美術館に乾杯! ブダペスト国立美 その五
人にはそれぞれ好きな色があるが、Myカラーは黄色&緑、黄色はゴッホのイエローパワーに魅せられたためで緑は1986年西洋美で開かれたエル・グレコ(1541~1614)の回顧展に遭遇したから。
エル・グレコとの長いつきあいがこの展覧会からはじまった。このとき大原美とブダペスト美にある‘受胎告知’が並んで展示された。ほとんど同じ色彩と構図だが、描かれた時期はブダペストにあるほうが先。じつはエル・グレコはもう一枚同じものを描いており(これが最初の作品)、アメリカのトリード美が所蔵している。
すでに馴染みのある大原の受胎告知の横でほとんど同じ作品をみるという想定外の鑑賞体験をしたため、ブダペスト美の名前が強く頭の中に刻まれた。それから17年の時が流れ、ふたたびこの傑作と今度は現地で再会した。驚いたことにそこにはエル・グレコが何枚も飾ってあった。‘ええー、こんなにあるの!’
全部みたかは覚えてないが7点所蔵しておりプラド(35点)以外では一番多い。エル・グレコというとアメリカのメトロポリタンとワシントンナショナルギャラリーにも魅了される傑作があるが、ブダペストはこの上をいくという感じだからスゴイ。
‘受胎告知’は7年くらい前にも再来日したが、‘悔悛するマグダラのマリア’は4年前のエル・グレコ展(東京都美)に登場した。目の大きなとても綺麗なマグダラのマリアなので思わず足がとまった人も多いのではなかろうか。受胎告知のマリアよりずっと親近感を感じる姿だからついみとれてしまう。
キリスト物語でもいい絵が続く。‘オリーブ山のキリスト’は構図の妙が印象的、手前では弟子たちがだらしなくぐーすか眠っているのに対し、その向こうでは受難を前に怖れを隠し切れないキリストが天使の前で跪き祈っている。
‘聖衣剥奪’もなかなかの傑作。トレド大聖堂にあるキリストの全身像が描かれたものと同様、聖衣は血のような赤で染まっており、キリストはうるんだ瞳で天を見上げている。エル・グレコ好きにとってトレドの聖堂やプラドでグレコと対面しているような気分になれたことは望外の喜びだった。
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コメント
オーストリア=ハンガリー帝国の一方の首都ウィーンはベラスケス以外スペイン絵画は少ないのに、ブダペストがスペイン絵画が豊富で有名なのは不思議な感もします。愛好する君主がいたのでしょうか。
『受胎告知』は本当に大原美術館のものと瓜二つみたいですね。1986年のエル・グレコ展には行っていないので、見てみたかったです。
『悔悛するマグダラのマリア』は、四年前のエル・グレコ展でも光っていましたね。エル・グレコは、色彩の表現力そのものを前面に押し出した最初の画家だったように思います。
デフォルメされた人物も個性的で、とても惹かれますが色彩の点で私の中では、ゴッホやゴーギャンの先駆者です。
投稿: ケンスケ | 2017.02.27 22:50
to ケンスケさん
エル・グレコのコレクションは圧巻です。
‘オリーブ山のキリスト’はトレド近郊の小さな
教会に飾られていたのをハンガリーの大銀行家が
手に入れ、それがここにおさまりました。
受胎告知は2点ともすばらしいですね。
投稿: いづつや | 2017.02.28 00:51