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2016.11.30

美術館に乾杯! ナショナルギャラリー その三

Img     マンテーニャの‘ゲッセマネの園の苦悩’(1460年)

Img_0001     ティツイアーノの‘バッカスとアリアドネ’(1520~23年)

Img_0003     ティントレットの‘天の川の由来’(1580年)

Img_0002    ヴェロネーゼの‘愛の寓意 Ⅱ侮蔑’(1570年代)

日本で海外のブランド美術館のコレクションが度々開催されるが、北イタリア生まれのマンテーニャ(1431~1506)にお目にかかった記憶がない。代表作がある美術館ですぐ思いつくのはルーヴルとナショナルギャラリー、見る機会が限られている分一度目のなかにはいったものは強く印象付けられている。

‘ゲッセマネの園の苦悩’はこの絵の主役はキリストや眠っている弟子たちではなくこの舞台をつくっている岩の塊ではないかと思ったりもする。手前の岩が何層にも重なるフォルムはインパクトがあり、後ろのほうにもとんがり帽子のような岩山が連なっている。BSプレミアムの‘体感!グレートネイチャー’にでてくる地球絶景がふと頭をよぎる。

ヴェネツィア派の作品を多く所蔵しているのはもちろん本家のアカデミア美、ほかでいいのが揃っているのはルーヴル、プラド、そしてナショナルギャラリー、もうひとつあげるならミラノのブレラ美。ナショナルギャラリーで数が多いのがティツイアーノ(1506~1576)、傑作ぞろいだがキリスト物語でもギリシャ神話でも人物描写に動きがあるものが多い。

‘バッカスとアリアドネ’はバッカスの風になびく赤いケープが目に焼きついている。おもしろいのは劇的に出会ったアリアドネとバッカスの間にヒョウがいること。ヒョウやチーターは獰猛な動物というイメージがあるからドキッとする。

動きのある絵画構成で目を楽しませてくれるのがティントレット(1518~1594)、‘天の川の由来’はお気に入りの一枚。今は宇宙論に200%のめりこんでいるから、こういう絵には敏感に反応する。赤ん坊のヘラクレスが本当のお母さんでもないゼウスの妻ヘラのお乳をあまりに一生懸命飲むものだからその乳は天空に飛び散ってしまった。天の川がこうしてできた。

ヴェロネーゼ(1528~1588)というとルーヴルの大きな絵が有名だからヴェネツィア以外ではルーヴルが一番いいものをもっていると思いがちだが、ナショナルギャラリーのほうが作品郡としては充実しているというのが正直なところ。4点ある‘愛の寓意’や‘アレクサンドロス大王の前のダレイオスの家族’などが飾ってある部屋は圧巻!

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2016.11.29

美術館に乾杯! ナショナルギャラリー その二

Img  ヤン・ファン・エイクの‘アルノルフィニ夫妻の肖像’(1434年)

Img_0001    ホルバインの‘大使たち’(1533年)

Img_0003    ボスの‘嘲弄されるキリスト’(1490~1500年)

Img_0002     ブリューゲルの‘東方三博士の礼拝’(1564年)

海外の美術館をまわってみてつくづく思うのは絵画の世界は広く、すごい画力を持った画家が数多くいるということ。海外にそうたびたび出かけられるわけではないので、美術館を訪問する機会がめぐってきたときは狙った作品を全神経を傾けてみることにしている。そんな画家のひとりがヤン・ファン・エイク(1390~1441)。

ナショナルギャラリーにはファン・エイクのとっておきの絵がある。‘アルノルフィニ夫妻の肖像’、その絵解き話は美術史家のパノフスキーにたくさん教えてもらった。それもおもしろいがこの絵で視線が一番に向かうのは後ろの鏡、そこに人物が4人も映っている。鏡と同様、そのリアルな質感描写にびっくりするのが金属のシャンデリアと蝋燭、左に立つ商人の顔はちょっと気持ち悪い、だから可愛い天使のような奥さんばかりみている。

ハンス・ホルバイン(1498~1543)の‘大使たち’は事前にあることをインプットしておかないと後で悔いを残すことになる。それは絵の中央下に描かれている不思議な物体?前からみるとわからないが、画面の右から真横にみると、なんとドクロが現れる!こんなグロテスクなだまし絵を緻密な描写した人物や楽器のなかに挿入するのだからホルバインはかなりのアヴァンギャルド思考。

6月プラド美でみた大ボス展の余韻にまだ浸っている。‘嘲弄されるキリスト’もそこに展示されていた一枚。キリストを痛めつけられる場面がクローズアップで描かれている。こういう光景をみると気の弱い中学生の男の子が学校の片隅でいじめられているところをイメージする。

このボスと画風がよく似ているのがブリューゲル(1525~1569)の‘東方三博士の礼拝’、気になるのは聖母や三博士の着ている服のサイズがやけに大きくダボダボなところ。後ろに立っている男たちと比べてキリストも含めて前にいる5人は顔が非常に小さく描かれているので紙人形のような感じがする。

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2016.11.28

美術館に乾杯! ナショナルギャラリー その一

Img_0001    ダ・ヴィンチの‘岩窟の聖母’(1492~1508年)

Img_0002     ボッティチェリの‘ヴィーナスとマルス’(1480~90年)

Img    ラファエロの‘教皇ユリウス2世’(1511~12年)

Img_0003 ピエロ・デラ・フランチェスカの‘キリストの降誕’(1470~75年)

これまで数限りなくみてきた美術品のなかで心に強く残ったものを西洋美術については‘ズームアップ 名画の響き合い!’、日本美術は‘近代日本美術の煌き!’によって時代を通観する形で紹介してきた。ここで焦点をあてたのは近現代に生み出された作品、そこで第三弾としてそれ以前の時代のものを中心にした‘美術館に乾杯!’を立ち上げることにした。

運のいいことに日本だけでなく海外の美術館にも足を運ぶことができ、アートに親しんできた。訪れたのは大きな美術館だけでなく邸宅風の美術館や小さな美術館もある。どの美術館もそれぞれコレクションに個性があり、多様性豊かな美術の世界を見せてくれた。そこで出会った思い出の作品をできるだけ多くとりあげたい。

スタートはロンドンにあるナショナルギャラリー、この美術館はルーヴルやメトロポリタンのように彫刻や工芸などはなく絵画のみ。大きな美術館の多くは日本でそのコレクションを公開し‘名品展’を開いてくれる。ところが、ナショナルギャラリーだけはそれが実現しない。だから、ロンドンに出向かないかぎり傑作の数々とお目にかかれない。これは美術館の基本的な方針だから仕方ないが、残念なことではある。

館内に展示されている作品の質の高さはもうエベレスト級。とにかく名画がここにもあそこにもあるという感じ。ダ・ヴィンチ(1452~1519)は‘岩窟の聖母’にぞっこん参っている。いつも長くみているのは聖母マリアと天使のきれいにカールされた金髪。このリアルな描写をみるたびにダ・ヴィンチにひれふしている。

ボッチチェリ(1445~1510)の‘ヴィーナスとマルス’は左右に男女が広がる構図がとても印象深い。古代ローマの屋敷における食事の光景をみるような感じ。それにしてもヴィーナスのアンニュイなこと。

古典絵画の肖像画のなかで強い磁力を放っている作品のひとつがラファエロ(1483~1520)が描いた‘教皇ユリウス2世’、軍人教皇といわれたユリウス2世、頑固そうで厳しい目つきをした顔をみると戦場では大声をあげて兵士たちを叱咤していたにちがいない。

ピエロ・デラ・フランチェスコ(1416~1492)の‘キリストの降誕’からはまさに美しい歌声が聴こえてくる。画面の空気が楽器の音や女性たちの合唱によって振動する絵というのはそうはない。動と静が美しく融和した絵画が描けるというのがスゴイ。

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2016.11.27

ティツィアーノの‘ダナエ’と‘マグダラのマリア’!

