぐわかる。

セヴェリーノの‘バル・タバランのダイナミックな象形文字’はなかなかの傑作、キュビスムの要素がみられドイツ表現主義のグロスらの作風も重なる。インパクトのある赤を多く使ってアクセントをつけた丸みのある塊は目をそらさせないほどの力がある。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.02.27

美術館に乾杯! MoMA その六

Img_0004     ワイエスの‘クリスティーナの世界’(1948年)

Img_0001     ホッパーの‘ガソリンスタンド’(1940年)

Img_0002     ホッパーの‘ニューヨークの映画館’(1939年)

Img     バルテュスの‘街路’(1933年)

MoMAにはピカソやダリ、シャガールとともに忘れられない絵がある。それはワイエス(1917~2009)の代表作‘クリスティーナの世界’。たぶん、この絵は日本で何年待ってもみられることはないだろう。MOMAにとってはお宝中のお宝だから貸し出しはまず無理。

ポロックやロスコといった抽象画家を横におくとして、すっと画面のなかに入っていけるアメリカの画家で最も魅了されているのはホッパー(1882~1967)とワイエスとホーマー、そしてハドソンリバー派。ホッパーの代表作‘夜ふかしをする人々’はシカゴ美にあり、ワイエスの最も有名な絵はニューヨークで展示されている。

2013年、久しぶりにクリスティーナに会いワイエスに惚れ直したが、その3年後マドリードのティッセン・ボルネミッサ美を再訪したときなんとワイエス展が行われていた!回顧展に遭遇することを夢見ていたので天にも昇る気持ち。購入した図録をときどき開きその精密な写実描写に心を奪われ続けている。

MoMAにあるホッパーは‘ガソリンスタンド’、‘ニューヨークの映画館’、‘夜の窓’、‘線路わきの家’の4点。アメリカに住んだことがないので市民生活に対する実感がないが、映画や小さい頃みたTVドラマにはクルマ社会を象徴するガソリンスタンドの光景はよくでてくる。でも、ホッパーの絵には活気がない。あたりは静まり返っていてあの繁栄を極めるアメリカはどこへ行ったの、という感じ。

今は映画館で新作映画を楽しむことはほとんどないが、学生のころは‘ニューヨークの映画館’にいる女性のように席の後ろで立ち見をして次の上映を待つことがよくあった。話題の日中合作‘空海’がはじまったので心が劇場に向かっているが、問題は隣の人の関心が弱いこと。

4年前、東京都美で回顧展があったバルテュス(1908~2001)、‘街路’は‘クリスティーナ’同様、美術館自慢のコレクション。1回目のMOMAではバルテュスが遠い存在だったので、この絵にはまったく縁がなかった。2013年にようやくお目にかかれた。おかげで翌年の回顧展が手ごたえ十分で楽しめた。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2018.02.26

展示のセンスがいい‘寛永の雅’展!

Img_0003    本阿弥光悦・俵屋宗達の‘鹿下絵新古今集和歌巻断簡’(17世紀)

Img     狩野探幽の‘桐鳳凰図屏風’(左隻 17世紀 サントリー美)

Img_0002     野々村仁清の‘色絵花輪違文茶碗’(17世紀 サントリー美)

Img_0001     野々村仁清の‘白釉円孔透鉢’(17世紀 MIHO MUSEUM)

国立新美でビュールレコレクションを堪能した後、すぐ近くのサントリー美へまわり‘寛永の雅 江戸の宮廷文化と遠州・仁清・探幽’(2/14~4/8)をみた。

すごく前のめりになる展覧会ではないが、サントリーはこういうタイプの企画展ではいいセンスを発揮するからやはり見ておきたい。期待は野々村仁清のやきものだが、予想以上の数を集めており流石、サントリーといった感じ。

絵画では久しぶりにみた2点の前に長くいた。本阿弥光悦(1558~1637)と俵屋宗達によるお馴染みのコラボ‘鹿下絵新古今集和歌巻断簡’と狩野探幽(1602~1674)の‘桐鳳凰図屏風’。宗達が描いた鹿はMOAなどにもあるが、鹿の群れはサントリーがもっているものが一番多い。これは鹿の動きが羽生選手の4回転ジャンプをVTRで連続した画像にしてみせるのと同じようなイメージ。

鳥の中でも別格の存在なのが鳳凰、金地の背景に番の鳳凰が装飾的に表現された水流を挟んでむつまじく見つめあっている。探幽のなかではこの絵がもっともグッとくるかもしれない。

野々村仁清のやきものの魅力は何といっても端正なデザイン力。なかでもサントリーにある‘花輪違文’の模様が心を打つ。これとMOAが所蔵する‘金銀菱文’がもっているグラフィカルな感覚には驚かされる。仁清は瞬間的に時代をつきぬけるアートの領域に飛躍したにちがいない。

そして、側面に丸い穴を散らした‘白釉円孔透鉢’もじつに自由でおおらかな意匠。仁清に乾杯!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.02.25

名宝揃いの‘仁和寺と御室派のみほとけ’展!

Img_0004     国宝‘千手観音菩薩坐像’(奈良時代 8世紀 葛井寺)

Img     国宝‘薬師如来坐像’(平安時代 1103年 仁和寺)

Img_0001     ‘馬頭観音菩薩坐像’(重文 鎌倉時代 13世紀 中山寺)

Img_0002     国宝‘宝相華迦陵頻伽蒔絵冊子箱’(平安時代 10世紀 仁和寺)

出動が遅くなったが現在東博で行われている‘仁和寺と御室派のみほとけ’(1/16~3/11)をみてきた。事前に得た情報から今回のお目当ては2/14から展示されている大阪の葛井寺(ふじいでら)にある国宝の‘千手観音菩薩坐像’一本にしぼっていた。

この最古の千手観音にはじめて会ったのは1995年奈良博で開催された‘日本仏教美術名宝展’、仏像のお宝と数々遭遇し一生忘れられない展覧会になっているが、特別大きな感銘を受けたのが葛井寺の千手観音だった。このクラスの仏像に会えるのは生涯に一度くらいと思っていたのに、運よくまたみることができた。ミューズに感謝!

いろいろある仏像のなかで千手観音の魅力は突出している。鳥の羽のようにもみえる左右から出ている手の束、数えきれないほどの手がびっしり密集するこのボリューム感に目が釘づけになる。こんな圧の強い千手観音はほかにみたことがない。こういうのをみると仏像をまた追っかけたくなる。

仁和寺にある仏像や仏画などのお宝はこれまで現地に足を運んだり展覧会でだいたいみているが、ひとつ残っていたのが檀象の国宝‘薬師如来坐像’、丹念に彫られた10cmたらずの薬師如来、国宝館で見る機会がなかったので幸運なめぐり合わせ。係員の催促をかいくぐって粘り強くみていた。

ほかの寺からも仏像がたくさん集結していたが、もっとも魅了されたのは福井の中山寺にある‘馬頭観音菩薩坐像’、怖い顔をした馬頭観音の迫力に圧倒されっぱなし。これまでみたもののなかでは最上位のランクに即登録した。

平安時代につくられた‘宝相華迦陵頻伽蒔絵冊子箱’は国宝展などが開催されるときはよく出品される定番の蒔絵。リズミカルに描かれた宝相華唐草や迦陵頻伽の文様にいつも夢中にさせられる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.02.24

祝 スピードスケート・マススタート 金メダル カーリング女子 銅メダル!

