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2016.12.31

今年 My‘好きな女性画’に加わった作品!

Img_0002     フラ・アンジェリコの‘ザクロの聖母’(15世紀 プラド美)

Img_0003ジェンティレスキの‘悔悛のマグダラのマリア’(1640年代中頃 バルベリーニ美)

Img_0001     ワイエスの‘マガの娘’(1966年)

Img     勝川春章の‘石橋図’(1783~87年)

絵画をみる一番の楽しみは‘女性画’との出会いなので一年の締めとして、今年My‘好きな女性画’加わった作品を登場させることにした。

12月に入ったときこの4枚は決まっていたが、6月初旬マドリードのプラド美でみたフラ・アンジェリコ(1400~1455)の‘ザクロの聖母’はケンスケさんの情報によると、イギリスの美術・文化雑誌はこの絵を世界の美術館が新たに収蔵した作品のベストワンに選んだとのこと。

不思議に思ったのは聖母の顔、ほかの宗教画に描かれた聖母とくらべとても親近感がありドラマやCMにでている人気のタレントと対面しているような気がした。この現代に生きる女性を思わせる容姿と身につけている服の青の輝きが目に焼きついている。

カラヴァッジェスキの女流画家、ジェンティレスキ(1593~1654)の‘悔悛のマグダラのマリア’も忘れられない一枚になった。大盛況の‘カラヴァッジョ展’(西洋美 3/1~6/12)に出品されたこの絵を所蔵しているのはローマにあるバルベリーニ宮国立古典美術館、一度訪問したときは展示されてなかったので目の前に現れたときは大きな衝撃を受けた。とくに息を呑むのが静脈のリアルすぎる表現。

今年はマドリードでの美術館巡りが大きな喜びをもたらしてくれたが、メインディッシュのボス、ラ・トゥールの絵だけでなく、想定外のワイエス(1917~2000)もそのなかに入っている。肌の皺やしみなど思わず見入ってしまうほど精緻に描くのがワイエスの肖像画の特徴、画面に大きく描かれた‘マガの娘’を長くみていた。

日本画でもいい絵に遭遇した。それは2月から3月にかけて出光美と太田記念美で開催された勝川春章(1726~1792)の回顧展に姿を現してくれた‘石橋図’、はじめてお目にかかる肉筆画で視線を釘付けにするのが被り物の獅子の毛の鮮やかな赤、こんないい獅子舞の絵を個人コレクターがもってたのか!という感じ。

今年も拙ブログにおつきあいいただきましてありがとうございます。
皆様よいお年をお迎えください。

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2016.12.30

クラシック音楽 復活!

Img     You Tube オイストラフ ブルッフのスコットランド幻想曲

Img_0001     You Tube パールマン チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲

12月に入りひょんなことからYou Tubeでクラシック音楽を毎日を聴くようになった。これまで音楽関連のYou Tubeでお気に入りに登録していたのは
演歌とかミュージカル‘オペラ座の怪人’、そして今年嵌った‘パワーオブラブ’などが中心でクラシック音楽は外していた。

それはほかのことに忙しくて長いクラシック音楽の曲を聴く時間的な余裕がなかったから。そのためもう何年の手持ちのクラシックやオペラのビデオコレクションを聴いてないし、NHKのクラシック番組もニューイヤーコンサートもとんとご無沙汰している。

そんな中、You Tubeにある‘癒しのクラシック音楽’にどんな曲が入っているのか試しに聴いてみたりしているうちに30分ぐらいの協奏曲なら気分転換に聴けるのではないかと思うようになった。いくつか好きな曲を聴いてみたら、予想外にいい曲がずらずらとでてきた。ビデオと違いYou Tubeはクリックするだけで好きな名曲が流れてくる。これはスピーデイでいい。

じつはヴァイオリン協奏曲で最も好きなのはブルッフのスコットランド幻想曲とチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲、それぞれギルシャハムと五島みどりの演奏で数え切れないほど聴いた。この二つを検索するといいのがでてきた。

ソ連が生んだヴァイオリンの名手、オイストラフ(1908~1974)がスコットランド幻想曲を弾いていた。そして、チャイコフスキーはあのパールマン(1945~)の演奏があった。こんなすばらしい演奏があったのならもっと早くから聴いておけばよかった。ヴァイオリンは上手な人が弾くと本当に心が安まる。

この2曲につられてお気に入りの曲のYou Tubeラインアップをつくった。
★チャイコフスキー 弦楽四重奏曲第1番ニ長調 作品11番 第2楽章
★チャイコフスキー 三重奏曲‘偉大なる芸術家の思い出’
★ブラームス    ヴァイオリンソナタ第1番ト長調‘雨の歌’
★ブラームス    ハイドンの主題による変奏曲
★モーツアルト   フルートとハープのための協奏曲
★パッヘルベル   カノン
★ボロディン    ダッタン人の踊り

★チャイコフスキー 1812年(序曲)
★ラフマニノフ   ピアノ協奏曲第2番
★ラフマニノフ   パガニーニの主題による狂詩曲
★ショパン     ピアノ協奏曲第1番

来年はクラシックを聴く時間がぐんと増えそう。

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2016.12.29

大相撲への期待!

Img       1月場所に優勝した琴奨菊

Img_0001       9月場所に優勝した豪栄道

今年は大相撲が盛り上がった。一番の立役者が1月場所に優勝した大関の琴奨菊、3横綱をあの復活した馬力でことごとく撃破したのは見事だった。この勢いで綱取りもいけるかと思ったが、残念ながら連覇はならなかった。

琴奨菊の優勝以上に驚きだったのが豪栄道、カド番だった9月場所でなんと全勝優勝をはたした。相撲にまったく迷いがなく一番々集中して自分の相撲をとりきった。もっとも興奮したのが日馬富士戦、いい立会いをされ押し込まれたが捨て身の首投げで逆転勝ち。長く記憶に残る大一番だった。

豪栄道も連続優勝はならず綱取りは逃した。だが、9勝にとどまったが相撲内容は敗数ほどには悪くなかった。だから、優勝したことがいい経験になりそう遠くないうちに二度目の優勝も現実になるのではと大いに期待している。

1月場所は年が明けて8日からはじまる。横綱総見の様子がTVで流れていたが、先場所3回目の優勝を飾った鶴竜が調子をあげ強さをみせつけていた。体がひとまわり大きくなった感じで、貫禄がでてきた。ひょっとすると連覇するかもしれない。

白鵬は体力温存のために多用していた‘かち上げ’が各力士に封じられるようになったので、かつてのように楽には勝てないだろう。となると、来年の大相撲が毎場所優勝力士が変わる群雄割拠の時代に入っていく。注目しているのは豪栄道の横綱昇進と新関脇正代の活躍。相撲人気はますます高まりそうな気がする。

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2016.12.28

サイコパス度の高い人は観察が鋭い!

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Img_0001    NHKEテレ‘心と脳の白熱教室’(2015年8月)より

Img   赤いハンカチを隠し持った人物が学生の前を歩く

昨年あたりから関心の度合いを高めているのが脳科学、‘求めよ、さらば与えられん’ではないがTVの科学番組をみたり、関連本を読むことによって脳の構造、働きなどがだんだんわかってきた。

昨年8月、NHKEテレで放送された‘心と脳の白熱教室’(4回)を大変興味深くみた。講師はオックスフォード大のエレーヌ・フォックス教授とこの先生の人生のパートナーであるケヴィン・ダットン博士。フォックスさんは‘楽観脳と悲観脳’について講義し、オマケでダットンさんが‘サイコパス(精神病質者)’の話をしてくれた。

メインディッシュの楽観脳と悲観脳ではこれにかかわってくる扁桃体や側坐核、前頭連合野のはたらき、さらにロンドンのタクシー運転手が市内の走行ルートを徹底的に覚えることによって脳のなかの海馬を増大させていること、など新しい知識がどっと入ってきた。そして、フォックスさんの本‘脳科学は人格を変えられるか?’(文芸春秋 2014年7月)がちょうどいいタイムングで手に入ったので情報が厚くなり整理された。

オマケのサイコパスの話もなかなか刺激的だった。紹介された実験が興味をかきたてる。30人の学生をサイコパス的な人格、例えば恐怖心の欠如、感情的冷淡さなどをもっている度合いの高いグループとそうでないグループに分ける。そして、両グループの前を5人の人たちを歩かせ、そのうち赤いハンカチを隠し持つ人物を言いあてさせる。この実験はサイコパスの観察能力の高さを試すのが目的。

結果はどうだったか、サイコパス度の高い学生のグループでは70%の人が赤いハンカチを隠している人を当てた。これに対してサイコパス度の低かった学生は30%しか当てられなかった。ハンカチを隠している人物がみせるちょっとした心の揺れやしぐさの変化をサイコパス的な人格をもつ人は敏感に読みとるのである。こういう人は税関の仕事にすぐつけそう。

ダットン博士によるとサイコパス度が高い職業は、
1 企業の最高経営責任者
2 弁護士
3 テレビ&ラジオ関係
4 セールス
5 外科医
6 ジャーナリスト
7 警察官
8 聖職者 
9 シェフ
10  会計士

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2016.12.27

日本人をネタにしたエスニックジョーク!

