美術館に乾杯! コートールド美 その一
ボッティチェッリの‘コンヴェルテイーテ祭壇画’(1494年)
日本では印象派やポスト印象派の展覧会が頻繁に開かれるから、まめに足を運べば海外にある質の高い印象派コレクションを相当数見ることができる。そのなかで忘れられないのが2つある。フィラデルフィアのバーンズコレクション(1994年 西洋美)とロンドンのコートールドコレクション(1997年 日本橋高島屋)。
ともにここにもあそこにも名画があるという感じだった。マネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーギャンらの有名な絵がごそっとやって来たコートールド美の展覧会はどういうわけか日本橋高島屋で数年間のうちに2回も開催された。だから、ロンドンにもう行く必要なしかと思われた。そんなこともあり、2010年にようやくコートールド美の訪問が実現した。
この美術館はいわゆる邸宅美術館で展示の部屋数が多くない。でも、飾られている作品は一級品ぞろい。数は少ないが古典絵画もある。最も魅せられるのはボッティチェッリ(1445~1510)の‘コンヴェルティーテ祭壇画’、誰もが目が点になりそうなのが左にいるマグダラのマリアの姿。
髪の毛が伸びて伸びてなんと体全体を覆っている。この髪ファッション、意外にいける。コンヴェルティーテは‘悔悛せし者たち’という意味、娼婦だったマグダラのマリアは悔悛し髪がこれほど長くなるまで修行を重ねたのだからエライ!
マグダラのマリアの足元をみるとまたハットする。小人のように描かれたトビアスと大天使ラファエル、絵画作品をたくさんみてきたが、こういうガリバーと小人たちの場面に遭遇したのはこの絵とプラハ国立美でみたアンリ・ルソーの‘私自身 肖像=風景’のみ。
髪つながりでいうとマセイス(1466~1530)の‘聖母子と天使たち’の聖母マリアの髪もかなり長い。この絵で癒されるのは後ろでリュートを奏でる子どもとイエスにむかってカーネーションを差し出している天使。このまま大人をやっていけそうなつるっとした表情がなんともいい。
パルミジャニーノ(1503~1540)が描くマニエリスム調の聖母子は一風変わっている。聖母は正面向きではなく膝を立てて横向き、背景に古典的な建物をおくところも変わっている。この舞台づくりがイエスの死についていろいろなことを想像させる。
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