Img_0003

Img_0002   新種目のマススタートで金メダルに輝いた高木菜那選手

Img_0001

Img  五輪ではじめて銅メダルを獲得したカーリング女子

平昌五輪の最終日、日本はスピードスケート女子のマススタートで高木菜那選手が金メダル、カーリングの女子が銅メダルを獲得した。拍手々!これでメダルは13個になった。金メダル4個、銀メダル5個、銅メダル4個、大躍進の冬季五輪になった。本当にスゴイ。

新種目のマススタートははじめてみた。レースの前にスピードの速さではなく獲得した得点の多さを競うものだということがわかったが、決勝戦はゴールに入った順番でメダルの色がきまるのだから500mなどと実質変わらない。

400mのリンクを16周し滑る距離は6400m、だが、選手同士の駆け引きがありすべての周回が早いスピードで展開していくわけではないので長距離のようなスタミナ勝負というレースではない。

高木選手はラストの3周くらいで先頭のオランダ選手にぴったりつき、最後切れ味鋭くゴールを駆け抜けた。これで高木姉妹は二人で金3個、銀1個、銅1個と5個のメダルを獲得した。お見事!

カーリング女子がついに五輪でメダルを獲得した。金ではなかったが、英国を破っての銅メダルは立派。このカーリングの競技についてはどうなると点が入るのかよくわかってない。

そのため隣の方に解説してもらいながら終盤をみた。英国のラストストーンはスキップのミスで強すぎたらしい。同点になるところが逆に日本の得点になり、5-3で日本の3位が決まった。次は金メダルがとれるかもしれないので、カーリング人気が高まりそう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.02.23

名画を揃えるビュールレ・コレクション!

Img     カナレットの‘カナル・グランディ、ヴェネツィア’(1742年)

Img_0002     コローの‘読書する少女’(1845~50年)

Img_0001     ピサロの‘ルーヴシエンヌの雪道’(1870年)

Img_0003     モネの‘睡蓮の池、緑の反映’(1920年)

印象派の作品を扱った美術本でしばしば名前が登場するビュールレ・コレクション、はじめのころはスイスのチューリヒにあることはわかったが美術館として作品を公開しているのか定かでなかった。それがはっきりしたしたのはセザンヌの‘赤いチョッキの少年’の盗難事件。

大きな話題になったその事件が起こったのは2008年、それから4年後の2012年にセルビア国内で無事発見された。名画が盗まれることはよくあり、1990年にボストンのイザベラ・スチュアート・ガードナー美から姿を消したフェルメールの‘会食’は残念ながらいまだ見つかってない。だから、美術館に戻った‘赤いチョッキの少年’が日本でみれるのは二重の幸運が重なった結果でもある。

ビュールレ・コレクションは2020年にチューリヒ美に移管されることが決まっている。計画しているスイスの美術館巡りはだぶんその後だと思うが、今回の展覧会でその全貌の一部を知ることができた。目の前に現われる作品をみてこのコレクションの質の高さにほとほと感心させられた。

メインディッシュは自慢の印象派だが、ハルスの肖像画やカナレット(1697~1768)のあのヴェネツィアの景観図も飾ってあった。プライベートコレクションに欠かせないのがカナレット、ロンドンのウォレスコレクションにも数点あった。この‘大運河’は人々の影や建物の壁の質感、運河を行き交うゴンドラまでじつに細かくとらえた描写が見事で画面の隅から隅まで視線を滑らせる。

女性の絵をみることは生涯の楽しみ、ルノワールやマネだけでなくコロー(1796~1875)にも大きな関心を寄せている。ビュールレ・コレクションにもいいのがあった。赤いジャケットが印象的な‘読書をする少女’、小品とはいえ思わず足がとまった。これは収穫の一枚。

さて、お目当ての印象派・ポスト印象派、いい絵が続々でてくる。3点あるピサロ(1830~1903)は季節柄‘ルーヴシエンヌの雪道’に心が吸いこまれていく。構図がピサロとよく似ているシスレーの風景画は2点。マネは三菱一号館美で開催された回顧展(2010年)にも出品された‘燕’など4点。

そして、最後に登場するのが目玉のひとつになっているモネ(1840~1926)の大作‘睡蓮の池、緑の反映’。数ある睡蓮のなかでもこれほど大きなもの(高さ2m、横4m)はそうはお目にかかれない。オランジュリーにある至宝の‘睡蓮’はこれよりもっと大きいが、そのほかではMoMAとチューリヒ美のものしか思いつかない。

魅了される絵がまだまだある。見てのお楽しみ!

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2018.02.22

セザンヌの‘赤いチョッキの少年’と対面!

Img_0001     セザンヌの‘赤いチョッキの少年’(1888~90年)

Img     ルノワールの‘可愛いイレーヌ’(1880年)

Img_0004    ドガの‘ピアノの前のカミュ夫人’(1869年)

Img_0002     ゴッホの‘日没を背に種まく人’(1888年)

先週の2/14からはじまった国立新美の‘至上の印象派展 ビュールレ・コレクション’(5/7まで)をみてきた。この展覧会を首を長くして待っていたのはひとえにセザンヌ(1839~1906)の傑作‘赤いチョッキの少年’が登場するから。

2015年、2度目のフィラデルフィア美で念願の‘大水浴図’をみることができ、セザンヌのコンプリートへ一歩近づいた。残るはスイスのチューリヒにある‘赤いチョッキの少年’とモスクワ、プーシキン美が所蔵する‘マルディ・グラ’。この2点が目のなかに入れば夢が叶う。だが、そこにたどり着くにはまだまだ時間がかかる。

普通はこの流れはゆったり進むのだが、なんと‘赤いチョッキの少年’と日本でお目にかかることになった。アバウトに計画しているスイス美術館めぐりのとき二重丸をつけている最も重要なピースに会えるのだから嬉しい話。こんなことが起きると自分には‘セレンディピティ’(思わぬ幸運に偶然出会う能力)があるのかな、と勝手に思い込んでしまう。

6点飾られているセザンヌの部屋にありました、ありました!これが美術の本でみて心に強く刻まれた絵かという感じ。視線が向かうのが長い手を印象づけるシャツと小顔のハイライトに使われている白、タイトルの赤いチョッキよりこの明るい白のほうが色彩の強さは上回っている。

セザンヌの肖像画はこの少年でもカード遊びをする農夫でも場の雰囲気がとても静か。この静けさが人物の描写に100%のリアルさがなくてもモデルとの距離感をぐっと縮めることになる。これがセザンヌの肖像画の魅力。

チラシに大きくとりあげられているルノワール(1841~1919)の‘可愛いイレーヌ’は二度目の来日、2010年ルノワール展があったとき国立新美では展示されなかったので、大阪まで追っかけていった。驚くほど精緻に描かれた茶色の髪の毛にまたまた釘づけになった。イレーヌはこのとき8歳だが、顔立ちはもう大人の女性のよう。

画集ではなんどもみているゴッホ(1853~1890)の‘日没を背に種をまく人’はアムステルダムのゴッホ美でもお馴染みの絵だが、こちらのほうが先に描かれた。いずれも浮世絵風の構図と画面中央の紫がイメージのコアになっている。

収穫の一枚があった。ドガ(1834~1917)にこんないい肖像画があったの!と足をとまらせる‘ピアノの前のカミュ夫人’。ぱっとみて女優の沢尻エリカが目の前をよぎった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.02.21

祝 スピードスケートパシュート 金メダル!

Img_0001   綺麗な隊列を組んで進む日本チーム

Img  金メダルを喜ぶ左から佐藤綾乃、高木菜那、高木美帆、菊池彩花選手

スピードスケートの女子がまたまたメダルを獲得した。小平選手の500m同様、金メダル間違いないと予想されていた期待のパシュート。オランダを破り見事に優勝した。拍手々!

