美術館に乾杯! ドレスデン美 その八
ベロットの‘エルベ河右岸の砦の下から眺めたドレスデン’(1748年)
田園を舞台にして男女が楽しむ場面を描いた画家というと、ティツイアーノの‘田園の合奏’やルーベンスの‘愛の園’などもでてくるが、ぴったりあてはまるのは大勢の人物を登場させたフランスのヴァトー(1684~1721)。
ルーヴルを訪問するとヴァトーが生み出したこの‘雅宴画’という新しいジャンルの絵が存分に楽しめる。見どころは女性たちが着ているドレスにみられるシルクの柔らかな光沢感、ドレスデンにある‘田園の気晴らし’にもそれがよくでている。
こういう優雅に遊んでいる貴族の男女の光景は縁遠いという感じがぬぐえないが、視線を動かして時間がゆっくり流れている田園で楽しそうにおしゃべりする姿を眺めるのも悪くはない。おろしろいのは必ず後ろ向きのカップルを描き込むところ。それぞれに愛の表現があるのが微笑ましい。
ジュネーブ出身の画家リオタール(1702~1789)の描いた‘ココアを運ぶ娘’はルノワールの女性画と同じくらいのインパクトをもっている。横向きの白い肌の給仕係があまりに初々しくてきれいなので、パリのカフェやビアホールで働く女性を描いたドガやマネの絵がかすんでしまう。
ドレスデン観光のお土産で買った街の風景の絵葉書と重なってくるのがベロット(1721~1780)の‘エルベ河右岸の砦の下から眺めたドレスデン’、訪問したときのことが思い起こされる風景画はやはり目に力が入る。また行きたくなった。
オランダの風景画家ロイスダール(1628~1682)の‘城山の前の滝’は2005年西洋美でみたもの。ロイスダールの風景はだいたい大きく広がっているが、これは珍しく画面の多くを使って激しい水の流れをアップで描いている。
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