Img     映画‘タイタニック’(1997年)

わが家の一年の振り返りは美術館巡りのことだけでなく、感動した観光地やおもしろかった本、楽しかった音楽や映画やTV番組、美味しかった食べ物などいろんなことを思い出して、気持ちをリフレッシュしたり、これを刺激材料にして持ち前の好奇心に火をつけたりしている。

昨日紹介した友野教授(明治大学)の本‘感情と勘定の経済学’はアリエリーさんの著作のようなスタイルをとっており、人々が日常生活のなかで思わずとってしまう行動や感情の変化の理由を切れ味鋭く分析している。

‘同調性’がキーワードになっている5章に日本人ならすぐ納得できるおもしろいエスニックジョークがでてくる。この話は以前TVで誰かがしゃべっているのを聞いたことがあるので、ご存知の方もいるかもしれない。

豪華客船が事故に遭い、沈没しそうになる。救命ボートは少なく、とにかく乗客を海に飛び込ませなければ、船と一緒に沈んでしまう。それぞれの国ごとにどのように言えば飛び込ませることができるか。

アメリカ人には‘いま飛び込めばヒーローになれますよ’。
イタリア人には‘美女も一緒に飛び込みますよ’。
ドイツ人には‘飛び込めと規則に書かれています’。
さて、日本人にはどういうか、すぐ納得するせりふが用意されている。
‘ほかのみんなも飛び込んでいますよ’。

じつによくできたジョーク、それぞれの国民性をよく表している。一体誰がつくったのだろうか。ステレオタイプすぎるとらえかたと思う人もいるだろうが、日本人の多くは土壇場でこういう風にいわれるとすぐ飛び込むのにちがいない。日本は十人十色の国ではなくて‘十人一色’の国。群れることが大好きなのだから、みんなで手をつないで飛び込むことになりそう。

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2016.12.26

今年刊行された‘行動経済学’の本!

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美術館巡りの数が少ないとき、必ず寄ることにしているのがJR東京駅前の‘OAZO’ビルにある丸善、年間に購入する本の6割くらいはここで買っている。ほかは八重洲ブックセンター、横浜そごうにはいっている紀伊国屋、そして散歩の途中に入る本屋さん。

今年刊行された‘行動経済学’を3冊読んだ。2014年4月に放送されたNHKEテレの白熱教室‘お金と感情と意思決定’に登場したダン・アリエリー教授(デューク大学)の‘人生相談室’はウォールストリート・ジャーナルに連載したコラムがもとになっており、人々が寄せた質問に教授が行動経済学や心理学の観点から明快に答えている。

アメリカ人が悩んだり思っていることも日本人とそう変わりないなという話もあれば、彼らはそんな発想をするのかと驚くことも多くある。日本人はこの話に納得するか知りたくなることがあったのでひとつ紹介したい。

教授が質問者へ回答しているのは‘無為への嫌悪’という現象、これは効率性と待ち時間にまつわるとてもおもしろい話。

ある航空会社は乗客の到着ゲートと手荷物用ターンテーブルの距離に着目し、飛行機の到着ゲートに一番近いターンテーブルに手荷物が出てくるようにした。以前は旅行客は飛行機から降りて長い距離を歩き、ターンテーブルに着くとすでに荷物が待っていることもあった。

新システム導入後は到着ゲートにずっと近いターンテーブルに荷物が届くようになり、乗客は少しだけ歩いてターンテーブルまで行って荷物が出てくるのをしばらく待つようになった。ところが新システムは大不評だった。なぜなら、彼らはその場に立ったまま荷物を待たなくてはならなくなったからだ。手持ちぶたさの状態はあまりにも苦痛だと、乗客から苦情が殺到したため。航空会社は効率的なアルゴリズム(最適手順)を放棄したという。

飛行機を降りて手荷物をとるときターンテーブルが近いところにあるほうが歩かなくてすみ楽でいいと思うのだが、アメリカ人はずっと何もしないで待っているのが嫌らしい。ほかの日本人はどっちがいいと思うだろうか。

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2016.12.25

‘セレンディピティ’=思わぬ幸運に偶然出会う能力!

Img_0001    茂木健一郎著‘ひらめき脳’(新潮新書 2006年)

今年の7/15、脳科学者の茂木健一郎の本‘ひらめき脳’の冒頭にでてくる‘アハ!ピクチャー’のことをとりあげた。この本の最終章に興味深い話があり、これが心にぐさっときたので少しふれてみたい。

章のタイトルは‘ひらめきとセレンディピティ’、この‘セレンディピティ’とは‘思わぬ幸運に偶然出会う能力’のことで、またそのような偶然による幸運との出会いそのものもそう呼んでいる。これまでまったく知らなかった言葉だが、英語圏では現在一般的な用語になっているという。

この話を聞いてすぐ今年わが身におきた美術館巡りの幸運さを思い起こした。五月末から6月初旬にかけてスペイン旅行をしプラドで大きな話題となったボス展をみただけでなく会期の最終盤に入っていた‘ラ・トゥール展’も楽しむことができた。まさに盆と正月が一緒にやって来たような嬉しさ、そして、プラドの次に足を運んだティッセン・ボルネミッサではなんとワイエスの回顧展に出くわした。幸運がこんなに続いていいのか、と思うほどの運の良さ。

海外の美術館をまわっていてサプライズの展覧会に出会うことがときどきある。例えば、2008年はじめて訪れたシカゴ美では事前の情報がまったくなかった‘ホッパー展’に遭遇し、仰天した。そして、NYに移動するとメトロポリタンではビッグな‘プッサン展’をやっていた。こういうときはたぶん‘セレンディピティ’が高くなっているのだろう。

茂木さんは‘セレンディピティ’という偶然の力を起こすための条件を6つあげている。行動、気づき、観察、受容、理解、そして実現。このなかで最も大事なのが行動。茂木さんはこういっている。‘まずは行動を起こさないとセレンディピティを得ることはできない。行動を起こしてこそチャンスがある。その際の目的は何でもいい、とりあえずは身体を動かして、何かやってみることが重要’。

日頃から美術を愛し‘いい絵に会いたい!’という思いを募らし行動していると、諺の‘犬も歩けば棒に当たる’ではないが思わぬ幸運がやってく来るのかもしれない。

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2016.12.24

メリークリスマス!

Imgボスの‘東方三博士の礼拝’(1495~1516年 フィラデルフィア美)

Img_0002     ラ・トゥールの‘生誕(新生児)’(17世紀 レンヌ市美)

Img_0003    ラ・トゥールの‘羊飼いの礼拝’(1640年以降 ルーヴル美)

今日はクリスマスイブ、今年も残りわずかとなった。23日が天皇誕生日のため3連休になる人もいるだろうが、その流れで28日までは会社に行かなてはならないご主人を残して、子どもを連れてさっさと実家に帰ってしまう奥さんたちもいるにちがいない。そのとき‘あなた、家を出るとき電気ちゃんと消しておいてよ!’なんていっているかも。

クリスマスイブといっても夕食に特別豪華な食事がテーブルにならぶわけではないが、例年ステーキを食べることになっている。いつもは赤ワインだが、もらいものの缶ビールが相当残っているので今年はワインにかわってビールで乾杯した。

そのあとのスイーツは定番のショートケーキ、今年は宴会やパーティーに参加することが少なかったのでこういうショートケーキを食べる回数は年にほんの数回。4,5年前はミッドタウンのサントリー美へ出かけたとき有名なパティシエがいる‘よろいづか’で創作ケーキを買って帰っていたが、今はケーキへのこだわりが消えかかっている。

じつは一年前から週3回昼と夜にもうけていた食後のスイーツを無しにしている。だから、クリスマスとか正月、そしてGWのときを除いてカステラ、菓子パン、シュークリームとかは口にしてない。この習慣と土日の水泳の効果により体重が7キロ減少した。2か月前に目標の体重に到達したのでもうスイーツ断ちはしなくてもいいのだが、全面解禁には少し躊躇している。

キリスト誕生を描いた作品は数多くあるが、今年はマドリードのプラドでみた‘ボス展’(5/31~9/25)と‘ラ・トゥール展’(2/23~6/12)でも遭遇した。フィラデルフィア美が所蔵しているボスの‘東方三博士の礼拝’は現地に2回足を運んだのになぜか姿をみせてくれなかったもの、そして、ラ・トゥールの描くキリストの誕生はまさに生まれたばかりの赤ちゃん。これは宗教画というよりはすばらしい風俗画、このリアリティのある描写を立ち尽くしてみていた。

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2016.12.23

ヴェネツィアの‘影追い’!

