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2015.12.31

琳派に明け暮れた2015年!

Img   俵屋宗達の国宝‘源氏物語関屋図屏風’(1631年 静嘉堂文庫美)

Img_0003         ‘澪標図屏風’(1631年)

Img_0002     杉本博司の‘月下紅白梅図’(2014年)

12/23、この日が会期の最終日だった2つの展覧会に足を運んだ。ひとつは静嘉堂文庫美で行われていた‘金銀の系譜’、もうひとつは千葉市美の写真家杉本博司(1948~)の回顧展‘今昔三部作&趣味と芸術ー味占郷’。

静嘉堂文庫へでかけるのは久しぶりだし、お目当ての俵屋宗達の国宝‘源氏物語関屋・澪標図屏風’をみるのは2006年以来のこと。ワシントンのフリーア美で‘松島図’と対面したばかりなので、3年かけた修復が終了した‘関屋・澪標図’に心がどう動くのか対面を楽しみにしていた。

‘関屋図’ですぐ反応したのが源氏が乗っている牛車のすぐ横と関山のむこうにある岩、茶、青、緑で彩色された表現は‘松島図’に描かれた海の岩のデジャブがおきているよう。そして、‘澪標図’で視線が追っかけるのが明石の君がいる船のまわりの波の描写と源氏のいる牛車や従者たちを取り囲むようにしてたつ松の木々、波の動きは‘松島図’にくらべて穏やかで静かに海面が揺れている感じだが、松を横の方向にのばす平坦な描き方は‘松島図’と共通する。

‘松島図’がアメリカに流失しなければ国宝の指定をうけ、今年のような琳派の長い歴史のなかで節目の年には‘風神雷神図’、‘関関屋・澪標図’と一緒に展示され琳派の美の神髄をみせつけたことだろう。‘松島図’が日本にないことがかえすがえすも残念でならない。

千葉市美の‘杉本博司展’でみたかったのは4月MOAで開催された琳派展に出品された‘月下紅白梅図’、NHKの美術番組で制作過程を含めて詳しく紹介されたので、本物がみたくてしょうがなかった。本歌が写真で再現されこんな漆黒の紅白梅図に変容した。今、日本美術に深く傾倒している杉本博司のアート魂は半端ではない。

今年も拙ブログにおつきあいいただきましてありがとうございます。
皆様よいお年をお迎えください。

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2015.12.30

2015年 感動の展覧会 ベスト10!

Img_0003     俵屋宗達の‘松島図屏風’(17世紀 フリーア美)

Img_0001     マグリットの‘ゴルコンダ’(1953年 メニル・コレクション)

Img_0002     久隅守景の‘鷹狩図屏風’(17世紀)

Img     ‘織部扇面形蓋物’(17世紀初期)

ここ数年一年を通して足を運ぶ展覧会の数は50くらいになっているが、今年はアメリカの美術館巡りを含めて52回だった。このなかから心に残る展覧会を10選んでみた。いつものように順序はつけず開催された順に並んでいる。

★古田織部展        12/30~1/19     銀座松屋

★新印象派展        1/24~3/27      東京都美

★若冲と蕪村展       3/18~5/10      サントリー美

★マグリット展        3/25~6/29     国立新美

★明治ニッポンの美      4/4~5/17      東芸大美

★藤田美の至宝        8/5~9/27      サントリー美

★久隅守景展        10/10~11/29    サントリー美

★宗達展           10/24~1/31    フリーア美

★村上隆 五百羅漢図展    10/31~3/6     森美     

★ラファエロ前派展      12/22~3/6     Bunkamura

昨年、満足度の高い展覧会が多かった西洋絵画、今年は3点しか入ってこなかった。期待していたグエルチーノ展はカラヴァッジョとつい比べてしまうため会場をまわっているうちに関心がしぼんでいった。また、以前ローマのカピトリーニ美で最高傑作をみたことも満足度の低下に影響している。この絵を基準作にしてみると出品作がどれもぐっとこない感じだった。

‘新印象派展’、‘マグリット展’、‘ラファエロ前派展’には追っかけ画が入っていたことがポイントを上げた。展覧会には1点でも気になる作品があると出かけるというのが美術鑑賞の基本姿勢なので、マグリットの‘ゴルコンダ’や昨日紹介したミレイの‘いにしえの夢’がでてくると心は天にも昇るような気になる。