Img_0001     ‘ダナエ’(1544~46年 ナポリ カポデイモンテ美)

Img     ‘ダナエ’(1551~53年 マドリード プラド美)

Img_0003    ‘マグダラのマリア’(1533年 フィレンツェ ウフィッツイ美)

Img_0002    ‘マグダラのマリア’(1560年代 エルミタージュ美)

今年の8月から10月にかけて国立新美でアカデミア美が所蔵するヴェネツィア派の作品が公開されたが、この続きが来年はじめ東京都美である。チラシに嬉しさがこみあげてくる作品が載っている‘ティツィアーノとヴェネツィア派展’(1/21~4/2)。

ナポリのカポディモンテ美はティツィアーノのいい絵やカラヴァッジョ、ブリューゲルなど質の高い作品があることで有名な美術館、一度そのコレクションが日本にやって来たが、そのときはティツィアーノは‘マグダラのマリア’1点だけだった。

ところが、今回はそんなに貸し出してくれるの?というほど太っ腹、‘ダナエ’、‘教皇パウルス3世の肖像’、そして再来日となる‘マグダラのマリア’の3点がでてくる。だったら、もうひとつ‘パウルス3世とその孫アレッサンドロ、オッタヴィオ・ファルネーぜ’も加えてといいたくなるがこれは強欲というもの。

6月に訪問したマドリードのプラド美では駆け足でヴェネツィア派を楽しんだが、思わず足が止まったのがティツィアーノの‘ダナエ’とティントレットの大作‘使徒の足を洗うキリスト’、‘ダナエ’はこれまで幸運なことにウフィッツイ美とエルミタージュ美にある2つのヴァージョンをみた。

カポディモンテにあるのは最初に描かれたもので黄金の雨に変装したゼウスをダナエとともにみているのはキューピッド、このキューピッドがあとのヴァージョンでは老婆に変わっている。早くカポディモンテのものがみたい!

‘マグダラのマリア’については、ウフィッツイ美にあるものが第一作ではちきれんばかりの豊満な体をしたマグダラのマリアが画面いっぱいに描かれている。これにたいし30年くらい後に描かれたエルミタージュとカポディモンテにあるものはマグダラがすこし小さくなりまわりの背景にも目がいくような構成になっている。また、マグダラの目がうるうるになっているのも大きな違い。

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2016.11.26

ティントレットの‘最後の晩餐’がみたい!

Img_0002_2 ドゥカーレ宮殿の真正面にあるサン・ジョルジョ・マジョーレ島(右端中央)

Img_2  ティントレットの‘最後の晩餐’(1594年 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会) 

Img_0001    ティントレットの‘天国’(部分 1590年 ドゥカーレ宮殿)

今月は2週連続でTV東京の人気番組‘美の巨人たち’を楽しんだ。最初が3人の画家の描いた‘最後の晩餐’、そして先週はヴェネツィアの‘サンマルコ広場’の物語。おもしろいめぐりあわせでこの番組の間にみた映画‘インフェルノ’にもヴェネツィアがでてきた。

事前に番組をチェックしていてどうして今ダ・ヴィンチ(1452~1519)の‘最後の晩餐’なのかと?いう気がしたが、この絵にティントレット(1519~1594)とルーベンス(1577~1640)の描いた‘最後の晩餐’とぶつけるという構成、そして翌週にサンマルコ広場の話をもってくるという流れをみてぴーんときた。

勝手な想像はこう、番組スタッフはヴェネツィアを取材すると絵画と建築の2本が効率よくつくれると考えた。絵画は今回はティトレットでいく。ヴェネツィアの正面玄関に建つドゥカーレ宮殿から真正面にみえるサン・ジョルジョ・マジョーレ島の教会にある最晩年の傑作‘最後の晩餐’を軸にしてこれに本家のダ・ヴィンチとバロックの王、ルーベンスをくっつける。これで1本撮れる。そして、もうひとつはサンマルコ広場の‘光と影’を浮かび上がらせて建築シリーズに仕立てる。あたっている?

ティントレットへの関心は同じヴェネツィア派のティツィアーノ(1485~1576)に負けず劣らず高い。だから、今回紹介された‘最後の晩餐’はいつかこの目でと思い続けている。この絵があるのはサンマルコ小広場の停留所から水上バスに乗ると数分で到着するサン・ジョルジョ・マジョーレ教会、だからその気になれば本島のように迷路に迷うことはなく簡単にいける。

ヴェネツィアをまた訪問することがあったらこの教会に最優先で出かけることにしている。おそらく、ドゥカーレ宮殿大会議の間の奥の壁に飾られている大作‘天国’と同じくらい感激するような気がする。いつか夢を叶えたい。

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2016.11.25

忘れられないクラーナハ!

Img_0003  ‘ヴィーナスと蜂の巣をもつキューピッド’(1531年 ボルゲーゼ美)

Img ‘ヴィーナスに訴えるキューピッド’(1525年 ナショナルギャラリー)

Img_0001     ‘アダムとイヴ’(16世紀 ウフィッツイ美)

Img_0002     ‘パリスの審判’(1528年 メトロポリタン美)

多くの美術ファンが足を運ぶ人気の美術館には2度訪問することを目標として世界中の美術館巡りをしているが、ローマにあるボルゲーゼ美はまだこれがはたせてない。ここは事前にネットで入館日を予約することが必要。だから、日程の調整がいるので団体ツアーに参加するときはかなり神経を使う。でも、もう一度という思いはずっともっている。

ここの古典絵画コレクションはカラヴァッジョやティツイアーノ、ラファエロなどのスゴイ絵を揃えている。そのなかにクラーナハ(1472~1553)も入っている。それは最も魅せられている‘ヴィーナスと蜂の巣をもつキューピッド’、プロポーションが異常にひきのばされおしゃれな帽子を被っているヴィーナスと蜂に刺されて痛そうな顔をしているキューピッド、親しみを覚える二人の組み合わせが目に強く焼き付いている。快楽には苦痛をともなうという教訓をキューピッドで表現しているのがおもしろい。

ヴィーナスとキューピッドを描いたものはロンドンのナショナルギャラリーにも蜂の巣をもったキューピッドの別ヴァージョンがあり、またサンクトペテルブルクのエルミタージュ美にあるものはキューピッドは弓矢をもっている。

アダムとイヴを題材にしたものはウフィッツイ美とブリュッセルのベルギー王立美でお目にかかった。ここに登場する男女はきわだってリアルに描かているわけではなく、かといって宗教色の強い人物描写になってもいない。だから、わりと気楽に二人をみつめられる。これがクラーナハの一番の魅力かもしれない。

クラーナハの真骨頂はやはり薄いヴェールをまとう裸婦像、このヌードパワーが‘パリスの審判’でも全開、美女を前にして木の下で腰をおろしているパリスの姿をみれば誰を一番の美女にするか大いに悩んでいることがよくわかる。

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2016.11.24

西洋美の‘クラーナハ展’!