メディアで連日、日本チームの強さの秘密を解説してくれていたが、じっさいのレースでみると確かに3人滑っているのにまるで1人でレースに挑んでいるように足の蹴り手の振りが左右ピタッと同じ動きになっている。3人の隊列がこれほど滑らかでリズミカルなひとつのスケーティングを生みだしているとは。すばらしい。

カナダとの準決勝では菊池選手は高木姉妹とトリオをl組んだが、オランダとの決勝戦では佐藤選手が出場した。途中、オランダにリードされたときはちょっと心がザワザワしたが、じわじわ完璧なチームワークの力を発揮し一気に逆転し悲願の金メダルに輝いた。

これで女子は金メダル2個、銀メダル2個、銅メダル1個と5つのメダルを獲得した。開幕前から女子は強いといわれメダルの期待が高かったが、それにきっちり応えてくれるのだからスゴイ。ソチではまったくメダルがとれなかたのに4年間、チームジャパンとして戦う体制をいろいろ変え復活にむかってトレーニングを重ねスケートの技術を磨いてきた。その改革と努力が好成績につながった。

この強さは確実に次の北京大会まで続いていく。そして、フィギュアとともに冬季スポーツの花形種目として多くのファンを楽しませてくれることだろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.02.20

美術館に乾杯! MoMA その五

Img     クリムトの‘希望Ⅱ’(1908年)

Img_0001     シーレの‘ゲルトハーデ・シーレの肖像’(1909年)

Img_0002     キルヒナーの‘街路、ベルリン’(1913年)

Img_0003     ベックマンの‘船出’(1933年)

パリとともにアートが存分に楽しめる街、NY、美術館をまわると人気のカラヴァッジョやフェルメールに会え、美術本に載っている有名な印象派や近現代美術の傑作がひょいと現れる。そして、2006年からはノイエギャラリーでクリムト(1862~1918)のすごい絵がみれるようになった。

その絵はもとはウイーンのベルヴェデーレ宮にあった‘アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像’、この作品の登場でNYの美術館が所蔵するクリムト作品はぐんと厚みをました。METにも2点あるが、MoMAで楽しめるのは妊婦に装飾的な衣裳をまとわせて描いた‘希望Ⅱ’。

クリムトにあこがれたシーレ(1890~1918)はNYで2点みれる、グッゲンハイムにある‘老人の肖像’とMoMAのコレクション‘ゲルトハーデ・シーレの肖像’、モデルはシーレの4歳年下の妹。茶色でまとめられた女性はクリムトがつくりだした黄金による装飾美とはちがいシックでハイセンスなイメージがする。シーレの作品には過度に痩せた若い男女の退廃的な姿がつきまとうが、これは例外的にしゃきっとしていて品のよさがある。

ドイツの画家が描く人物は顔や手足が縦に長くとげがささるような鋭角的なイメージが特徴、キルヒナー(1880~1938)が繁栄をきわめるベルリンで自由気ままに遊びまくる人々を描いた‘街路、ベルリン’は女性が着る衣装の紫が強く記憶に残る作品。

ベックマン(1884~1950)は三幅対の寓意画を10点制作したが、その7点を退廃美術と晒し者にされたナチスの時代に仕上げた。‘船出’は第一作目で、左右に拷問、中央に自由を表現している。ナチスへの痛烈な批判を投げかけているが、どの時代にでも起こりうる寓意画として描いている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.02.19

美術館に乾杯! MoMA その四

Img     アンリ・ルソーの‘眠るボヘミアン’(1897年)

Img_0001     アンリ・ルソーの‘夢’(1910年)

Img_0003     レジェの‘大きなジュリー’(1945年)

Img_0004     デ・キリコの‘カップル’(1915年)

アンリ・ルソー(1844~1910)が何枚も描いたジャングル画のなかで視線を釘づけにさせるのがほかの動物を襲うライオンや虎。水牛を餌食にしたり、ときには人間をも食い殺す。ところが‘眠るボヘミアン’に姿をみせるライオンはこうした獰猛なイメージがまったくない。まるで子どもが楽しむ絵本にでてくるゆるキャラにちかいライオンのよう。

この違いはどうしたことか。はじめてこの絵をみたとき大きな衝撃を受けた。とくに印象深いのはモチーフの並べ方。画面の真ん中でライオンを横向きにさせ、すぐ横にボヘミアンを寝かせる。そして、マンドリンのような弦楽器を並行に置く。創作キットのピースを貼っていくような感じ。この平板的な描写がファンタジックな世界をつくるのにピタッと嵌る。ピカソにはこれが新鮮に映った。

オルセーにある‘蛇使いの女’とともにルソーの最高傑作といわれる‘夢’は縦2m、横3mのびっくりするほど大きな絵。ここに植物、動物、そしてソファーに横たわる裸婦が緑を基調に鮮やかな色彩でびっしり描かれている。2013年に訪問したとき、絵の前にいる人が最も多かったのがこの絵。NYのど真ん中に不思議な熱帯の光景が出現するのだから、脳が大いに刺激され生命力に富む原始の空間をさまよう気分になっているのかもしれない。

彫刻的な人物描写で明快な画風をつくったレジェ(1881~1955)、ここには5、6枚飾られているが‘大きなジュリー’がお気に入り。田園にサイクリングでやって来た少女は手に花をもち、まわりには蝶々が飛んでいる。それにしても、レジェの描く人物は男でも女でもみな鼻がデカい。みるたびに焼きつけられる。

デ・キリコ(1888~1948)のイメージとして頭にこびりついているのはマネキン人形、静謐な空気につつまれた街の一角に吟遊詩人やミューズなどのギリシャ神話の主人公として登場し、ときには恋するカップルが描かれる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.02.18

祝 スピードスケート500m 小平奈緒選手金メダル!

Img

Img_0001    女子のスピードスケートではじめて金メダルを獲得した小平選手

金メダル確実と予想されていたスピードスケートの小平奈緒選手が得意の500mでオリンピックチャンピオンになった。拍手々!昨日の羽生選手に続く金メダルの獲得で感動の二段重ね、これぞオリンピックの醍醐味。

レースがどんどん進み半分のところで整氷作業が入るのかと思ったが、滑る距離は500mだからその必要がないことに気づいた。小平選手が登場する14組はすぐやってきて、応援モードに入った。前回のソチではこの種目はインとアウトスタートによる2本勝負だったが、今大会から1回のレースで決着をつけることになった。

小平選手は内側(イン)のレーンからスタート、出だしの滑りから好調で手を大きく振りどんどん加速していく。隣のチェコの選手も食らいついてきてあまり離れないからいい勝負になった。そして、36秒94の五輪新記録でゴールを駆け抜けた。これは低地での世界記録らしい。金メダルにぐっと近づいた。

次のレースで滑った韓国の選手は3連覇を狙っている強い選手。だが、小平選手の記録を上回れず2位となった。これで小平選手は念願の金メダルに輝いた。これは女子では史上初の快挙。本当によかった。

じつは31歳の小平選手が短距離で圧倒的に強いという話はここ2ヶ月くらいの間に知った。決して若くないのにソチのあとの4年間で進化をとげ国内外で24連勝し世界の頂点に立っているというのが驚きだった。

きついトレーニングを積み重ねるのは一流選手なら誰でもやっているだろうから、そのやり方が上手なのだろう。その成果が五輪という大舞台で金メダルとなって実をむすんだ。グレイトスケーターに乾杯!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.02.17

祝 フィギュア 金メダル 銀メダル!