7点入った日本美術関連の展覧会にはそれぞれワクワクさせる作品との出会いがあった。1月の‘古田織部展’に登場した‘織部扇面形蓋物’は一生忘れられない名品。やきものは‘藤田美の至宝’で乾山・光琳の合作‘角皿’を10点全部みれたことも大きな収穫だった。

強い関心を寄せていた‘久隅守景展’も期待通りのラインナップで大きな満足が得られた。とくに視線が釘付けになったのが‘鷹狩図’、‘四季耕作図’同様、守景の風景画には風俗画の楽しさがぎっしりつまっている。

絵画の魅力のひとつに画面の大きさがある。それを見せつけくれたのが村上隆の‘五百羅漢図’、鬼や龍などには造形的におもしろくないところもあるが、主役の五百羅漢像はとてもよく描かている。図録がようやくできたので早めに購入したい。

わが家の今年のハイライトはなんといってもワシントンのフリーア美でみた‘宗達展’、長年の夢だった‘松島図’と‘雲龍図’が一緒にみれて言うことなし。感動の余韻が半年くらい続きそう。

  


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2015.12.29

期待通り質の高い‘ラファエロ前派展’!

Img   ミレイの‘いにしえの夢ー浅瀬を渡るイサンブラス卿’(1857年)

Img_0002    ロセッティの‘シビラ・パルミフェラ’(1865~70年)

Img_0003     バーン=ジョーンズの‘レバノンの花嫁’(1891年)

Img_0001     ムーアの‘夏の夜’(1890年)

渋谷のBunkamuraでは現在‘英国の夢 ラファエロ前派展’(12/22~3/6)が行われている。昨年1月、森アーツセンターであったビッグなラファエロ前派展はテートのコレクションだったが、今回公開されているのはリバプール国立美の所蔵作品。

はいってすぐミレイ(1829~1896)の‘いにしえの夢-浅瀬を渡るイサンブラス卿’が出迎えてくれた。これはミレイの画集には必ず載っている作品、今回ミレイはこの中世的な騎士が2人の子供を馬に乗せて進むという物語性を感じさせる傑作のほか‘春’や‘ブラック・ブランズウイッカーズの兵士’も含まれている。

2008年にBunkamuraは質の高い作品を集めたミレイ展を行っているが、今回出品された8点はそのときに欠けていた主要なピースをもってきた感じ。おそらくこれで‘ミレイのいい絵は全部おみせしました!’という思いだろう。すばらしい。

ロセッティ(1828~1882)の‘シビラ・バルミフェラ’もラファエロ前派ファンにとっては嬉しい一枚。理想をいえばウォーカーアートギャラリーにある‘ダンテの夢’をみたかったが、これは強欲というもの。イギリスを訪問する機会がまたあればロンドンから高速鉄道に乗ってリバプールをめざしたい。

リバプールにあるバーン=ジョーンズ(1833~1898)は手元の画集に載っている2点を期待していたが、出品されていたのはこれではなく水彩画の大作‘レバノンの花嫁’、昨年は森アーツセンターで‘愛に導かれる巡礼’に出会い、今年はボストン美でも‘希望’と再会した。一歩々コンプリートの道を進んでいると思えるのが嬉しい。

日本ではなかなかみることができない耽美主義派のムーア(1841~1893)、これまでみたのは1人の女性を描いたものだったが、目の前に現れたのは横に並んだ4人の群像画。絵をみているというより古代ギリシャの大理石彫刻をみているような気分。

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2015.12.26

フィラデルフィアの名所観光!

