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2017.12.31

2017年 My‘好きな女性画’に加わった作品!

Img_0001     上村松園の‘うつろふ春’(霊友会妙一コレクション)

Img     北野恒富の‘ポスター:サクラビール’(1913年)

Img_0003     菊川英山の‘新吉原新宅図 ひともと’(1813年)

手帳を持ち歩く習慣はないが、家にいるときはソファーに置いてある‘座右のファイル’を毎日ながめている。そこに入っているのは展覧会のチラシ、TVの番組表、海外旅行のパンフレット、そして最後のほうにまとめて並べているお気に入り女性画の絵葉書や図版。

どんな女性といつも向き合っているかというと、西洋画では

★エル・グレコの‘白テンの毛皮をまとう貴婦人’(グラスゴー美)
★フェルメールの‘真珠の耳飾りの少女’(マウリッツハイス美)
★マネの‘鉄道’(ワシントンナショナルギャラリー)
★ルノワールの‘桟敷席’(コートールド美)
★ルノワールの‘ムーラン・ド・ラ・ギャレット’(オルセー美)
★ルノワールの‘舟遊びをする人たちの昼食’(フィリップスコレクション)

★ゴーギャンンの‘アベ・マリア’(メトロポリタン美)
★クリムトの‘接吻’(国立オーストリア美)
★ルブランの‘自画像’(エルミタージュ美)
★マティスの‘赤い衣装の婦人’(フィラデルフィア美)
★ピカソの‘夢’(ガンツコレクション)

日本画に描かれたうっとり美人は、
★鈴木春信の‘見立菊慈童’(東博)
★勝川春章の‘美人鑑賞図’(出光美)
★上村松園の‘楚蓮香’
★鏑木清方の‘築地明石町’

★安田靫彦の‘花の酔’(宮城県美)
★小林古径の‘花’(コスモ石油)
★岸田劉生の‘麗子像’(東博)
★竹久夢二の‘黒船屋’(竹久夢二美)

というわけで女性の絵をみるのはもう生活の一部になっている。今年、My‘好きな女性画’に登録されたのは3点。残念なことに西洋画はなく、全部日本の女性。

上村松園(1875~1949)の‘うつろふ春’は恒例のホテルオークラのチャリテイイベント(7/13~8/24)に出品された。チラシでみて気になってしょうがなかったので久しぶりにこの展示会に足を運んだが、期待通りのグッとくる美人画だった。これまでこの絵は回顧展に出てこなかったので余計に嬉しい。

千葉市で行われた北野恒富(1880~1947)の特別展(11/3~12/17)ではビールのポスターに描かれた美人に思わず足がとまった。このポスターの効果でビールが売れたにちがいない。

最後に会ったのが菊川英山(1787~1867)のゾクッとするほど色香の漂う遊女、前から英山の美人画に惹かれていたが、太田記念美の回顧展(11/3~12/20)のおかげでまた惚れ直した。

今年も拙ブログにおつきあいいただきありがとうございます。
皆様良いお年をお迎え下さい。

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2017.12.30

北斎 VS セザンヌ モネ!

Img_0003     北斎の‘富嶽三十六景 東海道程ヶ谷’

Img_0001 セザンヌの‘サント=ヴィクトワール山’(1887年 フィリップスコレクション)


Img     北斎の‘富嶽三十六景 駿州江尻’

Img_0002     モネの‘アンティーブ’(1888年 コートールド美)

最近は日曜美術館への関心が薄くなっているため、見るのは月に1回くらい。今月は‘HOKUSAIの衝撃’を熱心にみた。出演した解説者は西洋美の馬淵館長、現在行われている‘北斎とジャポニスム’(10/21~1/28)の仕掛け人である。

馬淵さんは印象派の専門家だから、西洋の画家たちに影響を与えたジャポニスムの関連で浮世絵にはとても詳しい。今回の展覧会では北斎(1760~1849)の‘富嶽三十六景’や‘北斎漫画’に刺激をうけて構図やモチーフの描き方を真似た西洋美術がどどっと登場した。

西洋の絵画や工芸、彫刻といろいろあるが、やはり関心が強いのが絵画への北斎の影響。これまでドガやロートレック、モネ、ゴッホ、ゴーギャンについては浮世絵の構図をヒントにした作品は明確にイメージできる。これはモノグラフなどからも情報は入っている。

ところが、セザンヌ(1839~1906)は例えば、‘サンク=ヴィクトワール山’のように北斎の‘東海道程ヶ谷’にでてくる松の木と富士山などがヒントになっていることは明らかなのに、セザンヌ本には自身が浮世絵から影響を受けたことを語るくだりはまったくでてこない。たぶん、セザンヌはモネやゴッホたちとはちがい、作品の独自性を意識するあまり浮世絵のことを口にしたくなかったのだろう。

一方、モネ(1840~1926)は浮世絵が好きでたまらないから、コレクションしている浮世絵師の作品から貪欲に構図や色彩を吸収していく。画面の中央にすこし傾いた木の幹をどーんとみせる‘アンティ―ブ’は北斎の目にみえない風を表現した傑作‘駿州江尻’をそっくりいただいている。モネはもちろんこの絵を描くにあたって北斎の絵だけではなく広重の前景にモチーフを大きく描く‘江戸名所百景’なども参考にしている。

モネの風景画はほかにも富士山を意識した‘コルサ―ス山’や北斎が得意とした波の描写を真似た‘ベル=イル海岸沖の嵐’も紹介されたが、こうした作品が並ぶと北斎がモネに与えた影響の大きさがわかる。質の高い展覧会をみせてくれた馬淵館長に拍手!

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2017.12.29

高まる浮世絵人気 ‘歌川豊国展’がみたい!

Img      歌川豊国の‘沢村宗十郎のさつま源五兵衛’

Img_0002       ‘役者舞台之姿絵 やまとや’

Img_0001     ‘両画十二候五月’

毎年どこかの美術館でいい浮世絵の展覧会が開催されるが、今年は数が多かった。
★‘深川の雪と吉原の花’    7/28~10/29  岡田美
★‘ボストン美蔵 鈴木春信展’ 9/6~10/23   千葉市美
★‘北斎ー富士を超えてー’   10/6~11/19  あべのハルカス美
★‘北斎とジャポニスム’    10/21~1/28  西洋美
★‘菊川英山展’        11/3~12/20  太田記念美

浮世絵とのつきあいは長いので、美術館のなかにいる観客の数が増える傾向にあることが実感できる。昔に較べて目につくようになったのが女性。年代でいうと30代あたりが結構いる。最近出かけた太田記念美の菊川英山展では30代後半の二人連れが熱く語っているのが印象的だった。もしかしたら
‘浮女’(My造語)?

また、大阪のあべのハルカス美で北斎展をみたときは若い女性が予想以上にいた。北斎のようなビッグネームの回顧展だと男性も含めて若年層の心を浮世絵は今確実にとらえている。この光景は西洋美の‘北斎とジャポニスム’でもみられた。

こうした浮世絵人気を反映して、美術館が仕掛ける浮世絵展も充実した内容のものが多くなってきた。だから、これからも海外からの里帰りもラインナップに加わる質の高い作品が楽しめそう。

今年は想定外の菊川英山展があった。次に期待したいのはまだ縁がない歌川豊国(1769~1825)。来年の展覧会にはでてこないが、どこかの美術館がとりあげてくれることを強く願っている。

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2017.12.28

You Tube 演歌でも全開!

