美術館に乾杯! マルモッタン美 その三
2015年東京都美で開かれた‘モネ展’には、マルモッタンが所蔵するモネ以外のコレクションも出品された。目立つ存在ったのがルノワール(1841~1919)の描いたモネと妻カミーユの肖像2点。ほかにもブーダン、シニャックなどもでていたが、モネが主役の展覧会なのでこういうときは脇役の絵はあまり主張しすぎないものが並ぶ。
グッとくる作品に会いたければパリでブローニュの森をめざすといい。同じ女流画家でもカサット(1844~1926)に比べると関心度は半分のモリゾ(1841~1895)だが、マルモッタンにある‘舞踏会の若い女’は例外的に魅せられている。手元にある回顧展(2007年損保ジャパン美)の図録にはこれを上回る作品は載ってない。
ルノワールが描いた‘ヴィクトリーヌ・ド・べリオ嬢’は日本にはまだ一度もやって来てない。この女性は‘印象、日の出’などモネの作品をたくさん所蔵していた医師ド・べリオ(ルーマニア生まれ)の一人娘、彼女が印象派のパトロンであった父の収集したモネの作品をこの美術館に寄贈したため、ここがやがてモネの聖地となっていく。
ドニ(1870~1943)がブリュターニュ半島の港町ペロス=ギレックに滞在したときに描いた妻と娘マドレーヌの肖像画は強く惹かれる一枚。現代版の聖母子像でラファエロが重なってくる。どの赤ちゃんも動くものは人でも犬でもじっとみているが、この子の目線の強さはじつにリアル。
マルモッタンというとシカゴ美の至宝となっているカイユボット(1848~1894)の‘パリの通り、雨’の習作があった美術館と思いつく人は印象派の相当な目きき。
ここにはいい静物画もある。鮮やかな色彩が目に焼きつく‘白と黄色の菊’、風景画や肖像画に加え、カイユボットは静物画でも豊かな才能を発揮している。もっと長生きしていたら、もっとビッグな画家になっていたことだろう。
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