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Img_0002      ‘自由の鐘’

Img_0001      独立記念館

Img_0003    名物料理‘ポットパイ’

3年間と同様ワシントンからフィラデルフィア、そしてフィラデルフィアからニューヨークへはバスで移動したので、都市と都市の間の距離のイメージがだいぶつかめてきた。ワシントンとニューヨークは約4時間、フィラデルフィアへは2時間ぐらいで着く。

フィラデルフィアで定番の名所観光はアメリカ独立の象徴である独立記念館と‘自由の鐘’、まず入館するのは独立記念館の目と鼻の先の公園にある‘自由の鐘’、9.11事件の後からチェックが厳しくなりひびの入った鐘にたどりつくのに結構な時間がかかる。

1776年7月4日の独立宣言、1787年の憲法制定の舞台となったのが白い時計塔をもった独立記念館、現地ガイドさんからフィラデルフィアの街の歴史やアメリカ建国にこの街が果たした役割などをひととおり解説してもらうとアメリカの繁栄の根っこのところにはイギリスの植民地時代に味わった苦悩と独立をかちとった人々の喜びが深く刻まれていることを思い知らされる。

昼食は名物のポットパイをいただいた。なかはクリームシチューのようなもので軽く食べられる。レストランのなかへ入るとクリントン元大統領が来店したときの写真が飾られていたので、3年前と同じ店だったことを思い出した。

有名な店なのだろうが、テーブルにあった塩入れからふっても塩がでてこないのでこまった。塩粒がかちんかちんに固まっている。こんな塩入れがずっと置かれたままになっているという日本だったら信じられない光景だった。

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2015.12.24

想定外のクリムトと対面!

Img_0003          クリムトの‘婦人の肖像’(1918年)

Img_0002     マティスの‘青いドレスの女’(1937年)

Img     デ・クーニングの‘座る女’(1940年)

Img_0001     ヘレン・フランケンサラーの‘白いサルビア’(1962年)

海外にある有名な美術館の場合、その所蔵品が美術本に載っていることが多いので必見リストには限られた情報ではあるがレビューしたものを見落とさないようにして一点々書きとめている。鑑賞時間が短いときはこの事前準備が館内を効率的にまわるのにとても役立つ。

ところが、ときどきこのリストに載ってない想定外の作品がひょいと姿を現すことがある。それはフィラデルフィア美が所蔵していたとは思ってもみなかったクリムト(1862~1918)の‘婦人の肖像’、これはクリムトの亡くなった年に描かれたもので婦人は顔だけは仕上がっているがほかは未完成。

この想定外のクリムト、どこかでみた覚えがある。大急ぎで隣にあったシーレの絵と一緒にカメラにおさめた。日本に帰ってクリムトの本をチェックしたら、TASCHEN本の最初の頁に載っていた。だが、絵を所蔵しているのはドイツのリンツにある美術館。

さて、どういうことだろうか。本が出版されたのは2006年、それから9年経っているのでこの間にフィラデルフィア美が購入したのだろう。2013年の1月にここを訪問したときは展示されていなかったから、ここ数年のうちにコレクションに加わったのかもしれない。TASCHENにでてくくる作品がみれたのは幸運この上ない。

館内をなかば走っているような鑑賞の仕方だが、狙いの作品以外で思わず足がとまるものがある。日本でお目にかかったマティス(1869~1954)の‘青いドレスの女’の磁力はそれほど強力。この絵は大のお気に入り。青いドレスの背景の赤や黒は平面的に描写されているので床面なのか後ろの壁なのかわからなくなっているが、無駄なものをそぎ落としたスキットした構成が女性の美しさを一層引きたてている。

デ・クーニングの‘座る女’は3年前、ワシントンのハーシュホーン美などでみた目が三角だったりぎょろっとした激しい女とは異なり写実的でおとなしく描いている。同じタイプの作品を今回メトロポリタン美でも出会った。これはデ・クーニングのひとつの発見。

フランケンサラー(1928~2011)はお気に入りの女流画家。鑑賞した作品の数は両手にも足りないが、その柔らかい色調で画面を構成する抽象表現主義の技法は心をじわーっとゆすぶる。この‘白いサルビア’をしばらくいい気持でながめていた。

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2015.12.22

心に響く古典絵画の傑作!

