美術館に乾杯! シカゴ美 その九
シカゴ美が印象派コレクション以外の作品で最も誇らしく思っているのは間違いなくホッパー(1882~1967)の‘夜更かしをする人たち’。この絵をみれたことはスーラの‘グランド・ジャット島の日曜日の午後’同様、生涯の喜び。
運がこちらに向かってくるときひとつだけでなくふたつくらい一緒にやってくることがある。入館すると驚いたことにホッパーの大規模な回顧展が行われていた!もう天にも昇る気分。追加のお金を払ってまず想定外のオマケを楽しむことにした。
‘夜更かしをする人たち’が大都会の孤独を感じさせるところはドガのパリのカフェを描いた‘アプサント’とよく似ている。ともに映画の一シーンを見ているようで、描かれている男女の姿からつい勝手にありそうな物語を想像してしまう。夜も更け静寂なレストランの一角に黙って座るふたり、ずっと続きそうなこの深い沈黙は見る者にとっても長く記憶にとどまる。
アメリカの具象画で関心を寄せているのはサージェント、ホイッスラー、ホッパー、そしてホーマー(1836~1910)、このホーマーの水彩画展がホッパー展の横の部屋で同時開催されていた。まさに‘幸せ二段重ね’、おかげでホーマーに開眼した。所蔵する油彩画の‘にしん漁’も展示されており、大きくうねる波と格闘しながらに網にかかったにしんを引き上げるたくましい漁師たちを息を呑んでみていた。
事前の情報が一切なかった2つの回顧展に時間をとられたので、ハドソンリバー派のトマス・コール(1801~1848)とエドウイン・チャーチ(1821~1900)がそれぞれ壮麗に描いたナイアガラの滝とエクアドルの火山の大パノラマはみることができなかった。これもシカゴの忘れ物。
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