Img      金メダル、銀メダルを獲得した羽生結弦選手と宇野昌磨選手

Img_0001   4回転ジャンプを難なく決める羽生選手

Img_0002      4回転など高い技術をすべて出し切った宇野選手

期待されたフィギュアで怪我から復帰した羽生結弦選手が金メダル、宇野昌磨選手が銀メダルを獲得した。拍手々!昨日のショートプログラムで1位、3位を占めていたのでともにメダルをとれると思っていたが、1,2フィニッシュを見事に決めてくれた。腹の底から感動した。すばらしい!

3カ月もリンクから遠ざかっていた羽生選手の連覇は無理だろうとみていた。だから、20歳の宇野選手が金メダルをとるのが一番いいシナリオだった。おそらく多くの人はそう思ったにちがいない。ところが、羽生選手は見事に復活し、信じられない技術の高さ、優美な表現力でまたオリンピックチャンピオンになった。もうスゴイとしかいいようがない。

バックに流れた音楽は映画‘陰陽師’のテーマ曲だという。日本の宮廷文化を思い起こさせるとてもいい曲だが、あの光源氏が羽生選手に姿を変えて舞っているように映った。羽生選手が4回跳んだ4回転の種類と難易度はよく知らないが、どれも難なくこなしている感じ。身長があって小顔、そして手足が長いからそのジャンプはとても優雅でしなやかにみえる。まさにイケメンお公家さんの姿が重なる。

平安貴族の羽生選手に対して宇野選手はバレリーナという感じ。演技に使った曲は有名なオペラ‘トゥーランドット’、最初の4回転に失敗したときは嫌な予感がした。これが尾をひいてまた転ぶのではないかと。だが、宇野選手は並みの選手とはちがう。そこからはあの失敗は何だったのかというほど高難度の4回転をびしびし決めていく。これは半端じゃない精神力。きっと自分の技に自信をもっているのだろう。そのため大崩れしない。

後半になっても体力は落ちず曲のさびの部分に力をもらうかのように安定した滑りときれのよいジャンプを次々成功させた。これほどスピードがあり力強い演技をされたらスペインのフェルナンデスも3位を認めざるをえないだろう。

フィギュアをみてつくづく思うのはこの競技は氷の上でおこなわれるオペラでありバレエだということ。美しいメロディラインにのって、流れるようなスケーティングとスピード感あふれる4回転ジャンプで目と耳、そして心を楽しませてくれる。

世界中で人気があるフィギュアで日本の選手が2人も表彰台にあがった。これほど嬉しいことはない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.02.16

美術館に乾杯! MoMA その三

Img_0001     ピカソの‘鏡の前の少女’(1932年)

Img     マティスの‘モロッコ人たち’(1916年)

Img_0002     ドランの‘ロンドンブリッジ’(1906年)

Img_0003     アンソールの‘死をみつめる仮面’(1888年)

ピカソ((1881~1973)にかぎらず天才とよばれる芸術家が生み出す作品は多面的な要素が強い。形の革命、キュビスムがピカソの代名詞だが、角々した造形より丸みをおび柔らかいモチーフで画面を構成した作品に心を奪われるものもある。‘鏡の前の少女’はそんな一枚。

小さな円をつなげて姿ができあがった少女はながめている鏡のなかに自分とは違う人物がいて戸惑っているにちがいない。シュルレアリスムを意識したピカソはその奇抜さを表現するのに恋人マリー・テレーズをモデルに使っている。

MoMAはマティス(1869~1954)もたくさん所蔵している。2001年上野の森美で特別展があったとき‘ダンス’など8点が展示された。そのほかにも有名な‘赤いアトリエ’や‘ピアノのレッスン’、切り紙絵の‘スイミングプール’が画集に載っている。驚いたことにまだあった。2013年の訪問でさらに3点が加わった。これで14点。流石、MoMA!

一番気に入っている‘モロッコ人’は日本でもみたが、最初の出会いはNYではなくワシントンナショナルギャラリー、それははじめてアメリカを訪問した1990年のとき。ここでマティス展が開催されており、美術本にでている有名な作品が並んでいた。そのなかで背景の黒に浮き上がる緑のメロンが目にとても心地よかった。色のコントラスが印象深かったので、その横で背を向けて座っているモロッコ人には気がつかなかった。

マティスのフォーヴィスム仲間のドラン(1880~1954)が描いた‘ロンドンブリッジ’はインパクトのある風景画。明るい色彩がつくりだすテムズ川の情緒豊かな光景が目に沁みる。前回ロンドンへ行ったのは8年前、また美術館巡りがしたくなってきた。風景画は誘惑する。

仮面や髑髏でお馴染みのベルギーのアンソール(1860~1949)。ここには2度日本にやって来た‘聖アントニウスの試練’と‘死をみつめる仮面’がある。この仮面の絵は5年前やっとみれた。次のターゲットはこれと同じ年に描かれた代表作‘キリストのブリュッセル入城’(LA ポール・ゲッテイ美)、LAへ行きたいのはこの絵をみたいから。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.02.15

美術館に乾杯! MoMA その二

Img     ゴッホの‘星月夜’(1886年)

Img_0003     スーラの‘オンフルールの夕暮れ’(1886年)

Img_0002     ゴーギャンの‘アレオイの種’(1886年)

Img_0001 ロートレックの‘ムーラン・ルージュに入るラ・グーリュ―’(1892年)

メトロポリタンが所蔵している印象派にくらべると数はぐんと少ないが、MoMAでもモネやドガ、ロートレックが楽しめる。そして、ゴッホやゴーギャン、スーラのいい絵も揃っている。

ゴッホ(1853~1890)の‘星月夜’に魅了され続けている。大きく渦巻く星の光とうねりながら夜空にのびていく糸杉、サン=レミの病院の窓からながめた美しい星空にゴッホは熱く語りかけるように前のめりになって描いている。これは心を打つ。

ここにはスーラ(1859~1891)の点描風景画が4点もある。‘オンフルールの夕暮れ’、‘ポール・タン・ベッサンの外港の入口’、‘グラヴリーヌの水路、夕暮れ’、‘グランカンの夕暮れ’、このうち日本で公開されたのは‘グラヴリーヌ’、残りの3点がずっと気になっていたが、2013年訪問したとき運よく全部飾られていた。これがあるから美術館巡りはやめられない。

METはすばらしいゴーギャン(1848~1903)を所蔵しているが、‘アレオイの種’もびっくりするほどいい絵。じつはこれは日本で遭遇して200%KOされた。ええー、MOMAにこんないいタヒチ女の絵があったのか、と唸った。ゴーギャン展があるとき貸し出されるのはいつも図録に載っている‘3匹の仔犬のいる静物’のほう、昨年
西洋美であった‘北斎とジャポニスム’にも展示された。だから、この絵は隠れた名画になっている。

ロートレック(1864~1901)の‘ムーラン・ルージュに入るラ・グーリュ―’は画集に欠かせない有名な絵。モデルの左右にいる女の体を画面の外にはみ出させているのは明らかに浮世絵の影響。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.02.14

祝 スピードスケート1000m銀・銅メダル スノーボード銀メダル ノルディック複合銀メダル!

Img_2

Img_0001_2    スピードスケート1000mで銀メダルを獲得した小平奈緒選手

Img_0002_2     1500mに続き銅メダルに輝いた高木美帆選手

Img_0003

Img_0004    連続銀メダルのスノーボード平野歩夢選手

Img_0005   銀メダルに終わったノルディック複合の渡部暁斗選手

今日はメダルラッシュ、金メダルが期待されていたスピードスケート女子1000mは今シーズン絶好調の小平奈緒選手がものすごい記録をだしたオランダの選手に敗れ銀メダルに終わった。ガックリだが、銀メダルは立派、拍手々!そして、高木美帆選手も1分14秒をきる好タイムで3位に入った。これで2個目のメダル、拍手々!

