美術館に乾杯! ナショナルギャラリー その八
マドリードのプラド美に行くとグレコ(1541~1614)、ベラスケス(1599~1660)、そしてゴヤ(1746~1826)の通にいっぺんでなれるのではないかと錯覚するほど多くの作品をみることができる。だから、スペイン絵画に関してはほかの美術館はパスでいいかなと思ってしまう。
でも、ナショナルギャラリーにはベラスケスとゴヤのすばらしい絵がある。ゴヤの‘イサベル・デ・ポルセール’はみた瞬間、すごい肖像画をみてしまったという気に200%させられる作品。強いインパクトをもっているのは黒のマハの衣装、これが流行に敏感な上流階級のスペイン女性の熱い生き方を示している。マネの黒好きはこの肖像画がかもしだす黒の美が原点になっているのかもしれない。
ナショナルギャラリーでルーベンス、ゴヤに続くお気に入りの女性画はとびっきり美形の画家、ル・ブラン(1755~1842)が描いた‘麦わら帽子の自画像’。この女流画家はずっと前から知っていたのではなく、5,6年前三菱一号館美で回顧展があったのを機に開眼した。エルミタージュにも自画像があるが、17年前訪問したときはまったく気がつかなかった。
貴族の心を虜にしたロココ絵画、イギリスの貴族たちもこぞって手に入れた。有名な絵のひとつがロンドンのウオーレスコレクションにあるフラゴナール(1732~1806)の‘ぶらんこ’、ナショナルギャラリーの自慢はヴァトー(1648~1721)の‘愛の音階’、楽器を弾く男が女性の持つ楽譜に体をちょっと傾けてみるしぐさが目に焼きついている。この風俗画に魅力を感じるのはこのロココ特有の雅さがとりつくろったものではなく森の中で交わされる自然な会話から生まれているように思えるから。
シャルダン(1699~1779)の‘若き女教師’もじっとみてしまう絵。勉強に手間取っている子どもに一生懸命教えている若い女性はいかにもまじめな先生という感じ。シャルダンは静物画も人物画も本当にいい絵を描く。
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