Img_0002     ヴェネツィアの中心 サンマルコ広場

Img        ‘影追い’ (TV東京‘美の巨人たち’11月放送より)

わが家では美術とのつきあいは展覧会をみるため出かける美術館だけでなくTV局が制作する美術関連の番組をみることも大きなウエートを占めている。そこで今年収穫のあった番組をふりかえってみた。

毎月購入している‘TVガイドブック’で番組内容をチェックしているのは‘美の巨人たち’、‘日曜美術館’、‘イッピン’(BSプレミアム火曜 午後7時30分)、そして‘美の壺’。このなかで最も注目しているのが‘美の巨人たち’と工芸が中心の‘イッピン’。

定番の‘日曜美術館’は井浦新と女性アナウンサーのMCがつまらないから関心度はだんだん低下している。二人には早くやめてもらいたいと願うばかり。これに対して、30分なのに収穫が多いのが‘美の巨人たち’。

もうかれこれ10数年みているが、番組作りの傾向がだいたいわかってきた。西洋絵画でよくとりあげるのはやはり美術史を語るうえで欠かせない最重要ピースのルネサンスと印象派、そして日本画でく繰り返し登場するのが江戸絵画と浮世絵。

明治以降に活躍した日本画家や洋画家についてはぐっと少なくなるが、そのなかで断トツに多いのが東山魁夷と横山大観と上村松園。今月は東山魁夷と川端康成のコラボ話が興味深かった。番組スタッフに魁夷が好きな者がいるのかもしれない。

先月ヴェネツィア派のティントレットの‘最後の晩餐’に続いて放送された‘サンマルコ広場’ではじめて聞いた話がでてきた。それはかつて存在した流しのワイン売りが鐘楼の影の動きにあわせて動く‘影追い’。ヴェネツィアではワインを飲むことを‘影を飲む’といったらしい。これはおもしろい!

この話はヴェネツィアの‘光と影’と深くかかわっている。観光客としてぽっとここを訪問してもこの光と影のことはわからない。現地に住んでいる人には真昼のまばゆい光と夕暮れ時の光と影のドラマがこの街で暮す一番の理由なのである。一日中ヴェネツィアにいる旅行をいつか計画してみたくなった。

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2016.12.22

驚きの地球絶景!

Img_0003    NHKBSプレミアム ‘体感! グレートネイチャー’より

Img_0002      イグアスの滝

Img     エンロサディラがみられるイタリアのドロミテの場所

Img_0001     山塊を深紅に染める現象 ‘エンロサディラ’

2年くらい前からTVの大自然番組を熱心にみている。BSでは各チャンネル国内外の旅番組を多く制作しているが、毎月欠かさずみているのがNHKBSプレミアムの‘体感!グレートネイチャー’(土曜、午後7時30分~9時)、つい先週も‘アフリカ大地溝帯’をやっていた。印象深かったものをふたつばかり。

3月に放送されたのは迫力満点の‘イグアスの滝’、旅行会社から送られている南米のツアー案内には必ず入っているのでもう何年も前からインプットされている。北米の‘ナイアガラの滝’を1993年に体験したとき次は‘イグアスの滝’と大冒険旅行を夢見た。

でも、南米はいかんせん遠い。隣の方は以前は人気観光スポット‘マチュピチュへ行こうか’と乗り気だったが、今はその元気はなさそう。ここへ行かないのだからイグアスの滝もないというのはわが家の旅事情。

ブラジルとアルゼンチンの国境のところにあるイグアスの滝は意外にもTBSの‘世界遺産’でなぜか縁がない。そのため、‘体験!グレートネイチャー’が滝の誕生物語を火山活動や地殻変動の観点から詳しく斬りこんでくれたのでとてもおもしろかった。今世界中から滝を見に来る観光客は年間150万人だそうだ。真近でみたら感激するだろうな、ううーん、やっぱりみたい!

先月放送された‘エンロサディラ’は息を呑んでみていた。イタリア北部のミラノからクルマで3時間ほど走るとドロミテの山岳地帯にたどりつく。ここの山塊は日没が近づくと太陽光線のあたり具合によって岩壁の色が黄色からオレンジに変化し、最後には深紅に染まるという。この怪現象は‘エンロサディラ’と呼ばれている。

これは2億3500万年前におきた火山活動で石灰岩から変成したドロミアという岩石のなかにできた結晶が光を反射させるために起こる現象。番組の最後このエンロサディラのとき月が昇ってくるというダブルサプライズまでみせてくれた。世の中には多くいる‘山派’ではないが、こういう美しい光景をみるとにわか山派になってみたくなる。

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2016.12.21

来年のお楽しみ浮世絵展!

Img       すみだ北斎記念美術館

Img_0001      ‘北斎の帰還’展の図録

ひとりの作家に光をあてた回顧展とともに展覧会巡りの大きな楽しみなのがやきものと浮世絵の特別展。今年は浮世絵で最後に北斎の描いたサプライズの肉筆絵巻が待ち受けていた。

新たにオープンしたすみだ北斎記念美で開催中の‘北斎の帰還’展(11/22~1/15)は想像するに相当混んでいそうな気がする。多くの浮世絵ファンの関心の的は目玉の‘隅田川両岸景色図巻’と関東大震災で焼失した絵馬の復元図。初日でもチケットを購入するのに30分も並んだから今はそれ以上を覚悟しなくてはならないだろう。

昨日からはじまった後期展示はNHKで放送した‘須佐之男命厄神退治之図’の復元図をもう一度じっくりみる狙いもあって出かけ気ではいたが、大混雑の予感がするので止めにした。開館人気が落ち着いたころまた足を運ぶつもり。

来年に開かれる展覧会の情報がいろいろ入ってきた。浮世絵展は期待できそうなのが二つある。
★ボストン美蔵春信展    9/6~10/23     千葉市美
★北斎とジャポニスム展   10/21~1/28    西洋美

ボストン美が所蔵する浮世絵の名品展は2014年上の森美であった‘北斎’で一旦終了と思っていたが、まだ続けるらしい。今度は鈴木春信にスポットをあて場所は東京を離れ千葉市美。これは楽しみ。

驚かされるのは西洋美でも北斎をやること。今から28年前の1988年、大御所の高階秀爾氏が西洋美の館長だったとき、‘ジャポニスム展’が行なわれた。これはパリのクランパレでも開催された一級の展覧会。そのとき高階氏と一緒に働いていたのが現女性館長の馬場さんと三菱一号館美の高橋館長。馬場館長のことだからまたいい作品を集めてくるにちがいない。おおいに期待したい。

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2016.12.20

秋田蘭画の魅力と司馬江漢!

Img_0002          小田野直武の‘鷺図’(18世紀 歸空庵)

Img_0003          佐竹曙山の‘松に椿に文鳥図’(18世紀)

Img_0001     司馬江漢の‘七里ヶ浜図’(18~19世紀 大和文華館)

Img  司馬江漢の‘金沢能見堂眺望図衝立’(1789~1800年 仙台市博)

最近は日本美術の展覧会に前期も後期も足を運ぶことが少なくなっているが、サントリー美で開催中の‘小田野直武と秋田蘭画’(11/16~1/9)は気になる作品が多かったので、再度ミッドタウンを訪れた。

小田野直武(1749~1780)は惜しいことに31歳の若さで亡くなっている。その死は謎につつまれているが平賀源内(1727~1779)が1年前に獄死したことと関連があるようだ。そして、ひとつ年上の秋田藩主佐竹曙山(1748~1785)も直武の死の5年後に37歳でこの世を去る。

後期に登場した直武の洋風画も魅力あるものが多い。なかでも足がとまったのが‘鷺図’、これは数年前に行われた府中市美の江戸絵画シリーズでお目にかかった。川の水面を首をまげてのぞきこんでいる鷺がまるで目の前にいるような感じ。陰影表現と二つの大きな木を十字をつくるように配置する構図によって立体的な空間構成がなされているため、描かれている場所だけでなく画面の外の空間までイメージがひろがっていく。

今回、佐竹曙山は展示されている書簡から大変な癇癪持ちであることがわかった。それでぴーんときた。直武に比べ構図のつくりかたに切れ味があり大胆なのは曙山のこの性格からきているのではないかと。‘松に椿に文鳥図’でハットするのは丸みのある松の太い幹のむこうに椿をちょこっとみせ小枝に二羽の文鳥を描いていること。この構成はなかなか思いつかない。

後期のお目当てはじつは司馬江漢(1748~1818)だった。奈良の大和文華館が所蔵している‘七里ヶ浜図’と‘海浜漁夫図’をようやくみることができた。小さいころから海が好きなので遠くに富士山を望む七里ヶ浜の景色を立ち尽くしてみてしまう。

衝立の表裏に江の島と金沢のすばらしい眺めが描かれたものは東日本大地震で被災した石巻市の旧家の蔵からでてきたという。この幸運なめぐりあわせをふくめて江漢は全部で6点みることができた。ミューズに感謝!

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2016.12.19

2016年 感動の日本美術 ベスト10!