Img     ‘正義の寓意’(1537年)

Img_0003‘ホロフェルネスの首を持つユディット’(1530年、ウィーン美術史美)

Img_0001  ‘聖カタリナの殉教’(1509年 ブダべスト ラーダイ改革派教会)

Img_0002   ‘ディアナとアクタイオン’(1550年 トリエステ国立古典絵画館)

現在、西洋美で開催中の‘クラーナハ展’(10/15~1/15)をみてきた。クラーナハ(1472~1553)はデューラーと並ぶドイツルネサンスの巨匠なのだが、どちらが好きかというとデューラーのほう。そのため、出動は率直に言って遅くなるが、クラーナハの衣装の赤の強さや肌色の輝きにはグッときているのでパスというわけにはいかない。

この回顧展はローマやロンドンなどを巡回したものだというから、作品は確かにいいものが揃っている。よく記憶しているワシントンナショナルギャラリーの‘泉のニンフ’やウイーン造形美術アカデミーの‘ルクレティア’、メトロポリタンの‘サムソンとデリラ’、そしてウイーン美術史美の‘ホロフェルネスの首を持つユディット’が入っているのは豪華なラインナップというほかない。作品選定には相当熱が入っている。

クラーナハという画家のイメージができたのは30数年前ウイーン美術史美でみた‘ホロフェルネスの首を持つユディット’、この青白く目のまわりにくまのできた首をみたときはM7クラスの衝撃度があり一瞬体が硬直した。異様な光景をみたショックの大きさは剣を握りしめるユディットの冷めたい表情によってさらに深められる。‘私、ホロフェルネスの首を切ったのよ、でもそれほど怖くなかったわ’、そうさらっといわれると後ずさりしたくなる。

はじめてお目にかかる作品で収穫がいくつかあった。全作品中最も長くみていたのは‘正義の寓意’、画面に寄ってじっとみると顔の目の下から顎、そして首のところを除いて薄い布が髪の毛から両腕、腰から下まですっぽり包んでいる。この姿がみようによってはすごく艶めかしい。

‘聖カタリナの殉教’はカラヴァッジョに同じ題材の作品があるのでそれを頭に思い浮かべながら処刑の残忍さを目にやきつけた。このカタリナは色白でその顔はハットするほど美形、その美貌に免じて処刑は無しということにしてもらえないだろうか、とついお願いしたくなる。

裸婦がたくさん登場するにぎやかな‘ディアナとアクタイオン’にも思わず足がとまった。裸婦だけでなくまわりには犬や鹿が走り回っている。クラーナハは鹿狩りをよく描いており、ウイーン美術史美でみたことがある。また、6月プラド美でも目を楽しませてくれた。風俗画っぽい作品はお好みだから画面の隅から隅までじっくりみた。

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2016.11.23

すみだ北斎美術館 開館!

Img_0001     

Img     ‘隅田川両岸景色図巻’(1805年)

Img_0002     ‘遊亀図’(部分 1800年)

Img_0003     ‘寒山捨得図’(1826~33年)

すみだ北斎美術館が開館したので、初日に出かけてきた。これまでJR両国駅で降りて江戸東博に向かうのがお決まりのコースだったが、今回は地下鉄大江戸線に乗り両国駅で下車するとちょうど江戸東博の裏側にでてきた。ここから新しくオープンした‘すみだ北斎美術館’までは歩いて10分くらい。美術館はあまり大きくない公園の一角に建っていた。

時間は昼の1時半、建物の外に行列ができていたのでこれは出遅れたかなと思ったが、20分ほどでチケットが買えた。館内は勝手がわからないまま3階で降りて開館記念展のなかに入った。‘第2章’とあったので?という気がしたが、そのまま進むとうわさに聞いていた絵巻が現れた。

100年ぶりに発見されたこの‘隅田川両岸景色図巻’については、今回その情報にはノータッチだったし、北斎にこういう絵巻があったことも知らなかった。どういう経緯でこの美術館におさまったのか詳細はわからないが、とにかく奇跡がおこったことはまちがいない。2014年、再発見された歌麿の肉筆画‘深川の雪’を箱根の岡田美でお目にかかったが、そのときと同じようにワクワクしながらみた。

まずびっくりするのはコンデイションの良さ、発見されたあと修復に時間をかけたのだろうか、これまで北斎のこういう風景画で目を楽しませてくれたのは色がばっちりでている‘絵本隅田川両岸一覧’、これに対して‘景色図巻’は肉筆画で描き方はまったく違う。

目が釘づけになるのは川の水面が鏡のように岸のそばの家々や土手、両岸にかかる橋、そして川に浮かぶ舟のそれぞれの影を映しだしていること。これほど影が描かれている浮世絵はみたことがない。まるで西洋画をみているような感覚。

左端は新吉原でお楽しみの場面、大きな鯛を前にしてくつろぐ二人の男、その隣の部屋では女たちがにぎやかにおしゃべりし座はおおきに盛り上がっている。絵巻の長さは約7m、今日はこの前では大勢の人であふれかえっていただろう。本当にいいものをみた。

版画はお馴染みのものが多いので初見の肉筆のほうを長くみていた。収穫は親子亀、子亀を背中に乗せて小岩をよじ登ろうとする親亀の姿についみとれてしまった。北斎の観察力のすごさがこんな絵にもしっかり表れている。

‘寒山捨得図’は2005年、東博で行われた北斎展に出品されていた。このときは墨田区の所蔵と記されていた。それから11年のときが流れ、これからはこの美術館でちょくちょくお目にかかることができる。めでたい話である。

この記念展‘北斎の帰還’は来年の1月15日まで、作品は前期(11/22~12/18)、後期(12/20~1/15)で多くが入れ替わるので後期も足を運ぶかもしれない。

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2016.11.21

‘禅展’で想定外の池大雅と遭遇!

Img   池大雅の‘五百羅漢図’(重文 部分 1772年頃 京都・萬福寺)

Img_0001    黙庵の‘四眠図’(重文 14世紀中期 前田育徳会)


Img_0002    吉山明兆の‘達磨像’(重文 14世紀後半 東福寺)

東博で11/27(日)まで行われている‘禅展’は日本と中国で描かれた絵画の傑作や見事な中国磁器などがずらっと揃った一級の展覧会。まさに10年に一度クラスの展覧会であることはまちがいない。

禅関連の特別展は2007年にも足利義満六百年御忌記念の‘京都五山 禅の文化展’が同じ東博で実施されている。そのため、今回はこれまでめぐりあわせが悪くみれなかった国宝‘無準師範像’との対面がはたせればOKという気分。こういうときは想定外の作品が目の前に現れるとすごく得した気分になる。

それは池大雅の‘五百羅漢図’と黙庵の‘四眠図’、ともに追っかけリストに入っているもの。‘五百羅漢図’はなかなか展示されず遠い存在だった。前期にも四幅が飾られたようなので惜しいことをした。でも、池大雅お得意のあの人懐っこい丸顔の人物とたくさん会えたからもって瞑すべしといったところ。

‘四眠図’も大収穫の絵、禅展の出品作と同じようなものが並んだ展覧会が‘京都五山’をはじめいくつかあったが、例えば徳川美の‘室町将軍家の至宝を探る’(2008年)、三井記念美の‘東山御物の美’(2014年)、どれにもこの絵はでてこなかった。だから、感慨深くながめていた。

再会した吉山明兆の‘達磨蝦蟇鉄拐’もいい気持ちでみていた。雪舟の達磨さんより正面向きでどーんと描かれた明兆のほうが存在感がある。そして、左右にいる二人のグロテスクな風貌が達磨の存在の大きさをより際立たせている。

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2016.11.20

今、東京で国宝の名碗が三つみれる!