Img_0004  ウェイデンの‘聖母と聖ヨハネと十字架のキリスト’(1450~60年)

Img_0002    ボス派の‘キリストの嘲弄’(16世紀)

Img    ルーベンスとスネイデルスの‘縛られたプロメテウス’(1611年)

Img_0001     ティツィアーノの‘ティテュオス’(1549年 プラド美)

フィラデルフィア美は大きな美術館なので1時間という限られた時間で名作を楽しむためにはじっくりみる作品を絞る必要がある。今回は3年前見逃したものを第一優先にしてみてまわった。

古典絵画で狙っていたのは館のHPにでていたボス(1450~1516)の絵2点、TASCHEN本に載っている‘この人を見よ’は前回みたが、ほかに2点ありボスの後継者の作とされる‘キリストの嘲弄’に足がとまった。もうひとつもキリストを題材にした作品でボスに帰属とあった。今回はボスが3点、日本ではほとんど縁のないボスなので素直に嬉しい。

もう一点リストにあげていたボッテイチェリの小さな横長の絵をみたあと、体が自然に引き寄せられていったのが206室にでーんと飾られているウェイデン(1399~1464)の‘聖母と聖ヨハネと十字架のキリスト’、3年前この絵の前に立ったときは唖然としてみていた。こんなすばらしいウェイデンがフィラデルフィアにあったとは!以来、古典絵画が好きな人と話がはずむといつもこの絵のことを話題にする。

古典絵画で有名な絵がもう一点ある。それはルーベンス(1577~1640)がスネイデルスと合作した‘縛られたプロメテウス’、この絵は通常は2階に展示されているのだが、現在1階の印象派の作品が飾られているすぐ横で‘プロメテウス’をテーマにした特別展が行われており、ルーベンスの絵もほかの美術館から出品された作品と一緒に飾られている。

この特別展のおかげでルーベンスが参考にしたティツィアーノ(1490~1576)の‘ティテュオス’と再会し、ヨルダーンスのプロメテウスもみることができた。犬も歩けば棒に当たるとはこのこと。

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2015.12.21

リカバリーがうまくいったフィラデルフィア美!

Img     セザンヌの‘大水浴’(1906年)

Img_0002  ダリの‘茹でた隠元豆のある柔らかな構造:内乱の予感’(1956年)

Img_0003      デュシャンの‘大ガラス’(1915~23年)

Img_0001     シャガールの‘3時半(詩人)’(1911年)

海外にある有名な美術館を2回訪問するのが美術館めぐりの大きな夢。その願いの叶った美術館がひとつ加わった。3年前にはじめて行ったフィラデルフィア美、二度目となると間隔があくのが普通だが宗達展のお陰でまた訪問する機会がめぐってきた。

今回この美術館にいる時間は1時間、だから、のんびりとみていくわけにはいかない。まず目指したのは一階の展示室で最も人気のある印象派が展示されているところ。164室にありました、ありました、前回どういうわけか姿をみせてくれなかったセザンヌ(1839~1906)の‘大水浴’。

大きな絵であるのと安定した三角形構図のためゆったりした気持ちでみられる。美術本の図版と本物とでは色のイメージが違うことがよくあるが、この絵もそれがあてはまる。女性たちの肌の色が淡く水彩画をみているよう。セザンヌが晩年に描いた‘大水浴’は3点あり、過去にみたバーンズコレクションとロンドン・ナショナルギャラリーにあるものとくらべてみると、やはりここに飾られているこの大作に一番魅了される。この絵は遠くからもみえ、フィラデルフィア美の顔となっている大傑作、一生の思い出になる。

次に向かったのは近現代美術のコーナー、事前に美術館のHPで部屋ごとの展示作品をチェックしているから動きはスムーズ。前のめりでみたのがダリ(1904~1989)の‘茹でた隠元豆のある柔らかな構造:内乱の予感’という長ったらしい名前のついた絵。

おもしろいのは名前の割には隠元豆の存在感が薄いこと。誰が見ても上の落ち武者のような顔や割りばしが不安定に四角に組み立てられた感じの手足や乳房に視線が向かい、この怪物は一体何者かなどと想像をめぐらしていると、隠元豆のことはすっかり忘れてしまう。この絵が目のなかに入ったので次のターゲットはベルギー王立美で2回ともみれなかった‘聖アントニウスの誘惑’。夢が実現するのはいつだろうか?

