美術館に乾杯! シカゴ美 その六
セザンヌの‘オーヴェール、パノラマの眺望’(1873~75年)
画家の名前を知っていて作品をあるていどみているもののその魅力がまだつかめてない。そんな状態が一枚の絵との出会いによって画家の才能に一気にめざめることがある。カイユボット(1848~1894)はそんな画家のひとり。
作品の大きさも絵画の魅力に大きくかかわっている。カイユボットの‘パリ、雨の日’は縦2.13m、横2.76mのとても大きな絵。この大きさがどんなインパクトをもっているかは図版ではわからない。そのため、事前に作成した必見リストにあげていた作品のなかでこの絵に◎はついてなかった。
ところが、近代都市化路線をまっしぐらに進むパリの情景をスナップショット的にとらえたこの絵の前に立つと、びっくり仰天。カイユボットってこんないい絵を描いていたの!?、という感じ。とくに感心したのが雨に濡れて光っている歩道の質感描写。200%KOされた。
じつは鑑賞の前、現地ガイドから‘カイユボットの絵はホールの中央にありますから見逃さないで下さい’と案内されていた。この絵はシカゴ美自慢の絵だったのである。まさに看板通りの傑作だった。この感激は一生忘れられない。
もう一枚、想像もしなかったサプライズがあった。画集に載っていたモネ(1840~1926)の‘リンゴとブドウのある静物’がこれほど心を奪われる静物画だったとは。白い卓布の上においてあるリンゴとブドウが透明の陽を浴びてまばゆいばかりに照り輝いている。風景画が得意のモネなのに静物画でこれほどいい気分にさせてもらえるとは思ってもいなかった。
モネの作品はほかの画家にくらべて群を抜いて数が多く全部で25点でていた。ちなみにマネ9点、ルノワール8点、セザンヌ5点。お目当ての‘積み藁’の連作や‘サン・ラザール駅’を目に気合をいれてみたが、脇役の静物画の衝撃が強すぎて集中できなかった。
セザンヌ(1839~1906)の風景画というと、サント・ヴィクトワール山がすぐイメージされるが、ここにあるゴッホ終焉の地として有名なオーヴェールの光景を描いた作品に大変魅了されている。印象深いのが赤と青の屋根がリズミカルの配置されているところ。セザンヌのこれほど明るい風景画は珍しい。
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