美術館に乾杯! ボストン美 その二
スペインのマドリードで目玉の観光となっているのがプラド美、見逃せない作品はやはりベラスケスの‘ラスメニーナス’だが、もう二人忘れられない画家がいる。エル・グレコ(1541~1614)とゴヤ。この3人をここでたっぷりみてしまうともう十分済みマークがつく。
とくべつの思い入れがないとスペイン絵画はだいたいこれで終わりとなる。だが、これが鑑賞のはじまりと感じた人はほかの美術館で作品に出会うと満足の上乗せとなって心が弾む。エル・グレコとベラスケスについてはボストン美でそれが実現する。
3点みたグレコは‘修道士オルテンシオ・フェリス・パラビシーノの肖像’がなかなかの傑作。キリストや聖人は体を細長く描くことが多いが、実在する人物の肖像画ではこの修道士のように本人を前にしているようにリアルに仕上げる。強い目力が印象的。
ヴェネツィア派のティントレット(1519~1594)の‘青年の肖像’にも思わず足がとまる。これは日本で開催されたボストン美名品展に登場した。現地では別の作品が2点でていた。ちなみにティツィアーノも2点あったが、ヴェロネーゼはなし。
ティントレットが亡くなって100年後ぐらいに生まれたのがヴェネツィア派の第3世代にあたる大壁画の名手ティエポロ(1696~1770)と風景画を得意としたカナレット(1697~1768)。バロック後期に輝いたティエポロの寓意画‘真理の覆いをはぎとる時間’は時間をあらわす翼をつけた老人の姿が目に焼きついている。
カナレットが描くヴェネツィアの美しい風景はどこの美術館でみてもいい気持にさせてくれる。あまり大きくない絵だが、横に広がる街の並びと海にたくさん浮かぶ船が旅心に火をつける。
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