Img      国宝‘玳玻天目’(南宋時代・12世紀 相国寺)

Img_0001   国宝‘油滴天目’(南宋時代・12~13世紀 大阪市立東洋陶磁美)

Img_0002    ‘色絵丸文台皿’(17世紀中期 静嘉堂文庫)

Img_0003     ‘色絵鶴亀甲松竹梅文菊花形大鉢’(18~19世紀)

国宝に指定されている名碗は八つある。やきもの好きな方はすぐ思い浮かぶだろうが、今東京でその三つが展示されている。東博で開催中の‘禅展’に出品されているのが唐物の‘玻玳天目’と‘油滴天目’、展示は残り一週間、11/27までだからみてない人は急いだほうがいい。

もう一碗は静嘉堂文庫の‘漆芸名品展’(12/11まで)に飾られているご存じ‘曜変天目’(南宋時代12~13時代)、こちらは会期終了まででている。で、この一週間に東博と静嘉堂文庫をはしごするとすばらしい茶碗と三つお目にかかれる。もっというと‘禅展’には結構な数のやきものがでており、静嘉堂でもいい茶入や天目が並んでいるので二つの美術館をまわると立派なやきもの展が体験できるといういいめぐり合わせになっている。

さらに、静嘉堂のやきものにはとっておきの情報がある。それは展示室の前のホールのところに飾ってある二つの色絵磁器、モダンすぎる色の組み合わせにハットなる‘色絵丸文台皿’と金襴手様式の鉢では最高の出来栄えの‘色絵鶴亀甲松竹梅文菊花形大鉢’。12/11まで展示されている。

幸運な鑑賞が実現したのはここで2008年に行われた‘岩崎家の古伊万里ー華麗なる色絵磁器の世界’、想像以上に一点々の質が高く、流石、岩崎家のコレクションという感じだった。そのなかで最も魅了されたのがこの二つ。立ち尽くしてみていた。8年ぶりに再会したことを腹の底から喜んでいる。

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2016.11.19

茶入の名品!

Img ‘唐物茄子茶入 付藻茄子’(南宋~元時代・13~14世紀 静嘉堂文庫)

Img_0001 ‘唐物茄子茶入 松本茄子’(南宋~元時代・13~14世紀 静嘉堂文庫)

Img_0002‘唐物肩衝茶入 銘・新田肩衝’(南宋時代・12~13世紀 徳川ミュージアム)

日本美術の展覧会が行われるとき作品が多い場合は会期をいくつかに分けて展示される。以前は出品作を全部目のなかに入れようという気持ちが強く何度も足を運んでいた。ところが、今は絵画にしろやきものなどの工芸にしろ鑑賞済みのものが多くなってきたこともあり、一回で終わらせることが普通になってきた。

一度みた作品が重なってくると図録も毎度々購入する習慣が変わってきた。お気に入りのものが絵葉書にラインナップされていればニンマリして買い込み分厚い図録はパスになる。今は高い愛着度が維持できそうな図録だけを購入することにしている。

静嘉堂文庫で開催中の‘漆芸名品展’では図録があれば買う予定だったが、今回は図録はなくパンフレットタイプのものを300円で販売していた。この美術館は以前からこのスタイルで作品情報を提供しているがこれで十分、手元に過去につくられた図録が5冊もあるので美術館自慢の作品はほぼカバーされている。

ここにある茶入の名品がこの漆芸展にも登場している。やきものの茶入が展示されているのはこの茶入が壊れた個所が漆で見事に修復されたものだから。後期(11/8~12/11)にでている‘唐物茄子茶入 付藻茄子’と前期に飾られた‘唐物茄子茶入 松本茄子’。

これまで数回縁がありその伝来の話がインプットされているので思わず長くみてしまう。なんとあの織田信長、豊臣秀吉、徳川家康が所有していた。‘付藻茄子’と‘松本茄子’が現在、東博の‘禅展’に出品されている‘唐物肩衝茶入 銘・新田肩衝’などとともに災難にあったのは大阪夏の陣(1615)、家康の命をうけて藤重藤元、藤厳父子は大阪城の焼け跡のなかから探し出し漆で繕った。

この卓越した技のおかげで今もこうして目にすることができる。この茶入をみるたびにやきものの名品にまつわる数奇な運命に思いをめぐらせる。

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2016.11.18

日本美術 来年の期待は‘狩野元信展’と‘雪村展’!

Img     狩野元信の‘四季花鳥図屏風’(重文 左隻 白鶴美)

Img_0002     雪村の‘花鳥’(東芸大美)

昨日とりあげた‘インフェルノ’の原作者ダン・ブラウンの次の新作が気になるところだが、売店で購入したパンフレットにその話が載っていた。新作のタイトルは‘Origin’で、北米リリースは2017年9月26日の予定とのこと。日本語訳もすぐ刊行されるだろうからちょうど1年後くらいに読めそう。楽しみがまた増えた。

今年みた日本絵画で収穫のひとつが現在、東博で開催中の‘禅展’に出品された狩野元信の‘四季花鳥図’(重文、京都・大仙院)、はじめて全八幅をみれ‘待てば海路の日和あり’の思いを強くしている。鳥の赤い羽根が目に焼き付いている。いつも言い聞かせているのは‘日本美術の鑑賞は長期戦’ということ。みたい作品に対する熱い思いをずっと心のなかに持ち続けるとミューズが微笑んでくれる。

狩野元信の余韻にひたっているとおもしろいことに嬉しい展覧会情報が入ってきた。サントリー美は来年秋‘狩野元信とその時代’(9/16~11/5)を行うようだ。これは漠然とではあるが期待していた回顧展、まだみていない作品と遭遇することを強く願っているが、白鶴美の至宝‘四季花鳥図屏風’との再会が実現すると申し分ない。10年くらい前?この傑作はサントリー美で披露されたからまたでてくる可能性は十分ある。期待したい。

来春、東芸大美で開催される‘雪村展’(3/28~5/21)も大きな楽しみ。雪村は2002年広島に住んでいたとき山口県美で大きな回顧展がありクルマで駆けつけた。だが、後期だったので前期にでたものを見逃してしまった。残念な思いをずっとひきづっていたが、ようやくその一部をリカバリーできる機会がめぐってきた。東芸大美蔵の‘花鳥’もその一枚、これは確実にみれるだろう。概要をみると相当気合いが入っているようなので期待で胸がふくらむ。

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2016.11.17

待望の映画‘インフェルノ’!

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Img_0002     フィレンツェ ヴェッキオ宮殿の‘五百人広間’

Img_0003     ボッテイチェリの‘地獄の見取り図’

Img_0001      イスタンブール アヤソフィアの‘エンリコ・ダンドロの墓’

先月末から上映されている‘インフェルノ’をみてきた。あのダン・ブラウンのラングドン・シリーズが映画化されるのは3本目、最初の‘ダ・ヴィンチ・コード’と次の‘天使と悪魔’をみているからこの‘インフェルノ’も楽しみにしていた。

小説を読んだのは刊行されてすぐの2013年の12月、それから3年経つのでどんなストーリーだったか思い出すため、午前中に上下2冊をざっとおさらいしておいた。だから、登場する人物のイメージが映画でどうなるかが興味の的。

主人公の宗教象徴学者ロバート・ラングドンはいつものトム・ハンクスが演じている。今年はトム・ハンクスに縁がある。‘ハドソン川の奇跡’で機長役をみて、今度はラングドン。上手い俳優はどんな役でも最高の演技をみせてくれる。

上映時間は2時間とちょうどいい長さ、前2作同様、話はテンポよく進んで行くのでスクリーンに釘づけになる。どんなストーリーか書きたいところだが、これから出かける人の気分を害してもいけないのでふれない。でも、問題ない範囲でガイダンス的な情報を少しばかり。

この映画では人気の観光地が3つでてくる。イタリアのフィレンツェ、ヴェネツィア、そしてトルコのイスタンブール、かつて訪問した所なのでひとつ々のシーンにすっと入っていける。そしてその場所の懐かしい思い出もくっついてよみがえってくる。こういう映画が強く印象づけられるのは寅さんシリーズのようにストーリーだけでなくロケーションでも楽しませてくれるから。

小説と映画がまったく同じではないことはみんな知っている。原作とは違う脚本になっていることが3つくらいあるが、映画の魅力を高めるための工夫がなかなかよくできているな、というのが率直な感想。とくに最後の終わり方は映画のほうが断然いい。みてのお楽しみ!

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2016.11.16

来春、京博で‘海北友松展’!