オランダが強すぎで3000、1500、1000m全部制した。残る500mと団体パシュートはなんとか金をとってもらいたい。小平選手は勝ち続けている500だから、きっと女神が微笑んでくれる。18日が楽しみ。

午前に行なわれたスノーボードハーフパイプは19歳の平野歩夢選手がソチに続きまた銀メダルを獲得した。拍手々!2回目誰もやったことのない新技をきめてトップに立ったが、3回目に高難度の技を連続で成功させた王者ホワイト選手にかなわなかった。王者交代をみせつける姿をイメージしていたが、、残念!

競技をみていて決勝で3回もする必要があるのかと思ったが、転倒する選手が続出するなどこのハープパイプは難しい種目であることがわかった。パイプのトップから5mをこえる高さまで跳んだり、足をのっけているボードを空中で3回も4回もくるくる回転させるのだから着地したときに体をうまくバランスさせるのは大変難しい。難易度の高い技をもっているトップクラスの選手でも手をついたり転んだりする。だから、ハラハラドキドキする試合展開がこの種目の魅力かもしれない。

小平選手同様、直近のW杯で連勝していたノルディック複合(ノーマルヒル)の渡部暁斗選手は銀メダルを獲得した。拍手々!金メダルの獲得は五分五分とみていたが、悪い五分のほうになってしまった。ヨーロッパの強豪たちはそう簡単には優勝をわたしてくれない。勝ったのはソチと同じドイツの選手。まるでデジャブをみているよう。ラージヒルでリベンジなるか、期待したい!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.02.13

祝 ジャンプ女子 銅メダル!

Img

Img_0001    銅メダルを獲得した高梨沙羅選手

風の影響などがあって深夜まで試合続くジャンプ競技、期待された高梨沙羅選手はなんとか銅メダルを獲得した。拍手々!前回のソチでは金メダル確実といわれ、4年後の平昌でも2年前のシーズンまでは優勝まちがいないと思われていたのに、結果はちがっていた。

その原因はソチのときはプレッシャーにつぶれ、今回は新たなライバルの出現に夢を砕かれた。現実は厳しい。高梨選手は今シーズン、W杯でノルウエーの選手に優勝をもっていかれつづけ一度も表彰台の真ん中に立てなかった。

ジャンプの女王が交代したといわれないように高梨選手はまた技をみがかなくてはならない。ヨーロッパ勢は金と銀に輝いた2選手だけでなく、強いジャンパーがほかにもでてくるかもしれない。体が小さい高梨選手が体格で勝る彼らを打ち負かすには安定したジャンプ技術で身につけるしかない。

高梨選手は男子の葛西選手のようにオリンピックに何度も出場する機会があるのだから、金メダルをとるチャンスはまためぐってくる。そのとき真の女王になれるだろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.02.12

祝 スピードスケート女子1500m 銀メダル 男子モーグル銅メダル!

Img_0002

Img_0003    女子ではじめて銀メダルを獲得した高木美帆選手

Img_0001

Img     20歳の原大智選手がモーグルで銅メダル

期待の女子スピードスケート、1500mで高木美帆選手が見事銀メダルを獲得した。拍手々!最後に登場した高木選手が優勝候補の筆頭にあげられていたので、オランダの選手を抜いて1位におどりでるのではないかと息を呑んでみたが、わずかの差で2位に終わった。

高木選手は前回のソチでは選出されなかったのでこれでこの4年間の努力が報われた。どのスポーツでもトップクラスのレベルに到達するのは大変なことだと思うが、スピードスケート選手のあの大きな太股をみると練習が相当キツいことは容易にわかる。金メダルではなかったが価値のある銀メダル。嬉しいだろう。

モーグル男子は20歳の原大智選手がやってくれた。これまで大きな大会で輝かしい実績がなかったのに初出場の五輪でいきなり銅メダル。臆することなく自分の技を信じてのびのびと滑ったことがいい結果につながった。拍手々。

モーグルはこぶがある斜面をバランスをとりながら2回の回転ジジャンプを加え猛スピードで駆け抜ける。膝への衝撃はかなり強くスロープの角度も急だからちょっとまちがうと転倒する。決勝の6人に残るだけでもスゴイのになんと男子ではじめてメダルを獲得した。本当にすばらしい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.02.11

美術館に乾杯! MoMA その一

Img_0001     ニューヨーク近代美術館(MoMA)の入口

Img     ピカソの‘アヴィニョンの娘たち’(1907年)

Img_0003     シャガールの‘私と村’(1911年)

Img_0002     ダリの‘記憶の固執(柔らかい時計)’(1931年)

団体ツアーでNYを観光するとき美術鑑賞にメトロポリタンと五番街にある近代美術館(MOMA)が入っていることが多い。これはパリでルーヴルとオルセーへ必ず訪問するのと同じようなもの。大都市では美術館への入場が観光のハイライトのひとつになっている。

2004年に新装なったMoMAを2013年ようやく訪問できた。展示スペースが前の2倍に増え1階ロビーと2階が現代美術、3階~5階は所蔵作品の常設展示、そして6階が企画展示。所蔵の名画がどの階に飾ってあったか記憶が薄れてきたが、ピカソ(1881~1973)の‘アヴィニョンの娘たち’とはたしかに再会した。

はじめてここを訪れたのは今から28年前の1990年。一番みたかったのがこの絵。絵画を海外の美術館でみて感激するのは美術の教科書に載っていた作品が目の前にあること。絵画の革命、キュビスムの誕生をつげる絵と今向き合っている。ここに来てよかったなと、素直に思う。

右の2人の女の顔はアフリカの部族仮面を使って造形している。すぐ頭をよぎったのは小さいころ動物園でみたマントヒヒの鼻。あの緑の筋を連想させる線がこの絵でも何本も引かれ強烈なインパクトを放っている。この絵のあとピカソとブラックはモチーフを多視点から幾何学的に再構成素しキュビスムの手法を洗練させていく。

MoMAが増改築のため休館したとき、日本にその一級のコレクションが3回にわけてやって来た。だが、‘アヴィニョンの娘たち’は入ってなかった。だが、シャガール(1889~1985)の代表作‘私と村’は登場した。MoMAというと‘アヴィニョン’とこのシャガールの絵というイメ―ジがあったのではじめてみたときは感激した。

ハッとするのが大きく描かれた男の緑の横顔。この緑の顔はサーカスにでてくるピエロをみるときの感情に似ている。それほどこの緑には違和感がある。そして、すぐ前にいる牛の顔にもありえないものが描かれている。乳しぼりしてい女性。この人物と牛の対面は一度みたら忘れられない。

サプライズ三段重ねの最後はシュルレアリスムの旗手、ダリ(1904~1989)の‘記憶の固執’、図版のイメージと違っているのは絵のサイズが小さいこと、縦24cm、横33cmしかない。ええー、こんなに小さいの!?という感じ。そのため、くにゃっと曲がった時計に気をとられると手前の懐中時計にいる蟻をみのがしそうになる。この絵との出会いによってシュルレアリスムとの長いつきあいがはじまった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.02.10

美術館に乾杯! メトロポリタン美 その二十五

Img_0002     ‘礼拝堂壁龕’(イラン 1354年)     

Img     ‘セーヴル ポプリ容器’(フランス 1757年)

Img_0001     ‘女性像のある丸椅子’(ザイール、19世紀末)

Img_0003         イサム・ノグチの‘クーロス’(1945年)

