美術館に乾杯! アントワープ王立美 その三
アントワープ王立美は今年の秋に再オープンすることになっているが、もう一度この街へ足を運ぶ可能性はいまのところ低い。そのコレクションのうち古典絵画はルーベンスがドーンと真ん中にいるのに対して近代絵画については部分的にしかわかっていない。
2010年に新宿の東京オペラシティアートギャラリーでこの美術館が所蔵する近代絵画が展示された。そこで大きな収穫だったのがマグリット(1898~1967)の‘9月16日’、マグリットの作品はつけられたタイトルはあれこれ詮索せず目の前の不思議な絵を感じることに徹している。
この絵は一見シュールだが、脳みそがよじれるほど変な構成でもない。たしかに樹木の真ん中に三日月はみえるはずはないが、その三日月をこの木の上でも左右でも少しずらしてみれば夜の自然な光景として認識できる。だから、マグリットのシュール絵画はわりとすんなり腹に落ちていく。
一方、デルヴォー(1897~1994)の楽しさは血の気が感じられない人形のような裸婦がつくりだす夜のファンタジックな世界、これになぜかひき込まれてしまう。中央の女性は胸に大きなバラ色の蝶結びをつけており、右の女性はそれをとりさっている。この蝶結びは一体何を暗示しているのか。
近代に活躍したベルギーの画家でざっと思いつく人物にレオン・フレデリック(1856~1940)とエミール・クラウス(1849~1924)も入っている。フレデリックの名前を知ったのは大原美にある裸の子どもがたくさん登場する絵。そのあと、フランスの自然主義派のルパージュの影響を受けた‘農民の子’などが現れた。
同じくルパージュに刺激されたエミール・クラウス(1849~1924)の‘亜麻畑の雑草をむしる農民たち’も強く記憶に刻まれている。3,4年前?東京駅ステーションギャラリーでクラウスの回顧展があったが、なんとなく見逃してしまった。
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