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Img_0003    ‘羯鼓催花・紅葉賀図蜜陀絵屏風’(重文 17世紀 静嘉堂文庫美)

Img  葛飾北斎の‘隅田川両岸景色図巻’(1805年 すみだ北斎記念美)

Img_0001    佐竹曙山の‘松に唐鳥図’(重文 18世紀)

美術品と出会って大きな感動をおぼえる作品は二つの場合がある。ひとつはずっと追っかけていたものと対面したとき。もうひとつは情報のなかったものが現れるとき。

ベスト10のうち後者のものは4点、静嘉堂文庫美で開催された‘漆芸名品展’(10/8~12/11)で10年ぶりに公開された‘羯鼓催花・紅葉賀図蜜陀絵屏風’も情報がまったくなかったもの。漆を使って描かれた絵をみる機会はきわめて少ないから、こうした屏風サイズの大きな蜜陀絵と遭遇したことはエポック的な鑑賞体験となった。

西洋画では陰影や奥行きを表現するのは当たり前のことだけれど、日本画では画面は平板で物の影はつけないのが伝統的な描き方。でも、浮世絵師の葛飾北斎(1760~1849)や歌川国芳(1797~1861)は影をつけたり遠近法を使い奥行きのある画面をつくることに躊躇しなかった。

開館を首を長くして待っていた‘すみだ北斎記念美術館’、11/22にはじまった‘北斎の帰還’(来年の1/15まで)には目を釘付けにする肉筆の絵巻が登場した。100年ぶりに日本に帰ってきた‘隅田川両岸景色図巻’、7mもある画面を夢中になってみた。

目を見張らされるのが大川橋や川をいきかう舟の川面に映る影、これほど西洋画的な陰影表現がでてくる浮世絵をみたことがない。流石、北斎! 西洋画の手法でも貪欲に吸収し絵画表現の可能性をとことん極めようとした北斎だからこそこんなすばらしい風景画が誕生した。北斎に乾杯!

サントリー美の‘小田野直武と秋田蘭画’(11/6~1/9)で期待値の高かったのが佐竹曙山(1748^1785)の‘松に唐鳥図’、赤い鳥と近景の松をどんと大きく描いて画面に奥行きを強く感じさせる構図のインパクトの強さが忘れられない。

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2016.12.18

2016年 感動の日本美術 ベスト10!

Img_0002        可翁の国宝‘寒山図’(14世紀 サンリツ服部美)

Img_0001     横山操の‘雪原’(1963年 佐久市立近美)

Img     鈴木其一の‘富士千鳥図’(江戸時代後期)

今年は夏場にビッグな出会いがあった。それはみどりがめさんから教えてもらった国宝の禅画、可翁の‘寒山図’。お目にかかった美術館は長野県の諏訪湖のほとりにあるサンリツ服部美、ここは本阿弥光悦の国宝‘白楽茶碗 銘 不二山’をみるため一度訪問したことがある。

この名碗をみたので二度目はないなと思っていたら、まったく想定外の展開になった。みどりがめさんから特別展‘禅宗と茶の湯の美’(7/10~9/4)に‘寒山図’が展示されるという情報を得るまでこの絵をこの美術館が所蔵していることは知らなかった。

手元にある‘週刊朝日百科 日本の国宝 個人所蔵’(1999年1月)で絵の存在はわかっていたが、サンリツ美をつくった服部一郎氏のコレクションだったということに気づかなかった。個人蔵の絵なのではなから今後も縁がないだろうと思っていた。ところが、今回はじめて公開されるという。ええー、まだ一回も展示されてないの!? この決定は今年が服部氏の没後30年にあたるので特別にお披露目しようということになったのだろう。

となると万難を排し諏訪湖まで出かけなくてはならない。はたして、幸運なめぐりあわせとなった国宝との出会いはとても感銘深いものだった。墨の濃淡がきき大変味のある人物描写が強く印象に残るいい絵だった。服部氏がだしたがらなかったのがよくわかった。

この遠出のあとまた嬉しい情報が入ってきた。長年追っかけていた横山操(1920~1973)の‘雪原’が茨城県の天心記念五浦美に登場するというのである。作品を所蔵する佐久市立近美のコレクションで構成された‘日本画、新しき風にのせて’(7/23~9/4)が開催され、横山の絵も平山郁夫の‘仏教伝来’や東山魁夷の‘萌ゆる春’などとともに日本画ファンの目を楽しませてくれた。

関心は‘雪原’一点なので大きな絵を隅から隅まで15分み続けて目に焼き付けた。鑑賞時間はわずか20分だったが、満ち足りた気分で館を後にした。そしてJR常磐線に乗り3時間かけて横浜に戻ってきた。

サントリー美へ通う回数が今年は例年に比べて多く、3回出かけた、宮川香山展(2/24~4/17)、鈴木其一展(9/10~10/30)、そして小田野直武展(11/16~1/9)。鈴木其一(1796~1858)の単独の回顧展が開かれるなんて以前ならちょっと考えられなかったが、時代が変わり、チラシには‘琳派の真打、其一登場’ときた。其一好きだから回顧展に遭遇したのは大きな喜びだが、琳派の真打なんて思うほどのぼせ上がってはいない。

収穫ははじめてお目にかかる‘富士千鳥図’、メトロポリタンからやって来た傑作‘朝顔図屏風’同様、絵の前で色彩の輝き構図のすばらしさを息を呑んでみていた。

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2016.12.17

2016年 感動の日本美術 ベスト10!

Img     狩野芳崖の‘伏龍羅漢図’(1885年 福井県美)

Img_0002     高島野十郎の‘雨 法隆寺’(1965年)

Img_0001     ‘半跏思惟像’(三国時代・6世紀 韓国国立中央博)

Img_0003     萬鉄五郎の‘赤い目の自画像’(1912年 岩手県立博)

西洋絵画に続いて、日本美術で強く心を揺さぶった作品を10選んでみた。いずれもはじめてお目にかかったもの。

昨年ワシントンのフリーア美で長年追い続けた俵屋宗達の‘松島図’をみた。これで日本画を語る上で欠かせないピースが大方うまった。そのため、追っかけは一段落し心のなかでは日本美術はもう済みマーク状態。といっても展覧会へはもう行かないというのではなく、いたって気軽にみている。自然体の鑑賞スタイルで気になっている作品が1点あればそれで十分、それをいつくしむように長くみている。

横浜そごうで開催された福井県美蔵品による‘日本画の革新者たち展’(1/16~2/16)で目を楽しませてくれたのが狩野芳崖(1828~1888)の‘伏龍羅漢図’、こんないい芳崖の作品が福井にあったのか、という感じ。大収穫だった。

高島野十郎(1890~1975)の回顧展(4/9~6/5、目黒区美)も忘れられない展覧会だった。強烈なイメージを残す自画像からはその繊細で写実性にとむ画風はちょっと想像できないが、描かれた風景画や静物画はみる者の魂を奪うほど強い磁力を放っている。最もみたかったのが雨を表す細い線に目が吸い寄せられる‘雨 法隆寺’、しばらく高島野十郎のことが頭から離れなかった。

韓国からやって来た‘半加思惟像’は本物をいつかこの目でと思っていた彫刻、TVの美術番組で中宮寺の国宝‘半加思惟像’がとりあげられるときは必ず韓国にあるこの像がでてくるのでずっと関心を持ち続けてきた。その思いが東博で行われた‘ほほえみの御仏ー二つの半跏思惟像-’(6/21~7/10)で叶ったのだからいうことなし。見る角度によって弥勒菩薩の表情がいろいろ変わるのも名品の証。

東芸大で開かれた‘いま、被災地からー岩手・宮城・福島の美術と震災復興ー’(5/17~6/26)で昨日アップした松本竣介の‘画家の像’同様、立ち尽くしてみていたのが萬鉄五郎(1885~1927)の‘赤い目の自画像’、この絵はある展覧会に出品されたのに展示替えのため見逃した。長いこと待たされたが対面の時がきた。盛岡へ出向かなくてみれたのは幸運だった。

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2016.12.16

鎌倉で‘松本竣介展’!