次にメトロポリタンを訪れるのがいつになるかは今のところ未定だが、もしそのときが来たらどの作品を優先的にみるかは決めてある。

まだ出かけていない美術館でも経験のある美術館でもルーチンワークとして気になる美術品のリストをつくっている。そうすると‘志あるところに道あり’でなにかの拍子に遭遇することもある。美術鑑賞というのは夢を長い期間にわたって叶えるという山登りにも似た行為。一歩々進んでいきたい。

METの2階にあるイスラム美術の部屋はこれまで絵画の追っかけに大半の時間を費やしてきたので、まだ足を踏み入れていない。関心の的はブルーのタイルが目を惹く‘礼拝堂壁龕’、これはイランのイスファハーンにある神学校にあったもの。高さは3.43mあるので見ごたえがありそう。

昨年、サントリーで特別展があったセーヴル焼、‘ローズ・ポンパドゥール’として知られる淡いピンクのポプリ容器は鑑賞欲を強く刺激する。METのすぐ近くにあるフリックコレクションのもセーヴルの名品があるが、流石ここもいいものを所蔵している。

1階の近代美術をみたあと出口を真っすぐ進むとむかえてくれるのがアフリカ、オセアニア、南北アメリカ美術。でも、ここはエキゾチックで原始的な力を感じさせる人物彫刻をチラッとみるだけで通りすぎていた。いつか‘女性像のある丸椅子’のようなアフリカの彫り物をじっくりみてみたい。

イサム・ノグチ(1904~1988)の回顧展を2度みたおかげですっかりノグチファンになった。NYの街には有名な野外彫刻‘赤い立方体’があることは知っているが、まだ縁がない。METの‘クーロス’をみてノグ美にも足を運ぶとかなりテンションが上がりそう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.02.09

平昌五輪開幕!

Img   旗手の葛西選手を先頭に行進する日本選手団

Img_0001    赤々と燃える聖火

Img_0002     キトラ壁画にも描かれた白虎が登場した開会式ショー

韓国の平昌で行われる冬季五輪がはじまった。報道によると平昌はものすごく寒そうだったが、今日はそれほどでもなかったそう。日本から応援に入っている人たちは開会式を楽しめただろう。

早速、注目の種目が行われる日時をチェックし、これにあわせて毎日をすごすことにした。今回金メダルが期待できそうな選手をあげてみると、まちがいなく勝ってくれそうなのはスピードスケート女子の小平選手と高木美帆選手、それに団体パシュート。前回のソチでメダルゼロだったから、選手たちは相当がんばってW杯などでいい成績をあげてきた。応援にも熱が入る。

ノルディック複合のエース渡部選手も今絶好調、前回の銀メダルから金メダルに手が届くところまできている感じだが、オリンピックとなるとライバルたちも200%本気モードでくるから、どうなるかわからない。なんとか金メダルを手にしてほしい。

スキージャンプ女子の高梨選手はノルウエーの選手に勝てそうにない。W杯で勝ち続けているルンビちゃんをTVでみたが、体が沙羅ちゃんよりだいぶ大きい。ジャンプの技術はそう差がないとすると体の大きいほうが飛距離はでる。

ほかで期待が集まるのはスノーボードハーフパイプの平野選手(前回銀メダル)、だれにも真似のできない回転の多い技で勝負するらしいが、金メダルにぐんと近づいているという関係者が多い。

さて、注目のフィギュアスケートの男子シングル、前回チャンピオンの羽生選手は足の怪我がどこまで回復しているのか、20歳の宇野選手が代わって金をとるのか。羽生選手が勝ったらもうスーパーレジェンドになるが、、やはり、今回は無理かな。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.02.08

美術館に乾杯! メトロポリタン美 その二十四

Img_0003          ‘ク―ロス(若者の像)’(紀元前7世紀末)

Img        ベルニーニの‘バッコス祭’(17世紀初期)

Img_0002     カノーヴァの‘メドゥ―サの頭をもつペルセウス’(1808年)

Img_0001     ポンポンの‘シロクマ’(1923年)

メトロポリタンにはルーヴル同様、絵画だけでなく古代文明の出土品も展示されている。正面玄関の右手にあるのがエジプト美術、そして左に進むとみえてくるのは古代ギリシャ・ローマ時代につくられた数々の彫刻。みたい絵画をおおよそ目のなかに入れたので2013年のときは気になっていた‘クーロス(若者の像)’に突進した。

この大理石像は高さが193㎝もあるので図版でみる以上にインパクトがある。ギリシャ旅行をしたときアテネやデルフォイの博物館でクーロスにたくさん出会ったが、この長身の若者も忘れられない。また、キュクラデス文明の素朴な造形が目を惹く大理石彫像‘竪琴を弾く人’にも思わず足がとまった。

次に向かったのは同じ階にあるヨーロッパ彫刻の部屋。お目当てはベルリーニ(1598~1680)の‘バッコス祭 子どもたちがじゃれつくファウヌス’、彫刻家ではミケランジェロとベルリーニに魂を奪われ続けている。その作品があるのはほとんどヨーロッパの美術館や教会。だから、NYでベルニーニが楽しめるとなると流石、MET!という気になる。2008年は改修工事のため展示室はクローズ、ガックリ、5年の時をへてようやく思いの丈をはたした。

カノーヴァ(1757~1822)をスゴイ彫刻家と思っていても、残念なことに作品をみる機会が少なく片手ぐらいの記憶しかない。例えば、ボルゲーゼの‘パオりーナ・ボルゲーゼ’、ローマ国立近美にある大作‘ヘラクレスとリカス’、そしてヴァチカン美の‘メドゥ―サの頭をもつペルセウス’、このペルセウスの8年後に2作目がポーランドの侯爵夫人の注文によってつくられた。それがMETにあるもの。みごたえのあるカッコいい彫像。

おもいろい名前のポンポン(1855~1933)がつくった‘シロクマ’は癒し系の作品。日本にやって来たときは心にやさしく響いた。そして、北海道の旭川動物園でみたシロクマが目の前をよぎった。どうでもいいことだが、昔、鹿児島へ行ったとき‘シロクマ’というかき氷を食べたことがある。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.02.07

美術館に乾杯! メトロポリタン美 その二十三

Img_0002     リキテンスタインの‘外出’(1978年)

Img_0003     ケリーの‘青・緑・赤’(1962~63年)

Img_0001     ローゼンクィストの‘火の家’(1981年)

Img     デイヴィスの‘ロックポートからの報告’(1940年)

いろいろある現代アートのなかで抽象度の高い作品は時代の気分とのつながりはどこかへとんでいく。これと対極にあるのがポップアート。ウォーホル(1928~1987)やリキテンスタイン(1923~1997)をみればアメリカのゴールデンエイジ、1960年代の文化やエンターテイメントがすぐ蘇ってくる。

リキテンスタインをヨーロッパの美術館でみた記憶はロンドンのテートモダンとマドリードにあるティッセン・ボルネミッサくらいしか思いつかない。ポンピドーにあったかどうか、だから、やはりアメリカの美術館での体験によってリキテンスタインのイメージはつくられている。でも、その数は少ない。

関心が強いのに十分な数の作品に接してないと、最初にみたものが大きなウエートをもつ。その一枚がMETの‘外出’。1993年、二度目の訪問のときだった。描かれた若者をみてすぐ思ったのはレジョ。この印象が強すぎて、横の金髪の一つ目女性はよく覚えてない。

明快な色彩と幾何学的な形が心をとらえるケリー(1923~2015)、‘青・緑・赤’は正方形に近い大きな絵。色彩の力を強く感じるのは作品自体が大きいとき。どーんと緑や赤が現れると色彩が物言うような感じがしてくる。普段の生活でこういう色はしょっちゅう目のなかに入ってくるのに、アート作品になるとついしゃきっとしてみてしまう。これがアートの力かもしれない。

