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2016.03.02

圧巻のカラヴァッジョ展!

Img_0001     ‘エマオの晩餐’(1606年 ミラノ ブレラ美)

Img_0003 ‘エッケ・ホモ’(1605年 ジェノヴァ ストラーダ・ヌオーヴァ美)


Img     ‘法悦のマグダラのマリア’(1606年)

Img_0002     ‘バッカス’(1597~98年 フィレンツェ ウフィツィ美)

上野の西洋美ではじまった‘カラヴァッジョ展’(3/1~6/12)を早速みてきた。生涯の思い出となる大回顧展をローマをみたのが2010年、そして日本でまたあのカラヴァッジョがみれるというのだからたまらない。

今回のカラヴァッジョはすべてイタリアにあるもの、全部で11点。ほかにも力のこもったカラヴァジェスキたちの作品がいくつも結集している。東京都美ではルネサンスの華、ボッティチェリの傑作が並び、すぐ近くの西洋美では圧巻のカラヴァッジョ展、3月に入り上野は一気に芸術のホットゾーンになってきた。

カラヴァッジョ(1571~1610)は‘エマオの晩餐’を2点描いており、ミラノのブレラ美からやって来たのは2作目のもの。お目にかかるのは3度目だが大変気に入っている。ここに登場するキリストは映画俳優なみのイケメン、このモデルの選び方が人々におおいにうけたにちがいない。対照的にキリストをとりかこんでいるのはどこにでもいるような人たち、印象深いのが画面右にいる3人の男と女の額の皺。

そして、心を静めてみているとこの絵のすごさがわかってくる。左からさしこむ光が顔にあたる明るさはキリストが一番強く立っている男と女では少しずつ弱くなっている。描かれている場面は宗教画のおなじみのテーマではあるが、ここにいるのは町に住んでいる普通の人間だから風俗画感覚でみてしまう。これこそがカラヴァッジョ絵画の一番の魅力。

期待の高かった‘エッケ・ホモ(この人を見よ)’、大満足! このキリストは優しそうな若者、こういう仕事はそこそこやるのに自己主張の少ない人物は会社にはよくいる。だから、右のひげをはやした年配の男がこちらにむかっていっていることは想像できる。‘この男、いまひとつ弱いんだよね。もっと自分をださなきゃわかんないよね’とかなんとか。

収穫はもう一点あった。‘法悦のマグダラのマリア’、2002年岡崎美でみたカラヴァッジョ展にこの絵の別ヴァージョンが出品された。見た瞬間体がフリーズしたが、今回でている作品はさらにいい。マグダラのマリアのもつ神秘性と官能性をこれほどリアルに表現するカラヴァッジョの描写力、200%圧倒された。

ウフィツイ美からお出ましいただいた‘バッカス’、気になっていたワインのフラスコに描かれているというカラヴァッジョの顔、じっくりみたがまたダメだった。ところが、家に帰って先日載せた大回顧展の図録をじっとみていたらふとわかった! 右下の白くなっている部分と影のところの境目あたりに少し横向きの小さな顔がみえる。もう一度でかけて確かめるつもり。

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コメント

こんばんは。
私は二日連続でカラヴァッジョ展に行ってきました。
昨日の話で恐縮ですが、ワインのフラスコではなくて、ワインのフラスコの影(右斜め45度に伸びる影です。)を、顔を右に傾けて見たところ、人の目と鼻と口のような輪郭が見えたのですが、それではないのでしょうか。
勘違いしていたら、すみません。

晩年の様式の特徴が勢いのある粗い筆致と、闇の深さにあると芸術新潮に書いてありましたが、「マグダラのマリア」も人筆で白い衣のひだが描かれていたり、深い精神性に迫るとんでない画家だとわかりました。
「ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展」以来の記憶に残る第展覧会だと思いました。

いづつやさんの記事を拝見して、興味深く見ることができてよかったです。ありがとうございます。
全部の絵の配置を覚えるくらいまで通いつめたいと思います。(笑)

投稿: 上野東京ライン | 2016.03.03 00:53

to 上野東京ラインさん
カラヴァッジョが帰属のものもふくめて12点
あるのですからまったくスゴイ回顧展ですね。
ローマのときは24点、そこで出品された4点
‘エマオの晩餐’、‘バッカス’、‘果物籠をもつ
少年’、‘洗礼者ヨハネ’がまたみれるのですから
たまりません。

