美術館に乾杯! ブダペスト国立美 その四
2003年、中欧の美術館をまわったとき大きな満足をえられた画家はブリューゲル(1525~1569)、ウィーン美術史美でブリューゲル世界をたっぷり堪能できたうえブダペストでもプラハでもプラスαに出くわしたのだから言うことなし。
ブダペストの国立美に飾ってあったのは‘洗礼者ヨハネの説教’、ここに描かれている群衆の数をしっかり数えた美術史家によると200人以上、この場面を現代の光景におきかえるなら選挙演説に集まった人々という感じ。
ヨハネの有り難いお話が聞けるといっても、民衆の気持ちの入り方には差がある。熱心に聞く者もいれば落ち着きがなくまわりの男と世間話に忙しい輩もいる。時代のひとこまをきりとった風俗画をみるたびにブリューゲルがいっそう好きになる。
ルーベンス(1577~1660)が弟子のヴァン・ダイク(1599~1641)と一緒に描いたのが‘ポルセナの前のムキウス’、まるでハリウッドがひところ製作した大作歴史映画の一シーンをみているよう。視線が集まる中央の赤いマントをかけた軍人は紀元前2世紀ころローマを占領したエトルリア王ポルセナ(左)に捕らえられた英雄ムキウス。右手を火のなかにいれて不屈の精神を示している。これほどドラマチックな場面は忘れようがない。
ここもやはりレンブラント(1606~1669)をがっちり収蔵している。それは聖母マリア物語の絵としてはあまりみかけない‘聖ヨセフの夢’、ヨセフの夢枕に現れる大天使ガブリエル、安らかに眠る聖母、この三人を斜めに配置する構図、大天使からの光と背景の闇のコントラストが強く印象に残る。
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コメント
『洗礼者聖ヨハネの説教』は、ブリューゲル作品の中でも傑作ですね。改めて見てみると、人々の服装から自然描写、そして構図にいたるまで、いくら見ていても飽きそうにありません。
『ポルセナの前のムキウス』も中央に火を置いて、視点はいやがうえにもドラマに吸い寄せられます。画集で見たことがありませんでしたが、傑作だと思います。
美術史家は、どうしても西欧のメジャーな美術館の作品を「傑作」として論じるので、ブダペストやプラハの作品は埋もれてしまって、美術本に登場することが少ないのかもしれません。けれども、どの作品が「傑作」かは見る人一人ひとりが決めるものですね。
行っていない中欧の美術館巡りをしてみたくなりました!
投稿: ケンスケ | 2017.02.27 22:33
to ケンスケさん
このブリューゲルとルーベンスは傑作です。
ブリューゲルを所蔵するというのはハンガリーも
フランドルもつながっているということですね。
ルーベンスはいろいろみましたが、この英雄ムキ
ウスは忘れられません。ルーベンスは古代の歴史に
ついて学者並みの知識をもっていますから、こんな
迫力のある描写が生まれるのでしょうね。
投稿: いづつや | 2017.02.28 00:40