化粧品会社が制作するPR用のつくりものにみえてしまうのがローゼンクィスト(1933~2017)の‘火の家’、これもポップアート同様、都市が生み出すピチピチした暮らしのひとこまを感じさせる。いつか回顧展に出会うことを夢見ているが、実現するだろうか。

デイヴィス(1892~1964)の魅力は色の明るさとモチーフの形がゆるいこと。そのため画面にたくさん描き込まれていてもビジーに感じず愉快な気分につつまれる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.02.06

美術館に乾杯! メトロポリタン美 その二十二

Img     ポロックの‘秋のリズム’(1950年)

Img_0003     デ・クーニングの‘屋根裏部屋’(1949年)

Img_0002     スティルの‘無題’(1947~48年)

Img_0004     バゼリッツの‘信仰の人’(1983年)

近代美術のコーナーは2カ所あり、ポロック(1912~1956)たちの大きな作品が飾ってあるのは2階左側の奥、印象派をみたあとこちらへ進む人はどのくらいいるだろうか。

わかりやすく心が落ち着く印象派にくらべると抽象的で難しい絵画はとても無理という方はここはパスするかもしれない。作風の大きな落差から生じる戸惑いが解消されるにはあるていど時間がかかる。それをすぎアメリカ人ア―ティストが生み出した大胆な絵画様式に目が慣れると、絵画の力みたいなものがつかめた気になる。

ポロックは抽象表現主義の象徴的な存在、その代表作が‘秋のリズム’、画面がバカでかく縦2.7m、横5.3mもある。その隅から隅までびっしり白と黒の絵の具のシミや飛び散った跡が広がっている。無意識に柔らかい絵の具についた絵筆をざざっと動かしたらこういう形になった、という感じ。即興演奏のようなものなのにここには不思議な調和やリズム感もある。でも、隣の方の感想はまったくちがう、‘鳩の糞みたいね’が口癖。

デ・クーニング(1904~1997)の‘屋根裏部屋’はタイトルを聞くと意外にイメージが膨らむ。描かれた線の曲がり具合や重なり方をじっとみていると狭い部屋のなかにたくさんの人物がいるようにみえてくる。顔がいくつかあり目、鼻、口がみえる。そしてのびた手足。こんな絵は白黒でないとダメ、色がついていたら頭がすぐパンクする。

スティル(1904~1980)の作風は黒が基調になっている。その造形の端はつねにギザギザ、そのため、かなりの緊張感を強いられる。‘無題’のように大きな画面になるとそのエネルギーはとても熱くうかつに近づけない。原始地球のドロドロしたパワーを連想してしまう。

バゼリッツ(1939~)は逆さま絵画と得意としたア―ティスト。‘信仰の人’は図版をひっくり返してみると確かに祈っている姿になる。人物の後ろ姿を描く画家はよくいる。マネもそうだし、ドガも裸婦を後ろから描いている。だが、上下を逆にするというのはシャガールくらいかなという印象。だから、このバゼリッツのアイデアにはハッとする。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.02.05

美術館に乾杯! メトロポリタン美 その二十一

Img      ダリの‘超立方体的肉体(磔刑)’(1954年)

Img_0003     オキーフの‘遠くて近いところから’(1937年)

Img_0002     ホックニーの‘富士山と花’(1972年)

Img_0001     ブローネルの‘文明化への前奏曲’(1954年)

シュルレアリスムとのつきあいは長く続いている。まず、ユーモラスなミロに心を奪われ、細密な描写で夢の世界を神秘的に表現したダリに夢中になった。これにマジシャン、マグリットとシュールな世界に裸婦を登場させたデルヴォーが加わり、シュルレアリスムとは縁が切れなくなった。

MoMAへ行くといい絵がぞろぞろでてくるが、METではそこまでは揃ってない。でも、ダリ(1904~1989)はすごい絵を所蔵している。画集にはだいたい載っている‘超立方体的肉体(磔刑)’。1階展示室の出口の前は廊下になっているが顔を右にむけるとこの大作が目に入ってくる。

そして、ダリってこんな宗教画を描いていたのか!と感心する。ワシントンのナショナルギャラリーでは‘最後の審判’をみたので、残るはグラスゴー美にある‘十字架の聖ヨハネのキリスト’。これと遭遇すればダリのコンプリートは大きく前進する。グラスゴーは遠いのでグラスゴー美展を妄想しているが、夢の見過ぎか。

METの近現代アートで見逃せないのはオキーフ(1887~1986)、2008年に出かけたときはミニオキーフ展といってもいいほど多くの作品がでていた。その数20、それまでオキーフをみたのは片手くらいだったので飛び上がるほど嬉しかった。そのなかでお気に入りはお馴染みの牛の頭蓋骨が大平原の上空に広がる‘遠くてち近いところから’。Bunkamuraでオキーフ展があることを信じているのだが、はたして。

イギリス現代アート界の大御所的な存在であるホックニー(1937~)は今年81歳になる。昨年BSプレミアムで特集した北斎展に登場したのではじめてその顔を知った。METには2点あり‘富士山と花’はホックニーが36歳のとき来日したことがきっかえとなり仕上げたもの。シンプルな構図と画面の大半を占める青が目に焼きつく。

ルーマニア生まれのシュルレアリスト、ブローネル(1903~1966)の‘文明化への前奏曲’は2015年のときの収穫のひとつで、牛?の体のなかにモチーフをいっぱい詰め込む発想にKOされた。こんな絵を描くのはブローネルとシャガールしかいない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.02.04

美術館に乾杯! メトロポリタン美 その二十

Img_0002     マティスの‘座椅子’(1926年)

Img     ドランの‘夜の国会議事堂’(1905年)

Img_0001          ブラックの‘丸いテーブル’(1922年)

Img_0004     ベックマンの‘鳥地獄’(1938年)

NYで近代絵画や現代アートを楽しむならMoMAやグッゲンハイム、ホイットニーへ出かけることを思いつく。MoMAはこの願いを200%満たしてくれる。だが、あとの2つは注意が必要。というのは図録に載っている作品が常時展示されていないのである。そのため、みたい作品がまだいくつも残っている。

そこでクローズアップされるのがMETの1階と2階にある近代美術のコーナー、時間をかけてみるとMoMAと同じくらい大きな満足がえられることは請け合い。また、ここでは別料金の企画展なども行われており、2013年のときは想定外のマティス展に出くわした。

予定の時間がすぎたのでパスせざるをえなかったが、所蔵する‘座椅子’や‘ナスタウムとダンス’、‘若い水夫’が展示されていたにちがいない。東近美でマティス(1869~1954)の回顧展があったのは2004年、それから14年も経ったのでどこかの美術館がマティスにチャレンジしてくれると嬉しいのだが。

フォーヴィスト、アンドレ・ドラン(1880~1954)の‘夜の国会議事堂’はなかなかいい絵。ロンドンの国会議事堂といえば、ターナーもモネも描いているが、ドランが刺激をうけたのはモネのほう。青、緑、橙色を自由奔放に使う色彩感覚はフォーヴィスムの真骨頂。

ブラック(1882~1963)の‘丸テーブル’は15点以上あり、これは最初の作品。ここには同じような構成で仕上げた‘暖炉’シリーズの一枚もあるが、ともに強く印象に残っている。こうした静物画はいずれも平面性が特徴、丸いテーブルに並べられている果物、パイプ、新聞、楽器はいまにも下にずり落ちそう。それが気になってしょうがない。

