カラヴァッジョ VS ラ・トゥール! いかさま
カラヴァッジョの‘いかさま師’(1595年 フォートワース キンベル美)
カラヴァッジョの‘女占い師’(1599年 パリ ルーヴル美)
ラ・トゥールの‘女占い師’(1632~35年 メトロポリタン美)
ラ・トゥールの‘ダイヤのエースを持ついかさま師’(1620年代 ルーヴル美)
ルネサンス以降に描かれた古典絵画で深く心を奪われている画家が5人いる。カラヴァッジョ(1571~1610)、ラ・トゥール(1593~1652)、ベラスケス(1599~1660)、レンブラント(1606~1669)、フェルメール(1632~1675)。
好きな画家の場合、みたい作品はすぐでてくる。そして、画家同士が画風やモチーフの点でおおいにコラボしていることに気がつく。今、西洋美で回顧展が開催されているカラヴァッジョとフランスのラ・トゥールがどんなに響きあっているかをみてみた。
昨年12月に訪問したNYのメトロポリタン美でラ・トゥールの‘女占い師’を久しぶりにみた。目に焼きつくのが占い師の老婆の顔とその横で若い男性の装身具に手をかけている女の緊張した表情、なんだか芝居の一場面をみているよう。
この傑作をラ・トゥールが描き上げたのはカラヴァッジョの‘いかさま師’や‘女占い師’をみたから。着飾った若い男はトランプや占いに心が寄っているから、いかさまをされたり大事なものを盗まれそうになっていることに気づかない。だまされる者とだます者の心根の違いをかくもリアルに表現するカラヴァッジョ、その迫真の写実力はまったくスゴイ。
ラ・トゥールにはもうひとつすばらしい絵がある。2005年、西洋美で行われたラ・トゥール展に出品されたルーヴル美蔵の‘ダイヤのエースを持ついかさま師’、この回顧展は日本の展覧会史のなかでは‘大事件’といえるほど充実した内容だった。そのなかで圧倒的な存在感をみせていたのがこの絵の右から二人目の娼婦、合図を送るように右に寄せた視線が忘れられない。
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コメント
アメリカのテキサス州に5年ほど住んでいたのですが、キンベル美術館を一度訪れ、カラヴァッジョの『いかさま師』を見たことを懐かしく、思い出しました。行方不明になっていたのが再発見された作品だと本で読んでいたのですが、実作品を見た時、鮮やかな色に感嘆しました。
キンベルには、ラ・トゥールの『クラブのエースを持ついかさま師』もあり(ルーヴルの作品は『ダイヤのエース』ですね)、カラヴァッジョとラ・トゥールの同主題の作品が比べて見られるという贅沢を味わいました。
ラ・トゥールの『クラブのエースを持ついかさま師』は、ルーヴルの『ダイヤを持ついかさま師』とともにプラドのラ・トゥール展に出ているそうなので、いづつやさんはご覧になれますね!
投稿: ケンスケ | 2016.03.15 21:07
to ケンスケさん
ルーヴルのは‘ダイヤ’でしたね、うっかりミスを
訂正していただきありがとうございます。
テキサス州に5年おられましたか!キンベル美に
はカラヴァッジョとラ・トゥールのすばらしい2点
がありますね。じつはローマのカラヴァッジョ展
へ出かけたのはここの‘いかさま師’が出品された
からです。カモにされている男の顔の見事な質感
描写が今も目にやきついています。
そして、ラ・トゥールの‘クラブのエース’、これが
プラドの回顧展にでていますか!嬉しいですね。
これは大変なことになりそうです。
投稿: いづつや | 2016.03.16 00:18