美術館に乾杯! ウィーン美術史美 その六
ウィーン美術史美のお楽しみはなんといってもブリューゲル(1525~1569)、ここには12点もある。だから、これだけの数を一度にみると‘ブリューゲルみたぞ!’という気分になる。マドリードのプラドへ行けばボスに会え、ウィーンへ足を運ぶとブリューゲルの世界が堪能できる。これだから美術館巡りはやめられない。
過去二回ブリューゲルの部屋に入ったが、12点全部飾ってあったか定かでない。2003年のとき図録をチェックしたら、これみた?というのもあった。たぶん、常時全点はでてないように思う。
そのみてない絵は‘サウルの自殺’だったのだが、2011年オランダ・ベルギーを旅行したときブリュージュにあるグルーニング美で突然目の前に現れた。嬉しいことにここでウイーン美術史美名品展を開催しており、ブリューゲル、ボス、ファンエイクなどが出品されていた。お陰でリカバリーが叶った。
4月、東京都美にロッテルダムのボイマンス美が所蔵する‘バベルの塔’がやって来るが、それを存分に楽しむためにも今からウィーンにあるバベルをしっかりレビューしておくつもり。こういうとき役に立つのが2013年3月号でブリューゲルを特集した‘芸術新潮’、拡大図版が載っているのでこの巨大な塔がどんな風に建てられているのかがよくわかる。
農民画家、ブリューゲルの描く風俗画はじつに楽しい。風俗画がとりわけ好きなのはブリューゲルの絵を味わったからかもしれない。‘農民の婚宴’は画集でなじみのある絵なので35年前はじめてみたときは感激した。おもしろかったのはテーブルの中央で顔を赤らめて座っている花嫁さん。‘私、幸せ絶頂だけどあまりはじけるわけにはいかないワ’、という感じ。そして、視線が向かうのが丸皿を板の上に乗せて運ぶ二人の男、この動きのある描写が忘れられない。
‘謝肉祭と四旬節の喧嘩’はじっくりみると時間がいくらあっても足りない。こういう宗教行事に精通しているわけでないが、絵画をみることで当時のフランドル地方の農民たちの暮らしのひとコマを垣間見ることができる。
ひいきの日本画家、加山又造が参考にした‘雪中の狩人’、西洋絵画で雪の光景を描いたものというとこの絵とモネの‘かささぎ’をすぐ思い浮かべる。感心するのは狩りから帰ってきた狩人と猟犬を手前の高台に配置する構図。男たちのほっとする気分が伝わってくるよう。でも、わずかな獲物しかなかったので足取りは重そう。
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コメント
☆芸術新潮2013年3月号ですね。
☆以前、映画 タルコフスキー監督の 惑星ソラリス に感動したことがあります。(本は読んでませが・・・・)
記憶ですが、
図書館の場面には 雪中の狩人 が、飾ってありました。
妙にピッタリの雰囲気で強く印象に残ってます。
ビデオテープなので再生装置を処分してしまい 今は見る事ができません。
投稿: Baroque | 2017.01.29 00:52
ウィーンにあるブリューゲルのコレクションは圧倒的で、釘づけになって見ました。個人の画家の作品が集中的に集まっていると特別展を見ているようで、充実感が違いますね。
ご紹介の作品は、どれも名高いものばかりですが、『謝肉祭と四旬節の喧嘩』は特にお気に入りです。ブリューゲル作品のおかげで、当時のフランドルの風俗文化を知れるのも大変興味深いです。
四旬節の時は魚介類を食べ、肉はもちろん乳製品も口にできなかった云々。画面手前に座っている痩せてひょろっとした人物が四旬節の象徴で、謝肉祭の象徴である左側の太った人と対象されているとか、実に面白いです。
この作品も含めブリューゲル作品に出てくる、足を切断して杖で歩いている人は、当時ウィルスに感染した小麦を食べたために麦角病にかかって、足の壊疽が起きたなどということも知りました。ほかにも細部を見ていくと、当時の風俗が詳しくわかるようでまったく興味が尽きません。
投稿: ケンスケ | 2017.01.29 21:21
to Baroqueさん
映画‘惑星のソラリス’は知りませんが、監督は
ブリューゲルが好きだったのでしょうか、
加山又造の‘冬’はお気に入りですので‘雪中の狩人’
には強い思い入れがあります。
投稿: いづつや | 2017.01.29 23:41
to ケンスケさん
ブリューゲルの風俗画をみると16世紀に生きた
農民たちの世界にタイムスリップしたような気分
になりますね。
当時の様子をもっと知るためには森洋子女史の本
を読まなくてはいけませんね。壊疽の話は興味深い
です。
投稿: いづつや | 2017.01.30 00:22