« 夜の情景 傑作4選! | トップページ | 興味津々のラ・トゥール再発見物語! »

2016.06.28

赤の画家 ラ・トゥール!

Img_0001     ‘妻に嘲笑されるヨブ’(17世紀 エピナル 古代・現代美)

Img_0002     ‘生誕’(17世紀 レンス市美)

Img     ‘金の支払い’(1624年 ウクライナ リヴフ美)

Img_0004  ‘荒野の洗礼者聖ヨハネ’(1650年 ヴィック ラ・トゥール美)

お気に入りの画家の回顧展を2回体験することを理想としているが、カラヴァッジョに続いてラ・トゥールもこれが実現した。ラ・トゥールに開眼するきっかけとなったのが2005年に西洋美であったラ・トゥール展、それから10年たちまた大きな回顧展に遭遇するとは今年のはじめころは夢にも思わなかった。日本であったカラヴァッジョ展へ3度も足を運んだから連鎖反応が起こったのかもしれない。

2005年のとき出品された作品が今回の31点のなかに11点含まれている。‘金の支払い’や‘荒野の洗礼者聖ヨハネ’もその一枚。‘金の支払い’は光源の違いはあるもののカラヴァッジョの‘聖マタイの召命’を連想させる画面構成が特徴。ろうそく1本の光が人物の表情を照らすのは‘マグダラのマリア’や‘大工の聖ヨセフ’と同じだが、深い闇の世界という感じではなく画面全体に弱い光がいきわたっており、明暗表現をきかせたカラヴァッジョ風の風俗画としてじっくり楽しめる。

‘荒野の洗礼者聖ヨハネ’は髪の描き方だけをみると女性と見間違える。シャンプーのCMでモデルがしなやかな髪をストップモーション的にふりみだすシーンをすぐ思い出す。これまで髪の表現で最も目が点になったのはダ・ヴィンチとこのラ・トゥール。尋常な筆さばきではとてもこんな風には描けない。ラ・トゥールは本当にスゴイ画家。

ラ・トゥールの描く聖人でも女性でも着ている衣装の色は圧倒的に赤が多い。その赤とろうそくの光がとびっきり美しく融合しているが2点あった。立ち尽くしてみた‘妻に嘲笑されるヨブ’と‘生誕’、画集ではよくみていたが本物にこれほど心を奪われるとは。

外からやってく光とちがってろうそくの光は放射状に周囲を照らすので闇のなかにあって光を中心にして緊密な空間がうまれる。ろうそくの炎に反射する赤にも大きな効果がある。赤い衣装によって人物の存在がぐっと高まり、ヨブの妻やキリストの誕生を祝福する聖母マリアの精神性を浮き彫りにする。一生忘れられない絵になりそう。

|

« 夜の情景 傑作4選! | トップページ | 興味津々のラ・トゥール再発見物語! »

コメント

『生誕』は、シンプルでありながらラ・トゥール絵画の神髄が凝縮していますね。ロウソクの光の中の明暗表現、際立つ赤色、単純化された人物の形態、静謐な雰囲気。実見したことはないのですが、ネットや画集で眺めては感嘆していました。

『妻に嘲笑されるヨブ』も同様ですが、ロウソクの火にかざされ、透けて見える手の表現だけでも見入ってしまいます。

なお同系統の作品、東京富士美術館の『煙草を吸う男』が国立西洋美術館のカラヴァッジョ展に出ていましたね。

今回のラ・トゥール展の図録の巻末に真作リストのようなものがあるのでしょうか。富士美術館の作品は息子エティエンヌの手が入っているとも言われていますが、真作リストからは外されているのか興味があります。

投稿: ケンスケ | 2016.06.29 22:26

to ケンスケさん
‘生誕’は傑作です。赤ちゃんが生まれたばかりという
感じがすごくでています。

‘ヨブの妻’は光の輝きが‘ゆれる炎のあるマグダラ
のマリア’と双璧をなしていて、すごいインパクトが
ありました。

図録に真作のラインナップはでていません。富士美
の作品は今回出品された‘火をおこす少女’のコメント
のなかに参照作品として出てきましたが、真作扱い
です。

投稿: いづつや | 2016.06.30 01:26

『生誕』は傑作ですが、ニスが劣化して黄色くなりすぎていると思います。
そのため、プラドでじっとみているとなにか霞を通してみているような隔靴掻痒の感じがありました、。
クリーニングするだけでもだいぶ印象が変わるかもしれません。

投稿: 山科 | 2016.09.24 20:11

to 山科さん
‘生誕’に魅了されました。赤ちゃんの顔があまり
にリアルだったのでそれに見入ってました。ニス
の劣化がとりのぞかれるともっと感動しますね。

投稿: いづつや | 2016.09.25 01:43

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/65878/63842230

この記事へのトラックバック一覧です: 赤の画家 ラ・トゥール!:

« 夜の情景 傑作4選! | トップページ | 興味津々のラ・トゥール再発見物語! »