西洋美の‘クラーナハ展’!
‘ホロフェルネスの首を持つユディット’(1530年、ウィーン美術史美)
‘聖カタリナの殉教’(1509年 ブダべスト ラーダイ改革派教会)
‘ディアナとアクタイオン’(1550年 トリエステ国立古典絵画館)
現在、西洋美で開催中の‘クラーナハ展’(10/15~1/15)をみてきた。クラーナハ(1472~1553)はデューラーと並ぶドイツルネサンスの巨匠なのだが、どちらが好きかというとデューラーのほう。そのため、出動は率直に言って遅くなるが、クラーナハの衣装の赤の強さや肌色の輝きにはグッときているのでパスというわけにはいかない。
この回顧展はローマやロンドンなどを巡回したものだというから、作品は確かにいいものが揃っている。よく記憶しているワシントンナショナルギャラリーの‘泉のニンフ’やウイーン造形美術アカデミーの‘ルクレティア’、メトロポリタンの‘サムソンとデリラ’、そしてウイーン美術史美の‘ホロフェルネスの首を持つユディット’が入っているのは豪華なラインナップというほかない。作品選定には相当熱が入っている。
クラーナハという画家のイメージができたのは30数年前ウイーン美術史美でみた‘ホロフェルネスの首を持つユディット’、この青白く目のまわりにくまのできた首をみたときはM7クラスの衝撃度があり一瞬体が硬直した。異様な光景をみたショックの大きさは剣を握りしめるユディットの冷めたい表情によってさらに深められる。‘私、ホロフェルネスの首を切ったのよ、でもそれほど怖くなかったわ’、そうさらっといわれると後ずさりしたくなる。
はじめてお目にかかる作品で収穫がいくつかあった。全作品中最も長くみていたのは‘正義の寓意’、画面に寄ってじっとみると顔の目の下から顎、そして首のところを除いて薄い布が髪の毛から両腕、腰から下まですっぽり包んでいる。この姿がみようによってはすごく艶めかしい。
‘聖カタリナの殉教’はカラヴァッジョに同じ題材の作品があるのでそれを頭に思い浮かべながら処刑の残忍さを目にやきつけた。このカタリナは色白でその顔はハットするほど美形、その美貌に免じて処刑は無しということにしてもらえないだろうか、とついお願いしたくなる。
裸婦がたくさん登場するにぎやかな‘ディアナとアクタイオン’にも思わず足がとまった。裸婦だけでなくまわりには犬や鹿が走り回っている。クラーナハは鹿狩りをよく描いており、ウイーン美術史美でみたことがある。また、6月プラド美でも目を楽しませてくれた。風俗画っぽい作品はお好みだから画面の隅から隅までじっくりみた。
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コメント
とても楽しめた展覧会でした。
クラーナハの作品は、欧米各国の美術館にたいていありますが、これほどまとめて見たのは初めてでした。ウィーンの『ホロフェルネスの首を持つユ―ディット』は、ずいぶんきれいな修復を受けましたね。しばし見とれました。
クラーナハは、デューラーや同時代のイタリア・ルネサンスの画家に比べると、写実的ではなく、絵が稚拙な感じがありますが、そこがかえって素朴な味わいがあって好きです。
そして多くの人物がずいぶんかわいらしく見えました!
ご紹介作品の中では、『ディアナとアクタイオン』の女性像もそうですが、『子供たちを祝福するキリスト』の赤ちゃん、子供など微笑ましくなりました。
投稿: ケンスケ | 2016.11.25 20:54
to ケンスケさん
クラーナハの描く女性や子どもは可愛い感じ
ですね。蜂の巣をもつキューピッドがやってきて
くれるとご機嫌でしたが、これは叶いませんでした。
今回の収穫は‘正義の寓意’です。200%KOされ
ました。
投稿: いづつや | 2016.11.26 00:11
いづつやさん、こんにちは。最終日に行って来ました。観る前は、グロテスクなイメージだったのですが、実際に観ると不思議なことに その印象よりも美しさに心奪われました。どの作品も睫毛1本1本まで細かく描かれていて、非常に美しかったです。
自分は、ウィーン美術史美術館の「キューピッド」が、お気に入りになりました。板絵が大好きなので、堪らない展覧会でした。
投稿: みどりがめ。 | 2017.01.17 18:33
to みどりがめさん
クラーナハは服を着ている女性はすごく可愛いく
ちょっとお茶目に描きますね。これが魅力です。
裸婦は体全体をみると細長くて異様な感じがし
ますが、顔は現代的なところがあります。そして、
愛嬌のあるキューピッドもいいですね。
投稿: いづつや | 2017.01.18 00:02