Img     美空ひばり ♪♪‘昭和ひとり旅’

Img_0002     森進一 ♪♪‘昭和流れうた’

千昌夫の♪♪‘星影のワルツ’を聴いているというと年がわかってしまうが、小さい頃から歌謡曲は数限りなく楽しんできた。中学生のとき義兄がスキーに連れて行ってくれバスのなかで橋幸夫の♪♪‘潮来笠’を歌ったら‘上手いね!’とびっくりしていた。このころからこぶしをまわすのは得意だったのである。

いい演歌には目がないので歌謡曲や演歌については以前からYou Tubeをみていたが、今年はクラシックにまでYou Tubeが広がったこともあり演歌が全開し知らなかったいい曲が次々と現れた。そのなかで心に響いたのがふたつある。美空ひばりの♪♪‘昭和ひとり旅’(1981年 作曲杉本真人)と森進一の♪♪‘昭和流れうた’(1985年 作曲遠藤実)。

美空ひばりは昨年竜鉄也が作曲した‘裏町酒場’に出会い、今年の収穫はこの‘昭和ひとり旅’、歌詞もいいのでよく口ずさんでいる。好きな美空ひばりの歌はいっぱいあるが、今はこの2曲が耳に心地いい。森進一の‘昭和流れうた’はつい2週間前に知ったがあの遠藤実の曲だった。毎日、聴き惚れている。森進一はこういう歌を唄わせたら天才的に上手い。お気に入りの♪♪‘冬のリヴィエラ’(1982年)同様、聴く回数が増えそう。

‘昭和ひとり旅’   ♪♪ 春の港に 着く船は
           白い香りの 花だより
           捨てた故郷とあのひとの
           甘く酸っぱい なつかしさ
           帰れないから ふるさとさ
           帰れないから ふるさとさ
           昭和 港 ひとり旅

‘昭和流れうた’   ♪♪ 昭和流れうた 心にしみる
           酒に酔う時 あなたがうかぶ
           どうしてどうして 忘れさせない
           苦しむだけね わたしの愛は
           今度は男に 生まれてきたい

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2017.12.27

心にとまった言葉! ‘歌から学んだ物語づくり’

Img     今年のノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ

Img_0002      ♪♪‘星影のワルツ’を熱唱する千昌夫

今年のノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロがスエーデン・アカデミーで行ったノーベル賞記念講演のことが今月12日の朝日新聞に掲載された。作品の創作秘話がなかなか味わい深いので、今日はそのことを。

イシグロ氏は若い頃はロックに夢中だったようだ。その後小説を書くようになり、物語の肝みたいな表現の部分で歌手の歌声に影響を受けたという。例えば、ボブ・ディラン、レイ・チャールズ、二―ナ・シモン、ブルース・スプリングスティーン。

‘私はこれまでいくつかの場面で歌手の歌声から重要な教訓を学んできました。歌うときの人間の声は底知れないほど複雑に絡み合った感情でも表現できるものです。 歌唱から何かを感じたとき、私は自分に、「そう、これだ」と言います。「あの場面にこれをーこれに近い何かをー取り込まねば・・・」と。それは言葉では表現しきれない感情ですが、歌手の歌声にはちゃんとあって、私は目指すべき何かをもらったと感じます’

この話はすぐピーンときた。最近You Tubeでよく聴く千昌夫の♪♪‘星影のワルツ’(作曲遠藤実)に心が揺すぶられることをイシグロは語っているのではないかと。たしかに、この曲には‘そう、これだ’がある。
昭和41年(1966)に大ヒットしたこの名曲を千昌夫は心をこめて唄う。 いいメロディにほろっとする歌詞、すばらしい歌声。 

  ♪♪ 別れることは つらいけど
    仕方がないんだ 君のため
    別れに星影のワルツをうたおう・・・
    冷たい心じゃ ないんだよ
    冷たい心じゃ ないんだよ
    今でも好きだ 死ぬほどに

来年はカズオ・イシグロの小説に多くの時間をとられるかもしれない。

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2017.12.26

2017年 心にとまった言葉 ‘リミッター’

Img_0001

Img_0002      ‘親鸞聖人影像’

Eテレの‘100分de名著’で関心のある本がとりあげられたときは見逃さないようにしている。昨年のちょうど今頃はレヴィ=ストロースの‘野生の思考’を熱心にみていた。

今年は宗教ものがふたつ。6月の‘維摩経’と10月にアンコール放送された‘歎異抄’を講師の釈徹宗さんに教えてもらった。この如来寺住職であり宗教学者でもある釈さんの話が聞けたのは大きな収穫だった。僧侶というのはだいたい説教が上手な人がなるものだが、この人の語り口には感情があってしかも論理的。そのためハッとさせられ腹にストンと落ちる。

刺激がいっぱいあった話で印象深いのは‘歎異抄’の第4回にでてきた‘リミッター’という言葉、これは‘暴走を抑制する装置’という意味で使われており、宗教はときに反社会的行動にもつながるためそこへ安易に行かないため教義や教学というリミッターが設定されている。

宗教はそれぞれ体系のなかにリミッターを設けている。だが、忙しい現代人がなにか役にたつ宗教情報を得ようとすると、キリスト教からはこの部分を、仏教からはこの部分をと、いろんな宗教のいいとこどりをするとぐっと学んだような気になるが、そうするとリミッターが効かなくなると釈さんはいう。

ある道をずっと体系をたどるからこそこっちへ行ったら間違いというリミッターが効く。自分に都合のいいところだけ取り出すと自分勝手になって宗教の具合の悪いところが噴出する。宗教を甘くみているとえらい目にあう。そうならないよう、例えば‘歎異抄’をリミッターを再確認するための書としてじっくり読みなさい。この話は深く心を打った。

宗教のことを離れてみると、このリミッターは読書のヒントになった。本を読むときいろんな本を並行的に読むことがあるが、こういう読み方は情報を多くとっているようだが、薄っぺらいものが重なっているだけかもしれない。一冊ずつ仕上げて次の本へいくとか愛読書をまた読むというほうが深い理解につながるような気がしてきた。

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2017.12.25

You Tube で復活した音楽の楽しみ!

Img     ケニーGのソプラノサックス

Img_0001      バッハの‘オーボエとヴァイオリンの協奏曲’

Img_0003     ヴィヴァルディの‘オーボエ協奏曲’

今年はYou Tubeでクラシック音楽や演歌を聴く時間が飛躍的に増えた。音楽を楽しむのにYou Tubeがこれほど便利なものだったとは。今年前半に聴いたクラシックはヴァイオリンとピアノの協奏曲が多かったが、秋ごろからはたまたま聴いたオーボエにぐんぐん惹きこまれていった。

この引き金になったのはクラシックではなくソプラノサックスが奏でるムードミュージック、演奏しているのはケニーG、まったく知らない人物だったがこのベストアルバムに完璧に嵌った。視聴回数はなんと462万(今日現在)、人気の高い曲のためCMが何度も入ってくるのが目障りだが、うけているYou Tubeならばこそだから仕方がない。

もともと大好きなソプラノサックスが呼び込んでくれたのがオーボエの曲。ヴァイオリンやピアノではいい協奏曲をこころゆくまで楽しんでいるのに、金管や木管は数が少ない。お気に入りの一番はモーツアルトのフルートとハープの協奏曲。だが、そのあとが続かない。交響曲の演奏のなかでホルンやオーボエの音色に魂が震えることが多いのに、単独の演奏となるとどんな協奏曲やソロがあった?、という感じ。

ところが、これはたんに名曲があることを知らなかっただけのこと。You Tubeのお陰で気持ちのいい曲にたどり着いた。2ヵ月前から頻繁に聴いているのが、
★バッハ ‘オーボエとヴァイオリンの協奏曲’(15分)
★ヴィヴァルディ ‘オーボエ協奏曲’(10分)
★R・シュトラウス ‘オーボエ協奏曲’(29分)

ソプラノサックスを存分に楽しみ、オーボエの名曲にもめぐりあった。クラシックを楽しむ第二の扉が開いたかもしれない。

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2017.12.24

メリークリスマス!

