エドガールズ 美女くらべ!
絵画の楽しみのひとつが女性画、西洋画でこれを得意としたのがルノワール、日本画の場合、明治以降人々の目を楽しませたのは上村松園、鏑木清方、そして伊東深水。
この3人は当然、江戸時代の浮世絵美人画を強く意識している。この美人画で江戸っ子たちを浮き浮きさせたのはまず最初が菱川師宣の見返り美人画、そして次に登場するのは女の子がそのまま大人になったように描いた鈴木春信、ところが時代は女らしい女を求めるようになる。それに応えたのがとびっきりの美人を肉筆画で輝かせた勝川春章。
では版画で美人画の世界を極めたのは誰かというと女性を長身にして描いた鳥居清長と大首絵の美人画で一世を風靡した喜多川歌麿。女性を描いた作品をみることが無類に好きだから、ここまではすっとでてくる。だが、この後は美人画への興味はがくんと落ちる。
そのため、歌川国芳(1797~1861)と歌川国貞(1786~1864)の描く女性を前のめりになってみることは正直いってない。でも、みんな足がとまらないわけではない。国芳では‘当世商人日斗計’シリーズについニヤニヤしてしまう。
‘日五つ時’に描かれているのは女性の朝方におけるルーチン、房楊枝で歯をみがく場面。こういう素のままの姿に意外と隠された魅力がひそんでいる。‘日九時’は正午、猫を愛した国芳は女が足で猫をさわって遊んでいるところをまったりと描いている。国芳自身がいつも手や足で猫とじゃれあっていたにちがいない。
国貞の女で今回長くみていたのは外で激しい雨に遭遇しずぶぬれになって家に戻って来た女、さしていた傘はぼろぼろに破れ、着物はびしょびしょ、こういう経験は日常よくあることだから、絵のなかにすっと入っていける。
‘美人八景 晴嵐’もなかなかいい。強い風が吹き、手ぬぐいをとばされないよう口で必死にくわえている女の表情がじつにリアル。
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コメント
テレビ、インターネット、映画などがなかった時代に、国貞、国芳は他の浮世絵師以上にエンタメ感覚で作品を作っていたように思います。
猫を踏みつけている情景など、思わず笑ってしまいます。着物から雨水を絞っているところも生活に密着していて、ほほえましいです。
女性そのものの描き方の巧みさでは、国貞も国芳もおっしゃるようにとりわけ傑出していないと思いますが、楽しませてくれるという点では際立った存在ではないでしょうか。
投稿: ケンスケ | 2016.04.07 21:00
to ケンスケさん
国芳や国貞の女の絵で何気ない日常の一コマを描い
たものは気負いがないのがいいですね。
国芳には西瓜を食べているところや猫とじゃれ合って
いるものがあったり、国貞にも雷が落ちると蚊帳の
なかに逃げ込む様子とか、今でも身近なことがよく
でてきます。まさに浮世の絵ですね。
日本の絵でも西洋画でも風俗画に大変魅せられてい
ますが、その原点が浮世絵です。国貞も国芳も画面
のなかに大勢の人を登場させ、当時の光景をライブ
感覚でみせてくれます。
ここには洛中洛外図がみせる京都のにぎやかさとは
違った町人職人たちの心をワクワクさせるエンター
テイメントが満ち溢れていますね。
投稿: いづつや | 2016.04.07 21:52