Img     ‘立てる像’(1942年 神奈川県近美)

Img_0001        ‘自画像’(1941年 神奈川県近美)

Img_0002     ‘市内風景’(1941年)

Img_0003     ‘Y市の橋’(1944年)

今年は松本竣介(1912~1948)に縁があった。5月、東芸大美で宮城県美が所蔵する‘画家の像’という見ごたえのある肖像画をみた。そのとき、秋に神奈川県近美の鎌倉別館で‘松本竣介展’(10/8~12/25)が開催されるという情報をえていたかどうか記憶があやふやだが、出かける計画はたてていた。

神奈川県近美の本館は今年惜しまれながらクローズしたのに目と鼻の先にある鎌倉別館のほうは存続している。その理由がよくわからないが、チケットを買うときそのことを聞くときょとんとされた。当面は大丈夫そう。ここへきたのは久しぶりなので建物のレイアウト感覚がなくなっていた。2階が展示室だった。

‘画家の像’の1年後に描かれた‘立てる像’、ともに大きな絵で縦は1.6mもある。‘立てる像’を最初にみたのはどこだったかすっかり忘れたが、この絵によって松本竣介という洋画家を知った。刷り込まれたイメージは学生服を着た大きな男、今ふたたびみるとこの男のでかさはガリバー級、そしてある絵がオーバーラップする。

それはアンリ・ルソーの‘私自信、肖像=風景’(1890年 プラハ国立美)、図録の論考、作品に説明のどこにもルソーの名前がでてこないが、竣介はルソーのこの絵をみなかったのだろうか。こういうときは高い確率で影響を受けていると思ったほうがいい。

今回作成された図録の冒頭に竣介の写真が載っていた。‘自画像’を以前みたときイケメンのシテイボーイの感じがしていたが、実物はたしかに絵描きに思えないくらいすっきりした顔をしている。サラリーマンでいうとエンジニアのイメージ。

音がまったく聞こえてこないような橋や都会の風景を描いた作品が全部で5点でていた。描かれているのは東京や横浜の街の一角、本来なら都市の風景がこんなに静まり返っていることはないが、時は生きる希望や楽しみが消え去った戦時下、切れ切れになった都市の面影がじつに切なく描写されている。

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2016.12.15

2016年 感動の西洋絵画 ベスト10!

Img_0001   カサットの‘果実をとろうとする子ども’(1893年 ヴァージニア美)

Img  ダリの‘ラファエロの聖母の最高速度’(1954年 ソフィアセンター)

Img_0002   ゴーギャンンの‘タヒチの3人’(1899年 スコットランド国立美)

Img_0003    クラーナハの‘正義の寓意’(1537年)

今年心に響いた西洋絵画、残りは4点。ヨーロッパの美術館ばかり回っていると、古典画でも印象派などの近代絵画でも関心の対象がダ・ヴィンチとかモネ、ゴッホといった日本でよく知られた画家ばかりにむかうことになる。

こうした鑑賞態度はある時期まで続いた。それが2008年からアメリカの美術館を本格的にめぐるようになって、画家に対する見方がすこし変化した。例えば、馴染みの画家でいうとロートレックの油彩の傑作がシカゴやワシントンナショナルギャラリーなどのブランド美術館にたくさんあることに気づいたこと。

そして、名前は知っていてもお目にかかった作品が少なかったアメリカ人画家におおいに開眼したことも大きな収穫だった。印象派の女流画家カサット(1844~1926)のその一人、どこへ行ってもだいたい飾ってあったが、とくにいい絵がいくつもあったというイメージが強いのはフィラデルフィア美、横浜美の回顧展(6/25~9/11)に出品された‘母の愛撫’は3年前にはじめてここを訪れたとき思わず足がとまった作品。

今回母子像がたくさん登場したが、もっとも惹かれたのが‘果実をとろうとする子ども’、構図でおもしろいのがお母さんの片方の目が幼児の頭に隠れてみえないこと。目をあえて一つにしてみる者の視線を主役の赤子と果物にむかわせようとしているのだろう。

久しぶりに数多くの作品が結集したダリ(1904~1989)、展覧会(9/14~12/12 国立新美)自体の満足度はすでにみているものが多かったので高くはないが、どうしてもベスト10に入れたかったものがある。それは原子の構造や素粒子に高い関心を抱いていたダリがラファエロの聖母子像と組み合わせて描いた作品。絵のタイトルに‘最高速度’というサイエンスの匂いがぷんぷんする言葉をつけるのだからダリは相当新しい物理学にのめりこんでいる。

東京都美で開催された‘ゴッホとゴーギャン展’(10/8~12/18)、ゴッホは追っかけのステージが400メートル走でいうと最後の50mのところにきたので今の鑑賞スタイルはいたってリラックスモード、体が向かうのはゴーギャン(1848~1903)のほう。大きな収穫はスコットランド国立美からやって来てくれた‘タヒチの3人’。東京都美への好感度がまたアップした。

締めくくりの西洋絵画はドイツの巨匠クラーナハ(1472~1553)の回顧展(10/15~1/15)、カラヴァッジョ展に比べると衝撃度は弱いが、数点ぐっとくるものがあった。そのなかで息を呑んでみていたのが‘正義の寓意’。これは忘れられない一枚。また、愛嬌があり元気のいい女性がでてくる‘ロトとその娘たち’もニヤニヤしながらみていた。

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2016.12.14

2016年 感動の西洋絵画 ベスト10!

Img_0001  ラ・トウールの‘楽士たちのいさかい’(1630年 ポール・ゲッテイ美)

Imgブリューゲルの‘聖マルティンのワイン祭り’(部分 1567年 プラド美)

Img_0002     ワイエスの‘遥か彼方に’(1952年)

カラヴァッジョ(1571~1610)とラ・トウール(1593~1652)に強く惹かれているのは二人がとびっきりいい風俗画を描いてくれたから。プラド美で行われたラ・トウール展(2/23~6/12)にはその風俗画の傑作がずらっと揃った。まったく夢の絵画館に迷いこんだみたいで期待した作品がここにもあそこにも飾ってある。

‘楽士たちのいさかい’はLAのポール・ゲッティ美の自慢のコレクション、まだ縁のないLAで美術館めぐりをするときは追っかけリストの一番上にくるはずだったのがこの絵。よもやマドリードで対面するとは思ってもいなかった。人生何がおこるかわからない。

風俗画は描かれた世界が身近に感られるほど画面に引き込まれる。右の男は‘しょうがないなー、また喧嘩しちゃって。やめとけ、やめとけ’といっているようだし、左の老女は‘うちの父ちゃん大変なことになっちまったよ、痛めつけられないように、どうか神様助けて下さい!’と体をふるわせて祈っている。

プラドの常設展示室で真っ先に目指したのが1階の56A室、ここに2010年9月に発見されたブリューゲル(1525~1569)の‘聖マルティンのワイン祭り’が飾ってある。幅2.7mの大作。画像は新酒のワインを大勢の男たちがわれ先にと争って飲んでいる場面、ギリシャ神話のバッカスの話と同じようにお酒のピッチがあがると陽気な空気はだんだん乱暴になっていきはては喧嘩がはじまる。今、街では忘年会のまっさかり、この絵と似たような光景がときどきおこっていそう。

プラドのすぐ近くにあるティッセンボルネミッサ美は2度目の入館、前回見逃した作品をリカバリーできればいいなと軽い気持ちだったが、地下の展示室でサプライズの特別展が開かれていた。なんとあのワイエス(1917~2009)の回顧展。これですぐ‘見るぞ’モードのスイッチが入った。

最も心をゆすぶったのがワイエスが35歳のときに描いた‘遥か彼方に’、NYのMoMAにある‘クリスチーナの世界’にみられる描写と同じように大地の草の一本々が丹念に描かれている。小児マヒで足が動かなかったクリスチーナは後向きの座った姿、そしてこの少女は膝頭を抱えて真正面をみすえている。こんないい絵をみれたのは幸運だった。ミューズに感謝!

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2016.12.13

2016年 感動の西洋絵画 ベスト10!

Img      ボッテイチェリの‘聖母子’(1483年 ポルデイ・ベッツオーリ美)

Img_0001     カラヴァッジョの‘法悦のマグダラのマリア’(1606年)

Img_0002  ボスの‘聖アントニウスの誘惑’(1485~1505年 リスボン国立美)

今年出かけた美術鑑賞の振り返りはいつもの展覧会のお好みだけでなく、はじめてお目にかかったもので即Myアートの殿堂に登録した作品も選んでみた。ベスト10を遭遇した順番にそって3回にわけて紹介したい。

東京都美の‘ボッティチェリ展’(1/16~4/3)は日本で開催されたルネサンス関連の展覧会では一番よかったのではないかと思われるほどいい絵が揃った。そのなかで群を抜いて輝いていたのがミラノのポルデイ・ベッツオーリ美からやって来た‘聖母子(書物の聖母)’。

画集で絵の存在は知っていたが、本物がこれほどすばらしいものだったとは!一瞬ウフィッツイ美の展示室にいるような錯覚を覚えた。まさに‘マグニフィカトの聖母’クラスの傑作でボッティチェリのベスト5入りは間違いないところ。

‘カラヴァッジョ展’(3/1~6/12 西洋美)の目玉のひとつ‘法悦のマグダラのマリア’にも200%KOされた。この絵が日本で最初に公開されたというのもスゴイこと。イタリアに数多くいるカラヴァッジョファンは心穏やかではなく、‘イタリアで披露するのが先だろう’と思ったにちがいない。回顧展には3回足を運んだのでこの絵もとことんみた。忘れられない一枚になりそう。

マドリードのプラド美で行われた‘ボス展’(5/31~9/25)で最もみたかったのが‘聖アントニウスの誘惑’。この絵をみるためにポルトガル旅行をもう一度しようと計画していたが、その必要がなくなった。ずいぶん昔ウイーンのアカデミー美でこの絵の模写と遭遇したので、長年これでみたことにするかと納得させてきたが、本物との対面が叶って天にも昇る気持ちだった。

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2016.12.12

2016年 感動の展覧会 ベスト10!

