美術館に乾杯! ボストン美 その十六
今年東京都美が行ったボストン美展で嬉しいことがあった。最後の展示室に思ってもいなかったホックニー(1937~)の‘ギャロビー・ヒル’が現れたのである。手前は大きなカーブにより空間が凸凹にゆがんでいるのにそれから先は平坦な農地が遠くまでのびていくという現代感覚の風景画。
じつはこの絵は2008年に入館したとき、館案内のパンフレットに掲載されていた作品。すぐ気に入り探したのだが、アメリカ館の新設工事のため展示されてなかった。そして、2年前もホーマーに夢中になっていたせいで会えなかった。その絵を日本でみることになるとは!こういうことがあるから美術館通いはやめられない。
イギリス現代アートのレジェンドであるホックニーは今年80歳。BS2が3カ月前にとりあげた大英博の北斎展に登場した。この人があのホックニーか、という感じ。‘北斎はもっと長く生きて絵を極めたいと語ったが、私もそう思っているよ’とインタビューに応えていた。ホックニーは富士山も描いているが、北斎が好きなんだろう。ますます好きになった。いつか回顧展に遭遇することを7夢見ている。
ルイス(1912~1962)の‘デルタ ガンマ’はきりっとした色彩の美が目にしみる一枚。画面の中央はキャンバスの地のまま、赤や黄色などの明るい色の帯は両サイドで対照的に斜めにのびている。この帯は絵筆で描いたのではなく画面を動かして絵の具をしみこませたもの。色彩の力に強く惹かれる。
ボストンにあるピカソ(1881~1973)はコルトーナやダヴィッドらも絵画化した‘ザビニの女たちの略奪’、しばらくながめていると1937年に描いた‘ゲルニカ’の馬のいななきや女の悲痛な叫びが重なってくる。
アメリカ館に展示されていた現代アートはポロック、ゴーキー(1904~1948)、マッタ。数は多くないが、作品の質は高い。抽象画だが丸や四角の形が柔らかくすっと作品のなかに入っていけるゴーキーをながくみていた。
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