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2016.06.29

興味津々のラ・トゥール再発見物語!

Img_0004 ラ・トゥールが活躍したロレーヌ地方(拡大で 2005年回顧展の図録より)

Img_0002     ‘枢機卿帽のある聖ヒエロニムス’(17世紀 ストックホルム国立美)

Img     ‘リボンをつけたヴィエル弾き’(17世紀 プラド美)

Img_0001     ‘ランプをともす少年’(1640年 ディジョン美)

美術品とのつきあいが長くなると、作品が誰の手によってつくられたのかにはじまってその作家がどんな創作活動を生涯に行ったかを大雑把でも知りたくなる。ラ・トゥールのついては今回の回顧展で有名な作品はほぼ目に入ったので、‘ラ・トゥール物語’をしっかり頭に定着させようと画集や図録を今熱心に読んでいる。

ラ・トゥールが生まれた町はフランスのどのあたりにあるのか、2005年西洋美で開催された回顧展の図録にわかりやすい地図が載っている。フランス北西部のロレーヌ地方は1600年の頃はロレーヌ公国がおさめていた。ここの小さな町、ヴィック=ジュル=セイユでラ・トゥールは1593年に生まれた。父親はパン職人。

ヴィックの西に少し行ったところが一度訪ねてみたいと思っているナンシー、ここが公国の中心都市、そして同じくらいの距離を南に下るとラ・トゥールが画家人生の大半を過ごしたリュネヴィルがある。27歳のころ故郷を離れてリュネヴィルへ移ったのは結婚した妻の実家がこの街にあったから。

ラ・トゥールが生きた時代は大変だった。1618年には30年年戦争がはじまり、その影響がロレーヌにも押し寄せ1631年にはフランス軍の侵攻を許し、やがてフランスの属国になってしまう。そんな混乱のなかラ・トゥールは優れた絵の腕前が認められルイ13世付きの宮廷画家に出世する。工房には多くの弟子をかかえ貴族たちの注文をこたえていった。ラ・トゥールは生涯に400点以上描いたといわれているが現在残っているのは40点くらい。

ラ・トゥールが亡くなったのは1652年、享年59。死後工房は息子が跡をついでいたが、その息子が1692年になくなった以降はラ・トゥールの名前は急速に消えていく。200年以上忘れられていたラ・トウールが再発見されたのは第一次世界大戦中の1915年、ドイツ人美術史家のヘルマン・フォスがそれまでほかの画家の作品とみられていた4点がロレーヌにいた‘夜の情景’を得意とするラ・トゥールという画家の作品であることを発表した。これがラ・トゥール復活のはじまり。

そして、フォスは1931年に2度目の発見をする。今度は昼の光で描いた‘昼の情景’、それがルーヴルにある‘ダイヤのエースを持ついかさま師’、‘ヴィエル弾き’(ナント市美)、最初にあげた画像の‘枢機卿帽の聖ヒエロニムス’、‘光輪のある聖ヒエロニムス’(グルノーブル市美)の4点(いずれも今回の回顧展に出品)。これでラ・トゥールの画業全体がだいぶわかってきた。

その後も地方都市などで作品の発見が相次ぎ、ラ・トゥール人気はどんどん上がっていった。プラドにある‘リボンをつけたヴィエル弾き’は1986年にロンドンで発見された。プラドにはこの絵に加え‘手紙を読む聖ヒエロニムス’も所蔵している。流石、ブランド美、いいもの手に入れる。

2005年日本にもやって来た‘ランプをともす少年’に大変魅了されている。不思議なことにこの絵が描かれた70年くらい前にエル・グレコも息を吹きかけて炭の火を大きくしようとしている少年を描いている。その絵を重ね合わせながらほっぺをふくらます男の子をじっとみていた。

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コメント

ラ・トゥールは、本当にドラマチックな復活をしましたね! 作品が発見されるたびに画家の理解が深まっていったことは、私も本で興味深く読みました。

技術的に円熟している『リボンをつけたヴィエル弾き』は、バブル期に日本の石塚氏という人のコレクションにあったそうですね。

この作品がスペインに渡っても、日本には今、国立西洋美術館の『聖トマス』と東京富士美術館の『煙草を吸う男』の2点があるので、希少価値からいって世界に誇れることだと思います。

『ランプをともす少年』は、地味で何気ない情景なのに魅力に溢れています! 何か魔法のように見る人を引きつけるものを、画家は持っているのではないでしょうか。

プラドの『手紙を読む聖ヒエロニムス』以降、新たにラ・トゥール作品は見つかっていませんが、もしまた発見されたら美術界の大ニュースになりますね。期待したいです!

投稿: ケンスケ | 2016.06.30 20:45

to ケンスケさん
ラ・トウールの話はおもしろいですね。1960年
にメトロポリタンが‘女占い師’を購入したことで
フランスで大騒ぎになったこととか、ルーヴルが
フランスの威信をかけて‘聖トマス’を購入するため
募金を募ったとか、

アメリカのコレクターもしっかりラ・トウールを手に
いれてますね、ワシントンナショナルギャラリー、
ロサンゼルス郡美、キンベル美、クリーブランド美、
クライスラー美、デトロイト美、

日本も2点あるのですからおっしゃるようにたいした
ものですね。

投稿: いづつや | 2016.07.01 00:00

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