バッカスのカラバッジョの顔、やっとわかりました。
ご参考にバッカスのみどころをもうひとつ、バッカ
スの頭に飾りつけられている葡萄の葉っぱ、ちょう
ど真ん中の葡萄のすぐ上のところ、緑の葉っぱ
(左右の黄色の葉っぱに挟まれた)ですが、ここを
よくみてください、カラヴァッジョお得意の水滴が
描かれています。この表現がすごいです。

もしみられていたらいいのですが、図録の拡大図
でもなんとかわかるのですがなにぶん小さいです
から単眼鏡を使うと確実にとらえられます。

そして、水滴は下の籠の葉っぱにも描かれています。
それはグラスをもった左手のすぐ下にある緑の葉っぱ
です。

カラヴァッジョは果物籠の絵を3点描いていますが、
ボルゲーゼにあるものには水滴の描写はありません。
ミラノにある絵とこのバッカスには見事な水滴描写が
みられます。是非お楽しみ下さい。

投稿: いづつや | 2016.03.03 09:22

私も行ってまいりました。大変充実した内容で、没頭して絵を見続けました!

『エマオの晩餐』は、ブレラ美術館で見て以来30年ぶりでした。解説で左上に風景が見える窓が描かれていたのを後に画家が消したとありましたが、不必要な窓がないことで、いやがうえにも見る人の注意がドラマそのものに集中しますね。

モチーフを限定して、画面で起きているエピソードそのものに焦点を当てるのは、『エッケ・ホモ』でも『法悦のマグダラのマリア』も同じだと思います。カラヴァッジョは、絵の最大限の効果を狙っていたのですね。

『エッケ・ホモ』は、ジェノバにあるので縁がないと思っていただけに見られて大満足でした。こちらのキリストもイケメンではないでしょうか。(笑)

一方、果物籠やワイングラスなどに見られる超絶技巧にも息をのみます。ご指摘の葉の上の水滴は見事ですよね!

カラヴァッジョは自分が一番偉大な画家だと自負していたそうですが確かにそれまでの画家で、ここまで迫真性ある自然主義描写をした画家はいなかったと思います。

会場の出口に真作リストが貼ってありましたが、まだ見ていない作品が20点ばかりあるので、一つ一つ見てみたくなりました。

投稿: ケンスケ | 2016.03.03 22:41

いづつやさん、こんばんは。
またまた興味深い見どころをありがとうございます。
水滴には全然気づきませんでした。
とくに「バッカス」は人気があって、いつも人が群がっているので、なかなか絵の中央最前列に踏み込めないのですが、空いている時間を狙って、単眼鏡を使って楽しみたいと思います。
ありがとうございます。

投稿: 上野東京ライン | 2016.03.03 22:53

to ケンスケさん
キリストの話を題材にした作品では出世作の‘聖マタ
イの召命’と‘エマオの晩餐’がぐっときますね。
静かな場面ですが強い明暗法の表現によって仰る
ように精神が集中します。しかも対象の描写が恐る
べきリアリズムを生みだしている。すごい絵ですね。

エッケ・ホモのキリストもいい男ですね。ロンドン
オリンピックの水泳の背泳で銀メダルをとった入江
選手を連想します。

静物画も風俗画同様、魅せられます。穴の開いた
リンゴや水滴、その見事な質感描写は本当に目が点
になります。モチーフを大げさに描かないでものの
もっている質感や生の感じをしっかりだす。
こういう絵だと画面にすっと入っていけますね。

投稿: いづつや | 2016.03.04 01:17

to 上野東京ラインさん
西洋画をみるときは単眼鏡はほとんど使わない
のですが、カラヴァッジョの水滴をみるためには
これを使わざるを得ません。

ローマの大回顧展のときは果物が描かれた作品は
単眼鏡が大活躍をし水滴の描かれたところをすべて
みつけました。そして震えました。

投稿: いづつや | 2016.03.04 01:24

上野東京ライン様
いづつや様

最近このブログに投稿を始めた むろさん と申します。カラヴァッジョのファンです。

上記コメントで話題になっているバッカスのワインボトルに映る自画像の件ですが、4/2のイタリア文化会館での講演会で宮下規久朗氏より解説があったので投稿しました。(講演会に参加されていたならこの投稿は無視してください。)