Img     リベーラの‘羊飼いの礼拝’(1650年 ルーヴル美)

Img_0001     リッピの‘幼児を礼拝する聖母’(1459年 ベルリン絵画館)

Img_0002  ボッティチェリの‘東方三博士の礼拝’(15世紀 ウフィッツイ美)

今日は年末の大事な日になっているクリスマスイブ、小さい頃のことを思い出すのが少なくなる齢ではあるが、クリスマスイブにケーキを食べる習慣はずっと続いている。

ケーキを食べることは今では年に数回しかない。何年か前はサントリー美で展覧会をみたあと、ミッドタウン内に店を構える‘鎧塚’の創作ショートケーキを買って帰ることがあったが、今は店に寄らなくなった。これは胃がケーキを重く感じるようになっていることとも関係している。

2年前までは週3回、昼食と夕食の後スイーツを食べていた。ところが、目標の体重に近づけるためそれをやめたのでスイーツの習慣がなくなった。では、甘いものをまったく口にしていないかというとそうではなくたまには食べる。でも、回数は少ない。例えば、パーティに参加したときとか皆で会食をしたときなど。

これにわが家では秋に食べることを定番にしている岡埜栄泉(虎ノ門)の‘栗饅頭’が加わる。そして秋から冬にかけてときどき横浜そごうで買う安くてボリュームのある‘今川焼’も楽しみのひとつ。甘いものとのつきあいがこのように少なくなるとたまの機会がとても楽しくなる。今年は会食した人に‘栗饅頭’をお土産にもたせることが2回あったので、ニコニコ顔が続いた。

クリスマスイブになるとみているのが‘羊飼いの礼拝’、‘幼児を礼拝する聖母’、‘東方三博士の礼拝’。今回とりあげたのはリベーラ(1591~1652)、リッピ(1406~1469)、ボッティチェリ(1445~1510)のもの。メリークリスマス!

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2017.12.23

魅了される定番の浮世絵展示!

Img_0001    歌川国芳の‘誠忠義士伝 富守祐右衛門正固’(1847年)

Img_0003    歌川広重の‘名所江戸百景 愛宕下藪小路’(1857年)

Img_0002     歌川広重の‘名所江戸百景 びくにはし雪中’(1858年)

Img     木喰の‘自身像’(1804年)

年の終盤になると出かける展覧会が少なくなるので、東博ではお目当ての‘刀剣展’を鑑賞した後ほかの部屋もあちこちまわってみた。

2階の10室はお馴染みの浮世絵があるところ。今でているのは大半が歌川国芳(1797~1861)の忠臣蔵関連のもの。今年は確か府中市美で国芳をやっていたが(?)、まあいいかとパスした。でも、国芳への関心は衰えていない。最後の出動で収穫だったのはここに展示されている‘仮名手本忠臣蔵’、このシリーズはみたという記憶がない。

それに対し‘誠忠義士伝’は目が慣れている。とくにカッコいい姿で描かれているのが‘富守祐右衛門正固’、こういう中国歌舞伎のようアクロバチックな手足の動きは視線を釘づけにする。

国芳と同じ年に生まれた歌川広重(1797~1858)の最晩年の傑作‘名所江戸百景’が5点並んでいた。前にみてから間隔があいたが、やはりこの江戸百景は心に響く。季節柄雪の光景を描いた‘愛宕下藪小路’と‘びくにはし雪中’を長くみていた。‘びくにはし雪中’で目に飛び込んでくる‘山くじら’の看板はご存知のように猪の肉のこと。展示は25日(月)まで。

本館に入って右に進んだ最初の部屋が11室。ここにおやっという彫刻があった。お気に入りの木喰(1718~1810)の‘自身像’。この頬がぷくっとふくれた笑貌をみるたびに人生笑って生きていこうと思う。ここの仏像は来年2/4まで展示されている。

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2017.12.22

久しぶりの是真・暁斎!

Img_0001      柴田是眞の‘四季花鳥図屏風’(部分 19世紀)

Img     河鍋暁斎の‘地獄極楽図’(部分 1888年以前)

Img_0004        寺崎廣業の‘秋園’(1899年)

Img_0003           伊藤若冲の‘松上白鶴図’(18世紀)

今年東博で行われた特別展はヒットが続いた。‘ベスト10!’に入れた‘春日大社展’と‘運慶展’だけでなく‘茶の湯展’(4月)と‘タイ展’(7月)も充実した内容だった。さて、来年はどうだろうか。

今、どこの美術館でどんな回顧展やテーマ展が行われるか情報を集めているが、東博は今年に比べると期待度はだいぶ落ちるかもしれない。1/16からはじまる‘仁和寺と御室派のみほとけ’、‘名作誕生 つながる日本美術’(4/13~5/27)、そして夏の‘縄文展’(7/3~9/2)はどれも鑑賞済みが多そうなのでパスもありかなという感じ。

本館1階18室で久しぶりに柴田是眞(1807~1891)と河鍋暁斎(1831~1889)の大作と遭遇した。是真は六曲一双の‘四季花鳥図屏風’、過去に2度柴田是眞展(三井記念美と根津美)をみたが、この絵は出品されなかったので、10年ぶりくらいにみたかもしれない。だから、はじめは是真にこんないい花鳥画があったのか、と思ったほど。

度肝をぬかれる暁斎の‘地獄極楽図’は2年に一度くらいのペースでお目にかかっているという印象が強い。怖い鬼に責められて顔をゆがめ悲鳴をあげる罪人にみれば地獄行きだけは勘弁してもらおうと思う。この二点と再会した寺崎廣業(1866~1919)の‘秋園’は25日(月)までの展示。

2階の8室(18室の真上)では伊藤若冲(1716~1800)の‘松上白鶴図’に会った。今年はたまった若冲の図録を大整理し極上のMy若冲図録を数冊つくったので、この鶴がどの本に載っているかすぐわかる。この部屋の作品は来年の2/14まででている。

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2017.12.21

東博の‘刀剣鑑賞の歴史’!

Img     ‘太刀 銘 光忠’(重文 鎌倉時代・13世紀)

Img_0001     国宝‘刀 無銘 正宗(名物 観世正宗’(鎌倉時代・14世紀)

Img_0002     国宝‘短刀 銘 行光’(鎌倉時代・14世紀)

現在、東博本館では特集展‘刀剣鑑賞の歴史’(12/5~2/25)が行われている。場所は1階の14室(正面向かって右奥角っこの部屋)。たまたま東博のHPを開いたら、目に入ったので忘年会がはじまる前に出かけてきた。

東博へ定期的に通っていたころは刀剣が飾ってあるところには必ず行っていた。そのため、東博が所蔵する国宝、重文は数点を残してだいたい目に入っている。刀をみるときとくに関心を寄せているのは刃文、本を読んだりしてその種類を頭に入れた。

ここにあげた国宝‘短刀 銘 行光’が‘直刃(すぐは)’で、見事な‘のたれ’がみられるのが相州正宗の国宝‘刀 無銘 正宗(名物 観世正宗)’、そして長船光忠の‘太刀 銘 光忠’で目が釘付けになるのが‘丁子刃(ちょうじば)’や‘互の目(ぐのめ)’。

覚えることはまだある。刀工がいた場所とその時代。いろいろなところで刀はつくられてきたが、備前と相州をおさえておけばまあ安心。日本最大の刀剣生産地である備前には平安後期に興った古備前派、鎌倉前期の一文字派、そして鎌倉中期に不動の地位を築いた長船派の三派がある。光忠は長船派の祖、その子どもが長光。

鎌倉中期に京や備前から集まってきた刀工たちによってはじまったのが相州鍛冶。祖は新藤五国光、その子どもとも弟子ともいわれるのが行光、正宗。今回は国宝が4点、行光の短刀、正宗(名物観世正宗と金象嵌銘正宗)、正宗の子どもの貞宗の名物亀甲貞宗がみられる。見ごたえのある刀剣に魅了された。

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2017.12.19

2017年 感動の日本美術 ベスト10!(3)

Img_0001_2     運慶の国宝‘毘沙門天立像’(1186年 静岡・願成就院)

Img_2      国宝‘曜変天目’(南宋時代 12~13世紀 京都・龍光院)

Img_0002_2     葛飾北斎の‘雪中虎図’(1849年)

Img_0003      北野恒富の‘鏡の前’(1915年 滋賀県近美)

日本で彫刻家というと誰もがすぐ思い浮かべるのが運慶(?~1223)と快慶(?~1227)、そして東大寺にある‘金剛力士像 吽形・阿形’はどっちが運慶でどっちが快慶だった?と迷う。今年その二人の大規模な回顧展が行われた。春は奈良博で海外からの里帰りも含む‘快慶展’(4/8~6/4)があり、秋の‘運慶展’(9/26~11/26 東博)でも傑作がずらっと並んだ。