デュシャン(1887~1968)は前回2つある展示室が改築中でまったく縁がなかった。お目当ては‘彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも(大ガラス)’と木の扉に開けられた覗き穴からなかをみる‘与えられたとせよ:落ちる水、照明用ガス’、フィラデルフィア美へ出かけてデュシャンがみれないなんてしゃれにもならないから、画集に載っている作品の多くをリカバリーできたことを心から喜んでいる。

シャガール(1887~1985)の‘3時半(詩人)’も収穫のひとつ。ここにはシャガールが4点くらいあるが、自画像は日本に一度やってきた。もっともみたかった‘3時半は’緑で彩られた逆さになった顔と猫、詩人の胴体の青、そして床の赤の組み合わせがとても印象深い。

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2015.12.20

フィリップスコレクションで話題のゴーギャンの絵を展示中!

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Img_0004     ホワイトハウス

Img_0002     フリーア美

Img_0003   フィリップスコレクションで開催中の展覧会(10/10~1/10)

3年前ワシントンを訪れたとき、市内観光は最後に行くスミソニアン航空宇宙博物館まではパスしてお目当ての美術館まわりをした。今回は関心の的は‘宗達展’、だから航空宇宙博物館の一つ手前の国会議事堂のところからみんなと離れてフリーア美に1時間ちょっといた。

団体ツアーの場合、ワシントンで行くところは決まっている。リンカーン記念館、ワシントン記念塔、ホワイトハウス、国会議事堂はまずはずせない、このほかにはアーリントン国立墓地も入っているものもある。そして定番の名所観光のあとはスミソニアンで航空宇宙博かナショナルギャラリーに入館する。

スミソニアンは18の博物館、美術館、国立動物園からなる世界最大の博物館群。嬉しいことに入館料は大英博物館と同じくどこもとらない、多くの人が訪れるのが航空宇宙博と絵画の殿堂ナショナルギャラリー、東洋美術やホイッスラーの絵画のコレクションで有名なフリーア美は航空宇宙博から歩いて10分くらいのところにある。

このふたつの中間にあるのがハーシュホーン美、ここは3年前入館したが質の高い現代アートが目を楽しませてくれる。また、隣の方の話だとナショナルギャラリーの近くにある自然史博物館もみるものは多いそうだ。

今回参加したツアーはニューヨークからボストンへは大陸縦断鉄道(アムトラック)で移動した。アメリカで列車に乗るのははじめてだったので、車窓からの眺めはとても新鮮だった。海岸線と並行して走る時間が長く、ポッパーが夏の時期を過ごし作品を描いたところはこんな風景だったのだなと思ったりもした。

ボストンまでは4時間、外をみるのも飽きてきたから目の前にあった車内雑誌をぱらぱらめくっていたら興味深いページがでてきた。3年前訪問したワシントンのフィリップス・コレクションで現在特別展が開かれており、ここに今年の2月史上最高値の360億円で落札されたゴーギャンの‘いつ結婚するの’が出品されている。

この絵を誰が買ったのかははっきりしてないが(カタールのコレクターということもささやかれている)、所蔵していたスイスのシュテヘリン一族が手放したことはまちがいない。では、なぜ10/10からフィリップスコレクションンで展示されているのか?

勝手な読みだが、買い手がカタール人ならこれからは以前バーゼル美に寄託されていた時のようにみれなくなるのでその前にワシントンで公開するということが買い手との間で交渉され展示が実現した。このあたりはよくわかならいが、件の絵は今ワシントンにある。この情報を早く入手しておれば名所観光につきあわなくでフィリップスコレクションに寄ることができたのに。惜しいことをした。

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2015.12.19

琳派のDNAを受け継いだ画家たち!

Img_0004     今村紫紅の‘龍虎’(1913年 埼玉県近美)

Img     山口蓬春の‘扇面流し’(1930年 山口蓬春記念館)

Img_0003        福田平八郎の‘花菖蒲’(1934年 京近美)

Img_0001    前田青邨の‘罌粟’(1930年 光記念館)

2004年に東近美で琳派展が開かれたとき、最後の展示室に明治以降に活躍した日本画家の作品や海外のボナール、マティスやクリムトの作品などが一緒に並んだ。こういう構成は従来の琳派の展覧会にはなかったので、戸惑いを覚えた美術ファンからネガティブな声があがった。‘どうして琳派展にマティスの絵があるの?’