その自画像はワインボトルに向かって右側の下の方の白い部分や斜め45度の影ではなく、ワインの上部液面部分の中央部(白い反射の右)に小さく映っている顔だそうです。解説時に画像を映して示されました。そしてこれは、この絵の外側にいるカラヴァッジョ自身なので、ワインの液面ではなくボトルのガラス面に映っているとのこと。また、今回の展示は照明がいいので、ウフィツイ美術館で見るよりも見やすいそうです。私も次回また行った時にじっくり見るつもりです。なお、ボトル上部のガラス部分に白いシーツが透けて見えていますが、これは板ガラスではないのだから、もっと屈折して描かないと間違いだそうです。

投稿: むろさん | 2016.04.06 00:27

to むろさん
2010年の大回顧展の図録に載っているフラスコ
の拡大図をじっとみましたが、どうしてもわかり
ません。右の白い所にしっかりとらえた顔のほう
がわかりやすいんですが、隣の方もわかったとい
ってますし。

宮下さんはこの顔をどう説明するのでしょうか?
別のところに幻想をみて自画像だと思い込んでいる
のではないですか。

投稿: いづつや | 2016.04.06 01:01

カラヴァッジョの新作がフランス南部で発見されたという最新ニュースを見ました!

ローマの国立絵画館にある『ホロフェルネスの首を斬るユーディット』の別ヴァージョンらしいです。

以下のURLをご覧ください。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160413/k10010477331000.html

私個人の意見では、老婆の皺の描き方が不自然で、真筆かどうかは微妙な感じがします。しかし、かなり質が高い作品であることは間違いありませんね。

投稿: ケンスケ | 2016.04.14 22:52

to ケンスケさん
新たに発見されたカラヴァッジョ、ホロフェルネス
の斬られた首からドバっと血が飛び散るところが
バルベリーニにあるものとよく似てますから、本物
ではないかと思っているのですが、

どこの美術館が手にいれるのでしょうね。落札の値段
とともに興味津々です。

投稿: いづつや | 2016.04.15 01:38

ご覧になられたと思いますが昨晩の『日曜美術館』でカラヴァッジョの『バッカス』のフラスコに描かれた画家の自画像を取り上げていましたね。

ワインの表面にはっきりと顔が映っているのがようやくわかりました。ずっともやもやしていたので、納得できてよかったです。(笑)

故郷カラヴァッジョ村のぺテルツァーノの作品は明暗表現や写実の点で、カラヴァッジョ作品の源流となったのもよくわかりました。

カラヴァッジョの信仰心の深さも改めて強く感じました。神の救いを本当に求めていたのでしょう。

投稿: ケンスケ | 2016.04.25 20:50

to ケンスケさん
自画像とらえられましたか!大回顧展の図録をみても
日曜美術館で示してくれた自画像はみえてこないの
でどうかな?という感じでしたが、これで意欲がわい
てきました。

番組にでてきた‘ロレートの聖母’と巡礼の話が腹に
ストンと落ちました。

投稿: いづつや | 2016.04.26 00:10

いづつやさん、お帰りなさい。
カラヴァッジョ展、最終日に行ってきました。混雑していましたが、身を乗り出して全て間近で観られました。ワインのフラスコに描かれた顔も確認出来ました。

暗くて重たい作品を描くイメージが変わりました。特に果物は、ツヤといい美しかったです。最近描かれたのかと思うほどでした。

皆さんが、会場に何度も足を運ぶのも納得です。いつかまた来日することを心待ちにしています。

投稿: みどりがめ。 | 2016.06.13 01:28

to みどりがめさん
カラヴァッジョの魅力はその多面的な画風です。
そのなかで初期の精緻な描写に驚かされる静物画
や風俗画にぞっこん参ってます。リンゴやぶどう、
フラスコの見事な質感描写、本当にすごいですね。

そして、イケメンのキリスト、額に深いしわのある
老婆らが登場し親近感を覚える宗教画も心をとりこ
にします。

3度も大きなカラヴァッジョ展がみれたのでいう
ことなしです。これで、日本でもカラヴァッジョ
人気がぐっとでてくると思いますので5年後くらい
にまた作品がやってくるかもしれませんね。
期待してます。

投稿: いづつや | 2016.06.13 15:49

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