美術館に乾杯! ウォーレス・コレクション その二
フラゴナールの‘ティヴォリのヴィラ・デステの庭’(1762年)
ウォーレス・コレクションに足を向かせたのはなんといってもこの美術館で最も有名な絵‘ぶらんこ’(1767年)。描いたのはフランス革命前の浮かれたロココ時代の寵児、フラゴナール(1732~1806)。
フラゴナールが若いこ頃に学んだブーシェの神話画などに登場する裸婦はどこか夢物語的な甘美さがあるが、フラゴナールは日常の男と女の愛とロマンスを描いており、見る者はその画面をつい覗き趣味的な感覚でみてしまう。
‘ぶらんこ’は公園のぶらんこで無邪気に遊んでいる小さな女を若い男がちょっと離れたところからよからぬ気持ちをいだきながらながめている光景と似ている。ただし、大きな違いは左下にいる若い貴族はぶらんこで遊んでいる女性の浮気相手であること。
意表を突く構図なのが流行のファッションに身をつつんだ女性のはいているスリッパ式のハイヒール、‘ミュール’が脱げたところ見せ場にしていること。‘あらー、靴が脱げちゃったわー、あなたとって頂戴、ほらほら変なとこみてないでさ’、そんな天真爛漫な女性の弾んだ声が聞こえてくるよう。
この絵に惹かれるのは不倫を描いているのにやけに明るく、優美さを際立たせる色彩となめらかな筆使いが見事だから。こうした描き方と自由気ままに恋愛ゲームを楽しんでいた貴族たちの心情とぴったり一致している感じ。
ここにはもう一枚、恋の絵がある。‘追憶’はとても小さな作品なのでぼやっとしていると見逃す。もやがかかったような背景のなかで美しい乙女は樹の幹に‘S’という文字を刻みつけている。はたして何を書こうとしているのか?愛している人の名前、それを犬がじっとみているのがおもしろい。
フラゴナールは24歳から4年間ローマで絵の勉強をしていた。風景画‘ティヴォリのヴィラ・デステの庭’は楽しい思い出のつまったローマ郊外の景勝地ティヴォリをパリに戻ってから描いたもの。なかなかいい。
4点あるヴァトー(1684~1721)で思わず足がとまったのが‘音楽パーティ’、ヴァトーの雅宴画には欠かせないのが楽器、中央の男は大きなリュートをチューニングをしているところで、このあと椅子に座っている女性に得意の演奏を聴かせるのだろう。
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