Img_0001     ‘松竹梅図襖’(重文 16世紀 京都・禅居庵)

Img     ‘網干図屏風’(部分 17世紀 三の丸尚蔵館)

年末までに出かける予定の展覧会はもうごくわずかになってきた。で、関心の的は来年に開催される特別展に移っている。少しずつ情報が増えているが、嬉しい話が飛び込んできた。

京博は来年開館120周年を迎えるそうだ。それを記念する特別展に期待値が高まるものをだしてきた。春が‘海北友松展’(4/11~5/21)で秋が‘国宝展’(10/3~11/26)。海北友松(1533~1615)の回顧展は‘本当にやってくれるの?!流石、われらが京博’という感じ。京博はこれまで狩野永徳展、長谷川等伯展を行ってきたが海北友松も同レベルのものと位置づけている。

海北友松を‘かいほうゆうしょう’とすっと呼べるようになるまでだいぶ時間がかかった。鑑賞した作品は京博であった展覧会にでたものや熱海のMOA,、そして三の丸尚蔵館のコレクション。なかでも京博の通常展に飾られた最大級の‘龍図’が強く印象に残っている。

さて、どんな作品の数々が来春、京都に集結するのだろうか、海外からの里帰りもあるというので楽しみ。京都観光もかねてGWの前に出かけようと思っている。

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2016.11.15

近代日本美術の煌き! 2015年(平成27)

Img_0002     村上隆の‘見返り、来迎図’

Img     中根総子の‘薩摩切子’

Img_0001     北村辰夫の‘菊蒔絵貝桶一式’

美術館へ出かける回数は年に40から50回の間に落ち着いてきており10年くらい前と比べるとかなり減っているのに、1年前どの美術館でどんな展覧会をみたかがすぐには思い出せなくなっている。だが、関心の高かったものはかろうじて記憶が戻ってくる。

昨年の今頃足を運んだのは村上隆(1962~)の‘五百羅漢図展’(森美術館)、ときどきよくできた図録をみて村上隆のもっている創作パワーの大きさに感心させられている。今はどんな作品に取り組んでいるのだろうか、展示室の最後のほうに飾ってあった‘見返り、来迎図’は注記にまだ手を加えていると書かれていたが、もう完成しただろう。この作品のタイトルがおもしろい、菱川師宣の‘見返り美人’をもじって、菩薩さんは後ろを振り返りながら来迎している。

薩摩切子はこれまで数回みる機会があった。感動のはじまりは鹿児島市の尚古集成館を訪問したこと。このときぼかしが幻想的な表情をみせる赤や青のすばらしいカットクラスのとりこになった。そのあと、またチャンスがめぐってきた。2009年、サントリー美で開催された‘まぼろしの薩摩切子’、もう痺れっぱなしだった。

今、薩摩切子は伝統の技が受け継がれ現代的な感覚からもすっと入っていける魅力的な作品が次々と生まれている。その中心的な人物が昭和61年(1986)に薩摩切子を復活させた中根総子。この青の作品は複雑に絡み合う曲線と緻密なカットにより表現された優雅できりっとしまった造形が心を揺すぶる。

昨年の夏、Eテレで紹介された漆芸家北村辰夫(1952~)。腕のいい職人を束ねてつくりあげた‘菊蒔絵貝桶一式’、今は注文したオーストラリアのコレクターのもとにおさまっている。本物をみたかったが、北村の作品の大半は個人コレクターの所蔵だから逆立ちしても無理。こういう作品はコレクターアイテムだから仕方がない。

これで昨年から1年4ヶ月続けてきた‘近代日本美術の煌き!’は終了。楽しんでいただけたでしょうか。

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2016.11.14

近代日本美術の煌き! 2014年(平成26)

Img_2     川瀬忍の‘青磁花入 銘・参星’

Img_0002_2     千住博の‘Rujin’

Img_0001_2     杉本博の‘月下紅白梅図’

神農巌とともに大きな関心を寄せている川瀬忍(1950~)、‘青磁花入 銘・参星’にもぞっこん参っている。花入れ口にある二つの小さくとがったところをみるとついあることを思い出す。それは和菓子職人の技、美味しい和菓子のなかには花びらの模様をこのとがった線のように形どったものがある。ちがう場ながらこなれた技はとても似通った線を生み出している。

また、胴の長い形をみると諏訪湖の北澤美や箱根のポーラ美に飾ってあるガラス作品を連想する。例えばガレのクロッカス形花瓶とかドーム兄弟のダチュラ文花器、やきものがどんどん進化してほかの作品と響きあうような新しい造形が生みだされるのはすばらしいこと。川瀬忍と神農巌はこれからも目が離せない。

千住博(1958~)の個展が2014年シンガポールで開かれ、最新作の屏風‘Rujin’がお披露目された。日曜美術館に出演した千住の話がおもしろい、光琳の‘燕子花屏風’を意識してこの24mもある大作を制作したという。たしかに横に連続して流れる滝の姿は燕子花が同じ形で画面に何度も繰り返されるのとかぶる。

これに対し光琳の‘紅白梅図’に写真で挑んだのが杉本博(1948~)、超高性能のカメラを使って原画を撮影し‘夜の紅白梅図’を生み出した。千葉市であった杉本博展でお目にかかったが、息を吞んでみていた。今、日本美術と正面から向かい合っている杉本の創作活動に期待したい。

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2016.11.13

近代日本美術の煌き! 2013年(平成25)

Img     吉岡徳仁の‘レイオブライト’

Img_0001     中島宏の‘青瓷彫文壺’

Img_0002     川北良造の‘欅造方盛器’

現代アートでクリスタル作品が大きな注目を集めていることはわかっている。でも、そうしたものに接する機会はほとんどない。NYとかパリとかミラノにあるファショナブルな店舗とか富裕層の豪邸に出入りすることができればそうした世界を垣間見れそうだが、それが実現する可能性は限りなくゼロに近い。

人気のアーチスト、吉岡徳仁(とくじん、1967~)の‘レイオブライト’は普段は縁のない宝飾品が並んだ展示空間に紛れ込んだような気にさせてくれる作品。オルセーの新印象ギャラリーに設置されたガラスのベンチといいこの作品といい、吉岡の豊かな造形感覚と創作のアイデアは時代を突き抜けている。また最新作と巡り合いたい。

中島宏(1941~)は今年75歳、15年くらい前から知っている陶芸家であるが、今もあらたな青磁を生み出そうと制作を続けている。彫りによる独特な装飾模様が得意で‘青瓷彫文壺’も凹凸の模様が一つの形で繰り返されるのではなく変容しながら無限に広がるイメージをもっており強く惹きつけられる。

NHKの美術番組で工芸に的を絞った‘美の壺’と‘イッピン’をよくみているが、竹細工や木工品が取り上げられるときはとりわけ夢中になる。木工品の魅力はあの木目の美しさや木のもっている温もりの感覚。木工芸の人間国宝である川北良造(1934~)の‘欅造方盛器’は中央の円形と器の長方形が見事に調和した優品。木目のつくる曲線のおもしろさに目が釘づけになる。

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2016.11.12

お楽しみ満載、静嘉堂文庫美の‘漆芸名品展’!