11年前この展覧会を担当した古田亮氏(現在は東芸大准教授)は今回の‘宗達展’の企画メンバーに名を連ねている。そのため、展示の最後の締めとして日本画家の作品が再度ラインナップされている。50ドルした図録(ハードカバーでないものは40ドル)には全部で14点載っている。だが、展示替えがありお目にかかったのは9点。

一部?があったが多くの作品は琳派のDNAがしっかり受け継がれているなと思わせるもの。ここにあげた今村紫紅(1880~1916)の‘龍虎’、山口蓬春(1893~1971)の‘扇面流し’、福田平八郎(1892~1974)の‘花菖蒲’は2004年のときも出品された。

‘龍虎’は宗達の‘風神雷神図屏風’のイメージと重なるし、‘扇面流し’は宗達の‘洗面散図屏風’(出光美)や光琳の流水模様がすぐ頭に浮かぶ。そして、平八郎の‘花菖蒲’は光琳の‘燕子花図屏風’が現代に蘇った感じ。歴史画を得意とした前田青邨(1885~1977)にも光琳の燕子花のもつ豊かなデザイン性とリズミカルな動きをよく消化した‘罌粟(けし)’という傑作がある。

こうした作品を描いた画家たちは現代における琳派の後継者のようにみえるが、画業のすべてが琳派の画風にどっぷりのめりこんでいるというわけではない。絵画の可能性をつきつめるなかで琳派にみられる色彩性とか装飾的な要素が画家の絵心を強く刺激したのである。

現代琳派の極め付きのような加山又造の‘千羽鶴’は残念ながらみれなかったが、この絵が展示してあったときの様子が目に浮かぶ。この絵をみたアメリカの人たちは宗達や光悦を祖とする琳派の美と精神は日本では脈々と現代のアーティストに受け継がれていることを深く感じたにちがいない。

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2015.12.18

フリーア美のミニ琳派展!

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Img_0001     尾形光琳の‘群鶴図屏風’(17~18世紀)

Img_0002     尾形光琳の‘菊流水図団扇’(17~18世紀)

Img_0003     酒井抱一の‘蝶に牡丹図’(19世紀)

Img     鈴木其一の‘白椿・薄野図屏風’(19世紀前半)

フリーア美には全部で18の展示室があり、現在は日本美術の部屋5,6,7では‘宗達展’とコラボして琳派関連の絵画ややきものがずらっと展示されている。このことは日本を出る前に知っていたので、手元の美術本でフリーアが所蔵している光琳などの絵をチェックしておいた。

尾形光琳(1658~1716)は3点でていた。‘群鶴図屏風’、‘白梅図屏風’、そして‘菊流水図団扇’。六曲一双の‘群鶴図’は1994年、名古屋市博で行われた琳派展でお目にかかった。フリーア美にあるものは門外不出であるはずなのだが、この鶴の絵はチャールズ・フリーアが蒐集したものではなく後年フリーア美が購入したものだと思われる。

今回狙っていたのは菊と水流が描かれた団扇、もうひとつある蔦の細道が絵柄になったものも一緒にみれればよかったがこちらは次の楽しみとなった。団扇の下には乾山のお馴染みの角皿と色絵で文様をあしらった小さな香合がおかれ3点セットで鑑賞するという洒落た演出。

酒井抱一(1761~1828)は見栄えのする‘三十六歌仙図屏風’がでていた。これは敬愛する光琳が描いたもの(メナード美)の写し。これで其一のもの(出光美)もいれて3人の‘三十六歌仙図’をみることができた。ほかに2点の花鳥画があった。写真のため画質は落ちるが‘蝶に牡丹図’と‘月に秋草図‘、もう一点、はじめてみる‘達磨図’もなかなかよかった。

光琳の団扇絵同様、期待していたのが鈴木其一(1796~1858)の‘白樺・薄野図’。ありました、こういう瞬間は本当に嬉しい。これはもともと屏風の表と裏に描かれていたもの、金屏風には緑の土披に意匠化された白椿が、銀屏風には薄の穂先が型を繰り返すようにびっしり描かれている。

ほかには中村芳中の柿の絵や池田孤邨の楓が咲き誇る作品などがあり部屋全体が琳派の美につつまれていた。宗達展のプラスαにこんな豪華な琳派コレクション、一生の思い出になった。

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2015.12.17

心を揺さぶる‘雲龍図屏風’!

