美術館に乾杯! コートールド美 その八
ココシュカの‘プロメテウスの物語 ハーデースとペルセポネー’(1950年)
アンリ・ルソー(1844~1910)は49歳から本格的に絵を描きはじめたが、それまではパリ市の税吏をやりながら趣味で日曜画家になっていた。その職場を描いたのがこの‘税関’。ルソーの時代、パリは城門に囲まれており税吏は税の取り立てだけでなく闖入者の見張りもしていた。
40代の半ばに描かれたこの絵は小学生の絵のように人物や木々や門が平板的に描かれ、西洋画ではおなじみの遠近法によってうまれる奥行き感が感じられない。でも、日本画や浮世絵を見慣れているわれわれにとってそれほど違和感がなくすっと画面に入っていける。ピカソにもこういう描写は新鮮だったため、変わったおっさんルソーに親しみを覚えた。
何年か前に立て続けに開かれたユトリロ(1883~1955)の回顧展、ときどき図絵をひっぱりだしてパリの街角を楽しんでいる。‘サンノアの通り’はルソーの画風とは真逆な描き方で遠近法を使った通りの遠くは小さくなるお決まりの風景描写。ふらっとパリへ行きこういう場所をのんびり散策することにあこがれている。
モディリアーニ(1884~1920)の本物の絵をみることから遠ざかっている。昨年訪問したマドリードのティッセンボルネミッサ美でも2015年の末に出かけたフィラデルフィア美やメトロポリタン、MoMAでもどういうわけは一枚の出会わなかった。だから、‘裸婦’のような典型的なモデイ様式をそろそろみたくなっている。
ココシュカ(1886~1980)はここには数点ある。3連祭壇画(トリプティック)の形式で描かれた‘プロメテウスの物語’の左の絵が‘ハーデースとペルセポネー’、あとの2つは‘ヨハネの黙示録’(中)と‘プロメテウス(右)’。人物に白や赤の色を塗りたぐった荒々しい筆触が目に焼きつく。
| 固定リンク
コメント