Img     

Img_0001    ‘羯鼓催花・紅葉賀図蜜陀絵屏風’(重文 17世紀)

Img_0003     国宝‘曜変天目と黒漆塗天目台’(南宋時代・12~13世紀)

Img_0002    尾形光琳の‘住之江蒔絵硯箱’(重文、18世紀)

Img_0004    柴田是真の‘柳流水青海波塗重箱’(19世紀)

最近は世田谷にある静嘉堂文庫や五島美へ出かけるのは2年に一回くらいになってきた。久しぶりに静嘉堂文庫を訪問し、‘漆芸名品展’(10/8~12/11)を楽しんだ。

今回の目的は修理が終わって初公開されるという‘羯鼓催花・紅葉賀図密陀絵屏風’をみること。これまでここへは何度も足を運んでいるが、この密陀絵屏風にはどういうわけか縁がなかった。だから、この企画展の情報が入ってはじめてその存在を知った。

漆絵というと柴田是真の作品くらいしか目が慣れてないので、屏風サイズのものがありしかも重文とくれば是非ともみたくなる。11/8~11/20は二つともみれるというのでこのタイミングで美術館めぐりを調整していた。入館するといきなり目に飛び込んできた。

画面自体が大きいので人物描写がよくつかめる。いやいやこんな漆絵の名品があったのか!という感じ。何が描かれているかはあとで図録をみればわかるので解説文は読まず画面の隅から隅までじっくりみた。色のベースは漆絵特有の茶色系の色、派手さはなく渋い色調、そこに朱が重なりこの2色が人物の顔と足の白を浮き上がらせている。そして、縁飾りの装飾に目をやると螺鈿の貝が光っている。本当に見事な漆絵、一生の思い出になる。

お目当ての作品をみたのであとは帰りのバスの出発時刻をにらみながら定番の国宝‘曜変天目’や光琳の蒔絵、そして根津美であった柴田是真展に出品された‘柳流水青海波塗重箱’をみていた。

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2016.11.11

プラスαが予想以上に多い‘円山応挙展’!

Img_0002     ‘雪中水禽図’(1777年)

Img_0001     ‘老松鸚哥図’(1787年)

Img_0003           ‘雪中残柿猿図’(1774年)

Img     ‘藤花図屏風’(重文 1776年)

足を運び料金を払ってみる展覧会には当然出品作に対する期待値がある。その大きさは過去に同じような回顧展をみていればとびきり大きいものではなくなる。根津美ではじまった‘円山応挙展’(11/3~12/18)は正直なところ、一度大きな回顧展をみたこともありプラスαが少しでもあればという気持ちだった。

ところが、入館してみるとはじめてお目にかかるものが予想外に多く流石、根津美!作品の集め方が違うなと、感心させられた。そのため一度のつもりが後期(11/29~12/18)も見る気になり、200円安くなる‘またどうぞ券’を購入しておいた。

目を楽しませてくれたのは円山応挙(1733~1795)が40代の頃に描いたもの。思わずうなったのが‘雪中水禽図’、雪の積もった松の木に下に鴛鴦、真鴨などが七羽のいる。仔犬がたくさん登場する作品はみたことはあるが水鳥がこれほど多く描かれたのは記憶にない。水のなかに首をつっこんだり、羽をばたばたさせたりして雪の静寂さをこわす小さな喧噪に視線が釘づけになる。

これに対し、鸚哥の絵は羽の赤のインパクトが強烈。応挙の色使いで目に沁みるのはこれまでは孔雀の青だったが、色の力の強さはこの赤が上回る。写生力の話よりカラリスト、応挙のほうがずっと新鮮。若冲の鸚鵡の白ばかりに頭の中を独占されていたが、この鸚哥が割って入りそう。

長澤芦雪には猿の絵が何点もあるが、応挙の猿はみたことある?思いおこすと同じ雪の光景で描かれたものが一枚あるだけ。だから、柿にありつく猿を熱心にみてしまう。構図のとりかたがじつに上手い。

根津美の自慢の応挙は‘藤花図屏風’、たしかにこの藤は心に響く。それは藤の姿がモダンだから。金地に紫の花びらが宝石にようにキラキラ輝いているようにみえ、これはえもいわれず美しい。この藤をみるたびに応挙はスゴイなと思う。

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2016.11.10

一級の日本美術展 ‘禅’!

Img_0002       国宝‘無準師範像’(南宋時代 1238年 東福寺)

Img     狩野元信の‘四季花鳥図’(重文 室町時代 1513年 大仙院)

Img_0003     狩野山楽の‘龍虎図屏風’(重文 17世紀 南禅寺)

Img_0001     長谷川等伯の‘竹林猿猴図屏風’(重文 右隻 16世紀 妙心寺)

現在、東博で開催されている特別展‘禅’(10/18~11/27)をみてきた。事前に入手したチラシでお目当ての作品は後期(11/8~)に集中していたので、はじめからこのタイミングでの出動を決めていた。

今回国宝が数多く出品されているが、国宝ウオッチャーとしては見逃せないものがある。これまでなかなか縁がなかった‘無準師範像’、やっとみれた。歴史上の人物、例えば織田信長が実際どんな顔をしていたのかを永徳が描いた肖像画をみて即納得する人はいない。これに対し、禅僧の場合は頂相や彫刻をみて‘こんな顔だったのか’とその人柄まで思いをはせる。

目の窪みや口、顎髭がじつにリアルにみえる無準師範(ぶじゅんしはん、1178~1249)、この禅僧は東福寺の開山,円爾弁円(1202~1280)が入宋したときの師匠。日本に帰ってきても毎日この肖像画をみて師匠の教えを胸に刻み続けついには悟りを開く。頂相というのは上手くできた師匠と弟子の交流システムである。

ふたつ目の楽しみは大仙院からやって来た狩野元信(1477~1559)の‘四季花鳥図’、過去2度ここを訪問したがいつも二幅しかみれなかった。全八幅がみれたのは大きな収穫。本当によかった。画像は一番の見どころの中央部分、どどっと水の落ちる滝を背景に太い松の幹がS字の形で曲がり、その横には鮮やかな朱色で羽の一部が描かれた鳥のつがいが目を惹く姿で岩の上にとまっている。鳥たちの生き生きとした描写が心に沁みた。

おさらい的な鑑賞となったのは狩野山楽(1559~1635)の‘龍虎図’や長谷川等伯(1539~1610)の‘竹林猿猴図’、山楽の虎は怖さではNo.1、絵に近づきすぎるのは危険。できることなら遠くでみてそっと去るのがいい。一方、等伯の手長猿はすぐイベントにゆるキャラとして出演できる。小猿をあやす母猿のやさしい気持ちが伝わってくるよう。

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2016.11.09

近代日本美術の煌き! 2012年(平成24)

Img     神農巌の‘堆磁線文壺’

Img_0001     福島善三の‘中野月白瓷鉢’

Img_0002     吉田美統の‘釉裏金彩更紗文花器’

日頃の生活のなかで頻繁に気になる芸術作品と出くわしているわけではないが、ときどき大きな喜びをもたらしてくれるものがひょいと姿を現すことがある。まだ2ヶ月残っているので一年の振り返りモードにはちと早いが、今年は音楽で乾杯をあげたくなるいい曲が耳に入った。‘パワーオブラブ’、まさに衝撃度M7クラスの名曲だった。

やきものの世界でこの曲と同じくらいのサプライズを味わったのは神農巌(1957~)の青磁。2年前、東近美の工芸館で開かれた‘青磁のいま’で忽然と現れた。出品された5点いずれも後光がさしているような感じだったが、もっとも惹かれたのが‘堆磁線文壺’。

花の蕾を思わせる壺の器面は微妙な盛り上がりがあり新体操に使われるリボンがひらひらと揺れるようにしなやかな線文をつくりだしている。器全体の造形として完璧な球体が心を打つことはよくあるが、口縁や表面につけられた形がぐさっとくるものはこれまでみたことがない。個展が開かれるときは万難を排して駆けつけたい。

福島善三(1959~)の青磁も個性的で自分の色がしっかりでている。やや白っぽい青の色は端正で品のいい形をなめらかにつつみこんでいる感じ。こういう作品だと部屋の空気が自然と緩む。

古谷で釉裏金彩の技を追求し高く評価されているのが小松出身の吉田美統(みのり 1932~)、金彩という装飾はややもすると志野などと較べて低く見られがちだが、それは鑑賞する側が日本の美意識に肩入れしすぎるからにすぎない。この‘釉裏金彩更紗文花器’は銀ねずみが金彩の更紗文を渋く輝かせている。

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2016.11.08

近代日本美術の煌き! 2011年(平成23)