Img 俵屋宗達の‘雲龍図屏風’(17世紀前半 ワシントン フリーア美)

Img_0003  光悦・宗達の‘四季草花下絵和歌色紙帖’(17世紀 ベルリン東洋美)

Img_0001     俵屋宗達の‘伊勢物語 布引の滝’(17世紀 ミネアポリス美)    

Img_0002     俵屋宗達派の‘雑木林図屏風’(17世紀 フリーア美)

フリーア美には宗達の作品では‘松島図’のほかに鑑賞欲をとても刺激するのがもう一点ある。それは‘雲龍図屏風’、これも長いこといつかこの目でと思ってきた。‘宗達展’が開催されたお蔭でこの龍もみることができた。

これは宗達の晩年の作といわれている。左右2頭の龍をみていると自然に‘風神雷神図’が思い浮かんでくる。宗達の当然意識したにちがいない。とくに左の龍の足を大きくひろげるポーズはニヤッと笑った雷神の姿を彷彿とさせる。

この迫力に満ちた龍の姿をいっそうパワフルにしているのが龍の下に描かれている波濤。右の龍の横には尾形光琳が描いた‘波濤図’(メトロポリタン美)を思い出させる上から覆いかぶさるようにしてうねる波頭がみられ、左の下にも強風にあいられて荒々しい白波が次から次と生まれている。さらに目をこらすと、波頭には吹き墨により黒の小さな点々がついている。なんという芸の細かさ!これは図版ではわからないのでしっかり目に焼きつけた。水墨はほかにクリーブランド美や東博のコレクションなどが7点くらいあった。

本阿弥光悦の書とのコラボ作品で足がとまったのはベルリン東洋美から出品された‘四季草花下絵和歌色紙帖’、2004年日本橋三越で開催された琳派展に36枚のうちの後半の18枚が展示されたが、今回は36枚全部でている。これは大収穫だった。

宗達とその工房が手がけた‘伊勢物語図色紙’も収穫のひとつ。図録には10点載っているが展示してあったのははじめてお目にかかるミネアポリス美の‘布引の滝’など7点。新規のものが4点もあったのでご機嫌、この色紙は現在60点知られているが、これで35点が目のなかに入った。

展示の後半はフリーア美が所蔵する俵屋宗達派の作品がずらずらっと飾られている。とくに魅了されたのは金地の屏風の大半を緑で占める‘雑木林図’(六曲一双)、右隻(図版)では画面いっぱいに槙、楢などが写実的に描かれているが、左隻では余白を大きくとり左に梢だけが描かれている。この構成がとても現代的で強く印象に残った。

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2015.12.16

ワシントンで宗達の‘松島図’と対面!

Img_0004   アムトラックの車内雑誌に掲載された‘宗達展’の案内

Img     俵屋宗達の‘松島図屏風’(17世紀 ワシントン フリーア美)

Img_0002     尾形光琳の‘松島図屏風’(18世紀 ボストン美)

Img_0003      尾形光琳の‘松島と富士’(18世紀)

3年ぶりにアメリカを旅行し、念願の‘宗達展’(10/24~1/31 ワシントン アーサー・M・サックラー・ギャラリー)を鑑賞し、さらにいくつか美術館をまわってきた。その感想記がしばらく続きます。おつきあいください。

今年は琳派400年という記念の年。国内では京博で大規模な琳派展(終了)が行われたが、海のむこうのアメリカではワシントンで現在‘宗達展’(10/24~1/31)を開催中。場所はフリーア美の敷地内の地下にあるアーサー・M・サックラー・ギャラリー。

1年くらい前、この展覧会の情報に接したときすぐにワシントンをめざすことを決めた。いつものようにA旅行会社の団体ツアーに参加し、ワシントン観光のとき、一時離脱してフリーア美に駆け込むという作戦。いくつかあった選択肢のなかからわれわれの希望にぴったりのがあり、気分よく申し込んだ。