はじめてお目にかかった運慶でググッと惹きこまれたのが国宝の‘毘沙門天立像’、とくに迫力があるのはにらみつけるような目、まるで歌舞伎役者が見えをきるような感じ。この緊迫感、リアリティの強さが貴族にかわって台頭してきた武士たちの心をわしづかみする。芸術の様式が時代の空気を反映したものであることがこういう彫刻をみるとよくわかる。

京都の‘国宝展’(10/3~11/26)で念願の国宝‘曜変天目’がみれたのは大きな喜び。この龍光院にある曜変が国宝展にでるという話は急にでてきたので、天にも昇るような気持だった。これで長年心に思っていた国宝はコンプリートした。

対面するのに長い時間がかかったのは徽宗の‘桃鳩図’、フリーア美にある宗達の‘松島図’、そして今回公開された龍光院の曜変天目茶碗。まさに‘待てば海路の日和あり’、美術鑑賞はとにかく長期戦、健康でなくては願いは叶わない。

京都の後、向かったあべのハルカス美の‘北斎展’(10/6~11/19)でも忘れられない一枚があった。‘雪中虎図’、これはNYのコレクターの所蔵だからこの機会を見逃すと二度と縁がない。国宝展に曜変が出品されたので、この愛嬌のある虎をみることができた。二つには不思議なつながりがあったのだろう。

千葉市美で開催された北野恒富(1880~1947)の回顧展(11/3~12/17)は予想以上にいい絵が並んでいた。‘鏡の前’をみて即、恒富を美人画の名手の第一列に格上げした。

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2017.12.18

2017年 感動の日本美術 ベスト10!(2)

Img     喜多川歌麿の‘吉原の花’(1791~92年 ワズワース・アセーニアム美)

Img_0001          英一蝶の‘涅槃図’(1713年 ボストン美)

Img_0004     陳容の‘九龍図’(部分 南宋時代 1244年ボストン美)

Img_0003          ‘九龍図’(部分)

日本美術関連の展覧会を1年を通してふりかえってみると、毎年々数は少ないが長年追っかけていた名品との遭遇がある。それが今年は例年以上に多かった。しかも、屏風、浮世絵、彫刻、工芸といろんなジャンルにわたるという運の良さ。ミューズに感謝の気持ちをこめてお歳暮を贈っておいた。

夏にドライブを兼ねてクルマで出かけた箱根の岡田美(7/28~10/29)で心が踊る浮世絵と対面した。存在を知ってからみたくてしょうがなかった喜多川歌麿(1753~1806)の‘吉原の花’、この肉筆画を所蔵しているのはアメリカのワズワース・アセーニアム美(コネチカット州ハートフォード)。

千葉市美で行われた歌麿展に一度里帰りしているので、再来日は無理だろうなと思っていた。ところが、突然いい風が吹いてきた。2012年日本で発見された‘雪月花’のひとつ‘深川の雪’が強い磁力を放ち、再びアメリカから呼び寄せてくれた。このニュースを聞いたときは飛び上がるほど嬉しかった。

フリーアの‘品川の月’を加えた三部作のなかでこれがもっとも心を浮き浮きさせる。艶やかな衣裳に身をつつみ桜の花と美の競演を繰り広げる女性たちの姿を生き生きと活写したこの‘吉原の花’は歌麿の最高傑作かもしれない。

‘ボストン美の至宝展’(7/20~10/9 東京都美)に登場した英一蝶(1652~1724)の‘涅槃図’も目を楽しませてくれた。図版では絵のサイズが実感できないので、大きな本物とむきあうと描かれた天女や動物たちを隅から隅までみてしまう。また、170年振りに修理が行われ描かれたときの状態でみれるというのは幸運なめぐり合わせ。

ボストン美蔵で圧倒されたのがもうひとつある、南宋時代に活躍した陳容によって描かれた‘九龍図’、横9.58mの画面に9頭の龍が雲のなかを超スピードで飛びまわっている。正面向きの姿があり、そして胴体を大きくくねらせる躍動的な動きは風に渦をまきおこす。強く印象に残る龍だった。

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2017.12.17

2017年 感動の日本美術 ベスト10!(1)

Img      国宝‘赤糸威大鎧’(13~14世紀 春日大社)

Img_0004     ‘五葉松 銘 日暮し’(大宮盆栽美)

Img_0002  海北友松の‘月下渓流図屏風’(左隻 17世紀 ネルソン・アトキンス美)

Img_0001      ‘月下渓流図屏風’(右隻 部分) 

後半に内容の充実した展覧会が目白押しだった日本美術関連の特別展、東博では1月の‘春日大社展’(1/17~3/10)と秋の‘運慶展’(9/25~11/26)がお宝満載の展示だった。

国宝の追っかけを長く続けているが、奈良の春日大社はまだ訪問したことがなく、有名な‘蒔絵箏’や威大鎧などとまったく縁がなかった。それが今年一気に解消された。これが春日大社のお宝か、という感じ。‘蒔絵箏’にも大感激だったが、もっと気持ちがハイになったのが‘赤糸威大鎧’、めぼしい国宝の鎧はだいたいみていたが、これほど見事な鎧があったとは!200%KOされた。

4月、大宮盆栽美でみた盆栽の傑作、‘五葉松 銘 日暮し’も忘れられない一品になった。TVのニュースにときどき大宮にやって来る海外の盆栽愛好家がでてくるが、出かけた日も大勢の外国人がいた。大宮は盆栽の聖地になっているようで、どの愛好家も満足げな顔つきで目が輝いていたのが印象的。

京博の海北友松展(4/11~5/23)で大きな収穫があった。最後にでてきた‘月下渓流図屏風’、海北友松(1533~1615)の最晩年の屏風が日本ではなくアメリカのネルソン・アトキンス美におさまっていたことはまったく知らなかった。日本にあったら国宝に指定されてもおかしくない。この絵によって友松の位置づけが永徳、等伯と同じになった。


   


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2017.12.16

2017年 感動の西洋美術 ベスト10!(3)

Img     ジャコメッティの‘歩く男Ⅰ’(1960年 マーグ財団美)

Img_0002     ゴッホの‘タラスコンの乗合馬車’(1888年 プリンストン大美)

Img_0001     カサットの‘母と子ども’(1889年 シンシナティ美)

Img_0003     ‘セーヴル磁器 壺 ポプリ・ポンパドゥール’(1753年)

一人の作家の回顧展に2回遭遇するのが理想だが、今年はジャコメッティ(1901~1966)でそれが実現した。場所は毎年数回足を運ぶ国立新美(6/14~9/4)、一度みているので薄くて細長い女性立像などを軽くみながら進んでいたら、最後の方にサプライズが用意されていた。

目の前に現れた3つの作品、‘女性立像’、‘歩く男’、‘頭部’はどれもお馴染みのものだが、びっくりしたのはその大きさ、‘歩く男’は実際の人間同じくらいある。絵画もそうだが、彫刻でも大きいとモチーフの存在感がぐんと増す。ジャコメッティのこんな大きな作品はみたことないので立ち尽くしてみていた。

現在、東京都美で開催中のゴッホ展(10/24~1/8)、新規の作品が5点ほど登場した。そのなかで大変魅了されたのが‘タラスコンの乗合馬車’、昨年はデトロイト美の自画像がやって来て今年はゴッホ展、そして年が明けると2月、国立新美にチューリヒのビュールレコレクションが所蔵する‘沈む太陽と種まく人’(東京都美に展示されているゴッホ美蔵の別ヴァージョン)がでてくる。ゴッホ好きにとってはいい流れが続く。

来年の1/28まで行われる西洋美の‘北斎とジャポニスム’、ここに嬉しい作品があった。カサット(1844~1926)の‘母と子ども’、この幼子の可愛いこと!カサットがまた好きになった。

サントリー美のセーヴル展(11/22~1/18)に手元にある世界のやきものを集めた本に載っている有名な壺‘ポプリ・ポンパドゥール’がでていた。モザイク展示を相変わらず行うのでサントリーに対する好感度は高くはないが、こういうセーヴル磁器の傑作をみせられるとこの美術館のもっている企画力はスゴいなと思う。