Img_0001     加藤孝造の‘瀬戸黒茶碗 昇竜’

Img     大澤光民の‘鋳銅鋳ぐるみ花器 地から宙から’(文化庁)

Img_0002     土屋順紀の‘紋紗着物 桃花源’

TVの美術番組でやきものが取り上げられるときはだいたいその制作工程が順を追ってでてくる。これがやきものへの理解を助けてくれる。一時期NHKの‘やきもの紀行’を毎回みていたことがあり、この番組をおかげでやきもののイロハを学んだ。

瀬戸黒の人間国宝に2010年に認定された加藤孝造(1935~)はこの番組で紹介されたひとり、‘瀬戸黒茶碗 昇竜’はなんといって力強い黒の輝きが心に響く。納得のいく黒を出すのはなかなか難しい、窯の温度が1200度になったところで引き出し一気に冷まして黒をつくりだすが、その一瞬のタイミングがうまくいかないと思うような色にならない。瀬戸黒をみるたびにやきものの奥深さを教えられる。

大澤光民(1941~)は鋳物産業で知られる富山県高岡市の出身。鋳金というと重いイメージがあるがこの鋳ぐるみの花器は抽象的なデザインにはっとさせられる作品。タイトルの‘地から宙から’はすっと入っていけるから不思議。高級ホテルのロビーなどに置いてあっっても違和感のない景色になりそう。

志村ふくみに師事した土屋順紀(よしのり 1954~)の‘紋紗着物 桃花源’は植物染料から生み出される透明感のあるやさいい色合いが心をとらえて離さない。この着物は小さいころ見たトンボの羽のイメージ。小柄な女性が着ると似合いそう。

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2016.11.07

近代日本美術の煌き! 2010年(平成22)

Img     十五代沈壽官の‘薩摩蝶乗花瓶’

Img_0001     川瀬忍の‘青磁大鉢’

Img_0002     市野雅彦の‘丹波赤ドベ釆器’

やきものの展覧会は絵画とちがって展示されるのは茶碗など小さなものなのでデパートのように展示スペースが美術館ほど広くなくても、結構な数が並べられる。そのため、名品をたくさん堪能したという思いが強くその感動は長く持続する。

2011年日本橋三越で行われた‘歴代沈壽官展’はぐっとくる白薩摩がずらっと揃ったすばらしいやきもの展だった。そのなかで忘れられないひとつが十五代沈壽官(1959~)の‘薩摩蝶乗花瓶’、十五代は1999年、司馬遼太郎の作品にも登場する十四代のあとを継いで沈壽官を襲名した。

父親同様、陶工としての才能はとても高く魅力に富む作品を多く生み出している。この花瓶は蝶々が器にとまるという意表をつく発想が目を釘付けにする。象牙のようにやわらかい白とそれをひきたてる首と底に施された精緻な文様、ずっとみていたい一品。

川瀬忍(1950~)は今関心を寄せている青磁の名手、2011年にホテルオークラの横にある智美で個展があったが、迂闊にも見逃した。だが、運よく2年前東近美の工芸館で開催された‘青磁のいま’にめぐり合い、独創的なフォルムが目を惹く大鉢を楽しむことができた。現代感覚にあう青磁の美しさに出会ったという感じ。

市野雅彦(1961~)は兵庫県篠山市在住の丹波焼の作家、今年55歳。丹波焼のいいものが日本民藝館にあるが、この緋色とユニークな造形が印象的な‘丹波赤ドベ釆器’も強い磁力を放っている。やきものの器というよりの刺激的なオブジェをみているよう。ふくらみのある曲線はあたたかさとともにシャープさもかねそなえている。

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2016.11.06

近代日本美術の煌き! 2009年(平成21)

Img_0001     森本草介の‘休日’(ホキ美)

Img     平子真理の‘お猿でござる’

Img_0002     天野裕夫の‘手工神’

10年前、新橋にある‘東京美術倶楽部’で創立百周年を記念したビッグな展覧会があり、雪舟の国宝の絵画ややきものの名品などがどどっと展示された。美術品のコレクターではないので普段は縁のないところだったが、この展覧会がきっかけとなりここで開催されるアートフェアを2006、07年と2回続けてみた。

森本草介(1937~2015)の女性画が1点づつでており、画面に吸い込まれるようにみていた。森本の絵には高い値段がついていることは知っていたので、会場にいた画商に2006年の作品の落札額を聞いてみた。すると、‘昨年は2700万円でした。今年もそれくらいするのでは’といわれた、図録が古本屋で高く売れるはずである。ホキ美にある‘休日’で視線が向かうのは木のテーブルと椅子の質感描写と髪や白い肌の描き方。こういう絵に嵌った愛好家は欲しくてたまらなくなるにちがいない。

日本画家の平子真理(1962~)は猿の絵が得意、‘アートフェア東京’でみた‘お猿でござる’は一目みたとたん魅せられたので橋本関雪の猿同様、My‘好きな動物画’に登録している。このアートフェアも2回足を運んだだけで今はとんとご無沙汰しているが、来年は寄ってみたい。

彫刻家の天野裕夫(1954~)のブロンズ作品‘手工神’はその異様な形に一瞬体がフリーズした。手と顔が合体した世にも奇妙な神様、記憶に強く刻まれる口を大きく開けた驚きの表情と角のようにも逆立った髪の毛のようにもみえる五本の指、とにかくこの作品は忘れられない。

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2016.11.05

近代日本美術の煌き! 2008年(平成20)

Img_0001     絹谷幸二の‘蒼天の相馬野馬追’

Img_0003     岩澤重夫の‘天水’

Img     榎俊幸の‘翼竜図屏風’

年間を通してみてよく出かける美術館は国立新美と東京都美、そして東博。最近は一年に40回から50回くらいしかみてないのでひとつ々の展覧会の印象が強い。そのため、訪問の回数が多い美術館に対する愛着度が自然と深まっていく。

国立新美と東京都部の場合、お目当ての展覧会の横でいろいろな企画展が開かれている。例えば、2ヶ月くらい前院展に遭遇した。また書道などもある。こうしたところに飾られている作品をお金を払ってみる気にまだなっていないが、来年あたりはふらっと入るかもしれない。

その理由は贔屓の絹谷幸二(1943~)の新作がこういう機会にみれるのではないかという期待があるから。そして、才能のある若手の画家による新しい表現スタイルの作品に出くわすことも十分考えられる。どの展覧会が刺激に満ちているのか少し調べる必要はあるが、日本橋高島屋で開かれた絹谷幸二展に出品された‘蒼天の相馬野馬追’をみて感動したことが洋画の展覧会でもおきると楽しくなるのだが。

岩澤重夫(1924~2009)の‘天水’は亡くなる1年前の作品で第40回日展に出品された。風景画で心酔している東山魁夷の‘青’や奥田元宋の‘赤’の作品のようにこの滝の絵の‘緑’にも強く惹きつけられる。これほど長い滝が実際にあるわけではないが、山奥に深く入っていくとこういう神秘的な光景がみれるのではないかとつい思ってしまう。

榎俊幸(1961~)の怪獣絵画‘翼竜図屏風’はぞくっとするほどの怖さがある。大きく口をあけ威嚇する姿はゴジラやTレックスのパワーにひけをとらない。異色の竜が屏風におさまると‘竜虎図’もかすんでしまいそうな感じ。

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2016.11.04

近代日本美術の煌き! 2007年(平成19)

Img_0003     森本草介の‘初秋の川辺’

Img_0002     奥谷博の‘歓喜の極’

Img_0001     志賀暁吉の‘青瓷壺’

Img     北村辰夫の‘更紗蒔絵十字架’(金沢21世紀美)

海外に出かけて名のある美術館を訪問することがわが家の大きな楽しみになっているが、国内にある美術館も同様に関心を寄せている。そのひとつが千葉市にあるホキ美、ここは写実絵画のコレクションで有名らしいのだが2年前、森本草介(1937~2015)の作品が33点、日本橋三越で披露された。