Img_0001     カラヴァッジョの‘バッカス’(1598年 ウフィツィ美)

Img     ボスの‘快楽の園’(1490~1500年 プラド美)

Img_0003 ラ・トゥールの‘クラブのエースを持ついかさま師’(1620年代 キンベル美)

今年出かけた展覧会は53回。5年くらい前からだいたい50回前後におさまってきた。月に一度出動し、3,4展多いときは5展大急ぎでみてまわる。だから、朝から結構忙しい。このなかから大きな感動をあじわった展覧会を10選んだ。昨年同様、海外の美術館でみたものも含まれている。いつものように順番はつけず、開催された月の若いほうから並べた。

★ ボッティチェリ展    1/16~4/3       東京都美

★ 勝川春章展       2/20~3/27      出光美

★ カラヴァッジョ展     3/1~6/12      西洋美

★ 安田靫彦展       3/23~5/15      東近美

★ ラ・トウール展      2/23~6/12     プラド美

★ ワイエス展        3/1~6/20     テイッセン・ボルネミッサ美

★ ボス展          5/31~9/25     プラド美

★ ルノワール展      4/27~8/22      国立新美

★ カサット展        6/25~9/11     横浜美

★ 鈴木其一展       9/10~10/30     サントリー美

ベスト10のうち西洋絵画が7つ入っている。どれも感動袋がもうひとつ必要なくらいすばらしいものだった。とくに質の高い作品が並んだのが世界中から名画を集めてきたボッテイチェリとカラヴァッジョ。こんな人気の高い画家の回顧展が日本で開かれるなんて奇跡に近く、まさにワールドクラスのビッグイベントに酔いしれた。

国立新美のルノワール展は目玉の‘ムーランドラギャレット’と再会できたことが最高に幸せだった。この絵はワシントンのフィリップスコレクションにある‘舟遊びの昼食’とともに真打中の真打。ルノワールの生き生きとした群像描写は腹の底から生きる喜びを感じさせる。

横浜美で行われたカサット展も母子像に200%心を打たれた。アメリカの美術館をまわっていてカサットによく出会い回顧展に遭遇すると楽しくなるなと思っていたら、なんと横浜で実現した。ミューズに感謝!

今年は国内でカラヴァッジョに感動し、マドリードのプラドではしびれる回顧展を体験した。会期中60万人がみたという大ボス展と代表作がほとんど揃ったラ・トウール展。盆と正月が一緒に来たようなもので帰国してからも余韻がずっと残っている。

さらに思ってもいなかったワイエス展までみることができた。正月神社に参拝したときひいたおみくじが‘大吉’だったのは展覧会での幸運を意味していたことを悟った。

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2016.12.11

横須賀美所蔵品展 ‘日本画っておもしろい’!

Img_0001          橋本雅邦の‘雷神図’(1903年)

Img     鏑木清方の‘江の島 箱根’(1916年)

Img_0002          森田曠平の‘阿弥陀堂’(1972年)

Img_0003    杉山寧の‘翠陰’(1933年)

西洋画でも日本画でも図録や画集を頻繁にみているのでどの絵が日本のどこの美術館にあるかはおおよそ頭に入っている。横須賀美が所蔵している作品についても片手くらいはすぐでてくる。

ここで10/1から今日まで日本画にスポットをあてた所蔵品展‘日本画っておもしろい’が行われていた。事前に情報をおさえていなかったので‘新宮晋の宇宙船’がうまい具合に呼び込んでくれた感じ。しかもラインナップがなかなか充実している。だから、いいオマケをもらったと喜んでいる。

これまで画集や展覧会でみたことがないものがいくつもある。橋本雅邦(1835~1908)の‘雷神図’が突然現れたのでびっくりした。広島にいるとき県立美で雅邦の‘風神雷神’をみたが、雷神だけを描いたものがあったとは!この雷神は地獄の番人のように怖い顔をしている。強風のなかつき進む姿をみてある絵が頭をかすめた。それは王子稲荷神社にある柴田是真の‘鬼女図’、怖い顔と疾走する様子がよく似ている。

鏑木清方(1878~1972)の‘江の島 箱根’は10年くらい前鎌倉の鏑木清方記念館でお目にかかった。清方が描く美人画には二つのタイプがあってこの美人はフィギュアの浅田真央ちゃんように目が大きくてぽっちゃり顔のほう。とても気に入っている。

森田曠平(1916~1994)の大原女を描いた‘阿弥陀堂’と出会ったのも大きな収穫。作品を所蔵する横浜美とか東近美、そして京近美が森田曠平展を開いてくれることをひそかに願っているが、その思いはかなわぬまま。一度でいいからたくさんみてみたい。

杉山寧(1909~1993)が24歳のとき制作した作品がこんなところにあった。‘翠陰’は水車から流れてくる水で遊んでいる少年や少女が印象深い緑色と安定した構図を使って生き生きと描かれている。同じ年の‘野’(東京芸大の卒業制作)にも子どもたちが登場するが、杉山は子どもが好きだったのだろう。

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2016.12.10

‘新宮晋の宇宙船’で想定外のことが!

Img_0001     ‘雲の日記’(2016年)

Img_0003     ‘雲の日記のスケッチ’

Img     ‘小さな花’(2013年)

久しぶりに横須賀美を訪れ‘新宮晋の宇宙船’(11/3~12/25)を楽しんだ。風の力や水の流れによって動くオブジェでその名が世界的に知られている新宮晋(1937~)、今年79歳なのにここにある新作14点はまったく年を感じさせないすばらしいものばかり。

今年制作されたのは黄色で着色された帆が弱い風でゆっくり動く‘雲の日記’など9点。この‘雲の日記’のように帆がポリエステルの布のような素材でつくられたものをみると、アメリカのカルダー(1898~1976)が生み出した‘動く彫刻’、モビールが思い起こされる。

カルダーのモビールがそれがつりさげられたワイヤーの振動によって動きが生み出されているのに対し、新宮晋のオブジェはポリエステルの布や和紙でできているものでもステンレスやアルミの金属を使って造形されたものでも、その動きをゆっくりと不連続に変えていっているのは水や風という自然のエネルギー。

一点々がみてて飽きないのは複数のユニットによってつくられる動きの形がある一定の時間をへて何度も繰り返されている感じではなく、全体の形が無限に変容しているようにみえるから。そして、ときどき高山市のからくり人形が見せ場をつくるように動きが急にダイナミックになることがあるのも興味を惹く。

作品を存分に楽しんだのに、この展覧会はその記憶があとでよみがえらない。どういうわけか図録に作品を載せてない!あるのは作品のスケッチのみ、こんな図録は買う気になれない。館内で写真撮影はNGだから、時間が経つと作品の記憶がごそっと消えてなくなる。新宮晋が嫌になった。

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2016.12.09

美術館に乾杯! ナショナルギャラリー その九

Img_0001     シャヴァンヌの‘洗礼者聖ヨハネの斬首’(1869年)

Img     アンリ・ルソーの‘不意打ち!熱帯の嵐’(1891年)

Img_0002     スーラの‘アニエールの水浴’(1884年)

Img_0003     ルノワールの‘はじめての外出’(1876年)

画家にはその画風によってひとつのイメージがつきまとう。ところが、たまに、いつもイメージしている作品と異なるものが登場し面食らうことがある。そんな体験をナショナルギャラリーでした。画家の名前はフランスのシャヴァンヌ(1824~1898)、代表作はオルセーにある‘貧しき漁夫’。

生活に希望が見いだせない漁夫の家族が寒々とした気配の漂う水辺を背景にして描かれたこの絵がシャヴァンヌと強く結びついているので、目の前に‘洗礼者聖ヨハネの斬首’が現れたときはこんな緊張感を強いられる宗教画をあのシャヴァンヌが描いたの!?、かなりドギマギした。

アンリ・ルソー(1844~1910)がはじめて描いたj熱帯雨林の絵が‘不意打ち!熱帯の嵐’、ルソーの画集でとくに惹かれていたのは画面が緑で埋め尽くされるジャングルを舞台にして人間や水牛を虎が襲うというショッキングな場面を描いたもの、ここには楽園のパラダイスとそこに潜む危険が一緒に表現されている。この絵がきっかけとなりジャングル画を追っかけようという気になった。

スーラ(1859~1891)の点描画に魅了され続けているが、そのなかで特別大きな感動を味わったのが‘アニエールの水浴’、まず画面の大きさにビックリする。縦2m、横3m、シカゴ美にある‘グランド・ジャット島の日曜日の午後’とほぼ同じ大きさ。100%点描画ではないが、これがロンドンでみられたのは生涯の思い出。

