美術館に乾杯! ワシントンナショナルギャラリー その十二
カイユボットの‘ペりソワール(一人乗りカヌー)’(1877年)
印象派が好きになると、アメリカのビッグ美術館へ行くのがすごく楽しみになる。メトロポリタン、シカゴ、ボストン、フィラデルフィア、そしてワシントンナショナルギャラリー、どこへ入っても目がくらむばかりの傑作がぞろぞろでてくる。
ナショナルギャラリーについては、2年前その自慢のコレクションが数多くやって来た。ここにとりあげた4点のうちカサット(1844~1926)の‘舟遊び’以外はそのときの出品作。マネ(1832~1883)の‘サン・ラザール駅’とモネ(1840~1926)の‘日傘をさすモネ夫人と息子’はぞっこん参っている作品。だから、会場では浮き浮き気分だった。
女性画というとすぐルノワールを思い浮かべるが、マネの風俗画風にとらえた女性たちも強い磁力を放っている。マネはよく向こう向きの人物を描くが、‘サン・ラザール駅’で鉄の柵の向こうの列車をみているのは小さな女の子。それに対して横にいる母親は本を膝の上に置きじっとこちらをみている。ぱっと見ると平板なのに二人の逆の視線をつくることより空間に広がりが生まれている。
‘日傘をさすモネ夫人’は何度みても驚くばかりの白の輝きに200%KOされる。絵からだいぶ離れたところからみるとそこにはなにか発光体のようなものがありそれが光っているようにみえる。こんな様子はカイユボット(1848~1894)の‘ペりソワール(一人乗りカヌー)’にもあてはまる。とにかくまわりの絵とくらべると群を抜いて明るい。この光を実感するところが印象派の大きな魅力。
カサットの絵は明らかに浮世絵の影響を受けている。心が和む赤ちゃんとお母さん、そして視線が釘づけになるのが極端に大きく描かれた手前の舟をこぐ男性。まるで広重の‘名所江戸百景’の一枚をみているよう。浮世絵狂いだから、こういう絵にはすぐ嵌る。
| 固定リンク
コメント