ベックマン(1884~1950)の‘鳥地獄’は2015年のサプライズ賞を贈呈したくなる体験だった。ここにベックマンの作品があったの!?という感じだが、さらに10点ある三幅対作品のひとつ‘はじまり’も横に飾られていた。こういう作品がさらっとでてくるのがMETのスゴイところ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.02.03

美術館に乾杯! メトロポリタン美 その十九

Img     ピカソの‘ガートルード・スタインの肖像’(1906年)

Img_0001     ドンゲンの‘マリア’(1907~11年)

Img_0002     バルテュスの‘山’(1937年)

Img_0003     ホッパーの‘夜明けの灯台’(1929年)

アメリカでピカソ(1881~1973)というと、瞬間的にでてくるのはMoMAにある‘アヴィニョンの娘たち’(1907年)。これが美術の教科書に載っているキュビスムか、と息を呑んでみる。

では、同じNYの美術館、メトロポリタンには何があるか。ほかの作品は思い出せなくても‘ガートルード・スタインの肖像’は長く心にとどまっている。

はじめてこの絵をみたとき、男性の肖像と思った。じっとみているといや、女性だと気づく。描かれたのはキュビスムの時代がはじまる1年前。そのため、モデルの顔はアヴィニョンの娘たちのようにすこし角ばりキュビスム風になっている。

2015年12月に訪れたとき、収穫のバスケットに入る作品と遭遇した。フォーヴィスムのドンゲン(1877~1968)の‘マリア’、前々から関心の高い画家ではあるが、METでこんなすばらしい女性の肖像画がお目にかかれるとは思ってもいなかった。目のパッチリした色白のマリアには赤の衣服がよく似合う。

4年前に東京都美で大回顧展が開催されたバルテュス(1908~2001)、METからは‘夢見るテレーズ’、‘山のための習作’、‘ピエール・マティスの肖像’の3点が出品された。ここはバルテュスを多く所蔵しており、図録に載っている‘山’と‘暖炉の前の人物’、そしてかなり前日本にやって来た‘目を覚ましたテレーズ’と‘窓辺の少女’もある。

驚かされるのはアメリカ人コレクターのバルテュス好き、MoMAにも‘街路’など3点あり、ワシントンのハーシュホーン美やシカゴ美も所蔵している、これに個人のコレクションが加わると相当な数になる。前回幸運なことにに‘窓辺の少女’と出会ったので、残っているのはMoMAの‘アンドレ・ドランの肖像’だけになった。

ホッパー(1882~1967)の‘夜明けの灯台’はMETの至宝のひとつかもしれない。ホッパーというと‘夜ふかしをする人々’(シカゴ美)と灯台の絵で作品のイメージができあがっている。

この‘夜明けの灯台’で惹かれるのはまぶしいほどの光と明るい空、でもこの風景は静寂につつまれている。スーラの点描風景画も音は聞こえてこないが、ホッパーとちがって社会から孤立しているという感じはない。静寂にもいろいろある。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.02.02

美術館に乾杯! メトロポリタン美 その十八

Img_0002     ゴーギャンの‘アベマリア’(1891年)

Img     スーラの‘サーカスの客寄せ’(1887~88年)

Img_0003     ゴッホの‘アルルの女 ジヌー夫人’(1888年)

Img_0001     ゴッホの‘アイリス’(1890年)

印象派やポスト印象派のコレクションで名をあげている美術館にはそれぞれ自慢の絵がある。美術本に必ず載っているのはそういう作品。METでまず思い浮かぶのはゴーギャン(1848~1903)の‘アベマリア’。ボストンのにある‘われわれはどこから来たのか、、、’を別格扱いにすると、この絵がMyゴーギャンのベスト1。はじめてみて以来魅了され続けている。

登場するタヒチの女性たちは西洋画の伝統である宗教画の役割を担っている。左端には青と黄色の羽をもつ天使、その横には手を合わせる二人、そして光輪をつけた聖母マリアと幼子キリスト。手前にバナナなどの美味しそうな果物が籠にどっさり盛られているのは南国の島らしい演出。

ゴーギャン同様、METに足を運んだ甲斐があったと思わせるのがスーラ(1859~1891)の点描画‘サーカスの客寄せ’、スーラについてはアメリカの画家かと錯覚するほどいい絵がアメリカの美術館におさまっている。代表作の‘グランド・ジャット島の日曜日の午後’はシカゴに、‘ポーズをする女性たち’はフィラデルフィアのバーンズコレクションン、そして‘サーカスの客寄せ’はここMET。ミューズのお陰で3点全部みれたのは幸運だった。

‘グランドジャット島’は行楽地なのに音が聞こえてこないのに、この‘サーカスの客寄せ’はトランペットやトロンボーンの華やかな音色が響き渡る。オルセーにある‘サーカス’とともに数少ない‘動の点描’なので目に焼きついている。

人気のゴッホ(1853~1890)は‘アルルの女 ジヌー夫人’が忘れられない。オルセーにある別ヴァージョンよりこちらに惹かれる。目が点になるのはゴッホはいつからマティスのフォーヴィスムに入ったのかと勘違いさせる緑の色使い。テーブルとそのうえにある本、そして夫人がつけているスカーフの緑を黄色の背景によって浮き上がらせる色彩感覚。ゴッホは天性のカラリスト!

静物画の‘アイリス’も心を奪われるとてもいい絵。アイリスの次の目標はまだお目にかかってないゲッティ美(LA)にあるもの。じつはLAはまだ足を踏み入れていない。早く出かけたいがいつになるだろうか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018.02.01

美術館に乾杯! メトロポリタン美 その十七

Img_0003     セザンヌの‘カード遊びをする人々’(1890~92年)

Img     ドガの‘菊のある婦人像’(1865年)

Img_0001     ルノワールの‘座っている浴女’(1893年)

Img_0002     ロートレックの‘ソファ’(1894年)

画集に載っている名画が目の前に現れると感激もひとしお。セザンヌ(1839~1906)の‘カード遊びをする人々’はそんな一枚。農夫が興じるカード遊びをセザンヌは全部で5点描いている。はじめにプレイヤーとそれをまわりでみている者も含め4,5人登場させたものを2点仕上げ、そのあと2人でやっているものを3点描いた。

METにあるのは2番目の作品。無表情でプレーに集中している3人を煙草を食わえた男が腕をくみじっとみている。今はしないが大学生のころからある時期まで麻雀を狂ったようにしていた。このカード遊びの静けさは麻雀でも同じ。いい手になると冷静を装うため場は沈黙が支配する。

風俗画の名手、ドガ(1834~1917)の‘菊のある婦人像’に大変魅了されている。ドガというとバレリーナの画家というイメージが強いが、この絵のようにドガは暮らしのなかでふとみせる女性の心の内を見逃さない。ドガは裕福な家に生まれたから、なにかと余裕がある。そのため、街でみかけた女性を小説家のような心情でみるようになったのかもしれない。

アメリカ人にもファンが多いルノワール、ここには‘海辺にて’、‘シャルパンティエ夫人と子どもたち’、‘ピアノにむかう2人の少女’といった画集でお馴染みの作品があるが、ぞっこん参っているのは1階正面の入場口を真っすぐ進むと見えてくる‘ロバート・リーマン・コレクション’に飾られている‘座っている浴女’、天使のような可愛い顔が忘れられない。

ロートレック(1864~1901)の‘ソファ’はどういうわけかまだ縁がない。2008年、2013、2015年、毎回必見リストに入れているのにいつもダメ。保存状態がよくないので倉庫から出さないのだろうか。消化不良の思いが続きそう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2018年1月 | トップページ | 2018年3月 »