このスーラの絵のインパクトが強すぎてほかの印象派やポスト印象派の作品が脇役になってしまった。ルノワール(1841~1919)は4,5点あるが、一番のお気に入りは‘はじめての外出’。ちょっと気恥ずかしいようなしぐさをみせる若い女性を斜め後ろから描く構図がなかなかいい。

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2016.12.08

美術館に乾杯! ナショナルギャラリー その八

Img_0002     ゴヤの‘イサベル・デ・ポルセール’(1805年)

Img_0001     ル・ブランの‘麦わら帽子の自画像’(1780年代)

Img     ヴァトーの‘愛の音階’(1710年代)

Img_0003    シャルダンの‘若き女教師’(1740年)

マドリードのプラド美に行くとグレコ(1541~1614)、ベラスケス(1599~1660)、そしてゴヤ(1746~1826)の通にいっぺんでなれるのではないかと錯覚するほど多くの作品をみることができる。だから、スペイン絵画に関してはほかの美術館はパスでいいかなと思ってしまう。

でも、ナショナルギャラリーにはベラスケスとゴヤのすばらしい絵がある。ゴヤの‘イサベル・デ・ポルセール’はみた瞬間、すごい肖像画をみてしまったという気に200%させられる作品。強いインパクトをもっているのは黒のマハの衣装、これが流行に敏感な上流階級のスペイン女性の熱い生き方を示している。マネの黒好きはこの肖像画がかもしだす黒の美が原点になっているのかもしれない。

ナショナルギャラリーでルーベンス、ゴヤに続くお気に入りの女性画はとびっきり美形の画家、ル・ブラン(1755~1842)が描いた‘麦わら帽子の自画像’。この女流画家はずっと前から知っていたのではなく、5,6年前三菱一号館美で回顧展があったのを機に開眼した。エルミタージュにも自画像があるが、17年前訪問したときはまったく気がつかなかった。

貴族の心を虜にしたロココ絵画、イギリスの貴族たちもこぞって手に入れた。有名な絵のひとつがロンドンのウオーレスコレクションにあるフラゴナール(1732~1806)の‘ぶらんこ’、ナショナルギャラリーの自慢はヴァトー(1648~1721)の‘愛の音階’、楽器を弾く男が女性の持つ楽譜に体をちょっと傾けてみるしぐさが目に焼きついている。この風俗画に魅力を感じるのはこのロココ特有の雅さがとりつくろったものではなく森の中で交わされる自然な会話から生まれているように思えるから。

シャルダン(1699~1779)の‘若き女教師’もじっとみてしまう絵。勉強に手間取っている子どもに一生懸命教えている若い女性はいかにもまじめな先生という感じ。シャルダンは静物画も人物画も本当にいい絵を描く。

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2016.12.07

美術館に乾杯! ナショナルギャラリー その七

Img_2     ロランの‘海港、シバの女王の船出’(1648年)

Img_0003_3     カナレットの‘ヴェネツィアの風景’(1735~41年)

Img_0001     コンスタブルの‘干草車’(1821年)

Img_0002     ターナーの‘雨、蒸気、速度 グレートウエスタン鉄道’(1844年)

今年、カラヴァッジョ展を開催して美術ファンをおおいに楽しませてくれた西洋美、来年はなんと奇怪な画家アンチンボルトを登場させるという。会期は6/20~9/24、これは楽しみ。このメインイベントの前に行われるのがシャセリオー展(2/28~5/28)。

西洋美がもっている中期的な展覧会計画については何もわからないが、これからの回顧展にある期待が湧いてきた。フランスロマン主義のシャセリオー(1819~1856)という渋い選択があるのならクロード・ロラン(1605~1682)があってもおかしくない、と。ただし、ナショナルギャラリーにある‘海港、シバの女王の船出’がやって来る可能性はゼロであるが。

ロランの海港の絵はナショナルギャラリーとルーヴルに通っているとその魅力が体のなかに染みわたっていく。海港の情景は旅物語のはじまりであり、話のいっぱいつまった船旅がようやく終わり重圧や緊張感から解放される場である。ロランはなかなかのアイデアマンで海や船、そして太陽を使って物語を読み取らせる新しい風景画のジャンルを生み出した。

カナレット((1697~1768)というとヴェネツィアの絵、大きな美術館にはだいたい飾ってあるが群をぬいていい絵が揃っているのがナショナルギャラリー、何回目かの訪問でそれがわかり夢中になってみたことを昨日のことのように思い出す。水の都、ヴェネツィアは憧れの街、美しい鐘楼の姿をみるとまた出かけたくなる。

英国の人たちに人気の高いコンスタブル(1776~1837)とターナー(1775~1851)、その代表作‘干草車’と‘雨、蒸気、速度 グレート・ウエスタン鉄道’をみるたびにイギリス絵画もスゴイなと思う。東京都美でターナー展をみてから3年が経つ。次はコンスタブル展が実現することを心待ちにしている。西洋美、国立新美、東京都美、どこが夢を叶えてくれるだろうか。

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2016.12.06

美術館に乾杯! ナショナルギャラリー その六

Img     ルーベンスの‘シュザンヌ・フールマン’(1625年)

Img_0002     ベラスケスの‘鏡をみるヴィーナス’(1651年)

Img_0004     レンブラントの‘ベルシャザルの饗宴’(1635年)

Img_0003     プッサンの‘パンの勝利’(1636年)

海外の名の知れた美術館をまわって必ずといっていいくらい出くわすのがバロックの王、ルーベンス(1577~1640)、ナショナルギャラリーにも数多くの作品が飾られている。だから、どれをとりあげるか迷うが一点となると大好きな‘シュザンヌ・フールマン’しかない。

ルノワール(1841~1919)の初期の傑作‘桟敷席’が描かれたのは1874年、驚くのはこの250年前にルーベンスは近代の画家たちが描くようなはつらつとした肖像画を描きあげていたこと。アングルやルノワールはラファエロの聖母子とルーベンスの女性画を特別な思いでながめていたのだろう。

ベラスケス(1599~1660)というとすぐプラドをイメージするが、ここには別の顔をしたベラスケスのすばらしい絵がある。みるたびに感激する‘鏡をみるヴィーナス’、スペインでは裸婦はご法度だから王の命令でローマに出張したときにこの絵を仕上げた。縛りがなくなったので天才ベラスケスの筆は冴えわたる。描こうと思ったら裸婦でも静物でもなんでも描ける。スゴイ画家である。

ルーヴル同様、この美術館もレンブラントをたくさん揃えている。そのなかで最も印象に残っているのが‘ベルシャザルの饗宴’、レンブラントに惹かれる理由のひとつがその自然な感情表現、この絵にもそれがよくでている。注目の人物はバビロニアの新しい王の左にいる女性、まさにびっくりしている様子。‘あらー、王様動揺しているわ!なにかよくないことが起きるのかしら?’

ギリシャ神話が絵の題材として繰り返し取り上げられるが、にぎやかな場面のひとつが‘パンの勝利’、プッサン(1594~1665)が描いた一枚は大勢の男女が思いっきりはめをはずしてお楽しみの真っ最中、この絵を注文したパトロンはニヤニヤしてみていたにちがいない。

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2016.12.05

美術館に乾杯! ナショナルギャラリー その五

Img_0002     カラヴァッジョの‘エマオの晩餐’(1601年)

Img     カラッチの‘聖ペテロに現れるキリスト’(1602年)

Img_0001     ジョルダーノの‘敵を石にかえるペルセウス’(1680年)

Img_0003     ホントホルストの‘大祭司の前のキリスト’(1617年)

今年は西洋絵画の当たり年だった。国内ではカラヴァッジョ、ボッティチェリ、ティツィアーノ、ルノワール、カサットゴッホ、ゴーギャンの回顧展があり、スペイン旅行では期待のボス、ラ・トゥール展だけでなく想定外のワイエスまでみることができた。

このなかで奇跡が起きたといってもいいすぎでないのがカラヴァッジョ展、なんとこの日本に11点ものカラヴァッジョ(1571~1610)が集まったのだからスゴい。欲をいえばきりがないが勝手な妄想をいうとナショナルギャラリーにある‘エマオの晩餐’とブレラ美にあるものが一緒にみれたら最高だった。

はじめてこの‘エマオの晩餐’をみたときびっくりしたのが右の弟子の左手がこちらにドーンとむかってくること。この男の鷲が翼を広げたようなポーズと呼応するように中央のキリストも手を前に出している。二人の緊張感に包まれた姿でもう200%参りました、となる。

カラッチ(1560~1609)の‘聖ペテロに現れるキリスト’は小さな絵なので注意してないとつい見逃してしまう。カラッチの作品をみる機会はきわめて少ない。だから、気になる絵はよく記憶に残っている。それがこの絵とプラドのある‘ヴィーナス、アドニスとキューピッド’。

