美術館に乾杯! エルミタージュ美 その五
今回とりあげる作品は全部現地でみてないかお目にかかったとしても記憶にないもの。いずれも購入した3冊の図録に載っており、後で当時情報不足だったことが悔やまれてならなかった作品。でも、幸運にもミューズのご配慮によって日本で行われた展覧会でリカバリーできた。
その大変お世話になった美術館は三菱一号館美。フラゴナール(1732~1806)の‘盗まれた接吻’とルブラン(1755~1842)の‘自画像’は2011年の‘ルブラン展’に出品され、シャルダン(1699~1770)の‘食前の祈り’は2012年に行われた一級の‘シャルダン展’に登場した。
フラゴナールには観る者の視線をいやがおうでも画面に向かわせる特別な表現力がある。それは劇的で思わせぶりな男女のからみの描写。ルーヴルにある‘錠前’とエルミタージュにある‘盗まれた接吻’がその代表作。
ロンドンのウォレスコレクションで‘ブランコ’と‘追憶’をみて、見損なった大事なピース‘盗まれた接吻’も目に入った。だから、フラゴナールはもう済みマークをつけている。
美貌の画家ルブランに開眼したのはまったく三菱一号館のおかげ。回顧展をみるまでこの女流画家をどういうわけか知らなかった。とにかくルブランはうっとりするような美形、この絵をみるたびに女優の沢口靖子が目に浮かぶ。どこか雰囲気が似ている。
シャルダンの風俗画はオランダの影響を受けたのだろうが、好みはシャルダンのほう。エカテリーナ2世(1729~1796)もシャルダンが好きだったようだ。‘食前の祈り’は腰を少し曲げたお母さんと手前の手をあわせた男の子が目と目をあわせるところがじつにいい。
ジェロームの(1824~1904)の‘仮面舞踏会後の決闘’は図録でずっと気になっていた絵だが、ありがたいことに3年前のエルミタージュ美でお目にかかることができた。決闘に敗れて死んだ男を赤い服を着た男が下から緊張した面持ちでみている。こういう絵は一生忘れられない。
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