美術館に乾杯! ワシントンナショナルギャラリー その十五
アメリカでアンリ・ルソー(1844~1910)の人気が高まっていることを実感したのは4年前、NYのMoMAを訪問したとき。ルソーの最晩年の大作‘夢’の前に多くの人がいて興味深げにみていた。一方、再会を楽しみにしていたシャガールの‘私と村’はどういうわけか展示無し。ええー、どうして?
この絵が描かれたのは‘夢’の1年後、ともに画風を特徴づけるなら‘幻想的イメージ’がピッタリ。ところが、今は若い人たちは幻想的な画家というとルソーをまず思い浮かべるのかもしれない。ワシントンにもルソーのふしぎな感覚をおぼえる絵がある。‘岩の上の少年’、剣山のような先が鋭くとがった岩山に男の子にも女の子にもみえる子どもが座っている。黒い服に尖った岩山、悲しい感情をルソーは表現しているのかもしれない。
モディリアーニ(1884~1920)の‘ジプシー女と赤ん坊’はルソー以上に気が重くなる作品。モデイは人間の内面をそのままにとらえることのできる特殊な技をもっている。細長い顔は楽しい気分をあわらすのにはむいてなく暗く鬱積した心持ちを強くだすときはぴたっとはまる。この厳しい目つきはさすらいの民ジプシーたちが宿命のように味わうせつなさを物語っているようにみえる。
ピカソ(1881~1973)が24歳のときに描いた‘サルタンバンクの一家’はキュビスムの前の作品では最も魅了されている。薄い色だが青だけでなく赤や黄色もつかってアルルカンや旅芸人を群像肖像画のように哀感をこめて描いている。この絵をみるためだけでもこの美術館に足を運ぶ価値がある。
一方、フォービスムの旗手マティス(1869~1954)の‘開いた窓、コリウール’はまばゆいくらい明るい絵。これほど色のもっている力が存分にでた作品はそうはない。これぞ色彩美という感じ。フォービスムに乾杯!
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