画家のなかにはいろんな美術館でお目にかかり名前も一応知ってはいるが、前のめりになってみるほどではないというのもいる。そんな画家でも一枚によって突如その才能の開眼することもある。それをナショナルギャラリーで体験したのがナポリ生まれのジョルダーノ(1635~1705)。強い衝撃を受けたのは‘敵を石にかえるペルセウス’。これは幅が3m半もあるとても大きな絵。

この絵をみていたとき小学生が大勢やって来た。そして、引率の先生がこの絵の解説をはじめた。子どもたちはこの傑作をみればギリシャ神話の英雄ペルセウスの話を一生忘れないだろう。また、茶目っ気のある男の子は家で宿題を口うるさく言ういうお母さんに怪物メドューサの首をみせて石に変えてしまうかもしれない。

オランダのカラヴァッジェスキ、ホントホルスト(1592~1656)の‘大司祭の前のキリスト’も心に残る一枚。蝋燭の光の演出でこれほど画面が引き締まる絵が描けるのはラ・トゥールとホントホルストのほかにはいない。司祭の表情がじつにリアルで映画のワンシーンをみているよう。

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2016.12.04

美術館に乾杯! ナショナルギャラリー その四

Img  ブロンズィーノの‘ヴィーナスとキューピッドのいるアレゴリー’(1540~50年)

Img_0001     コレッジオの‘バスケットの聖母’(1524年)

Img_0003   パルミジャニーノの‘聖母子と聖ヨハネとヒエロニムス’(1527年)

ルネサンスのあとに生まれたマニエリスムの作品が多くみられるのはフィレンツェのウフィツィ美、ここでポントルモやサルト、ブロンズィーノたちをみてそのゾクゾクっとした画風の洗礼を受ける。くまのできた目とか不気味な微笑みをみてしまうとまたこの絵の前に立ったとき長くいるだろうか?とつい思ってしまう。

マニエリスムに対する正直な反応はこんなところ。でも、不思議な魅力を放っている絵がないわけではない。ナショナルギャラリーにはベストワンといっていいものがある。ブロンズィーノ(1503~1572)の‘ヴィーナスとキューピッドのいるアレゴリー’、これは忘れられない一枚。

この絵で何が表現されているかを論じたら一冊の本が書けるかもしれない。描かれたモチーフの意味をひとつ々読み取るのは絵への好奇心を高めるが、知識の量はほどほどにして人物の配置や真ん中3人の白い肌の輝きに目をむけていると時間はすぐ10分を超える。

まず視線が向かうのは右の可愛い笑顔をみせるキューピッド、そしてその向こうでちらっと顔だけをみせている女の子。その存在は謎めいている。この二人を長い腕で覆うようにしているのが精悍な顔つきをした髭の老人。この男はなぜここに登場するのか?謎解きはいろいろふくらんでいく。

コレッジョ(1494~1534)にもマニエリスムの香りがするがそれほど濃厚ではない。‘バスケットの聖母’は小さな絵で一度しかみたことがないが、聖母のやさしさに満ちた表情に即魅せられた。また幼子イエスの愛らしいこと。海外の美術館では若い夫婦が赤ちゃんを乳母車に乗せて引っ張ているが、コレッジョの絵の前ではイエスがこの赤ちゃんと入れ替わってもおかしくない。

パルミジャニーノ(1503~1540)はマニエリストのなかでは別格扱いにしている画家。ウィーンの美術史美で運よく大回顧展に遭遇したので愛着度がさらに深まった。‘聖母子と洗礼者聖ヨハネと聖ヒエロニムス’は聖ヨハネのポーズがなんといっても強く印象に残る。こちらをじっとみすえ一段上のところにいる幼児キリストを示すようにその右手を曲げている。おもしろいのはパルミジャニーノの描く聖母はキツネ目になっているところ。

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2016.12.03

二度目の‘円山応挙展’!

Img_0001          ‘楚蓮香図’(1786年)

Img_0003      ‘朝顔図’(1784年 相国寺)

Img_0002     ‘雲龍図屏風’(重文 1773年)

Img     ‘七難七福図巻’(重文 1768年 相国寺)

現在、‘円山応挙展’を開催中の根津美は地下鉄銀座線の表参道駅で下車して徒歩10分くらいで到着する。慣れ親しん道順だがひとつ難点がある。地下鉄から地上に上がってくるまでに傾斜のきつい階段があり、これがだんだん辛くなってきた。中国人観光客を必ずみかけるPRADAの前をすぎるころようやく呼吸が元にもどってくる。

展覧会が日曜美術館で紹介されたことが人気に拍車をかけているようで、館内は大勢の人で賑わっている。お目当ては後期(11/29~12/18)にでてくる作品。‘楚蓮香図’は図録をざっとみて過去にみたものかなと思っていたが、目の前に現れたのは別ヴァージョンだった。ちょっと腰を曲げた楚蓮香が蝶々と遊んでいる姿に今回いっそう惹きつけられたのは着物の柄や色彩が格別綺麗だったから。3点みたなかでこれが一番いい。

‘朝顔図’はサントリー美で公開された鈴木其一の‘朝顔図屏風’(メトロポリタン美)を思い浮かべながらみていた。背景の色が冴えないが朝顔ひとつ々の描写を単眼鏡でみると流石、応挙は写生の達人、という感じ。花のなかからでてくる光のとらえかたは其一同様、じつにリアルで印象深くうつる。

後期に登場した‘雲龍図屏風’は応挙展には欠かせない作品でキラーピースといっていい。この金色の龍と対面するのは四度目、数ある龍のなかでフリーア美にある俵屋宗達の龍とこの龍に200%魅了されているので息を呑んでみていた。

前期のとき、なぜか二階の展示室にあった‘七難七福図巻’をみないで帰ってしまった。電車のなかで図録をながめこの図巻どこにあった?と合点がいかなかった。これまで開かれた企画展はすべて一階で完結していたので二階まで展示が続くことをまったく思いつかなかった。この日もTVに出演した学芸員がちょうど前にいたので展示されている場所を聞いた。

出品リストを手にもっているのに絵と向かいだすとこれを忘れてしまうのでこういうミスをしてしまう。でも、過去の回顧展で前期にひろげてあったところはみていたため救われた。‘七難’の場面で食い入るようにしてみたのは突然現れた大蛇からみんなが大慌てで逃げるところ。実際にはこんな大きな蛇はいないだろうが、心理的にはこれほど巨大で怖かったにちがいない。

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2016.12.02

待望の‘小田野直武と秋田蘭画’!

Img          佐竹曙山の‘松に唐鳥図’(重文 18世紀)

Img_0001     小田野直武の‘不忍池図’(重文 18世紀)

Img_0002          佐竹曙山の‘蝦蟇仙人図’(18世紀)

Img_0003     司馬江漢の‘江ノ島稚児淵眺望’(19世紀 仙台市博)

サントリー美の今年の企画展で最も期待していたのは‘小田野直武と秋田蘭画’(11/16~1/9)、このなかにずっと追いかけていた作品がでている。それは前期(11/16~12/12)だけしか展示されない‘松の唐鳥図’、描いたのは秋田藩のお殿様、佐竹曙山(さたけしょざん 1748~1785))。

西洋画の陰影法や遠近法を取り入れて描いた風景画や花鳥画、いわゆる秋田蘭画は府中市美が精力的に開催している江戸絵画シリーズにちょくちょくでてくるのでだいぶ目が慣れてきているが、こうしてまとまった形でみるのははじめて。

この絵で目を惹くのはなんといっても画面を斜めにのびる大きな松の幹からでた枝にとまっている赤い鸚哥、おもしろいことに根津美の円山応挙展でも同じく松と赤の鸚哥を組み合わせた作品と出会った。赤の色の強さはともに尋常ではないが、絵全体のインパクトは曙山のものに軍配が上がる。松の力強さと極上の赤の絵の具を使って描かれた鸚哥、この構図はぐっとくる。

秋田蘭画のもうひとりの主役、小田野直武(おだのなおたけ 1749~1780)は秋田藩の藩士、代表作が‘不忍池図’(展示は前期のみ)、これは一度じっくりみているので軽くみていたが、解説のプレートに芍薬のつぼみのところに蟻がいると記されていたのですぐ単眼鏡を取り出してみた。前回は見逃したが2匹の蟻が姿を現わした。たまには説明文も読んでみるものだなと思った。横に秋田県の出身という男性がいて蟻を気にしていたので単眼鏡をわたしてあげた。

曙山の‘蝦蟇仙人図’をみるのは二度目、ここでハットすることに気づいた。なんと三足の蝦蟇と後ろの松の幹がダブルイメージになっている!松の表皮の菱形模様がそのまま蝦蟇の体のつぶつぶに連続し、よくみると蝦蟇は幹が変容した姿、これは気がつかなかった。曙山、なかなかやるじゃん、という感じ。

大きな収穫だったのが司馬江漢(1748~1818)、画集に載っていてまだお目にかかってないものが数点あった。とくに足がとまったのは‘江ノ島稚児淵眺望’、この展覧会は一回で終わりのつもりだったが後期に江漢がまた登場するのでそうもいかなくなった。

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