ほかに訪問した美術館はフィラデルフィア美、メトロポリタン美、グッゲンハイム美、ボストン美の4館。このなかでお楽しみはフィラデルフィアとボストン、2013年はじめてフィラデルフィアに足を運んだが、お目当てのセザンヌの‘大水浴図’、ダリの‘インゲン豆’、デュシャンの‘大ガラス’が姿を見せてくれなかった。だから、今回はそのリカバリー。そして、ボストンの狙いは2008年に出かけたとき建設中だったアメリカ館(2010年完成)、はたしてホーマーの絵と会えるか、その結果はおいおいと。

まずはメインディッシュの宗達の‘松島図屏風’から。日本にあったら国宝はまちがいないこの六曲一双の屏風の存在を知ったのはずいぶん前のこと。ワシントンは4度目だが、フリーアに入るのは3度目。過去2回はひょっとして‘松島図’に会う大サプライズがあるのではないかと思って入館したが、ダメだった、でも今回は確実に展示してある。

サックラーギャラリーはフリーアの敷地内にあり展示室は地下につくられている。地下3階まで急いで降りていくと会場にたどり着いた。入ってすぐにあの‘松島図’が出迎えてくれた。図版の上が右隻で下が左隻。もう昂奮しちゃって心がふわふわし視点が定まらない。

この絵の見どころはなんといっても波の描写、水の動きをとらえるのは大変難しいのに宗達は金地の海原にできる波の様子を胡粉を効果的に使いシャープにそしてリズミカルに描ききっている。波がまるで生き物のように踊り狂っているよう。

波頭の表現がとても立体的なのに対し、岩や松、洲浜は平坦な描写で模様をかたどったシールをペタッと貼ったような感じ。左隻の下のほうの黒い輪みたいなところが洲浜、そのまわりを波がうねるように渦巻いているのが印象的。静的な松や洲浜と風に吹かれてダイナミックに形を変化させる波のコントラストがじつに見事!

さらに進んだところに宗達の画風を受け継いだ‘松島図’が飾ってあった。お馴染みのボストン美にある尾形光琳(1658~1716)が描いた‘松島図’、そして初見の光琳に帰属するとみられる‘松島と富士’。宗達だけでなくこういう作品もどどっと出てくるのが回顧展の醍醐味。どれも食い入るようにしてみた。

最大の追っかけ画‘松島図’がみれて天にものぼるような気持ちだった。ミューズに感謝!

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2015.12.02

お知らせ

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2015.12.01

歌川国芳の‘百種接分菊’に目が点!

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Img     歌川国芳の‘百種接分菊’(1845年)

BSプレミアムに‘浮世絵ツアー 江戸の四季めぐり’というおもしろい番組がある。案内役は落語家の二代目林家三平と若手女優、先月‘秋の巻’(1時間)が放送された。浮世絵に描かれた秋の風物詩で番組は構成されているが、今回登場したのは江戸の秋を彩った菊、ハゼ釣り、江戸友禅、松虫、そして浅草酉の市の名物、飾り熊手。

このなかで興味をそそられたのが菊。新宿御苑では毎年秋に‘菊花壇展’(11/1~11/15)が開かれているそうだ。盆栽展とかラン展、こうした菊展にとんと縁がない。でも、小さい頃は父親に連れられて毎年菊の品評会に行っていた。群を抜いて立派な菊には‘特選’と書かれた金のラベルが貼られていたことをよく覚えている。

いろいろな種類の菊が登場したが、目を奪われたのが摘芯という技術によってつくられた菊、一本の茎から何百という菊の花が咲いている。こうした菊のことは歌川国芳が描いた‘百種接分菊’で知識としてはインプットされていたが、実際に今も存在しているものをみたのはこの番組がはじめてかもしれない。

‘百種接分菊’がつくられたのは弘化2年(1845)のこと。菊の品種改良が進み、接ぎ木によって一つの茎に色も形も違う100種類の菊を咲かせるという極めつきの菊ができあがった。‘御門菊’、‘白鳳凰’などの名前が書かれた名札がいっぱい、見物人は皆驚きのまなこで食い入るようにながめている。

解説者として出演した名古屋の園芸家は自分の店で150種類の菊を咲かせていた。本物をみてみたい。番組のおかげで菊への関心が一気に高まった。来年の秋は新宿御苑へ出かけることにした。

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