このとき図録はつくられず、販売されていたのはホキ美の図録。以前神田の古本屋で過去にあった森本草介展でつくられた図録をみつけたが、3万円くらいの値段がついていた。だから、森本草介に限ってはその図録は通常の展覧会の図録のように2500円くらいでは買えないようになっている。

フランスのブルゴーニュ地方の風景をお馴染みのセピアトーンで描いた‘初秋の川辺’は木々が映りこむ川の水面の描写に目が点になる。写真でこういう風景をみてもそれほど感激しないが、絵になると写真とはちがう絵画の魅力をつくづく感じてしまう。

奥谷博(1934~)は森本草介、絹谷幸二とともに洋画界のビッグネーム、ところがまだ回顧展に縁がない。そのため、これまでお目にかかったのはほんの作品でその画業全体がみえてない。この2羽の鷹、鷲?が海面から垂直に飛び上がっていく‘歓喜の極’はどこでみたのか忘れたが強く印象に残っている。

‘日本陶芸展’という実力勝負のやきもの展が毎日新聞の主催で2年に一回開かれている。2007年、19回目のとき大賞・桂宮賜杯に輝いたのが若干30歳の志賀暁吉(1977~)が制作した‘青瓷壺’、形といい青磁らしい色といい惚れ惚れするような見事な青磁。それから9年経ち40歳ちかくになった志賀は現在はどんな作品をうみだしているのだろうか。

北村辰夫(1952~)は海外のコレクターから高く評価されている漆芸家。昨年8月ETVで放送された美術番組でその超絶技巧を目の当たりにした。こういうすごい作家というのはコレクターの目にはとまってもメディアに登場しないので一般の美術ファンにはまったく縁のない存在、本物の‘更紗蒔絵十字架’を一度みてみたい。

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2016.11.03

カブス 108年ぶりにワールドシリーズを制覇!

Img   インディアンスを下しワールドチャンピオンに輝いたシカゴ・カブス

ワールドシリーズ第7戦はシカゴ・カブスがインデイアンスを8-7で下し108年ぶりにワールドチャンピオンになった。拍手々!今日の試合は前半からずっとカブスがリードし、6回を終わったところで6-3と3点の差をつけた。打線が調子が良くまだ追加点もありそうだったのでホームでの一戦とはいえインディアンスは敗色濃厚だった。

ところが、160キロを常時投げるチャップマンから8回デービスが2点ホームランを放ちインデイアンスは試合を振り出しに戻した。だが、ここまでが精いっぱいだった。いつものスピードが出ないチャップマンを9回裏攻略できなかったのが痛かった。こういう逆転できず、追いつくだけのときは最後は敗ける。雨で一時中断したあと延長に入った10回の表カブスはゾブリストがレフトに決勝打を放ち決着をつけた。

今年のWシリーズは終わってみればレギュラーシーズンで高い勝率をあげたカブスが大方の予想通り頂点に立った。ヤギの呪いが108年かかってとけ世界一の栄冠を手にした。今頃シカゴの街は大騒ぎだろう。

ふだんの大リーグ中継でカブスの試合はイチローのいるマーリンズと戦うときだけなので、選手の8割は知らない。今回7試合みたのでどの選手がすごいかがよくわかった。とくに印象に残ったのは打者では三塁を守るブライアントとファーストのリゾ、この主軸の2人とMVPをとったつなぐ4番のゾブリスト、投手では昨年のサイヤング賞を獲得したアリエッタとクローザーのチャップマン。

2年目の指揮をとる名将マドン監督のもと投打に優れた力を発揮したカブス、若手とベテランの連携がとても上手くいき最強のチームに進化した。この強さはしばらく続きそう。もし来年オフ大谷がアメリカに移籍することになったら獲得に動くはず。そうなるとカブスへの関心はぐっと高まる。大谷のカブス入りも悪くないが、果たしてどうなるか。

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2016.11.02

近代日本美術の煌き! 2006年(平成18)

Img     千住博の‘松風荘襖絵’(部分)

Img_0001     鈴木蔵の‘志埜茶盌’(菊池寛実記念 智美)

Img_0002    田口善明の‘鯉蒔絵飾箱’(東近美)

現役の日本画家で回顧展があったらすぐ駆けつけようと思っているにはほんの数人。そのひとりがNY在住の千住博(1958~)、TVの美術番組ではときどき見かけるが遭遇した回顧展はまだ一回しかない。ちょうど10年前山種美でアメリカのフィラデルフィアにある‘松風荘’という書院造の日本建築に飾られる襖絵が公開された。

この書院造は以前は東山魁夷の作品が飾られていたが損傷したため新たに千住が20面制作することになった。モチーフは千住の代名詞となっている‘ウォーターフォール’、日本人にとって滝というのは神を感じさせる自然の一部だから、こういう襖全体を使って表現された滝の光景は特別感激する。東近美で最新作を含めた千住展が開かれることをひそかに願っているが、実現するだろうか。

やきもののなかで人気の高い‘志野’、鈴木蔵(おさむ、1934~)は1994年荒川豊蔵に次いで二人目の‘志野’の人間国宝に認定された。今年82歳。運よくホテルオークラのすぐ側にある智美で行われた回顧展(2010年)とめぐり合い、たっぷりとした乳白色の志野釉を腹の底から楽しんだ。まさに志野の名人。

田口善明(1958~)の蒔絵作品には鯉や金魚、エビといったモチーフがなどがドーンと登場する。この大きく描かれた鯉はインパクトが強く、前衛舞踊の舞台美術に使われたらダンサーのパフォーマンスを引き立てそうなイメージがある。こんなキャラの濃い蒔絵はなかなかみられない。

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2016.11.01

近代日本美術の煌き! 2005年(平成17)

Img_0002    村上豊の‘絵本 義経ものがたり 平敦盛’(講談社野間記念館)

Img_0001     原田泰治の‘山古志の春’

Img     丸山直文の‘path3’

源頼朝や義経を描いた画家というとすぐ安田靫彦を思い出すが、村上豊(1936~)も義経ものがたりを絵本にしている。数ある美術本のなかで絵本はごくわずか2冊、でも2006年に出版されたこの絵本はとても大事にしている。

そのなかで大変カッコよく描かれているのが若武者、平敦盛(たいらのあつもり 清盛の甥)、一の谷が義経の奇襲により陥落したため海から舟へ逃げようとしていた敦盛に源氏の武将、熊谷真実(くまがいなおざね)は‘敵に後ろをみせるのは卑怯だぞ、戻れ!’と叫ぶと敦盛は引き返してきた。だが、敦盛はまだ17歳、百戦錬磨の直実に勝てるわけがない。直実は自分の子どもと同じ年頃の若武者を助けてやろうとするが、すぐ味方の軍勢がやって来た。

直実は心根のやさしい男で‘どうせ討たれるのなら私が討って死後の供養をしてあげよう’と敦盛にいい首を刎ねる。そして、武装を解くと腰に錦の袋に入れた笛をさしていた。直実はハタと気づく。夜明けに敵陣から笛の音が聞こえてきたが、あの笛を吹いていたのはこの若武者だったのか!と

2004年10月、新潟県中越地震が起き錦鯉で有名な山古志村も大きな被害を受けた。原田泰治(1940~)の‘山古志の春’はこんな大地震が起こるとは思ってもみなかった2001年頃ののどかな村の光景を描いたもの。復興を願う泰治の気持ちがこめられている。

丸山直文(1964~)の‘path3’はアメリカの抽象表現主義の影響を強く受けた作品、にじみやぼかしの入った水面とまわりの地面にリズミカルにのびる曲線の道、その上を一人の男が元気よく走っている。水に映るこの人物と所々に立つ木が強く印象に残る。

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