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2017.12.15

2017年 感動の西洋美術 ベスト10!(2)

Img_0003 ミュシャの‘スラブ叙事詩 原故郷のスラブ民族’(1912年 プラハ市美)

Img_0002     ブリューゲルの‘バベルの塔’(1568年 ボイマンス美)

Img_0001アルチンボルドの‘春’(1563年 サン・フェルナン美術アカデミー美)

3月から6月にかけて多くの美術ファンの関心を集めた西洋絵画が3つ登場した。まず、ミュシャ(1860~1939)の‘スラブ叙事詩’(3/8~6/5 国立新美)、次がブリューゲル(1525~1569)の‘バベルの塔’(4/18~7/2 東京都美)、そして、アルチンボルド(1527~1593)の‘四季’と‘四大元素’(6/20~9/24 西洋美)。

国立新美のあの広い展示室でミュシャの‘スラブ叙事詩’(20点)をみれたことは生涯の思い出。この連作はミュシャ物語には欠かせない最後の大事なピースだが、作品があるのは日本からは遠いチェコの地。どうみたって縁はなさそうと思っていた。

じつは縁ができる手前までは行った。2003年中欧を旅行し、プラハの国立美でミュシャの‘スラーヴィア’と対面したのである。日本にやって来るアールヌーヴォ調の華やかな女性画にこのすばらしい絵が加わったのでもって瞑すべしというところ。

それから14年経った今年奇跡が起こった。なんと、図版でながめていた‘原故郷のスラブ民族’や‘スラブ式典礼の導入’などが目の前に現られたのである。縦6m、横8mという超大作の威力もあって感動袋が破れる寸前だった。こんな嬉しいことがあると夢を見続けているほかの作品についてもついミューズにお願いしたくなる。

ブリューゲルが描いた2作目の‘バベルの塔’も忘れられない一枚。普段この絵が展示されているロッテルダムのボイマンス美はボスやダリもあるため気になっていた美術館。そこからわざわざブリューゲルの傑作とボス2点がお出ましいただいたのだから有り難い。

ブリューゲルで残っているのはベルリンにある‘ネーデルランドの諺’と‘野外での農民の婚礼の踊り’(デトロイト美)、会えるだろうか。二度目のベルリンは可能性があるが、デトロイトは無理かもしれない。

西洋美のアルチンボルド展も大ヒット。なかでもマドリードで美術館巡りをしたとき王立サン・フェルナンド美術アカデミー美で姿をみせてくれなかった‘四季 春’をリカバリーできたのは幸運だった。アルチンボルドとブリューゲルはほぼ同世代。ブリューゲルがバベルの塔の細かいところまで信じられないほど細密に描いたのに対し、アルチンボルドは奇抜な発想によるシュールな人物画で人々をあっと言わせた。その稀有な天才に乾杯!

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2017.12.14

2017年 感動の西洋美術 ベスト10!(1)

Img_0002     ティツイアーノの‘ダナエ’(1544年 カポデイモンテ美)

Img     カッサンドルの‘ノルマンディー’(1935年)

Img_0001_2    シャセリオーの‘カバリュス嬢の肖像’(1848年 カンベール美)

昨年同様、展覧会のくくりだけでなく出会った作品ごとにみて感動の大きかったものについてもベスト10!を選んでみた(3回に分けて)。いずれもはじめてお目にかかったもの。まずは西洋美術を見た順番で。

ここ2年、ヴェネツィア派とボッティチェリが大盛り上がりだっが、東京都美の‘ティツィアーノとヴェネツィア派展’(1/21~4/2)にはティツィアーノ(1485~1576)の傑作‘ダナエ’が登場した。これを所蔵しているのはまだ訪問が実現していないナポリのカポデイモンテ美、ここの自慢のコレクションであるティツィアーノが今回4点もやって来たのだから言うことなし。念願の‘ダナエ’に会えて最高の気分だった。

ポスターの世界で革命をおこしたカッサンドル(1901~1968)の存在を知ったのは何年か前に放送された日曜美術館、ロートレックのポスターなども一緒にでてきたが、最後に紹介されたカッサンドルの斬新なポスターに目が点になった。そのひとつが豪華客船の宣伝に使われた‘ノルマンディー’、懐が豊かなフランス人はこのポスターをみたらこれに乗って海の旅を楽しもうと思ったにちがいない。

カッサンドルの作品をいつかまとまった形でみたいと願っていたので埼玉県近美で開催された回顧展(2/11~3/26)は喜び勇んででかけた。ほかにも列車の線路の造形が大きな才能を感じさせる‘エトワール・デュ・ノール’を立ち尽くしてみていた。

昨年はカラヴァッジョをとりあげその実力をみせつけた西洋美が今年は渋い画家をぶつけてきた。これまで片手くらいしかお目にかかったことのないシャセリオー(1819~1856 2/28~5/28)。

一体どんな画業だったのか興味はあったが、期待していたオルセーにある代表作がなかったので肩透かしを食らった感じ。でも、‘カバリュス嬢の肖像’と裸婦図の‘泉のそばで眠るニンフ’には思わず足がとまった。

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2017.12.13

2017年 感動の展覧会 ベスト10!

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今年みた展覧会をふりかえって心に残るものをいつものように10選んでみた。出かけた美術館は京都・大阪への遠征を含めてちょうど40展。そこからのベスト10なのですぐ決まる。

★春日大社展       1/17~3/10       東博

★ミュシャ展       3/8~6/5         国立新美

★海北友松展       4/11~5/21       京博

★ボイマンス美展     4/18~7/2        東京都美

★アルチンボルド展    6/20~9/24       西洋美

★ボストン美の至宝展   7/20~10/9       東京都美

★歌麿大作 吉原の花   7/28~10/29      岡田美

★狩野元信展       9/16~11/5       サントリー美

★運慶展         9/25~11/26      東博

★国宝展         10/3~11/26      京博

昨年はカラヴァッジョ展など西洋絵画にいいのが多かったが、今年は日本美術の存在感をぐんとまし7つ入った。絵画、彫刻、やきもの、工芸などこれぞ日本美術の真髄!という感じでその充実した内容は長く記憶に残るものとなった。

とくに嬉しいのは長年追っかけていた作品と例年以上に多く会えたこと。4つもある。春日大社のびっくりするほどすばらしい鎧兜、京博の国宝展に出品された龍光院の曜変天目茶碗、箱根の岡田美に里帰りした歌麿の肉筆画‘吉原の花’、そしてボストン美蔵の英一蝶の‘涅槃図’。この感動の余韻はあと半年はもつ。

回顧展で期待値通りの大きな満足がえられたのが京博の海北友松展と東博の運慶展。展示の最後に登場した友松の‘月下渓流図屏風’には200%しびれた。こんないい絵がアメリカの美術館におさまっていたとは!一生忘れられない鑑賞体験だった。

西洋絵画はミュシャの‘スラブ叙事詩’とボイマンス美のブリューゲルの‘バベルの塔’がみられたことが最大の収穫。ルーヴルとかプラドにある作品だと日本で見る機会があるかもしれないが、この2点はチェコとオランダの美術館の所蔵。

だから、日本に登場するなんてことは奇跡に近い。でも、実現してしまうのだから日本は美術大国。つくづくいい美術環境のなかで暮しているなと思う。

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2017.12.12

美術館に乾杯! ボストン美 その十六

Img     ホックニーの‘ギャロビー・ヒル’(1998年)

Img_0004     ルイスの‘デルタ ガンマ’(1960年)

Img_0003     ピカソの‘ザビニの女たちの略奪’(1963年)

Img_0001        ゴーキー

今年東京都美が行ったボストン美展で嬉しいことがあった。最後の展示室に思ってもいなかったホックニー(1937~)の‘ギャロビー・ヒル’が現れたのである。手前は大きなカーブにより空間が凸凹にゆがんでいるのにそれから先は平坦な農地が遠くまでのびていくという現代感覚の風景画。

じつはこの絵は2008年に入館したとき、館案内のパンフレットに掲載されていた作品。すぐ気に入り探したのだが、アメリカ館の新設工事のため展示されてなかった。そして、2年前もホーマーに夢中になっていたせいで会えなかった。その絵を日本でみることになるとは!こういうことがあるから美術館通いはやめられない。

イギリス現代アートのレジェンドであるホックニーは今年80歳。BS2が3カ月前にとりあげた大英博の北斎展に登場した。この人があのホックニーか、という感じ。‘北斎はもっと長く生きて絵を極めたいと語ったが、私もそう思っているよ’とインタビューに応えていた。ホックニーは富士山も描いているが、北斎が好きなんだろう。ますます好きになった。いつか回顧展に遭遇することを7夢見ている。

ルイス(1912~1962)の‘デルタ ガンマ’はきりっとした色彩の美が目にしみる一枚。画面の中央はキャンバスの地のまま、赤や黄色などの明るい色の帯は両サイドで対照的に斜めにのびている。この帯は絵筆で描いたのではなく画面を動かして絵の具をしみこませたもの。色彩の力に強く惹かれる。

ボストンにあるピカソ(1881~1973)はコルトーナやダヴィッドらも絵画化した‘ザビニの女たちの略奪’、しばらくながめていると1937年に描いた‘ゲルニカ’の馬のいななきや女の悲痛な叫びが重なってくる。

アメリカ館に展示されていた現代アートはポロック、ゴーキー(1904~1948)、マッタ。数は多くないが、作品の質は高い。抽象画だが丸や四角の形が柔らかくすっと作品のなかに入っていけるゴーキーをながくみていた。

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2017.12.11

美術館に乾杯! ボストン美 その十五

Img_0001     オキーフの‘白バラとヒエン草’(1927年)

Img     オキーフの‘鹿の頭蓋骨とペダーナル’(1936年)

Img_0003     ジョセフ・ステラの‘古いブルックリン橋’(1941年)

Img_0002     デイヴィスの‘熱い都市の風景’(1940年)

現代アートの作品はアメリカ人作家はアメリカ館で展示し、ピカソなどは印象派などヨーロッパ絵画のくくりで従来のところに登場する。女流ア―ティストのオキーフ(1887~1986)はアメリカ生まれなので、アメリカ館にある。

オキーフを多く飾っているのはメトロポリタン、2008年に出かけたときは地下にある展示室でなんと20点も楽しむことができた。そして、シカゴ、ワシントンナショナルギャラリー、ボストンでみたのは2,3点。オキーフに目が慣れてくると、この画家の作品がモチーフの巨大化に特徴があることに気づく。

異常に大きく描かれたものは花びらと頭蓋骨。花の絵を普通に描くと静物画になる。ところが、これを画面からはみだすほど拡大すると花びらの姿が変容し抽象画のイメージになってくる。‘白バラとヒエン草’は具象3割、抽象7割という感じ。空中に浮遊する巨大な白いバラはまるで異次元の世界で遭遇した物体のよう。

‘鹿の頭蓋骨とペダーナル’は2年前心を打たれた作品。代表作の‘夏の日々’(ホイットニー美)をみる縁がなかなかやって来ないので、この絵に会えたのは望外の喜び。アメリカの大自然と鹿やバッファローの頭蓋骨を組み合わせるアイデアは絵画という芸術形態のもっている表現力の凄さかもしれない。白骨化した動物の頭がアメリカの大地にあることで地殻変動や大陸移動といった地球の成り立ちにまで思いが広がっていく。

オキーフの描く頭蓋骨は画面の中心に置かれているので視線がこれにグッとよっていくが、ジョセフ・ステラ(1877~1946)の‘古いブルックリン橋’でも同じような感覚がある。こういうエネルギーが中心に凝縮された作品は不思議な磁力を放っている。

デイヴィス(1894~1964)の‘熱い都市の風景’はどこかミロのゆるみのまじったコミカルさを感じさせる。一見子どもでも描けそうと勝手な感想をもつが、よくみると縦、横、斜めの構成は入念に練られた色彩と形態に支えら。並の創造力ではこんな絵は描けない。

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2017.12.10

美術館に乾杯! ボストン美 その十四

Img     ゴッホの‘郵便配達夫ルーラン’(1888年)

Img_0001     ベルナールの‘画家の祖母’(1887年)

Img_0003     コプリーの‘少年とリス’(1765年)

Img_0002     セイヤーの‘カリタス’(1895年)

多くの人が好きな画家とそれより知名度の低い画家がいたとき、あえて後者のほうに走る人がいる。こういうのを天邪鬼というが、この人種の特徴は美術の世界のど真ん中にいる画家に熱心でなくクセ玉的な存在を過度に持ち上げ目立とうとする。これで名を売る美術評論家がとても多い。くれぐれもご注意を。

こんな人は人気のゴッホ(1853~1890)については表向きはいいねなんていう。だが、それが本音ではなく演技だということはすぐバレる。好みは人それぞれだからそれでいいのだが、カッコつけたもの言いに性格が出る。ゴッホは圧が強いから疲れるのよね、というほうが好まれる。

今年は東京都美にボストンの‘郵便配達夫ルーラン’がはじめてやって来た。何度もボストン美展があったのにこの絵はこれまで姿を現してくれなかった。それはサージェントの‘ボイトの娘たち’、カサットの‘桟敷席にて’とともに美術館の至宝として扱われているから。ゴッホが描いた男性の肖像画ではオルセーにある‘ガシェ博士’とともに最高傑作。

ゴーギャンと一時期行動を共にしていたベルナール(1868~1941)の‘画家の祖母’は記憶に残る一枚。ベルナールはゴーギャンやゴッホの回顧展で展示されることがあるが、単独の展覧会を一度みてみたい気もする。だが、作品を多く集められるかどうか。

2015年に訪問したとき、アメリカ館で収穫だったのがコプリー(1738~1815)の‘少年とリス’とセイヤー(1849~1921)の‘カリタス’。画集でみてるとそれほどぐっとこないが、本物と対面して大変魅了された。絵画は奥が深い。

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2017.12.09

美術館に乾杯! ボストン美 その十三

Img_0001      ロートレックの‘カフェ・ミーにて’(1891年)

Img     ドガの‘モルビッリ夫妻’(1865年)

Img_0003    ホッパーの‘ブルックリンの部屋’(1922年)

Img_0002     セザンヌの‘赤い肘掛け椅子のセザンヌ夫人’(1877年)

ロートレック(1864~1901)の油彩を楽しむにはアメリカの美術館をまわるにかぎると強く感じたのは2008年にシカゴ美などを訪問したとき。この話は何度も書いているが、シカゴでは‘ムーラン・ルージュにて’と遭遇し上機嫌だった。

その後、ワシントンナショナルギャラリーの‘バレエを踊るマルセル・ランデ’やフィラデルフィアの‘ムーラン・ルージュにて:踊り’にも会うことができた。ボストンにあるのは‘カフェ・ミーにて’、これはロートレックが尊敬するドガ(1834~1917)の‘アプサント’を意識したことは明らかで、二人の関係はどうみても冷えきっている。

ドガの‘モルビッリ夫妻’は確か日本にやって来た。肖像画というのはモデルの内面が感じとれるものがやはり惹きつけられる。夫の腕に手をそえる妻のしぐさがとてもいい。きっと固く結ばれた夫婦なのだろう。

ドガが人間関係に恵まれなかったり仕事にちょっと疲れた人々の様子をふとみつめたように、ホッパー(1882~1967)は近代化の波がパリよりもっと早いスピードで進んだニューヨークで孤独を噛みしめながら生きていく人たちを音を遮断して描いた。女性の背中にどこか淋しさがただよう‘ブルックリンの部屋’は忘れられない一枚。

セザンヌ(1839~1906)は肖像画を描くときモデルをあまりに長く拘束するので人物は限られたという話がモノグラフによく載っている。妻のオルタンスは辛抱強い女性だったにちがいない。‘赤い肘掛け椅子のセザンヌ夫人’はいくつかあるオルタンスの肖像のなかでは最も出来がいい。

ここでは赤い肘掛け椅子は強いアクセントになっているが、あと1ヶ月もするとビュールレ・コレクションの‘赤いチョッキの少年’に会える。ワクワクしている。

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2017.12.08

美人画の名手 菊川英山!

Img     ‘青楼美人合 岡本屋内 稲岡 茂枝’(1812~13年)

Img_0001     ‘風流美人揃 五色墨 猫を抱く美人’(1814~17年)

Img_0002     ‘風流青楼美人六玉川之内 陸奥 千鳥玉川’(1814~17年)

Img_0004     ‘花車子供遊’(1814~17年)

太田記念美で行われている‘菊川英山展’(11/3~12/20)の後期をみてきた。チケットの半券をみせると200円引。普通は100円引だから美術館に対する好感度は上がる。

喜多川歌麿の美人画のDNAを引き継ぐといわれる菊川英山(1787~1867)だが、歌麿が亡くなった1806年は二十歳のころ。英山は長生きの家系だったのかを80歳まで生きた。同世代では歌川国貞(1786~1864)がいる。そして、10歳若いのが広重(1797~1861)と国芳(1797~1858)。

この回顧展にでた作品は全部で200点、後期はその半分。以前から英山の描く女性のハッとする色っぽさに魅了されていたが、英山の美人画をこれほど多く楽しめたのは本当に幸せだった。これまで美人画の浮世絵師列伝に入れていたのは春信、春章、清長、歌麿。これからは英山を加えることにした。

見事な遊女の半身像に思わず足がとまるのが‘青楼美人合 岡本屋内 稲岡 茂枝’、上の女性の口紅は高価な緑色の笹色紅、歌麿がこれをみたら裸足で逃げたかもしれない。

‘風流美人揃 五色墨 猫を抱く美人’と‘風流青楼美人六玉川之内 陸奥 千鳥玉川’では英山流のゾクッとするほど女性美が心をかきむしる。とびっきりの美形で色白、ここですぐ頭をよぎるのが女優の沢尻エリカ、そして、女性を引き立てる猫と千鳥の群れにも視線がむかう。

感心してみていたのは‘花車子供遊’。清長、国貞、国芳にも気持ちが和む子どもの風俗画があるが、英山がこれほど上手に子どもたちを描いていたとは。英山に乾杯!

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2017.12.06

美術館に乾杯! ボストン美 その十二

Img_0001     ゴーギャンの‘我々はどこから来たのか’(1897年)

Img     ルノワールの‘ブージヴァルのダンス’(1882~83年)

Img_0004         モネの‘ラ・ジャポネーズ’(1876年)

Img_0002     マネの‘街の歌い手’(1862年)

好きな画家の大回顧展が海外の美術館であると日程をやりくりをして見に行きたくなるが、幸運なめぐり合わせはそうたびたびやって来ない。印象派やポスト印象派で大きな思い出となっているのはモネ(1840~1926)とゴーギャン(1848~1903)。

2010年、開館10年目を迎えたロンドンのテートモダンで大規模なゴーギャン展が開催された。一番嬉しかったのはスコットランド国立美が所蔵する‘説教のあとの幻影’に会えたこと。画集に必ず載っているこの絵といつか対面したいと思っていたが、ふだん展示されているのはエジンバラ。ここは遠い。はたして縁があるだろうか、という感じだったのでこの展覧会は本当に有り難かった。

回顧展はこのあとワシントンのナショナルギャラリーに巡回したのだが、どういうわけかボストン美にある代表作‘我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか’は出品されなかった。そして、メトロポリタンにある‘マリア礼賛’もワシントンへ行かなかった。

飛車角落ちという感じだが、美術ファンが望む申し分のないラインナップというのはなかなか実現しない。これを思うと、‘我々はどこから来たのか’が2009年、東近美にやって来たのは特別な展示だったことがわかる。日本に貸し出したので翌年のロンドン行きは難しかったのかもしれない。

ゴーギャンの絵と同様、ルノワール(1841~1919)の‘ブージヴァルのダンス’も美術館の至宝。大きな絵でルノワールの全作品のなかでも5本の指に入る傑作。日本で過去2度お目にかかったから、トータルで5回会った。もうすばらしいの一言!

モネの人物画ではすごくインパクトのある‘ラ・ジャポネーズ’もいい思い出。妻カミーユの小顔と着ている着物の赤の強さは忘れられない。今、西洋美で‘北斎とジャポニスム’が行われているが、この肖像画にも人々を魅了したジャポニスムが色濃く描かれている。

来年1月から世田谷美ではじまるボストン美展に出品されるのがマネ(1832~1883)の‘街の歌い手’、三菱一号館美のマネ展(2010年)にも登場したが、再会するため足を運ぶかもしれない。

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2017.12.05

美術館に乾杯! ボストン美 その十一

Img     モネの‘積藁(日没)’(1890~91年)

Img_0003     カイユボットの‘スタンドに並べられた果物’(1881~82年)

Img_0001     ピサロの‘雪に映える朝日’

Img_0005     シニャックの‘サン=カの港’(1890年)

印象派で日本にやって来た作品が最も多いのはモネ(1840~1926)、何度もボストン美展も開催されたのでコレクションのほとんどが出品されたのではなかろうか。だから、アメリカへ行かなくてもモネは堪能できる。

2008年に訪れたときは全部で9点並んでいた。そのなかで感激の一枚が‘積藁(日没)’、夕陽に照らされ燃えるような赤につつまれた積藁の美しさが目に焼きついている。積藁の絵は1990年ロンドンのロイヤル・アカデミーで開催された‘モネ連作展’でお目にかかって以来、数多くみてきたがこのボストンにあるものが群をぬいていい。

カイユボット(1848~1894)に開眼したのはシカゴ美で代表作‘パリの通り、雨’をみたとき。それ以前は関心の度合いは名前を知っているくらいだったが、1993年にみた‘スタンドに並べられた果物’はその明るい色彩のせいで大変魅了された。この静物画の印象がよかったので後の開眼のステージにつながったのかもしれない。

印象派の兄貴格的な存在のピサロ(1830~1903)は点描画などにも手を広げ画域の広い画家。シカゴやフィラデルフィアでも作品をみることはあるが、足がとまるものが多いのがボストン。背の高い木々の前で桶を両手にもって立つ女の子が印象深い‘雪に映える朝日’もその一枚。雪の季節になったのでしみじみながめている。

シニャック(1863~1935)が綿密な点描によって仕上げる海の光景はリズミカルで軽快な調子が際立つのが特徴。スーラの静寂さとは対照的に人々の声が聞こえ柔らかい風の流れが音となってふるえているような感じ。

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2017.12.04

美術館に乾杯! ボストン美 その十

Img_0001     ホーマーの‘見張り’(1896年)

Img     ホーマーの‘濃霧警報’(1885年)

Img_0003     コールの‘楽園追放’(1828年)

Img_0002    ビーアスタットの‘バッファローの移動’(1867年)

アメリカの美術館をはじめて訪問したのは27年前の1990年、NYのメトロポリタン、MoMA,フリック・コレクショ、ン、そしてワシントンのナショナルギャラリーをまわった。そのとき関心の的だったのは古典絵画やフランス印象派の画家、ピカソ、シャガール、マティス、ミロ、ダリたちの作品。だから、アメリカの画家はかすりもしなかった。

ホッパー(1882~1967)やホーマー(1836~1910)、ハドソンリバー派などが頭に入りだしたのはアメリカの美術館を本格的にまわるようになった2008年から。これによって、アメリカ絵画の魅力が体で感じられるようになった。

ホーマーの得意とした海洋画を知ったのは1985年に出版された‘世界名画の旅’という本、ここに‘八点鐘’が載っていた。そのあと、1993年に‘見張り’があるボストン美にでかけたのに、鑑賞のエネルギーはもっぱらゴーギャンの‘われわれは何処から来たのか、、’やモネ、ルノワール、ゴッホに注がれホーマーはまったく意識の外。

ガイドブックにでている‘見張り’をみて、惜しいことをしたと思ってもあとのまつり。その後智慧のリカバリーに22年もかかった。現在、この絵は2010年秋に完成したアメリカ館に飾ってある。入館するとすぐツアーメンバーから離れて速足で展示室にむかった。予想外にあまり大きな絵ではなかったが、画面いっぱいに描かれた船員の顔と時鐘の圧倒的なリアリズムに息を呑んでみていた。

ホーマーは全部で6点あったが、海面のうねりで大きな魚をとりこんだ小舟が激しく揺れる様子を描いた‘濃霧警報’に視線が釘づけになった。念願のホーマーに会えて懸案の仕事をやりとげたような気分だった。次の目標は‘八点鐘’、これを所蔵しているのはマサチューセッツ州アンドーバーにあるアディソン・ギャラリー、夢が叶うことをミューズにお願いしている。

アメリカのブランド美ではどこへいってもトマス・コール(1801~1848)やエドウイン・チャーチ(1826~1900))、アルバート・ビーアスタット(1830~1902)らのハドソンリバー派の雄大な風景画を楽しむことができる。ボストンではコール(2点)とビーアスタット(3点)に遭遇した。とくには長くみていたのはジョン・マーチンを彷彿とさせる‘楽園追放’と強い生命力をみせつける‘バッファローの移動’。

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2017.12.03

美術館に乾杯! ボストン美 その九

Img サージェントの‘エドワード・ダーリー・ボイトの娘たち’(1882年)

Img_0002     サージェントの‘ヘレン・シアーズ’(1895年)

Img_0001     カサットの‘桟敷席にて’(1878年)

Img_0004     カサットの‘5時のお茶’(1879年)

幸運なことにボストン美に3回も入れたので、この美術館のもっているすばらしい絵画コレクションを存分に堪能できた。だから、その感動をこれから出かけられる方と共有することを念じ作品の選択に心を配っている。

はじめてのボストンだったら、まずはゴーギャンのあの‘われわれはどこから来たのか、、’やモネの‘ラ・ジャポネーズ’のある印象派の部屋がめざすことになるだろうが、アメリカ館のサージェント(1856~1925)とカサット(1844~1926)をみたら喜びはきっと倍増する。

ツアーだと現地のガイドさんが印象派のところには必ず連れて行ってくれるが、アメリカ館までつきあってくれない。そのため、美術館がとっても大事にしている2人の名画を見逃すことになる。その極めつきの絵が‘エドワード・ダーリー・ボイトの娘たち’と‘桟敷席にて’。

カサットの絵は昨年横浜美で行われた回顧展でやっと出品されたが、サージェントの‘娘たちは’あれほど何度もボストン美展があったのにまだ姿をみせていない。‘桟敷席’が来たのだから次はサージェントの番だと思うが、はたして貸し出してくれるだろうか。なにしろこの絵は1993年にはじめて訪問したとき手に入れたガイドブック(英語版)の表紙を飾っている美術館自慢の名画。諦めてはいないが、難しそう。

2年前、この愛らしい娘たちと22年ぶりに再会し体が熱くなった。手前に座っている一番下の女の子がなんといっても可愛い。サージェントはこの子をベラスケスのあの‘ラス・メニーナス’に描かれたマルガリータ王女に仕立てている。

このほかに5点みたが、そのなかに収穫の一枚があった。白い衣装が発光体のように輝いていた女の子、ヘレンの肖像画。絵葉書ではこの輝きがでないのであえて写真におさめたものを使った。もうひとつ、‘チャールズ・インチェ夫人’に魅せられたが、この絵は来年1月からはじまる世田谷美の展覧会に出品される。

カサットの‘5時のお茶’は1993年のときみたが、そのころはまだカサットに開眼してなかったので思い入れが弱かった。じつはガイドブックにはこの絵が載っていて、‘桟敷席’はなぜかでてこない。2枚を一緒にみたら、軍配はどうしても‘桟敷席’にあがる。

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2017.12.02

美術館に乾杯! ボストン美 その八

Img_0004     ミレーの‘種をまく人’(1850年)

Img_0003     ミレーの‘刈入れ人たちの休息(ルツとボアズ)’(1853年)

Img     クールベの‘分け前’(1857年)

Img_0001     ティソの‘サーカスを楽しむパリの女性’(1885年)

絵画好きに日本の美術館にある最も有名な西洋画はどれかと尋ねたとする。真っ先にあがるのはたぶん山梨県美にあるミレー(1814~1875)の‘種をまく人’か大原美のゴーギャンの‘かぐわし大地’、その‘種をまく人’は岩波書店のロゴマークにもなっているから、とにかくミレーはゴッホ同様日本では根強い人気がある。

1984年、日本橋の高島屋でボストン美が所蔵するミレーがたくさん展示された。目玉はもちろん‘種をまく人’、その横に山梨のものも並んだ。このミレー展がボストン美とのつきあいのはじまり。そして、1993年に訪問、そのときは日本に出品されなかった‘刈入れ人たちの休息(ルツとボアズ)’を熱心にみた。

このところ日本でミレーの絵をみる機会がほとんどない。2003年にBunkamuraにオルセーの‘晩鐘’、‘落穂拾い’、‘羊飼いの少女’が飾られて大きな話題になったが、そのあとはミレーは影がうすい。時代の移り変わりとともに画家に対する好みも変化することはわかっているが、ちょっと寂しい気もする。

クールベ(1819~1877)の‘分け前’はとても大きな絵で立ち尽してみてしまうほどの傑作。狩りをテーマにした作品をクールベは何点も描いているが、これは鹿を仕留めたあとのもの。こういう絵は動物愛好家からみると‘とんでもない!’ということになるのだろう。

イギリスで活躍したフランスの画家ティソ(1836~1902)の‘サーカスを楽しむパリの女性’は妙に気になる一枚。その原因はぶらんこに乗っているサーカス団員ではなくてこちらをじっと見ている女性。奥行きをつくる人物配置がじつにうまく映画のワンカットをみているよう。

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2017.12.01

美術館に乾杯! ボストン美 その七

Img           バーン=ジョーンズの‘希望’(1896年)

Img_0001     ムンクの‘声’(1893年)

Img_0004     ベックリンの‘オデツユセウスとポリュフェモス’(1896年)

Img_0002     ココシュカの‘リヨン’(1927年)

イギリスの画家でずっと心にとめているのが6人いる。ターナー、コンスタブル、ロセッティ、バーン=ジョーンズ、ミレイ、そしてブレイク。ボストンにはミレイはないが残りの5人は揃っている。そのなかで最も有名なのがバーン=ジョーンズ(1833~1898)の‘希望’。

バーン=ジョーンズの作品でいまだにその誕生の謎が解けてないのが数多くある縦長の絵。勝手な解釈はモリスと一緒に手がけたステンドグラス装飾との関連性。この絵も縦1.79m。これまでお目にかかった縦長画で一番大きいのはテート・ブリテンにある‘コフェチュア王と乞食の娘’、なんと2.9mもある。

バーン=ジョーンズには熱い思い入れがあり、イギリスの美術館を巡って画集を載っている作品と対面することを夢見ている。例えば、バーミガム美、マンチェスター美、サウサンプトン美。いずれも日立の製作した高速列車に乗ればロンドンから日帰りで訪問できそう。

来年秋、ムンク(1863~1944)の‘叫び’がやって来る。西洋絵画では1月にみられるセザンヌの‘赤いチョッキの少年’とともに二重丸をつけている。ムンクはまだみてないものが多いので大きな楽しみ。アメリカにあるムンクというとボストンの‘声’とNYのMoMA、ワシントンのフィリップスコレクションにあるものがすぐでてくる。

2015年に訪問したとき、想定外の作品に出会った。スイスのベックリン(1827~1901)が描いた神話画‘オデュッセウスとポリュフェモス’。異様な姿をした巨人ポリュフェモスが登場するので一度見たら忘れようがない。かなり前Bunakamuraでみたが、そのときは確か個人蔵だった。ということは、そのあとボストンが市場にでたのを購入したのだろう。

ココシュカ(1886~1980)にはいい風景画があるが、‘リヨン’はその一枚。ほかには‘フィレンツ’(メルツ゚バッハ―コレクション)、‘チュニスの市場’(コートールド美)、‘プラハの河港’(ベルヴェデーレ宮)、‘アヴィニョン’(ヴィンタートゥール美)などがある。

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